楽しみたいもんです
「ルルーシュー。転校生が来たって聞いたんだけどって、何でアンタ扉の前に立ち塞がってるの?」
「すいませんが会長。貴方は今日から俺の教室に入ることを禁じます。副会長特権です」
何言ってんだコイツと思うかもしれないが、ルルーシュは本気である。ガチ中のガチである。
これからの自分の命(精神的な意味で)がかかっているのだから、本気にならない訳がない。災害と災害が遭遇してしまうなど、ルルーシュは想像すらしたくない。想像したら現実になりそうで嫌なのである。
なお、ルルーシュよりも更に負担が重くなりそうな気がするカレンはと言えば、既に諦めて灰になっている。
頑張るんだ、丈!いや、カレン!
「何言ってんのよ。そんなの私には通じません!だって私は会長だもの。ほら、どいた、どいた。緊張してる転校生を励まさないといけないんだから」
「全力で要らない気遣いです。アレにそんな可愛い感情など備わっていませんから」
アイツが転校初日で緊張しているなど、ルルーシュからしてみれば絶対にあり得ないと断言できる。そんなことがあり得るなら、シュナイゼルが女装して転校生としてやってくる方がまだあり得る。この世界なら否定しきれないのが恐ろしい。
「あれー?ルルーシュ君?その方はどなたなんですかー?」
「お前は出てくるなぁぁぁぁぁ!!!」
しかしそんなルルーシュの気持ちなどイブが考慮するはずもなく、笑顔でルルーシュとミレイに近づいて行く。
そんなイブを見て彼女が転校生なのだと理解したミレイは、ルルーシュを押しのけて笑顔で答える。
ルルーシュ。お前は頑張ったよ。
「初めまして。私が生徒会長のミレイよ。これからよろしくね」
「こちらこそ、お願いします。何かミレイさんとは仲良くなりそうな気がしますねー」
「あら、イブちゃんも?奇遇ね、わたしも。不思議ねー」
「不思議ですねー」
ウフフと笑い合う二人を見て、爆弾と爆弾を混ざり合う姿を想像したルルーシュは間違ってないと思う。
「でもー、残念なんですけどー、そこまで長くお世話になれないと思うんですよねー」
「あら、どうして?」
「色々都合があってー、学校を休むこと多いんですよー。会長とは学年も違うから、そんなに会う機会がないんじゃないかなーって」
「そうなの?んー、あ!なら、良いアイデアがあるわ!」
閃いたと言わんばかりに手を叩く未来を見て、すかさずルルーシュが間に入る。このタイミングでこの人が思いつくことで、自分に迷惑がかからなかった試しがない。しかし、それを止められた試しもない。
「そうか。それは残念だったな。では、会長。そういうことなので、コイツとはあまり関われませんね。では帰ってください」
そう言うと、ルルーシュは会長を押して無理やり帰そうとするが、全く動かない。モヤシの力の限界である。
「イブちゃんも生徒会に入れば良いのよ!そうすればあんまり学校に来れなくても関われるわ!」
「えー!?本当に良いんですかー?でも、ルルーシュ君が嫌がるんじゃないですかー?」
「ああ、嫌だ。間違いなく嫌だ。この世の中でトップクラスに嫌だ」
そう言いながらイブがチラリとルルーシュを見ると、露骨に嫌そうな顔をしていた。原作では、まず見られなかった顔である。
「あ!そんなことありませんでしたね!ルルーシュ君も受け入れてくれるみたいです!」
「お前は一回眼科と耳鼻科に行けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「当然じゃない!我が校の副会長がそんな小さいことを言うわけないわ!」
「言っています会長!先程から言いまくってます!」
そんなルルーシュの抗議など聞くはずもない二人は、話をどんどん進めていく。
「まあ、とは言え流石に他のメンバーにも話を聞かないとね!ちょっと聞いてくるわ」
ミレイはウインクをしながらそう言うと、教室の中に入り生徒会メンバーから同意を取るために説得に周る。
そこで得られた意見はこのような意見だった。
「良いと思うよ。ルルーシュ君との絡みも見れるし」
「え!?うーん…まあ、確かに学校にあんまり来れないのは可哀想だし、でも…」
「可愛い子が増えるのは大歓迎!」
「ふふふ…どうせ私が何を言ったところで世界は変わらないのよ…滅びの道を歩むしかないのよ…」
「良いと思います。人数が多い方が楽しそうですし」
生徒会メンバー全員の話を聞いてからミレイはニコリと笑った。
「良かったわ。皆賛成してくれて!流石は私の仲間たち!心が広いわね!ルルーシュも見習いなさい!」
「いや、一人だけとんでもない闇を抱えている人いましたよ会長!暗黒の海のゲート開いちゃいますよ会長!デジヴァイスが黒く染まっちゃいますよ会長!デジモンカイザーになっちゃいますよ会長!」
ルルーシュの正論が続けざまに放たれるが、正論が通らない世界においてルルーシュの正論など聞き届けられるはずもない。残酷な世の中にはなったものだ。
「では、ここでイブちゃんの生徒会への入部を正式に認めます!これからよろしくね!」
「はい!こちらこそよろしくお願いします!」
そう言ってニコリと笑うイブに、ルルーシュと会長の話を聞いていた他の生徒会メンバーは、一人を除いてイブの入部を祝うために集まってきた。集まっていない残りの一人が誰なのかは察してあげて欲しい。
抵抗も虚しく台風と台風の接近を許してしまった現実に、ルルーシュは遠い目をする。
世界はこんなはずじゃないことばかりだ…
〜日本解放戦線基地〜
「草壁中佐!今日という今日は黙っていられません!」
「私も同意見です!」
「そうです!この作戦を決行して、自分たちの力をブリタニアに見せてやりましょう!」
日本解放戦線のある部屋では、草壁派と呼ばれる過激派の面々が集まっていた。一応話し合いの名目で集まったはずなのだが、殆どのメンバーは今すぐにでも行動しそうなほど苛立っていた。
草壁は黙って話を聞いていたが、その様子が更に他のメンバーの苛立ちを増していた。
「草壁中佐!何を迷うことがあろうか!」
「そうだ!片瀬はワシらの提案は撥ね付ける癖に、ゼロの提案は受け入れるのだぞ!あんな奴に最早従う義理はない!」
この過激派の面々が苛立っている一番の理由は、今の発言に全てが含まれている。
要するに、自分たちの発言は取り合ってくれないのに、ゼロという不審人物の発言が聞き届けられるのが不満なのだ。
無論、片瀬少将にも言い分はある。
ゼロが作戦で失敗して死んだ所で解放戦線にはなんのダメージもない。精々、支援した物が失われるくらいだ。
しかし、解放戦線のメンバーによる作戦で失敗したらそうはいかない。片瀬の責任問題にもなるし、貴重な解放戦線の戦力が失われてしまう。
だからこそ危険な作戦はゼロにやってもらい、解放戦線はその支援に回るというのが片瀬の理想なのだ。
しかし、そんなことは過激派の知ったことではない。彼らは戦いたいのだ。自らの手で日本を解放したいのだ。そうであれば、片瀬の考えなど愚の骨頂に他ならない。
まあ、片瀬から見たらそんな無茶な作戦を認められるわけがないということになるのだが。
要するに、お互いが相手のことを良く考えないで行動した結果のすれ違いだ。どっちもどっちである。
しかし、皆の怒りを聞いても草壁はまだ答えを出さずにいた。
自分たちがする行動は、今までのものとは違う。これが分水嶺だ。これをしてしまえば、もう後戻りはできない。
とは言え、他のメンバーの様子を見れば、自分が反対しようと行動してしまうであろうことは自明の理。
だとすれば、自分を信じてついてきた彼らに責任を果たすことは自分の務めなのではないか。
そう考えた草壁は沈黙を破り、言葉を発する。
「…よし、やろう」
草壁の言葉に歓声が湧き上がる。ようやく自分たちの思いが叶うという感情が爆発したのだ。
「決行は来週になる。至急準備に取り掛かれ!」
シリアス「さて、そろそろ出番か」
シリアル「僕の出番かも!」
ギャグ「俺もそろそろ出番かも!」
シリアス「お前らは基本的に何時も出てるだろうが!」