~前話から三週間後~
「全然見つからねえ……無理だろ、こんなの」
リョウとユキヤから頼まれて紅月ナオトとかいうイケメンを保護してくれる場所を探しているがまるで見つからない。希望すら見えてこない。
「何時目が覚めるか分からなくて、日本人でテロリストで実績がない男を預かってくれる、とても親切で安全な場所に住んでる人がいる場所だと?あるかよ、そんな場所」
最初から無理なんだよ、こんなん。
ていうか、そんな場所があるなら俺が住まわせて貰うわ。
何故俺がこんな苦労をして、会ったこともないイケメンの世話をせにゃならんのだ。
あー、何だか空しくなってきた。
一応、万が一を考えて藤堂さんと片瀬さんに頼んだけど予想通り駄目。
他にも卜部さんから聞いた日本解放戦線と関わりが深い組織とかにも聞いてみたけど、それも駄目。
金で解決しようとしたが、そんなにリスクに見合う金を持ってる訳がねえ。
一応、一ヶ所だけ心当たりみたいな所がないわけではないが、あの人にも立場があるし、何よりあの人に貸しを作ると利子がとんでもないことになりそうだから、やだ。
やべぇ、本当につんだな。後、一週間あるけど頼める心当たりがない。
「てか、やっぱり、日本人じゃあ無理だな。何時ブリタニアに攻撃されるか分からんから、あんな怪我人を養う余裕はないだろうし。だとしたら、ブリタニア人に頼むしかねーけど、俺にそんなことを頼めるブリタニア人の知りあい何て……知りあい何て……あ。」
『この借りは何時か必ず返す』
そういえば、一人だけいたな。
~アッシュフォード学園~
「ルル!また、授業をサボって掛けチェスに行ってたでしょ!駄目だって何回も言ってるのに!」
「大丈夫だよ、シャーリー。出席日数はきちんと計算してる」
「そういう問題じゃないでしょ!」
「あははー、怒られてやんの」
「リヴァルも!そもそも、リヴァルがルルを連れていくからこんなことするんでしょ!」
ここでは何時も通りの日常が流れていた。
しかし、この日常が作られた平和であることを知っていたルルーシュにとっては、かけがえのない時間であり、そして、何時奪われるか分からない日常であるかが分かっていた。
「全くもう……そういえば、ルル。彰君から連絡来た?」
「いや、来ていないな。でも、その内来るかもしれないな」
「そうなんだ……面白い人だったから楽しみだな」
「相手はイレブンだってのに、相変わらずフレンドリーだねぇ。ルルーシュから乗り換えた?」
「ちょ!?リヴァル!そんなんじゃないから!」
じゃれあっている二人を楽しそうに見ながら、ルルーシュは桐島から、もう連絡はないだろうと考えていた。
(犯罪者のあいつが学生のブリタニア人の俺たちに連絡を取るのは難しいだろうな。なかなか、使えそうな奴だったし出来れば使える駒にしたかったんだが)
桐島が去った後、ルルーシュはブリタニアに反逆をする期間を早めようかと考えたが、どれだけ考えてもまだ準備不足の感は否めなかった。
必ず借りは返すと言った言葉に嘘はないが、次に会うときまでに桐島が生きてる可能性は低いだろう。
(例え、奴が死んだとしても借りは返してやるさ。奴の夢の日本解放を俺がやるという形でな)
そんなことを考えていたルルーシュに栗色の髪の可愛らしい女の子が近づいてきた。
「ルルーシュ君。久し振りだね」
「……久し振り?申し訳ないが、君とは初対面だと思うんだけど?」
「そんなことないよ。ルルーシュ君が忘れたとしても私は、はっきり覚えてる」
そんなことを言われてもルルーシュに見覚えは全くない。
自分の記憶力に自信のあるルルーシュは、謎の女の目的を考えて脳をフル回転し始める。
(何者なんだ?この女は?)
そんな二人の様子に気付いたリヴァルとシャーリーは喧嘩を止めて飛んでくる。
「ちょ、ちょっとルル!誰よ、その子は!?」
「メッチャ可愛い子じゃん!お、おいルルーシュ!紹介しろって!」
その二人の反応で公衆の面前であることを思い出したルルーシュは即座に頭を切り替えて、何時も通りを装って話始める。
「いや、俺には全く見覚えがないんだよ。彼女の勘違いじゃないかな?」
「そ、そんな!酷い……」
ルルーシュの言葉に女の子はポロポロと涙を流し始める。その反応に思わずルルーシュも驚くが知らないものは知らないのだ。
しかし、端から見たら唯の女泣かせの男の図だ。
「おいー!!ルルーシュ!何を泣かしてんだ!」
「そーだよ、ルル!ここまでしてる女の子を知らないわけないでしょ!」
「い、いや。そんなこと言われても」
「酷い……酷いよお……」
女の子は顔を手で覆う。
「二人で話したあの夜を……忘れたって言うの?」
「は!?」
「よ、夜!?ルル!もしかして……」
「お前まさか……」
「ま、待て!誤解だ、誤解!」
このままでは、自分の学園での立場が不味いことになってしまう。
そう考えたルルーシュは泣いている女に人違いだと話しかける。
「ゴメン。悪いけど、俺には本当に心当たりがないんだ。人違いってことはないかな?」
「そんなことないよ……だって……だって、あなたはあの時
「この借りは何時か必ず返す」って言ってくれたもの」
そんなことをルルーシュはこの女に言った記憶はない。このセリフを言ったのは……まさか。
最悪の自分の想像にルルーシュの顔はひきつる。
ここまで自分の頭の回転が早いことを呪ったことはなかった。間違いであって欲しかった。
「なあ、君?」
「はい」
「もしかして、君と始めて会ったのは一ヶ月くらい前かな?」
「はい!思い出して頂けたのですね!」
「……俺が君に作ったデザートは何だったっけ?」
「タルトですわ。お忘れになりましたの?」
ルルーシュの膝が崩れ落ちる。何やら、シャーリーも錯乱しているようだが、そんなことを気にしている場合ではない。
ルルーシュは執念で立ちあがり、笑顔で女の腕を掴む。
「ああ、ゴメン。忘れていた。そうか。そうだったな。お前だったのか。久し振りに会えて嬉しいよ。思わずこの場でブチコロシテやりたいくらいに」
「やっだー、もう。ルルーシュ君てばー。照れ屋なんだから」
コツンと自分の額を叩いてくる女は、傍目から見たら可愛いだろうがルルーシュは殺意しか覚えない。
殺意で人が殺せたら、ルルーシュはこの女を殺しまくっている。
「ははは。本心なんだけどな。それじゃあ、ちょっと屋上まで来てくれないか?」
「いいわよ?貴方となら何処までも」
気色悪いことをほざく奴の顔面を叩き割りたくなったが、鋼の精神で押さえつけ、ルルーシュは女を連れて屋上へと上がっていく。
一方、どうでも良いことだが
「シャーリー!落ち着け!死ぬにはまだ早いって!」
「止めないでリヴァル!私はもう生きる希望が!」
色々と余裕がなかったルルーシュは窓から飛び降りようとしているシャーリーとそれを必死で止めるリヴァルに気付くことはなかった。
「こんな場所で二人きりになりたいなんて……私何かされるのかしら」
「その気色悪い変装と喋り方を止めろ、桐島彰。」
ルルーシュがそう言い睨み付けると桐島は笑いながら変装を脱いだ。
「いやあ、流石だねぇ。俺の変装に気付くとは。結構自信あるんだぜ?」
「どう考えても外見では分からん。お前がヒントを喋ったから分かったんだ。で?わざわざ、変装までして何の用だ?」
「いやー、ロリコンのお兄様なら、こういう格好で来た方が喜ぶかなと、おーけー、冗談だ、ルルーシュ。だから、警察に電話をしようとするな」
無言で携帯を取り出したルルーシュを慌てて説得する桐島。ルルーシュは、その姿を冷めた目で見て言う。
「たまには真面目になれ。で?本当に何の用だ?」
「いやー、それなんだがよ」
言い辛そうに頭をかく桐島。その姿にルルーシュはイライラしてくる。
「早く喋れ。頼みごとなら、残念なことに、本当に残念なことにお前には借りがあるからな。できるだけ叶えてやる。」
「んー、じゃあ、喋るけどよ」
一転真面目な顔になり、桐島は続ける。
「お前の家で日本人で意識不明なテロリストの男を匿うことってできる?」
「はあ?」
さしものルルーシュにも全く想定外の願いだった。
コードギアスの続き早く始まって欲しいですね。