人生とは思いがけないことの連続である。
こんなはずじゃなかった。
こうなるはずだった。
考えればキリがない。
だからこそ、未来は分からないという前提に立って今できる最大限のことをするのが大切だと俺は思う。
え?何が言いたいかって?いや、つまりさ
「あの、せめて服を着させて貰えませんかね?このままじゃ俺風邪ひいちゃう」
「ダマレ」
「あ、はい。すいません」
このお兄様の逆鱗を修めるために、最大限のことをしようってことさ。
ガツン、ガツン、ガツン。
裸で床に正座させられてる(せめてもの慈悲で腰にタオルだけはつけさせて貰った)俺は、この状況を打開すべく辺りを見渡した。
左…さっき風呂場で気絶したナナリーが寝ている。メイドさんが手当てをしてくれているが、まだ目覚めないようだ。起きれば、万事解決なのだが起きないことにはしょうがない。
ガツン、ガツン、ガツン、ガツン。
右…あの後、すぐに来た女の子(皆、妙に顔レベルが高い)と男の子のブリタニアの学生がまるで犯罪者でも見るかのような顔で見ている。
失礼な。誤解だよ、誤解。紳士なテロリストだよ。あ、どっちにしても犯罪者か。
しかし、この分では援護は期待できない。右も左もダメか…はてさて、どうするか。
ガツン、ガツン、ガツン、ガツン、ガツン。
正面?無理だよ、無理。もう、これ援護とか期待できるもんじゃないよ。だって、お兄様が断罪者みたいな顔して座ってるんだもん。怒りとかを超越しちゃってるもん。スーパーサイ○ジンみたいになってるもん。
しかもお兄様はさっきから、ガツン、ガツンとチェスの駒を机にぶつけてるけど怖すぎだからね。物は大切にした方が良いと思うよ、とかの冗談も言えないレベルだからね。
「…思うんだが」
「何でしょう、お兄様」
「貴様にお兄様と言われる筋合いはない!」
「ひっ!!?」
「ま、まあまあ、落ち着けルルーシュ!!話が進まないから!!」
「そ、そうだよ、ルル!!とりあえずは、話始めないと!!」
怒りのままに立ち上がったお兄様を見て思わず悲鳴をあげてしまった。とても怖い。以前、藤堂さんに惚れてる女の子を藤堂さんに紹介してあげた後の千葉さんの反応くらい怖い。
しかし、このままでは話が進まないと判断した周りがお兄様を止める。ナイスだ、学生供!後で飴をあげるぞ!
「そ、そうだな、シャーリー、リヴァル。どうやら、取り乱してしまったようだ」
「いや、俺が悪いんですよ。申し訳なかったです。距離がある呼び方が不満だったんですよね。すまない、兄貴。今度から気を付けるよ」
「……」
「ルル!ルル!落ち着いて!果物ナイフを振りかざしてどうするの!?」
「落ち着けルルーシュ!!流石にそれはシャレになってねえ!!まだ刑は執行されてないぞ!推定無罪だ!」
「そうだよ、ルルーシュ。それじゃあ、殺せないでしょ。はい、これ。一応研いでおいたから」
「ああ、ありがとう。ニーナ助かるよ」
「助かるよじゃねぇだろ!!何を言ってんだ、お前!それに、ニーナーーー!!お前このSSで始めて喋ったと思ったらそのセリフか!!?一体何路線で行くつもりなんだ!?」
「え?イレブンだし問題ないでしょ?」
「問題しかないよ!?何で放火犯にライターを渡すような真似をしてるの、ニーナ!!?」
「まあ、皆落ち着けよ。兄貴、嬉しいのは分かるが喜びは素直に表現してくれねぇとわかんねぇよ」
「「そして、お前は何で火事の現場に油を被って突っ込んでいくんだーーー!!?」」
ニーナから貰った包丁を振りかざし、今にも降り下ろしそうなルルーシュを取り押さえるリヴァルとシャーリー。そして、それを煽るニーナと殺されそうになっているにも関わらずルルーシュの怒りを買い続ける男。
まさにカオス。
この現状を見て流れに乗り遅れた何時もは騒動を引き起こす側のミレイはふと思う。
「え?これは私が静めないといけないの?」
勿論です。
「はあ、はあ、はあ!!良いだろう話くらいは聞いてやる!」
「流石はお兄、うぷっ」
「はいはいはい、折角ルルが落ち着いたんだから余計なことを言うのは止めましょうねー!?」
「必要なことだけ話せ!余計なことは話さなくても良いから!」
必要なことだと?彰はチラリとお兄様の方を見る。
今にも悪魔にでもなりそうな程怒り狂っているお兄様を見て改めて思う。
(え?無理じゃね?)
ここまで怒っている人間を宥める言い方など彰には思いつかなかった。
何を喋っても怒らせることにしか繋がらない気がする。
彰は怒りを買うのは得意だが、宥めるのは苦手なのだった。
しかし、彰は慌てない。この程度の苦難など幾らでも乗り越えてきた。
「タイムアウト!」
「「「……は?」」」
「だから、タイムアウトだよ。タイムアウト。話を纏めるから少し時間をくれ。そして、オレンジの髪の女とそこのモブっぽい男。ちょっとこっち、来い」
「え?私?」
「誰がモブだ、誰が!」
そう、自分が思いつかないのならば、誰か他の人に考えて貰えば良いのだ。
(すげえな、俺冴えてるわ)
男の方はブツブツ文句を言っているが、言いながらもこっちに来る。
ああ、こいつ良い人で終わるタイプだな(確信)
頼みながら、こんなことを考える辺り控えめに言ってもクズである。
~作戦会議中~
(で、何で呼んだの?)
(本当だぜ、タイムとか言ってる場合じゃねぇだろ)
(いや、お兄様を宥める方法を教えて貰おうと思ってな。あのお兄様が好きなものとか何か知ってるか?)
(ナナちゃん)
(ナナリー)
(え?何?ガチモンのシスコンなの?)
(ガチモンてか、何というか……なあ?)
(うん、まあ……間違いなくこの世で一番大切にしてると思うよ)
(何てことだ……おい、お前らから上手く言ってお兄様の機嫌を取ってこい)
((無理))
(諦めるのがはえーんだよ。諦めたらそこで試合終了なんだよ)
(試合というより、命が終わりそうじゃない?)
(黙れモブ2号)
(ちょっと!?リヴァルと一緒にしないでよ!!)
(おい、どういう意味だシャーリー!!)
(いや、そーいう意味だろ)
(原作でも最後まで目立たなかったしねぇ)
(それな)
(おいい、メタ発言止めろぉーーーー!!!)
~会議終了~
「もういい!!こうなったら、ナナリーを叩き起こして俺の身の潔白を証明してやる!」
「おい、馬鹿止めろ!今度こそやべぇぞ(ルルーシュが何をするか分からないという意味で)」
「そーだよ、ナナちゃん気絶してるんだから!!」
「馬鹿はお前らだ!俺の命がかかってんだよ!」
ギャーギャーと騒ぐ三人を差し置いてルルーシュは別の方向に動き出していた。
「ニーナ。騒ぎにならないで人を消す手段を考えてくれ。会長。人一人をここから運び出したいので、人手を貸して下さい」
「うん、分かった」
「いや、貸さないからね。そして、あんた大分ぶっ飛んできてるわね、ニーナ」
やっぱり、ちょっと短めですね