カレンの心からの叫びを聞いた他の三人は流石にカレンに注視する。そして、ルルーシュは言った。
「何を当然のことを言っている。花嫁の意見を聞くのは当たり前だろう」
「誰が花嫁よ!同意した覚えなんてないわよ!」
カレンの当然の抗議が響き渡る。そんな時に
「待ってください、ルルーシュ様!」
「お母さん!?」
仁美さんが部屋へと入ってきた。そのまま、仁美は脇目も振らずにルルーシュへと直進する。
「話は聞こえました!ルルーシュ様…幾ら何でも酷すぎです!」
「待って、お母さん!これはルルーシュの冗談だから!もう少し冷静になれば、分かってくれるから!」
母親の態度を見て慌ててカレンはルルーシュを庇おうとする。しかし、そんなカレンに反応も見せずに仁美は言った。
「結婚式場なら母親である私の意見も聞いてくれないと困ります!」
「そっちの心配!?」
「当然じゃないですか。お母さんの意見を聞かずに進めるなんてあり得ませんよ」
「何でさりげなく既に息子感出してんのよ!と言うか、それ以前に私の同意を取らずに話を進めてる方があり得ないわよ!」
カレンの言葉を聞いた彰とC.C.は肩を竦める。
「カレン。人生諦めが肝心だぜ?」
「全くだな。試しに結婚してみれば良いじゃないか」
「試しに付き合う的な感じで言ってんじゃないわよ!そんなに簡単に結婚できる訳ないでしょ!」
「やれやれ…頭でっかちな奴はこれだから困る。何でそんなに頑ななんだよ。間違いなくルルーシュなら大切にしてくれると思うぜ?」
「同感だな。あのシスコン童貞ボウヤのことだ。結婚相手は大切に扱うだろう」
「…そりゃ、わたしもそう思うけど」
「だろ?オマケにイケメンだし、家事もできる。しかも何だかんだ言って、お互いの相性も良い…アレ?結婚しない理由ないんじゃね?」
「言われてみれば確かにないな。決定じゃないか」
「だから、そういう問題じゃないわよ!」
「「何で?」」
カレンの火が出るような怒声に彰とC.C.の疑問符の声が刺さったことで、カレンは顔を赤くし、モジモジし出した。
「…言わなきゃだめ?」
「そりゃな」
「言ってみろ。理由次第なら、結婚反対に回っても良い」
彰とC.C.の意見に赤かった顔を更に赤くしたカレンはボソボソと呟く。
「…その…ルルーシュがどうとかじゃなくて…やっぱり結婚とか、プロポーズって言うのは、ちゃんと付き合って良い雰囲気の時に真剣に言ってもらいたいなって言うのがあって…その…」
顔を真っ赤にして、指をツンツンさせながら喋るカレンを見て、つまらないものを見たような顔をした二人は言った。
「「おい、ブラックコーヒー持ってこい」」
「あんたらが言えって言ったんでしょ!!?」
予想外の言葉にカレンは怒鳴りつけるが、それを聞いても二人はやってられないと言わんばかりの態度を続ける。
「たく、どんだけ大層な理由かと思ったらそんな理由かよ…あーあ、やってらんねぇ。もうお前ら結婚しろよ。それで恋のABCをやり尽くせ。そうすれば、そんな寝言は言えなくなる」
「これだから処女娘は面倒臭いな。良かったじゃないか、童貞ボウヤと処女娘の組み合わせだ。これ以上ないマッチングだぞ。幸せになれるさ」
「うるさい!だからあんたらみたいな爛れた恋愛しか経験してなさそうな奴等に言いたくなかったのよ!ええ、そうよ!私は今までちゃんと異性と付き合ったこともありませんよ!恋のABCどころかお兄ちゃんとか以外の人と手を繋いだことだってほとんどありませんよ!何か文句ある!?」
「文句しかねぇよ。お前そんなんだから映画でせっかくルルーシュと再会したのに抱きつくだけで進展がなかったんだよ。既にキスまでしてるんだから、出会い頭のキスくらいやれよ、このヘタレ」
「全くだ。何が「何を言えば良いか分からない」だ。幾らでも喋ることがあるだろう。好きだと言えば良い。生きてて嬉しいと叫べば良い。私も付いていくと頼めば良い。そんなだから、ほとんどルルーシュと二人で喋るシーンがないんだよ」
「それ原作の私だから!こっちの私のせいにすんじゃないわよ!それに、シャーリーよりは頑張ったじゃない!」
「お前、シャーリーに謝れよ!シャーリーだって頑張ったんだからな!そりゃ、折角生存√行ったのにほとんど出番なかったけどさ!アイツだって本当はもっと出番欲しかったんだよ!次回作あったら絶対もう少し扱い良くなるって俺は信じてるから!」
「そもそもお前とシャーリーを比べるな。お前はシャーリーと違ってチャンスあったんだからな?出番多かったんだからな?」
三人が微妙どころか、ある意味世界まで超えて趣旨から外れた会話で盛り上がっていると呆れたようにルルーシュが近付いてくる。
「何を喋っているんだ…花嫁の君が話し合いに参加しなくてどうする?ほら、とりあえず参加者のリストを作ってみたから確認してくれ」
「そして、あんたは何でどんどん進んでんのよ!!私は結婚に同意すらしてないわよ!」
「今更何を言っているんだ…仁美さんは先程来たナナリーと既にお前が結婚式で着る服の話を進めてるぞ?」
「カレン。ちょっとこっちに来て。採寸を測りたいから」
「カレンさん。いえ、カレン姉様。こんなに早くカレン姉様とお呼びできる日が来て嬉しいです」
何時の間にかこちらの結婚勢力に合流し、自分とルルーシュが結婚するということをあっという間に信じているナナリーを見てカレンは慌てて訂正するために近寄る。
「ナナリーまで!?違うのよ!これは全部周りのボケどもの影響なの!お願いだから!お願いだから私の話を聞いてー!!!」
それから1時間。カレンによる必死の誤解を解く説明が行われた。結果として誤解は解けたが、ナナリーと自分の母親の若干つまらなさそうな顔は全力で見なかったことにしたのは余談である。
「先程からニュースを見てるが…今のところクロヴィスが殺されたというニュースは放送されていないな。まあ、時間の問題だろうが」
チェスの駒を弄りながら淡々と話を進めていくルルーシュを見て、彰とカレンは思った。
((こいつ…さっきまでのポンコツ具合を全力で無かったことにしてやがる))
誤解が解け、全員でご飯を食べた後、ルルーシュ達四人はルルーシュの部屋に集まった。
少し前の壊れっぷりを完全に無かったことにしているルルーシュに白い目を向けるカレンと彰だがその意味に気付きながらもルルーシュは全力で無視を決め込んだ。
「計画の開始は俺が高校卒業を待つつもりだったが…ギアスという力を得た以上、待つ意味はない。俺は動き出す。お前はどうする?彰」
「俺か?」
声をかけられた事を以外に感じながら、彰は返事を返す。
「ああ。カレンはどうやら自分のグループを説得して俺を自分たちのリーダーにしたいらしい。あの強奪の手際を見た限りでは、俺が求める水準としては役不足としか言いようがないが、一応カレンの仲間だからな。まあ、カレンが仲間の説得に成功するなら前向きに考えるつもりだ」
チラと横目でカレンを見たら何とも微妙な顔をしていた。そりゃあ、コイツの今の言葉を聞いたら思うことはあるだろう。
でも、厄介なことにコイツの言うことって真実なんだよなぁ。ただ、オブラートが地平線の彼方に吹き飛んでるだけなんだよなぁ。
「で?その仲間の説得とやらは成功しそうなのか?」
「な、何とかするわよ!さっき言った時は全然取り合って貰えなかったけど、大丈夫!何とか私が説得するから!」
「お前の希望は聞いてねぇよ。まあ、普通に考えたら正体不明の謎の男をリーダーとして迎えようって言うのは無理だわなぁ。まあ、ルルーシュがちゃんと姿を現して結果を見せれば別だが、お前出生どころか顔すら見せる気がないんだろ?」
「当然だ。そんな奴等に正体を見せる気は無い。見せるとしても、正体をバラさないという信頼がある少数の者だけだ」
「それじゃ、カレンが成功する可能性は低いな。無理ならお前どうすんだ?」
「それなら俺が適当なグループを見つけてテロを始めるだけだ。最悪、その適当なグループのリーダーにギアスをかけて俺を信頼させれば良い。俺が結果を見せ続ければ他の奴らも俺を認めざるを得ないだろう。その後、勢力を伸ばしてカレンのグループを吸収すればカレンを仲間にすることも容易い」
「お前最低だな」
「ふん、何とでも言え。そこで…だ。出来ればお前も俺のグループに参加して欲しい。お前の性格は終わっているが、実力は認めている。それに、俺のことを知っている奴が居た方が俺も楽だしな」
「お前に言われたくねぇよ、性格破綻者。てか、C.C.はどうすんだ?」
「私はルルーシュの共犯者だ。ルルーシュが行くところに行くだけさ」
「へぇ、そりゃ、ありがたい。あんたは俺たちが持ってる最大のアドバンテージだしな。ルルーシュの側に居てくれたら俺も助かる」
「まあ、この女に信頼は置けないがな。何せ目的も話さない女だ。それでどうする?お前は俺のグループに参加するのか?しないのか?」
ルルーシュの問いかけに彰は若干悩む。そして悩んだ末に一つの結論を出した。
「そうだな。俺は」
彰「お前って結構乙女だよね」
カレン「うるさい!」
C.C.「言ってあげるな。真実の愛があると信じてるんだろ?永遠の愛を探してるんだろ?」
カレン「だから、うるさいっての!」
ルルーシュ「何の話だ?」
カレン「何でもないわよ!そもそも、あんたのせいだからね!」
ルルーシュ「それは理不尽じゃないか!?」