〜6年前〜
「こんなガキにここまでやられるとはな…」
草壁は怒りと情けなさと驚きが混ざったような気持ちのまま言葉を発するが、剣は目の前にいる子供の首にしっかりと当てられていた。
だが、後は殺されるのを待つだけになっているはずの子供の目には、まだ殺気が漂っていた。
それを見た草壁はふと周りを見やる。
ブリタニア兵を殺す作戦行動中に、偶然出会ったブリタニア人の夫婦を殺しただけのはずだった。しかし、蓋を開けてみれば、自分以外の仲間は目の前の子供に殺されて全滅。
しかも殺される者になれば恐怖するはずなのに、恐怖するどころか自分をまだ殺そうとしている。
「面白い」
殺すのが普通の筈だ。部下を殺されたのだから。しかし、少しだけ。ほんの少しだけ勿体無いと思ってしまった。
今はまだそれほどではない。しかし、この小鬼がどこまで強くなるのか見てみたいと思ってしまった。
「ブリタニア人や大人なら日本人でも殺していたがな」
だからこれはほんの気まぐれだった。
「選べ小僧」
草壁は突き付けていた剣を少しだけ離す。
「今死んで楽になるか…生きて地獄を味わうか…選ばせてやる」
それが彰と草壁の最悪の出会いだった。
カレンの思考は予想外過ぎる展開に、少しだけ停止した。
完全とはいえずとも、ある程度はルルーシュの予想通りに進んでいた筈だった。
後は、こんな騒ぎを引き起こした主犯たちにギアスをかけるだけ。
そんな思いでカレンはルルーシュであるゼロの護衛につきながら、主犯連中がいるところまで案内されていた。
しかし、扉が開かれてみたら、中にはいるはずのない彰がおり、しかも殺伐とした空気の中で殺し合いを演じている。
自分たちを案内した兵士もこんな出来事は予想外だったのか、カレンと同じく止まっていたが、我に戻ると彰に向けて銃を構えた。
「カレン!」
側にいたゼロは、流石にカレンよりも先に冷静になったのか、カレンに向けて大声を上げる。
全て聞かずともゼロが言いたいことは伝わったカレンは、無言で持っていた銃をその兵士の頭に殴りつけて気絶させた。
それを確認したゼロは、スッと前に出て話し始める。
「さて…私は草壁中佐と話に来たのだが…これは一体どういう状況か教えてもらえるだろうか」
ゼロの当然の疑問に振り向くこともせずに、彰は答える。
「ようゼロ。お前の疑問は分かるが…今はそれどころじゃねぇ。ただまあ、簡単に言えば」
スッと剣を構えながら彰は続ける。
「俺にとっても、完全に想定外の状況ってことだ」
「想定外?ほざけ。このために乗り込んできたのだろうが」
「な訳ねぇでしょうが。アンタに銃を突き付けて、他の馬鹿どもを諦めさせるつもりだったんですよ。コンチクショウ」
「ふん、どうだかな。ゼロよ、すまんな。クロヴィスを殺した奴に興味があったから、殺される前に顔を見ようと思って呼んだのだが…その前にやることができた」
「そいつを殺すことがやることだと言うのですか?」
ゼロはクイッと指を彰の方向に向けて尋ねる。
「まあ、結果はそうだが正確には違うな。儂は10年前の儂の選択が正しかったのか示したいだけだ」
「10年前の選択?」
草壁の言葉にゼロではなく、カレンが疑問の声を上げる。それを気にするでもなく草壁は続ける。
「あの時生かした鬼が日本のためになるのかどうかをな。くくく…後は死ぬだけだと思っていたが、こんな機会が巡ってくるとはな。神もなかなか粋なことをする」
「何言ってんだか…知らないんすか?」
そう言いながら彰の重心が少し下がる。それを見た草壁も剣を強く握る。
「髪ならさっき無くなったんだよ」
言葉と同時に彰は飛び出し斬りかかるが、待ち構えていた草壁に受け止められる。
草壁は受けるだけでなく、もう片方の手で持った鞘を使って攻撃をすることで、彰の態勢を崩しにかかる。それによって隙が生まれた彰に向けて頭から叩き斬ろうとするが、寸前で躱す。
しかし完全には躱しきれず、肩を浅く斬られた。
戦闘続行には支障はないと思われるが、黙って見ていられなくなったカレンは加勢しようとする。
だがそんなカレンを、ゼロであるルルーシュは肩を掴んで止める。
何故邪魔をするという目でカレンはゼロを睨みつけるが、それを無視してゼロは彰に問いかける。
「らしくもなく苦戦しているな。手を貸そうか?」
「いらねーよ」
「だろうな」
そう言うとゼロは壁に背中を預けて、完全に傍観者の姿勢になる。
「聞いた通りだ。カレン。絶対に手を出すな」
「なんでよ!?別に加勢したって卑怯でも何でもないでしょうが!」
不服しかないゼロの命令に、カレンは敬語も忘れて怒鳴り返す。
「普通の戦いならもちろんそうだ。だが、二人の雰囲気から見る限り、どう考えても訳ありだ。だとすれば、私たちが介入すべきではない」
しかし、とゼロは続ける。
「私たちにも色々と急ぐ事情があるのでな。短時間で決着をつけてもらえればありがたい」
「ふはははは!なかなかに冷たい奴だな、ゼロ!コイツが死んでも構わんと言うのか?」
「当然だ。借りなら返した。私がそいつを助けてやる義務などまるでない。別に仲間でもないしな」
ちょっとゼロ!とカレンは反論するが、それを無視してゼロは続ける。
「それに助けなどそいつに必要ない」
「何?」
ゼロの言葉にピクッと草壁が反応する。
「私はそいつと親しくもないし、むしろ死ねと思うことの方が多いが…強さだけは認めている。この世でだただ一人、私が守る必要など全くない人間だ」
そのゼロの言葉に彰はニヤリと笑う。それはルルーシュの彰に対する、カレンとは違う意味での信頼。彰がこんな所で死ぬはずがないという確信だった。
「やれやれ…信頼されたもんだ。俺がその信頼に応えられなかったらどうすんだ?」
「簡単だ」
迷うまでもなく、ゼロは即答する。
「骨は拾ってやる」
「上等だ」
笑いながら彰は、草壁に剣の先を向けながら走り出し、そのまま突きを放つ。だが、その突きも草壁はギリギリで躱し、カウンターを仕掛けてくる。
しかし、彰もカウンターが繰り出されることを読んでいたのか、楽々と躱す。
そこからは彰の怒涛のラッシュが始まる。普段の適当な様子からは想像もつかないほど洗練された剣術は、徐々に、しかし確実に草壁を捉えていく。
そして遂に彰の剣が草壁の腕を浅く切り裂いた。それを皮切りに彰の剣は、完全に草壁の身体にダメージを与えるようになった。
このままなら勝てると手を握りしめて応援していたカレンは思ったが、草壁もそこまで甘くはない。調子に乗るなと言わんばかりにダメージを覚悟で一歩踏み出し、守るどころか攻撃に転じ始めた。
あっという間に攻守は逆転し、今度は草壁が迫る立場になっている。
少し落ち着きたいと考えた彰は何とか距離を取り、一息をつく。
「全く…面倒臭い人だぜ本当に。こんなことしたいなら藤堂さんか朝比奈さんに頼めよ。俺はやりたくないっつってんだこのヤロー」
「練習ならそうだろうな。だが殺し合いなら別だ。普段本気にならない貴様も、殺し合いなら本気にならざるを得まい」
「ちっ。たく、疲れたしボロボロだしやってられねぇよ。労災おりるんだろーなこれ」
減らず口を叩いているが、草壁にも彰にもそれほどの余裕はない。
身体はボロボロ。疲れはピーク。それほど長い戦いをやり抜くだけの体力は最早ない。
だとすれば次が最後になる。生きるか勝つか。二つに一つ。他の選択肢はあり得ない。
タイミングを計った訳ではない。だが二人が走り出すタイミングは不思議と重なった。
互いの剣の間合いに入る前に何を思ったか、草壁は持っている剣を彰に向かって投げつけた。
予想外だったが、長年の経験からか彰は確実に防いだ。しかし、その間に草壁は彰の間合いに入り込み、拳で攻撃を繰り出す。
流石に躱しようがなくモロに攻撃を喰らう。弾き飛ばされた彰は距離を取ろうとするが、許されるはずもなく、連続で拳の攻撃を喰らう。
素人の拳ではなく、長年戦場に身を置いてきた草壁の拳である。喰らっている彰の意識は何度か飛びそうになるが、舌を噛むことで何とか意識を保ち、反撃の蹴りを放つ。
そこで生じた隙に彰は斬りかかるが、迎撃せんと地面に刺さった自らの剣を取り、草壁も斬りかかる。
剣のスピードは草壁の方が早かった。確実に自らの刃が先に届くと分かった草壁は、勝ちを確信して声を張り上げる。
「桐島ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
だが
「何!?」
とんでもない反射神経で、彰は自らに迫る草壁の刃を回避する。
そこで、この一撃に全てを全力を込めていた草壁に少し隙が生じた。
その隙に彰が一歩踏み込む
「悪いんだけどよ、草壁さん」
踏み込むと同時に身体を回転させ、攻撃態勢を整えた。
その直後
「約束してんだよ。次の誕生日を祝ってやるってよ。だから
ここで終わる訳にはいかねぇんだ」
彰の刃が深く草壁に突き刺さった。
屋上での会話
玉城フェミア「い、井上!こ、ここまでリアルにやることねぇんじゃねぇか?何かマジに突き落とされそうな気がして怖えんだけどよ」あと一歩進んだら屋上から落ちる状態
井上「あら、気のせいよ」後ろで拳銃を構える役
玉城フェミア「だ、だよなー、そんな訳ねぇよな!」ホッと一息
井上「本当に突き落とす気だもの」ニッコリ
玉城フェミア「い、井上さぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!??」
井上「良かったじゃない。そこまでして欲しかったユーフェミアの服と共に死ねるんだから」
玉城フェミア(このままじゃマジで殺されるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!ゼロ!カレン!扇た、助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!)ガチ泣き