ちょっと?変わったコードギアス   作:はないちもんめ

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平成最期の投稿でーす


50 予想外の人は予想外の所に現れるもの

「馬鹿な!」

 

片瀬はテレビの速報を見て、思わず手を思い切り目の前の机に叩きつけた。

 

その速報では、日本解放戦線と名乗るテロリストが人質を取って、ホテルを占拠していると放送されていた。

 

こんな作戦を、解放戦線のトップである自分が許可を出した覚えなどない。

 

加えてこのホテルでは国際的に重要な会議が行われており、これを襲えば日本の名に傷がつくとキョウトから厳重に釘を刺されていた。

 

それらの事実に片瀬の背中から冷や汗が吹き出す。キョウトに連絡をしたとしても『何とかしろ』と言われて終わりに決まっている。

 

そんな片瀬の様子を見ていた藤堂は、片瀬にそっと近寄り声をかけた。

 

「少将。草壁中佐の姿が見えません…恐らくは…」

 

「分かっておる…」

 

犯人など言われずとも片瀬にも分かっている。こちらから連絡を取り、今すぐ止めろと言うのは簡単だが、言ったところで聞くわけがない。そもそも、それで聞くようならこんな馬鹿な真似はしていないだろう。

 

となると実力行使しかないのだが、それをすれば日本解放戦線は終わる。片瀬にも藤堂にもそれは良く分かっている。

 

実力行使で止めれば実情はどうあれ粛清にしか映らない。それを片瀬と藤堂が行えば、解放戦線に残っている過激派寄りの藤堂派も黙っていない。内部分裂どころか仲間同士の殺し合いに発展することもあり得る。

 

とは言え、放っておくことはできない。そんなことをすれば、今度は片瀬がキョウトに責任を取らされて殺されかねない。

 

引くも地獄。進むも地獄。

 

その事実に片瀬と藤堂は打つ手を失う。だが正確に言えば違う。

 

一つだけあるのだ。自分たちが今打てる一手が。

 

しかし、それをするのは自分たちの沽券に関わる。それを分かっている片瀬と藤堂は沈黙を貫くしかない。

 

嫌な沈黙が流れる中、片瀬は苦渋の決断を下した。

 

「藤堂。ゼロに連絡だ」

 

「…よろしいので?」

 

「分かっているだろう。他に選択肢はない」

 

「…御意」

 

自分たちの問題を他人に尻拭いさせるという決断を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「承知した。生死を問わないで良いのであれば承ろう」

 

『問題を解決するのが先決だ。方法は問わない』

 

「良いだろう」

 

そう言うとルルーシュは藤堂からの電話を切る。

 

その顔は想定通りと言わんばかりに、あくどい笑みで溢れていた。

 

そんなルルーシュを見ていたカレンは、ジト目で見ながら告げた。

 

「…随分と嬉しそうね」

 

「当然だろう?俺の予想通りに物事が進んでるんだ。こんなに嬉しいことはない」

 

クククククと笑うルルーシュを見て、一応自分の彼氏兼主君ではあるが、悪役にしか見えないとカレンは思った。

 

とは言え、ルルーシュが喜ぶのは無理もないことはカレンにも理解できる。ここまで自分の予想通りに物事が進めば笑いたくもなるだろう。

 

 

〜〜〜片瀬とルルーシュの会談直後のこと〜〜〜

 

「ねぇ、ルルーシュ。あんなにあっちの都合が良い提案をしちゃって良かったの?」

 

片瀬との会談直後、ルルーシュとC.C.と三人で帰っていたカレンは、気になっていたことをルルーシュに尋ねた。

 

「ああ、確かに都合が良いな。もちろん、俺たちにとって都合が良いという意味だがな」

 

ニヤリと笑って告げるルルーシュに、カレンの頭には疑問符が浮かぶ。どう考えてもカレンには、アレらの提案が自分たちにとって都合が良いものとは思えなかったからだ。

 

「あの提案の何処が私たちにとって都合が良いのよ?危険な作戦を全部私たちに押し付けようって魂胆が見え見えじゃない」

 

「だろうな。そうして貰わなければ俺が困る」

 

「あー、もうハッキリ言いなさいよ!アンタは何を目論んでんのよ!」

 

曖昧にしか答えないルルーシュに、元々気が長くないカレンは、分かりやすく言えと怒鳴る。

 

長い付き合いなので、カレンがそう言うだろうと思っていたルルーシュはアッサリと答える。

 

「簡単だ。日本解放戦線を内部分裂させる」

 

「はあ!?あの提案で!?」

 

「そうだ。まあ、彰のやつは俺の狙いに気が付いていたようだがな」

 

「…何で気付いてんのにアイツは止めないのよ?」

 

「止めようがないからだ。俺の提案は奴らの分裂を早めただけだ。遅かれ早かれ、奴等は内部分裂していたさ」

 

「解放戦線っていう大きな組織なのに?」

 

「大きな組織だからだ。片瀬にはそれを纏める力がないのさ」

 

中からではなく、外から組織を見ているルルーシュにはそれが良く分かった。

 

解放戦線は日本を解放するという目的は共通しているが、どうやってそれを成し遂げるかという手段の点では全く共通していない。加えて片瀬にはそれを一つに纏め上げるカリスマもなければ、上手く組織を一つにする手腕もない。

 

「何でアンタはそんなこと知ってんのよ?彰が言ったの?」

 

「アイツが言うわけないだろう。奴等の動きを見てれば、上手く統一されてないのは一目瞭然だ。片瀬のやり方では生温いと思っている連中が存在することくらいな。そんな奴等が、俺たちのような新参者が大胆な作戦を提案し、それが受け入れられ続けていればどうなるかは火を見るよりも明らかだ」

 

「…なるほどね。それは分かったけど、そんなことして得があるの?」

 

カレンからしてみればそれが分からない。確かに、結局は内部分裂しそうだしそれをルルーシュが止まる義理もないのは理解できるが、わざわざ内部分裂させて何かあるのだろうか。

 

そんなカレンの問いを受けてルルーシュはニヤリと笑う。

 

「あるに決まっているだろう?必要なのさ。解放戦線を吸収するためにはな」

 

 

 

 

 

 

〜〜〜現在に戻る〜〜〜

 

「さて、それでは計画に移るか。カレン。扇達を呼んでくれ」

 

そう言って地図を広げたルルーシュに対して、カレンは返事をしてから扇達を呼びに行こうとするが、その前にカレンは確認のために一応ルルーシュに尋ねてみる。

 

「ねぇ、ルルーシュ?ナイトメアで突撃する作戦だけど、やっぱりダメ?」

 

「前も言ったろう?その作戦はない」

 

その返事にカレンはガックリと肩を落とし、トボトボと歩きながら扇達を呼びに行く。

 

ここで言った作戦とは、草壁達が占領したホテルにブリタニアの白兜を奪って突撃するという作戦だ。もちろん、考案者はカレンである。

 

カレンが自信満々に言ったその作戦をルルーシュは即答で拒絶した。

 

ルルーシュ曰く。

 

リスクが大きい。

 

白兜が奪えるかどうかもわからない。

 

別の作戦があるのにリスクを取る必要はない。

 

と言うものだった。ボロカスである。

 

カレンとしては、あまりルルーシュの役に立っていないので(本人がそう思っているだけでルルーシュとしては、かなり役に立っているのだが)こういう時にこそ活躍したいという思いを込めての発言だったのだが、ここまで否定されたらゴリ押しはできない。

 

とはいえ、カレンの作戦は原作のルルーシュであったならばここまで否定はせず、一考するに値する作戦ではあった。

 

にも関わらず、こっちのルルーシュが完全否定したのは、元来持っているルルーシュの性格が起因している。

 

この男は他者に厳しいが、一旦自分の中に入ってきた者は異常なくらい大切に扱うのだ。まあ、過去の出来事を考えれば仕方のない部分もあるのだが。

 

要するにルルーシュはカレンに危ないことをさせたくなかったのだ。本人に指摘をしてもカレン(というか、ナナリー以外の存在)が自身にとって大切だとは絶対に認めないだろうし、そんな自覚すらないのだろうが。本当に面倒臭い男である。

 

そんなツンデレ王ルルーシュの所に、先程扇達を呼びに行ったはずのカレンが血相を変えてやってきた。そんなカレンの様子を見てルルーシュは眉をひそめる。

 

「ルルーシュ!大変よ!テレビつけて!テレビ!」

 

「何だどうした?」

 

「良いから早く!」

 

カレンがそこまで言うので、言われるがままにテレビをつけたルルーシュの思考はそこで停止する。

 

そこではホテルを占拠したテロリストが流したと思われる、人質と思われる人達の映像が流されていたのだが、ルルーシュの思考が停止したのはそこに映っている人物の存在だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「草壁中佐達の粛清は、ゼロに委ねられるそうだ」

 

「そうですか…」

 

藤堂からの報告を受けた四聖剣のメンバーは、悔しさと悲しさが入り混じった顔でその報告を聞いていた。自分たちの仲間がそんな馬鹿な真似をしでかしたことと、それを止める役目が自分たちに与えられなかった悔しさが伺える。

 

「中佐…ゼロに全て任せてしまってよろしいのですか?」

 

「…他に私たちにどんな選択肢がある?」

 

良いかどうかという問題以前に、解放戦線に他の選択肢は存在しない。少なくとも藤堂には思い浮かばない。

 

朝比奈も居るので、この提案はあまりしたくなかった卜部だが、そんなことも言っていられないので藤堂に提案してみる。

 

「…中佐。彰の奴に相談してみては?」

 

「卜部さん!あの馬鹿に解放戦線の未来を委ねる気ですか!?」

 

「そうは言っていない!意見を聞いてみるだけだ!」

 

「落ち着け二人とも!今はそんな争いをしている場合ではない!それに先程から連絡は取っている…一向に繋がらないがな」

 

自分たちに報告する前に既に彰に連絡を取ろうとしていたという事実に、朝比奈だけでなく千葉も面白くなさそうな顔をするが、朝比奈と違い能力だけは…本当に能力だけは彰のことを認めている千葉は、溜息を吐きながら彰に連絡を取ろうとする。

 

「では、私からも連絡を取ります…アイツがこの事態を知らない訳がないですから、その内繋がるでしょう」

 

そう言いながら携帯で連絡を取り始めた千葉を見て、朝比奈は何か言いたげな顔をする。

 

千葉は朝比奈の気持ちは良く分かるし、正直頼んだら余計に面倒なことを起こしそうな気しかしないので頼みたくないのだが、背に腹は変えられない。

 

出て欲しい気持ちと出ないで欲しい気持ちがある中で千葉は電話のコールを聞き続ける。そして

 

『はい』

 

出てしまった。一瞬だけやっぱり切ろうと思ったが、何とか気持ちを立て直して声をかける。

 

「彰か?私だ。少しお前に聞きたいことがあってな」

 

『彰じゃない』

 

「は?」

 

『日本解放戦線にホテルで人質に取られてるイブちゃんでーす』

 

予想外過ぎるイブの発言に、千葉の思考が停止する。その思考が再開するのと、ルルーシュがテレビの映像でイブを確認したのは同時だった。

 

そのまま同時にルルーシュと千葉は言葉を発する。

 

「「いや、お前(あいつ)何やってるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」」

 

 

 

 

 

 




ルルーシュ「緊急事態だ!急いで出るぞ!」

カレン「えぇ…行くの?」

ルルーシュ「当たり前だ!ここで行かねば計画が狂う!」

カレン「アイツがいる段階で計画通りに進む訳ないでしょ!?」


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