シャーリー「ごめんね、無理言って」しょぼんと項垂れる
彰「別に構わん。ぶっちゃけ、お前の前で人殺しをするつもりもなかったしな」車の下に爆弾設置
シャーリー「何してるの?」
彰「こんな確実に警察にNo.覚えられた車をまた使うわけにもいかんだろ。だから吹き飛ばす」直後に爆発して車が崖の下へと落下
シャーリー「ちょっと!?車が崖の下に落ちていったけど!?大丈夫なの!?ちゃんと確認したの!?」
彰「大丈夫、大丈夫。俺の見聞色の覇気によると下には人がいないから」
シャーリー「それ何も確認してないってことだよね!?」
「戦争なんか起きない平和な世界…私はこの世界がそんな世界になって欲しいと思ってます」
「すいません、ユフィ様。良いこと言ってますけど、隣でドSがブリタニア人を首輪で繋いでいる段階で全然シリアスにならないです」
ユフィは荒れ果てたシンジュクを見て哀しげな表情になり、自分の思いを吐露しているのだが、隣でユキヤが犬と化した二匹のブリタニア人を繋いだ縄を持っている段階で色々と台無しである。
「ブリタニア人による日本人への虐待…どうしたらそれを止められるのでしょうか…」
「すいません、ユフィ様。日本人によるブリタニア人への虐待が目の前で行われてるんですけど、どうすれば良いでしょうか」
「このままでは憎しみの連鎖は延々と続いてしまいます…それでは平和な世界は訪れません。未来のために私たちは現実を変えるべきなのです」
「すいません、ユフィ様。とりあえず目の前で生まれている憎しみの連鎖に対処するのが先決だと思います」
至極ご尤もなリョウの言葉を聞き流したユフィは、ニコリと笑いスザクに問いかける。
「あなたはどう思いますか?スザク」
「僕ですか?」
「ええ。やってもいない罪を着せられ処刑されかけた貴方は、この現実をどう思いますか?」
「僕は…変えなきゃいけないとは思う。だけど…その方法が分からないんだ」
悔しさと無力感とが混ざり合った感情を浮かべながら喋っているスザクを見たアヤノは思った。
(まずは目の前のブリタニア人を助けてやるのが第一歩だと思うのだが…)
チラリとアヤノが横目で見ると、ユキヤは犬から椅子へとジョブチェンジさせたのか、四つん這いにさせたブリタニア人の上に腰と足を載せてゲームを開始している。おい、誰か止めてやれよ。
「私も同じです…変えたいのに方法が分からない…このままじゃ、ただの夢物語ですよね…私には何の力もない」
「そんなことはない」
「トゥードゥーさん…」
先程まで黙っていたトゥードゥーは、ユフィとスザクの思いを聞き口を開いた。
「私には息子はいないが…二人ほどそれに近い者は居る。5、6年だが親代わりとして教えてきた二人だ」
トゥードゥーは懐かしいと感じながら話し出す。
「上の方は優秀でな。手がかからない上に一生懸命に努力して力を高め、私の言うこともしっかり聞いた。だが下の方は言うことを聞かないわ、素直じゃないわ、直ぐに手を抜く上に天邪鬼という、ダメ人間の典型のような奴だった」
だがと言ってトゥードゥーは続ける。
「自分の信念をしっかりと持っていた。そいつは良く言っていた。差別がない世界を作りたいと。当然聞いていた者のほとんどは笑っていたが、アイツはまだそれが実現できると信じている。正直敵わないと思った」
トゥードゥーはそれを聞いて思ったのだ。
この男は目先のことしか考えてない自分とは違うと。その先にある未来を常に考え、行動してきたのだと。ほとんど全員に信じてもらえないとしても。
「君たちも同じだ。夢がある。理想がある。そこへの道が分からないとしても、迷いながら夢に向かって進んでいる君たちは、賞賛に値する人間だ」
「トゥードゥーさん…」
臭いことを言ってしまったなと笑うトゥードゥーの言葉を聞いて、スザクは返す言葉を探す。自分たちはそんな大した人間ではないと言うべきだろうか。それともそう言ってくれてありがとうと言うべきだろうか。
ユキヤが零したジュースをブリタニア人に飲ませるという金持ちの道楽みたいなことが行われている中で続けられていくシリアスに、リョウの顔面に青筋が浮かぶ。
「おい、お前らいい加減にしろよ!?何でこの状況でシリアスを続けられんだよ!!止めろやぁ!!ツッコミ放棄したんじゃねぇぞ、テメエラ!?」
「ありがとうございます、トゥードゥーさん。貴方のお陰で気付けました」
「何も気付いてないからね、ユフィ様!目の前で行われてる惨劇に全く気付いてないからねユフィ様!!」
スザクが戸惑い、リョウが吠える中、ユフィは自らの答えをトゥードゥーに述べようとする。
「私はこの状況を見て弱気になっていました。そうですね。夢は見なくなったら終わりです。だから私はここで宣言したいと思います」
「ふっ。良いだろう。聞かせてくれ。君の思いを」
トゥードゥーの言葉にユフィはニコリと笑って宣言する。
「はい。私は誓います。これから先に何があっても私は私の思いを貫くと。この世界を平和な世界にしてみせます」
ユフィは誓った。どんな困難があったとしても、この世界を平和な世界にしてみせると。
そんな彼女がスザクには輝いて見えた。未来を信じて進む彼女の強さは、スザクには決して持ち得ないモノだったからだ。
彼女は何があっても進むだろう。誰が反対したとしても。誰も信じてくれないとしても。頭上から車が降ってきたとしても。
…いや、ちょっと待て。
将来ではなく、たった今ユフィの頭上から車が落ちてきた。ユフィの姿は車に埋もれて目の前から消える。
残された者たちが呆然とする中、リョウとアヤノは思った。
((思いを貫く前に身体を貫かれちゃったんだけど、皇女様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!))
自分たちは何も悪くないのだが、このままでは誘拐犯どころか皇女殺人犯に間違われてしまいそうな現状に、リョウとアヤノは再び全身から冷や汗が吹き出し、考える前に行動した。それは生物の生存本能と言うべきもの。つまり
「やってられるか、チクショォォォォ!!逃げるぞ、ユキヤ!アヤノ!」
「も、もちろんだ!このままでは非常にマズイ!」
逃げの一手である。人としては最低だと思う。
もちろん、そんな行動を正義の人間であるスザクが認めるはずもなく、リョウとアヤノの身体を掴んで止める。
「何をしているんだ!助けないと!」
「どんだけ馬鹿なんだお前は!?完全に潰れてるって絶対!このままじゃ俺ら捕まるどころか死刑への道の一方通行だぞ!!こんなもん逃げるしかないだろうが!」
「はーなーせー!私たちは無関係だ!正義の味方はお前一人でやっていろ!私たちはそんな者に興味はない!生きるのが第一だ!」
「生きるだけの人生に何の意味があるんだ!」
そんな対極の話し合いが行われている中、三人の肩に手が置かれる。
え?と思った三人は後ろを振り返ると警官が立っていた。
警官は後ろの車を指差し、お前らがやったのか?と言葉ではなく態度で示す。
リョウとアヤノの顔は完全に引き攣り、言い訳をしながらユキヤとトゥードゥーの姿を探すが、二人の姿はそこにはなかった。自分らが捕まってるのを見ながら囮にして逃げたらしい。
呆然とする中、犯人と勘違いされた三人の手には手錠がかけられる。
あいつら殺す!とリョウとアヤノは心に誓いながら、スザクと一緒に連行されていった。心底哀れである。
「助けないで良かったのか?」
離れた場所で袋を取った藤堂は、ゲームをしているユキヤに声をかける。
「大丈夫でしょ。見た限りだけど、ユフィは直撃避けて吹き飛んでただけみたいだから。皇女様が庇ってくれれば大した罪にはならないでしょ。実際、何もしていないし」
それもそうだなと考えた藤堂は、ではなと言いながらユキヤの元から去ろうとする。
そんな藤堂にユキヤは問いかける。
「僕からも一つ良い?あんたなら彼女が第3皇女だってことは見た瞬間分かってたでしょ?なのに、何で何もしなかったの?」
ユキヤからの問いに藤堂は少し笑いながら答える。
「何のことだ?私が会ったのは平和を愛するブリタニア人の女性だ。皇女など知らんな」
「あんたがそれで良いなら良いけどね。レジスタンスとしては失格だと思うけど」
「そうかもしれんな…だが私は親代わりとして息子に恥じない生き方をしたいと思っているのでな。まあ、アイツが私のことなど見ているとも思えんが」
「僕はその息子のことは知らないけど、その息子はちゃんと見てると思うよ。アンタの背中を」
「そうだと良いがな。では、もし今後その息子に会うことがあれば伝えてくれるか?
あまり無茶をするな。とな。私が言っていたと言わないでくれると助かる」
そう言うと、藤堂の姿はユキヤの視界から消える。
藤堂の言葉を思い出したユキヤは若干苦笑しながら呟く。
「全く…分かりにくい似た者親子だよ」
コーネリアと愉快な仲間たちの話
コーネリア「ユフィは…ユフィはどこだ」ヨロヨロ
武官A「殿下!ユーフェミア様がいらっしゃいました!」
コーネリア「おお!」パァと顔が輝く
ギルフォード「姫様!ユフィだよ?」ユフィの女装姿
ダールトン「姫様!私が本物のユフィだよ?!」ユフィの女装姿
コーネリア「私の前から消え失せろ!」地平線の彼方に蹴り飛ばす
ギルフォード・ダールトン「「どっちが悪かったのですかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」