理不尽にも程がある。
カレンはルルーシュの指揮を見てそう思った。
圧倒的に追い込まれていたはずの戦場があっという間に優位に変わっていく。
ルルーシュが品川のレジスタンスと扇さん達に連絡を取った。そこで、謎の男として(カレンはともかく、カレンの仲間まで信じる気はないと言って絶対に名前は明かさなかった)指揮を開始してから僅か1時間。
自分たちが今まで苦戦していたのが何だったのかと思いたくなるレベルである。
カレンは畏怖を覚えずにはいられなかった。これが本当の指揮官なのだと本能が理解した。
にも関わらず、当のルルーシュは不機嫌な顔を崩さない。
「アイツ…余計なことを」
「え?」
ルルーシュは舌打ちをすると彰に電話をかけた。
「おい、もう動くな。このままでは、俺が楽過ぎる!お前はこれから戦闘に参加するな!」
「文句言うところ、そこ!?どう見てもあんたが凄いと思うんだけど!?」
カレンからしたらルルーシュのしたことは凄いという言葉では表せないが、本人からしてみるとそうでもないらしい。
「ちっ。何処がだ。全部アイツが勝手に的確な行動をして、俺はそれに合わせているだけだ。カラオケで言えば、常にガイドボーカルが流れているようなものだ!俺はアカペラで歌いたいんだよ!俺の力を試すためにもな!」
「ええ…何それ…」
「運良く、あいつの…というかカレンのグラスゴーが半分壊れてたからこれ以上は無理らしいがな。全くこのままでは俺の力がどの程度通じるのか分からない所だった」
初めての戦闘にも関わらず、求める水準が高過ぎることにカレンは若干引いたが、当人が満足しないのではしょうがない。
ちなみに、彰から言わせれば、こちらから指示していないのに自分の行動を教えただけで、自分の考えを全て理解し、痒いところに手が届くどころか、将来的に痒くなるであろうところにまでフォローしてくるルルーシュが異常なのだが。これで初めての実戦だと言うのだから笑うしかない。
そして、ここにはルルーシュ以外に満足していない人間が一人いた。
「…おい、ボウヤ。本当に契約しないのか?今ならまだ間に合うぞ?」
「しつこいぞ。しないと言っている」
未だに契約のことを言ってくるC.C.に振り向きもせずにルルーシュは答える。
聞いていたカレンも、うんうんと頷く。
「当たり前でしょ。言っておくけど、あんた、相当怪しいわよ。普通そんな奴に契約なんて言われたってする人いないわよ」
圧倒的な正論にぐうの音も出ないC.C.を見て、鼻で笑うルルーシュ。
「そういうことだ。だがまあ...不死身女の契約に興味がないと言えば嘘になる。こちらの質問に答えるなら、その契約とやらを考えてやっても良い」
「ほう?何だ?言ってみろ」
「ちょっとルルーシュ!本気!?」
信じられないという顔で止めようとするカレンを手で制しながら、ルルーシュは先程の出来事の中で浮かんだ疑問を聞く。
「お前は、何故三人の中で俺を選んだんだ?いや、もしくは最初から俺だと決めていたのか?」
ルルーシュの質問にC.C.は苦い顔をする。その顔を見て、ルルーシュは疑問を更に深める。
(こいつは完全に俺以外と契約を結ぶ気がなかった。だか何故だ?俺でないといけない理由があるのか?)
「答えはYESであり、NOでもある。お前たち三人の中ではお前が適任だった。だが、お前でないといけない訳ではない」
「ほう?では、何故俺だと適任なのだ?」
「言えない」
「では、王の力とは何だ?」
「ギアスと呼ばれる力を得られる。まあ、正確には違うが、超能力と思えば良い」
「超能力?どんな能力だ?」
「さあな。得た人によって変わる」
「...契約の条件は?」
「現状では特にない。将来、私の望みを一つ叶えてもらうだけだ」
「望みとは?」
「言えない」
話にならんと言わんばかりにルルーシュはコメカミを抑えるが、側で黙って聞いていたカレンはそうではなかった。
「あんた自分の立場を分かってんの!?そんな謎だらけの契約を結べるはずないでしょうが!!ていうか、ルルーシュが結ぶって言っても私が許さないわ!」
「口を出すな。お前には関係のない話だ」
「出すわよ!あんたがこいつを騙そうってんなら、手も口も足の爪の先から髪の毛の先端に至るまで全部出すわよ!」
それ出し過ぎじゃないか?とルルーシュは思ったが、口には出さなかった。
「別に騙す気はない。嘘も言っていないしな。ただ、こいつが自分の目的を叶えるために必要な力を提供してやろうと言っているだけだ。見返りに私の願いを一つ叶えてもらうがな」
「...あんた、一体ルルーシュのことをどこまで知ってるの?」
「さあ?何処までだろうな?」
妖艶な笑顔で笑うC.C.にカレンが目が細めるのを見て、この二人の相性の悪さに気付いたルルーシュは頭が痛くなる。まさか、これからずっと俺がこの二人の喧嘩を止めなければならないのだろうか。
そんな嫌な未来予想図を振り切るように話の流れをルルーシュは変えようとするが、その前に彰から携帯に連絡が入る。
『よう。暇そうだな?』
「ああ。あっけない程上手くいったからな。これから更にカレンの仲間と品川のグループを前進させクロヴィスの守りを薄くすれば不意をついてクロヴィスを討つことも可能だ」
『さて、そんなに上手くいくかね』
「何?」
彰の言葉でルルーシュは眉を顰める。
『まあ、情報がないお前じゃ予想できないのはしょうがないが...これからイレギュラーが出てくる。気を付けろ。油断すると死ぬぞ』
「待て、何が始まるんだ?」
『お前が戦略の怪物ならアレは戦術の怪物だ。目に焼き付けろ。そんなに見れるもんじゃないぜ?理不尽なまでの強さってやつはな』
同時に、カレンの仲間が倒されたという連絡が入った。ルルーシュは初めて圧倒的な個の力を味わうことになる。
「いやあ予想はしてたけど、ドン引きの強さだねアレ。知らなかったら間違いなく逃げるね絶対」
「喋ってる場合じゃねぇぞ、ユキヤ!死ぬぞ、マジで!」
ヤバイのがいるから足止めを頼む。絶対に勝てないから、命を大事に作戦でいけよとどこかの馬鹿に言われて待機場所から飛び出したリョウ達三人だが、相手の余りの強さに驚きを隠せないでいた。
「おい、指揮官!何かさっきまでみたいな策はないのか!?足止めも限界だぞ!」
『…実弾は効かず、不意打ちで切り掛かったり、障害物で潰そうとしてもあり得ない反射神経とスピードで当たらない。これは無理だな。現状の戦力でこれを倒すのは不可能だ』
「指揮官が諦めてどうする!?大量の爆薬とかないのか!?」
『そんな都合の良いものはない!だが、誰が諦めると言った?倒すのが無理なら勝利条件を変えるだけだ』
アヤノの言葉を否定したルルーシュは即座に別のプランを立て始めた。
『所詮、その化け物がそこで勝った所で戦術的な勝利だ。その間に俺たちが頭を叩く!とにかく、時間を稼げ!最終的に負けても構わん!』
「アイツといい、お前といい、簡単に言ってくれるもんだ!この化け物相手に時間を稼げ…だぁ?どんだけ難しいか分かってんだろうな!」
『分かっている!他の奴等にも連絡して援護に当たるように言ってある!正直、どれだけ役に立つかは疑問だがな』
「立たねぇよ!この段階で分かるわ!卜部はともかく、それ以外の援軍は居ても居なくても同じだ!」
『やはりか…では、あの化け物の構造上の欠陥から攻めるとしよう』
「へぇ、そんなの分かるんだ?」
『ああ。何処かの馬鹿が一度潜入して情報収集したらしいからな。とにかく、一度距離を取れ!』
「「「了解!」」」
ルルーシュの言葉に三人とも敵から距離を取る。
『よし!そこから一気に近付け!』
「無茶を言うな!撃たれるぞ!」
『違うな!間違っているぞ!急に距離を取り、武装を変えたことで先程までとは違う武装を使っている!そこからの攻撃では、データによるとその武装からは
醤油が出る』
「「何で醤油だぁ!!」」
あり得ない展開に戦闘にも関わらず、リョウとアヤノから怒号が飛ぶ。
『製作者によると、丁度その時醤油が切れていたので今後困ることがないように付けたそうだ。目玉焼きが好きらしい』
「そんな情報死ぬほど、どうでもいいわ!」
「馬鹿だろ!その製作者馬鹿だろ!」
『ふっ、なるほどな。馬鹿と天才は紙一重とは良く言ったものだ』
「うるせぇよ!上手く話をまとめてんじゃねぇ!」
しかし、ルルーシュ達が喋っている間にランスロットから出続けていた醤油が止まってしまう。
『早くお前らが攻撃しないからチャンスが減ったぞ!何をしている!』
「やかましい!あんな状態の敵に攻撃できるか!」
「大丈夫だよ。心配しないで」
「ユキヤ?何か作戦が?」
とつぜんニヤリと笑いながら、安心させるような発言をするユキヤに何か手があるのではないかとアヤノは顔を綻ばせる。
「僕を誰だと思ってるのさ。ハッキングして本来の装備とは別のものに替えさせるくらい簡単だよ」
「おお、すげえじゃねぇか!何が起こるんだ?」
「醤油が出なくなったのは本来の量より少な目に設定されていたからさ。さあ、僕のターンだ。これからは醤油じゃなくて
マヨネーズが出る」
「「だから、何でマヨネーズだぁ!!!」」
リョウとアヤノのツッコミにユキヤは得意顔をする。
「目玉焼きに醤油っていうのが許せなくてね。僕はマヨネーズ派だし」
『違うな。間違っているぞ。素材の良さを活かすなら塩がベストだ』
「間違ってるのはお前の反応だ、指揮官!言うべき言葉はそれじゃねぇだろ!俺はソースだけど」
「おい、お前ら真面目にやれ!今は戦闘中だぞ!ちなみに私はポン酢だ」
「「『珍しいな、おい!』」」
話が盛り上がっている間に、ランスロットのマヨネーズも打ち止めになってしまう。それを見たユキヤは思わず呟いてしまう。
「あー、なくなる前にちょっとでも貰っとけば良かった」
「そういや、もう在庫がなかったな。後で買いに行かねぇとな」
『おい、在庫管理は戦闘の基本だぞ』
「分かってるんだけど、時間ある時に買いに行こうとすると忘れちゃうんだよなぁ」
『甘いな。ならば、スケジュールにしっかりと組み込んでおくことが大切、待て、カレン!落ち着け!『落ち着いてられるかぁ!あんたら現実逃避も良い加減にしなさいよ!敵が目の前にいるのよ!分かってんの!?』』
「あれ?カレン?そっちにいたのか?」
『いたわよ!黙って聞いてれば話が進まないから出てきたのよ!そんなどうでも良いこと喋ってないで早く戦いなさいよ!』
「いや、無理だってこんなの。もうマヨネーズもないし、後出来ることといえば出来るだけ逃げることくらいだよ。まあ、性能が違いすぎるから時間稼ぎにもならないだろうけど」
「実際そんなところだな。んじゃ、早く三人とも散って…何?停戦命令?」
リョウが話している間にブリタニア側に停戦命令が鳴り響いた。
しかし、攻めてきたブリタニアが今更停戦命令を出す意味はない。だとしたら、こちら側の人間が何かをしたのだ。
そう考えたルルーシュは、今この場にいない人間のことを思い出す。更に、その後の展開まで読んだルルーシュは慌ててそいつに合流するために行動を急ぐのだった。
何人かの死体に囲まれながらクロヴィスは恐怖で震えていた。周りの人間を死体にした張本人が目の前で銃を構えていたからだ。
「さ、さあ。停戦命令はしたよ?だから、頼む命だけは」
どう考えても助けを呼んだ段階で殺されると考えたクロヴィスは命乞いをするしかない。だが、それを聞いた彰は冷酷に笑いながら答える。
「そりゃ、お前のこれからの行動次第だ。さあ、クロヴィス。質問に答えてもらうぜ?」
幹部A「では、暖房機と加湿器のどちらを買おうかという話だが」
幹部B「どちらにしたものか…」
千葉「(心底どうでも良い…)」
片瀬「ううむ…藤堂。どう思う?」
藤堂「ふむ…これは難しいですな」
千葉「(流石藤堂さん!こんな問題でも真剣に考えるなんて!私はそんなところが(照)」
解放戦線は千葉さんがツッコマないと色々話が進まないという話