ちょっと?変わったコードギアス   作:はないちもんめ

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書いてて思った…ウチの原作主人公なかなか面倒臭えなぁ


60 変わったと思ってもなかなか人は変わらないもの

「ねぇ、答えてルルーシュ…貴方にとって私は何?」

 

外では月が顔を出し始めた頃。アッシュフォード学園のゲストルームでは、赤毛の少女が涙目になりながら、目の前の男に問いかけていた。

 

貴方にとって自分は何なのかと。自分はどんな存在なのかと。

 

そんな必死の問いかけに答えるどころか目も合わさないで、男はチェス盤に向かいながら何かを考えていた。

 

そんな男の様子は怒るでもなく、少女は続けた。

 

「私…貴方となら…ねぇ!答えて!」

 

熱を帯びてくる少女の言葉に、流石の男も無視を続けることの無理を悟ったのか、頭痛を堪えるようにコメカミに手を当てながら答えた。

 

「…彼女ということになるだろうな」

 

「そうよね…だったらこんな問題…大したことじゃないじゃない」

 

「無理だと何度も言っているだろうが」

 

「どうして…どうしてなのよ!」

 

少女の目から涙が溢れ出した。信じていたのに。彼なら分かってくれると。なのに何故…何故…

 

「どうして…彼女なのに…一緒に住むのを認めてくれないのよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「お前こそ何度言ったら分かるんだ!彼女だからって一緒に住む訳ないだろうが!」

 

(こいつらこのやり取りを何度やれば気が済むんだ?)

 

泣きながら頼み込むカレンと、それを平然と断るルルーシュと、それを見ながらピザを食べるC.C.。

 

何時も通りの平和な一幕だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良い加減、住まわせてやれば良いだろう。あいつの性格上、認めてもらえるまで諦めないぞ」

 

「簡単に言うな。そんなアッサリと認めて良い問題ではない」

 

結局何時も通り認めてもらえず、泣きながら「鬼!悪魔!童貞!」と叫びながら帰って行った。最後の言葉は自分にとってもブーメランな気もするが、気にしてはいけない。

 

ふうっと溜息を吐きながら、当たり前のようにルルーシュの部屋にいるC.C.の言葉に答えるルルーシュ。このやり取りは何度目だろうか。もう数えるのも面倒になってきた。

 

「論理より感情で動くのはカレンの欠点だな…まあ、それが良いところでもあるが」

 

「お前もそうだろう」

 

「何?」

 

予想外のC.C.の言葉にルルーシュは眉をしかめる。

 

「本当にカレンをこの家に住まわせないのは、アイツの兄の存在がバレる可能性が高くなるからというだけか?」

 

「当然だ」

 

「嘘だな」

 

「何?」

 

「お前は万が一を考えて、カレンの兄を安全な病院に移せるように仕掛けはしている。そうであるならば、カレンが此処に住んだ所で特に問題は無いはずだ…怖いのか?これ以上、自分の内面にアイツが踏みこんでくることが」

 

「…ふん。馬鹿馬鹿しい」

 

C.C.の言葉を鼻で笑うと、ルルーシュはC.C.に背を向けて、もう寝るから部屋から出ていくように伝える。

 

C.C.もルルーシュの言葉に反論するでもなく、ボソッと一言だけ言い残してから部屋を出て行った。

 

一人になったルルーシュは、寝るためにベッドに潜り込むと、何故か先ほどC.C.が言い遺した言葉が頭の中に反響する。

 

(お前がそれで良いなら私は構わないさ。私はお前の共犯者だからな)

 

その言葉にルルーシュは苛立ちが募る。何故か最近イライラすることが増えた。プライベートも黒の騎士団の活動も順調なのにも関わらずだ。ルルーシュにとっても理解できない心理状態である。

 

だが、その言葉は正確には違う。ルルーシュは何に対して自分が苛ついているのかは理解している。本当に分からないのは、何故自分がそのことに対して苛ついているのかだ。

 

(それで良いなら?良いに決まっているだろう)

 

そんな心理状態だからこそ、何時もなら気にもしないだろうC.C.の言葉を思い出した。どう考えても自分が正しいにも関わらずにだ。正しいからこそ、カレンも諦めないとはいえ何時も渋々とシュタットフェルト家に戻るのだ。

 

(彰の奴なら何と言うだろうな…)

 

一瞬でも、そう考えた自分をルルーシュは恥じた。そんなことを考えてどうする。人の意見など知ったことか。論理的に正しいならば、アイツの意見などどうでも良いはずだ。

 

「くそ!」

 

思わず声を出して嫌な考えを振り払おうと、布団の中に頭を潜り込ませて何とか眠ろうとするルルーシュ。

 

自分は間違っていない。

 

心の中でそう叫びながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいませんルルーシュ様。わざわざ買い物にお付き合いくださって」

 

「いえ。特に用もなかったので構いませんよ」

 

申し訳なさそうに謝る仁美にルルーシュは笑顔で答える。

 

特に予定もない週末。家でゆっくりとナナリーと触れ合いながら、今後の戦略でも練ろうかと思っていたルルーシュであったが、突然ナナリーから仁美の買い物に付き合ってあげてくれないかと頼まれたのだ。

 

今まで仁美からそんなことを頼まれたことがないルルーシュは、少し不審に思ったが、断る理由もなかったので付き合うことにした。

 

付き合うことで仁美の要領の悪さを見て苦笑いすることも多かったが、仁美の人間性はルルーシュにとって好ましいものであったので、一緒にいることは多少のリフレッシュにもなった。(そもそも、何だかんだ言っても世話好きなので、要領の悪い人間を助けるのは嫌いじゃなかったりする)

 

その後買い物が終わり、二人は近くのカフェで腰を下ろす。ルルーシュが手伝ってくれたので買い物も早く終わり、仁美は心からの感謝をルルーシュに告げた。

 

「ありがとうございます、ルルーシュ様。おかげで何時もより早く買い物が終わりました」

 

「それは良かった」

 

ニコリと微笑むルルーシュに、仁美も笑顔を向ける。

 

平和な時間だった。特に会話で盛り上がるという訳でもないのだが、こういう何もない穏やかな時間は、ルルーシュにとっては癒される時間だった。心に刺さっているトゲが抜けるには至らないが。

 

「気分は…完全には晴れていないようですね」

 

ピクリとルルーシュの眉が動く。しかし、自身の動揺がバレないように、平静を装いながらルルーシュは会話を続ける。

 

「何の話です?俺の気分は至って良好ですよ?」

 

「隠さないでも大丈夫ですよ、ルルーシュ様。ナナリー様やカレンに言ったりしませんから」

 

しかし、ニコリと微笑みながらルルーシュの言葉を否定する仁美に、隠し通すのは無理だと判断した。カレンやシャーリーが相手なら、最後まで誤魔化し通すのだが、仁美が相手だとどうにも勝てない気がするのだ。

 

カレンの母親の母性が凄いのか、ルルーシュのマザコンが凄いのか、判断に困る場面である。まあ、両方なのだろう。

 

そんなこともあり、実は仁美はルルーシュにとって最も勝てない相手なのである。

 

「隠すのは上手い方だと思っていたんですけどね…そんなに分かりやすいですか?」

 

「いえ、そんなことはありませんよ。ただ、母親をやっていて、隠し事を見抜くのが上手くなっただけです。ナオトもカレンもイタズラ好きでしたから」

 

過去を思い出すかのようにそう言う仁美を見て、ルルーシュは少しだけカレンが羨ましくなる。自身には、こんな風に自身の過去を思い出してくれる人はいない。

 

「隠し通せないはずですね。まあ、そんな大したことでもないので、仁美さんが気にするようなことはないですよ」

 

実際に大したことじゃない上に、仁美に言えるような内容でもない。

 

なので、ルルーシュは誤魔化すように微笑みながら、頼んでいたコーヒーを口に含んでいたのだが

 

「彰様と何かあったんですか?」

 

仁美の言葉で盛大に吹き出した。

 

余りにも驚いた所為でむせてしまい、ゴホゴホと咳をするルルーシュに謝りながら、仁美はルルーシュの背をさする。

 

「す、すいません!大丈夫ですか?ルルーシュ様?」

 

「い、いえ…大丈夫ですよ。と、ところで何でアイツが出てくるんですか?」

 

「何となくですが、最近のルルーシュ様の態度を見てそうではないかと。その様子だと当たりみたいですね」

 

これで違うとも言えず、関係ないと突き放すのも憚られたルルーシュは、内容をボカしながら告げた。

 

「別にアイツと何かあった訳じゃありませんよ。ただ…アイツと俺の共通点を見つけただけです」

 

「ルルーシュ様と彰様って似てますものね」

 

「幾ら仁美さんでもその発言は許せません。撤回してください」

 

あんな迷惑な動く人間台風と似ているなど、断じて認めない。そんなルルーシュの鬼気迫る表情を笑いながら躱した仁美は、ルルーシュに続きを促した。ルルーシュも納得していないながらも続きを話す。

 

「過去に似たようなことが俺とアイツにはあったんですよ。ただ、にも関わらず、アイツは俺と正反対な道を選んだ。それが全く理解できないだけです。アイツの考えが俺には理解できない」

 

そこまで言って、再びルルーシュの頭にあの出来事がフラッシュバックする。

 

何故アイツは自身の育ての親の仇を許せる。アイツなら復讐できたはずだ…泣くしかない他の有象無象とは違って、アイツにはそれを成すだけの力があった。

 

にも関わらず、アイツは復讐をしなかった。それ所か助けようとしていた。

 

それがルルーシュには理解できなかった。大切な存在を奪われる苦しみを、ルルーシュは知っている。どれだけ悲しいか。どれだけ会いたいと願うか。どれだけ殺した相手を恨むか。

 

母親が殺されたあの日から、ルルーシュの心の奥の復讐の炎が消えたことはない。過ぎ去った年月がルルーシュの心を癒したことなど一つもない。何一つとして忘れてはいない。

 

だからこそルルーシュは、復讐と残されたナナリーのために生きてきた。それ以外はルルーシュにとって不要だった。信じれば裏切られた。だからこそ人を信じてこなかった。その考えは今でも変わっていない。

 

だが

 

『くっくっくっ。良かったなルルーシュ。お前は信じていないかもしれんが、お前のことを信じている者が、少なくとも二人はいる。手始めに…その二人のことは信じてみないか?』

 

過去の映像がフラッシュバックする。ルルーシュはその時出せなかった自分の手を見つめる。恐らく彰であれば掴んでいたであろう手を。自分は掴むことができなかった手を。

 

(あの時…差し出された手を掴んでいれば…何かが変わったんだろうか…)

 

そんなことを考えて顔をしかめるルルーシュを見て、仁美は暫く考えて言葉を発した。

 

「ルルーシュ様は…ご自身の選択を…後悔なさっているんですか?」

 

「…まさか。そんなはずありませんよ」

 

後悔などあろうはずがない。あの時の憎しみは本物だった。どう考えても、あの男を。ブリタニアを。許せるはずがない。

 

俺は間違っていない。

 

ルルーシュは、自らが間違っているかもしれないとは考えることができない。それはルルーシュの存在の否定に繋がる。今までの人生の否定に繋がる。

 

そう結論づけたルルーシュは、話を終わらせるために、何時もの微笑みの仮面を被りながら席を立つ。その仮面は、今までルルーシュの心を他者の侵攻から守ってきた。人を信じられなかったから。人を信じたくなかったから。だが本当のところはそうじゃない。

 

ウラギラレタクナカッタカラ

 

ルルーシュはそのまま会計をするために仁美に背を向けるが、その背中に仁美は声をあげた。

 

「ルルーシュ様…ルルーシュ様が何に悩んでいるのか私にはわかりません。ですが…話せる時がきたら話してください。私は何があってもルルーシュ様の味方です」

 

仁美のその言葉は、ルルーシュの笑顔の仮面にヒビを入れる。だが、凝り固まったルルーシュの心は、そのヒビを即座に塞ぎにかかる。

 

仁美がそう言うのは、ナオトをルルーシュが助けた理由を知らないからだ。

 

本来であれば、ルルーシュがナオトを見殺しにしていたことを知らないからだ。

 

ルルーシュがブリタニアの皇族であることを知らないからだ。

 

これらの事実が知られれば、仁美はルルーシュの側から離れるだろう。俺たちの関係は、そんな嘘で作られた虚構の関係。そんな奴の言葉を信じて良いはずがない。

 

完全に修復された笑顔の仮面を再び貼り付けたルルーシュは、振り返って答える。

 

「ありがとう仁美さん。頼りにしていますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会計を終えたルルーシュが仁美の所に戻ると、仁美の近くに、長身で筋肉質な金髪の、ブリタニア人と思われる青年が立っていた。

 

その様子を見て、少し早足でルルーシュは仁美の側に急ぐ。

 

仁美は日本人なので、差別主義的なブリタニア人に絡まれることが多い。(まあ、ルルーシュや彰の前でそんなことをやったら、とんでもないカウンターが返ってくるのだが)

 

「すいません、私の連れなのですが何か御用ですか?」

 

そう言って仁美と金髪のブリタニア人の間に入ったルルーシュは、ブリタニア人を牽制する。

 

しかし、そのブリタニア人はルルーシュに対して、何も言わずに立ち続けていた。

 

その様子にルルーシュは眉をひそめる。

 

(何だコイツは?何かを言う訳でもなく、睨みつける訳でもない。一体何のつもりなんだ?)

 

自然とルルーシュの警戒心は上がっていく。気付けばルルーシュの額には汗が浮かんでおり、目の前のブリタニア人の一挙手一投足に注目していた。周りの騒音がやけに遠く聞こえる。昼下がりの平和なカフェが、一瞬で別の雰囲気に変わった。

 

まあ、もちろん

 

「オボロロロロロロロロォォォォォォォ!!!」

 

ギャグに変わっただけなのだが。

 

金髪のブリタニア人は、目の前のルルーシュに向かって思いっきり大量のゲロをぶっかけた。少し後ろで見ていた仁美は、あらまあと言わんばかりに、口を手で押さえてその様子を見ていた。

 

ゲロをぶっかけられたルルーシュは、ぷるぷると怒りで震えていた。そんなルルーシュの様子を全く気にかけず、吐くだけ吐いたブリタニア人はスッキリとした様子でルルーシュに礼を言った。

 

「いやあ、悪い、悪い!ナイトメアに乗るのは平気なのに、何故か他の乗り物だと酔いが酷くてさあ!到着してからずっと調子が悪かったんだよ。吐くだけ吐いてスッキリした!」

 

「そうですか、それは良かった。なら、俺からもお礼をしないといけないですね」

 

ゲロまみれのルルーシュは、ニコリと微笑んだかと思うと、次の瞬間には目に謎の模様を浮かべて手を掲げた。

 

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。貴様は死「お待ちください、ゲローシュ様!お気持ちは分かりますが、何となくそれはしてはいけない気がします!」誰がゲローシュですか!!離してください!」

 

しかし、ルルーシュがとんでもない行動をしようとしていることを何となく悟って、慌てて仁美が止める。その騒ぎは、金髪のブリタニア人の連れの女が到着するまで続いた。

 

 

 




あったかもしれない会話

彰「仁美さんって居るだけで他人を癒す感じがあるよな」

カレン「昔からそういう感じがあるのよねぇ」

C.C.「年の功というやつだな。お前らのような子供にはないものだろう」

彰・カレン「「じゃあ、お前は頑張れよババア」」

三人による乱闘が開始されたので会話終了

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