「おい、カレン!来てくれ!こっちだ!」
探していた猫を特定の場所に追い詰めたルルーシュは、挟み撃ちにしようとカレンを呼び出した。
危うい所だったとルルーシュは安心するが、呼び出したカレンの様子がおかしいことに気が付いた。
真っ赤な顔で、少しフラつきながら走っていたからだ。
流石のルルーシュも少しは心配したのかカレンに問いかけた。
「一体どうしたんだ?」
「何でもないわ…ただ…」
フッとカレンは悟ったように笑った。
「アンタと一緒に世界を壊したくなっただけ」
「絶対に何かあっただろ」
少しの間に世界を壊したい病が発症している自分の恋人(笑)に、ルルーシュは理由を聞くことはしない。
巻き込まれたくないからである。実は既にメチャクチャ巻き込まれていることを本人は知る由もない。
「まあ、良い。あの机の下だ。俺が追い立てるからカレンは反対側に立って捕まえろ」
「…わかった」
まだダメージは抜けきっていないが、何とか返事をしたカレンは言われるがままにルルーシュの反対側に立つ。
するとルルーシュに追い立てられた猫が予想通りにカレンの所に近づいて行く。
後は捕まえるだけと思い、確保しようとするが、もし自分がこの猫を捕まえたらどうなるのだろうかと考えを巡らせる。
〜カレンの妄想開始〜
① カレン学校猫を捕まえた!このイベントの勝者はカレンです。
② カレンが勝者なら欲しいのはルルーシュのキスよね?(学園の全員の意見)
③ 公開イベントなんだから当然キスはみんなの前でやるのよね?(学園の全員の意見)
④ みんなの前でルルーシュとキス!ハッピーエンド!
〜カレンの妄想終了〜
「いや、何処もハッピーエンドじゃないわよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「突然何を叫んでるんだ!?早く捕まえろ!!」
「捕まえられるかぁぁぁぁぁぁぁ!!アンタそんなに私のファーストキスが欲しいの!?」
「何を意味がわからないことを言っている!?おい、脇に逃げたぞ!」
普通に考えればゼロの仮面だけ取って、猫自体は捕まえなければ良いのだが、顔を真っ赤にしてパニックになっているカレンにその回答は導き出せない。
「脇に逃げたから何だって言うのよ!?猫と私とどっちが大切なのよ!」
「何で私と仕事とどっちが大切なのよ的な質問をされなきゃならないんだ!?馬鹿なこと言っていないで現実を見ろ!」
二人がコントのようなことをやっている間に、猫を追ってきたニーナを含めたBL団が大量にやってきた。余りの人数の多さに流石の二人も争いを止める。
「BL団!厄介な奴らがきたわね」
「…何だそのBL団とは?」
「アンタ放送聞いてなかったの?聞きたいなら教えるけど」
「…いや、頭が痛くなって終わりそうだから良い」
ルルーシュはスキル『悟りという名の諦め』を覚えた。その代わりに『常識』を失った。
そんなもんがこの世界に今まであったのかどうかは不透明だが。
「「「「「猫ゲットォォォォォォ!!!」」」」」
BL団は全員が息を荒くしながら目的のためにひた走る。ハッキリ言って気持ち悪いが、その決意は並外れたものであった。その決意の目的が余りに残念なことを除けば大したものである。
「お願いルルーシュ。あの人たちにギアスをかけたって言って。そうじゃないと、私はこの学園を辞めたくなるから」
「俺もその可能性にかけて記憶を辿ったが、無理なようだ。まあ、そのおかげであいつらを止めることが出来るんだがな」
ルルーシュはそう言うと、手に持っていたビー玉のようなものを頭上に向けてバラマキ、その反射を利用してギアスをかけた。
『全員猫探しを止めろ』
「・・・世界一無駄なギアスの使い方ね」
「ほかに方法がないだろう」
ルルーシュもこんなことにギアスを使いたくはなかったがそうも言っていられなかった。
何はともあれ、これであいつらの動きは止められるはずだ。
だが、ニーナを筆頭にBL団の何人かはギアスをかけられても尚、前に進もうとしている。
「何!?ギアスに逆らったのか!?」
「嘘でしょ!?何で!?」
「仮説だが・・・どうしてもやり遂げたいという強い意志があったからだろう。その意志の強さがギアスの命令に抵抗したんだ」
「凄いわね・・・内容を知らなかったら尊敬してたわ」
尊敬すべきだろうか、それとも軽蔑すべきだろうかとカレンが思考を巡らしていると、目の前に凄い速さで通過する、女を抱えた男がいた。その姿を見てルルーシュは声を荒げる。
「スザク!?シャーリーまで!?何やってるんだお前ら!?」
「シャーリーにはお世話になってるからね。お礼に猫探しに協力してるんだ」
「・・・」
「いや、その恩を返す相手気絶してますけど!?あんたの化け物みたいな身体能力で一般人振り回したら、そうなるに決まってんでしょうが!」
「お前も似たようなものだろう」
「何か言った?ルルーシュ君?」
「い、いや、何でもない」
ニコリと笑って質問を投げかけてくるカレンに、心の声が漏れていたルルーシュは慌てて否定する。二人の力関係が分かる言葉である。
「二人も猫を探しているみたいだけど、負けられないよ。じゃあ、これで」
「待て!お前何で猫の場所が分かるんだ!?」
「分かるよ。これがあるからね」
そう言うとスザクは自分の眼鏡の機能を利用する。その機能に気付いたルルーシュは目を見張る。まさかアレは
「猫追跡眼鏡か!!」
「そうだよ。流石だねルルーシュ」
「いや、何でそんなもんがあるのよ!!しかも微妙に違うし!」
「ロイド博士の発明品さ。学生になった僕のために色んな装置を作ってくれたんだ」
「100%学生生活に要らない装置よね、それ!?」
そうは言うものの、今の状況では役に立つ機能であることに間違いはなく、スザクはシャーリーの意思を大切にして、猫を追うために階段を上がり始める。できれば体のことももう少し大切にしてあげて欲しい。
「てか、どうすんのよ!?このままじゃ、アイツに猫捕まえられちゃうわよ!?」
「ふん、舐められたものだな」
ルルーシュはそう言うと、何処からか持ってきた靴を装着する。何なのそれ?というカレンの無言の問いにルルーシュは答える。
「ジャンプ力増強シューズだ」
「また微妙に違う!?何でアンタまでそんなもの持ってんのよ!?」
「気にするな。捕まれカレン!この靴は足のツボを刺激して、持ち主のジャンプ力を限界以上に引き上げてくれる!」
ジャンプの体勢に入ったルルーシュにカレンは慌てて捕まると、同時にルルーシュは信じられない高さまでジャンプした。そのスピードは先に階段を登っていたスザクを追い越すまでであった。
こんな理不尽が許されて良いのかは分からないが、ともかくスザクを抜かし、猫を視界に捉えたカレンは捕まっていたルルーシュの背を叩き、もう一回飛ぶように促す。
「凄いわよルルーシュ!猫の姿が上に見えたわ!後一回飛べば捕まえられるわよ!さあもう一回ジャンプ力増強シューズでジャンプを!」
「…すまんが、それは無理だ」
「へ?」
カレンが疑問の声を上げてルルーシュの姿を見ると、地面にうつ伏せになって倒れていた。
その姿をカレンは死んだ目で見つめる。
「何やってんのあんた」
「ジャンプ力増強シューズの欠点だ。高く飛べるようになったところで筋肉まで増強されたわけではない…着地の衝撃に俺の体が耐えられないから、使用後は暫く動くことができなくなる…」
「アホかぁぁぁぁぁぁぁ!!それが分かってるなら使うんじゃないわよバカモヤシィィィィィィィィ!!」
そんなことを言っている間にスザクがカレンとルルーシュを追い越して先に向かう。それを見たルルーシュは、カレンに自分を置いて猫を追いかけるように言う。
「行けカレン!ここは俺が何とかする!お前だけでも先に行くんだ!」
「言われなくても先に行くわよ!アンタ格好つけてるけど、全部アンタの馬鹿が原因でこうなってるんでしょうが!!!」
言いたいことは山ほどあるが、カレンはスザクを追って走り出す。
メチャクチャどうでも良い戦いはクライマックスを迎えようとしていた。
次でこのイベントも終わりです!