ちょっと?変わったコードギアス   作:はないちもんめ

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シリアス「おい、俺の出番は?」

シリアル「ちゃんとあったでしょ?」

シリアス「もっとちゃんとした出番を寄越せ!」


72 人は皆良いところと悪いところを持っているんだよ

真っ暗な密室。女はそんな逃げ場のない場所で男に追い詰められていた。

 

他の何人かの女性達は、狙われたのが自分でなかったことに束の間の安堵を感じていた。明日は我が身ではあるのだが。

 

分かっていたことだ。奴隷商人に捕まった段階で、自分の身が無事で済むことがないということくらい。

 

だがせめて…せめてもう一度だけでも…

 

(お父さんとお母さんに…会いたかったなぁ…)

 

そんな思いに襲われた女は瞳を涙で濡らす。だがその涙を見ても、男はニヤリと笑ったまま近づく歩みを止めない。

 

「今更泣いたくらいで逃げられねぇよ。助かりたければ…分かるよな」

 

「…はい」

 

「良い度胸だ。なら早速」

 

全てを諦めた女の服に男が触れた。その瞬間

 

「「じゃねぇだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ(ないですぅぅぅぅぅぅぅぅぅ)!!!!」」

 

「トゥファー!!!」

 

男(彰)は後ろから、レイラとアヤノに後頭部に飛び蹴りを喰らって弾き飛ばされた。

 

 

 

 

 

「…え?」

 

突然の展開に女達は戸惑いを隠せないが、構わずにレイラとアヤノは痛みで頭を抑えている彰に向けて罵倒を続けた。

 

「助けに来た人が何してるんですか!?良い加減に削ぎ落としますよ!?」

 

「お前が悪役だろうがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!何をしにここまで来たんだお前は!!」

 

完全に激怒しているレイラとアヤノの言葉が届いているのかどうかは不明だが、彰は女性の魅力に戦々恐々としていた。

 

「くっ。コレが魔性の女ってやつか…恐ろしい女もいたもんだぜ…俺のオリハルコンの理性をこうもあっさりと砕いちまうとは…」

 

「布の服より弱い理性が何を言いますか!」

 

「耐久性がスライム以下だろ!!」

 

「テメェ、スライム馬鹿にしたろ!アイツらだって頑張ってるんだからな!最近だと漫画化もされたくらいだからな!見てないから詳しくは知らんけど!」

 

「貴方スライムの何なんですか!?」

 

突然始まって今もなお繰り返される3人のコントに、色々と覚悟をしていた女性は何が何やら分からず呆然としていたが、我に帰ると恐る恐る尋ねた。

 

「あ、あの…貴方達は一体何を…?」

 

「ああ、気にしないでくれ。見苦しい所を見せたな」

 

女性の言葉を聞いた彰はレイラとアヤノとの喧嘩をやめて女性を真摯に見つめた。

 

「君だけじゃなくて、ここにいる他の人にも関係がある話だ。今から俺がアンタらをここから逃す。逃げたい奴はサッサと逃げろ」

 

彰の発言に女性達のざわめきが広がる。当たり前の話だ。これから奴隷のように扱われて死んでいくとしか思っていなかった所に救いの光が差し込んできたのだから。

 

そのざわめきを抑えるために、彰は手で落ち着くように指図してから続ける。

 

「静かにしろ。見つかりたくなかったらな。ま、それは俺が勝手にやるから関係ない話だ。問題はここから逃げた後。生きてくのには金が必要だろ?だから俺は思ったんだ」

 

彰は真面目な顔のまま、この場に捕まっていた女性達を順に見る。

 

「誰か俺とセ○レになりたい奴はいないか?」

 

「「居る訳ないでしょう(だろう)が!!!」」

 

再び同時に繰り出されるレイラとアヤノのかかと落としに彰は地面に沈むが、流石に痛かったのか、先ほどよりも怒りながらレイラとアヤノに文句を入れる。

 

そんな二人を見ながらこの場で捕まっていた全員が思った。

 

(これは一体何なんだろう…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜今から30分前〜

 

 

「に、人間て…そんなまさか」

 

あり得ませんよねぇとでも言わんばかりの顔で、アンナは周りを見るが、アンナ以外の全員の顔は笑っていなかった。否定する材料がなかったからだ。

 

「…そう考えた根拠は?」

 

誰よりも真剣な顔でレイラは彰に問いただす。もし、それが事実であれば見過ごすことなどできない。

 

「聞いた上に見たからな。間違いようがねぇよ。ま。より正確に言えば入ってるのは日本人の女数人だがな」

 

「どうやってですか?こう言ってはなんですが、貴方は部外者です。その貴方にそんな情報を渡す者が居るとは思えません」

 

「そりゃお前、自分の組織を評価し過ぎだ。方法によれば、口を割らせる手段なんて幾らでもある。まあ、俺が情報収集するのが得意だってこともあるけどな」

 

真剣な面持ちのレイラに対して耳をほじりながら、彰は適当そうに答える。

 

はっきり言って信憑性が薄い話だが、アレが補給物資などという話よりは信憑性が高いとレイラは判断した。違うなら違うで別に良い。だが、万が一にもそれが本当だった場合にレイラは備えなくてはならない。

 

そう判断したレイラは彰に背を向けて何処かに歩き出す。その行動を予想していた彰は無言でレイラの隣を歩いて行く。

 

彰が何故付いてくるのか理解したレイラは少し困った顔でお願いをする。

 

「すいません、桐島さん。これはEUの問題です。桐島さんを巻き込むわけにはいきません」

 

「つれないこと言うなよ。俺も参加するぜ。どうせ非合法で女を連れ込んでやることなんて決まってる…つまりは…だ」

 

そう言うと彰は持っていたエロ本を放り投げて、腕まくりをする。

 

「今から行けば俺もそのパーティーに参加できるってことだよな!良し、行くぞ」

 

「違いますけど!?」

 

予想の斜め上どころか別次元に飛んで行く彰に、レイラはシリアスを忘れてツッコミを入れてしまう。

 

「隠さないでも良いさ。俺が間違ってたんだ。この年でエロ本で我慢する必要ないよな。目の前にパラダイスが広がってるんだから」

 

「いや、それ貴方の前にだけ広がってますから!他の人には見えませんから!」

 

「え?何?そうなの?皆、見えてないの?向こうに輝くあのラピュタが見えてないの?」

 

「そのラピュタ欲望でできてますよね!?夢も希望もないですよね!?」

 

「夢も希望もないかもしれない…だが、そこにエロがあるのなら歩みを止めない。それが男というものだ」

 

「かっこ良い感じで言ってますけど、内容はクズですからね!?」

 

トンチンカンなことしか言わない彰に、それどころではないと悟ったのか、レイラは彰を無視して歩みを進める。だが、その背中にクラウスが声をかけた。

 

「何処行くの?ラピュタの所?ちゃんと飛空石持ってる?」

 

「どんな注意してんですか!?責任者の所ですよ!事実を問いただしてきます」

 

「ラピュタじゃないなら無駄だよ。やめときなさい」

 

上の者に直訴してでも止めようというレイラの足は止まったが、レイラにしては珍しく、完全に怒りを込めた瞳で上司であるクラウスを睨みつける。

 

「何故止めるんですか!人命がかかってるんですよ!?」

 

「何も変わらないからだよ。薄々は君も気付いてるでしょ?偉い人達にとって、日本人に人権なんてないんだよ」

 

そのクラウスの言葉にレイラの思考は停止する。確かに薄々は勘付いていたことだが、ここまで明確に言われると中々に響くものがあった。

 

「そ、そうかもしれません!ですが、言い続ければ何時かは!」

 

「その間に私たちは死んでるさ」

 

レイラの言葉にアヤノは自嘲気味に笑う。お前は何も分かっていないという言葉を暗に含みながら。

 

「私たちにとって何時かなんて言葉に救いはないんだよ。助けて欲しいのは今だ。まあ、無理だろうけどな。私たちなんか助けたって、お前たちにとっては何のメリットもない。そんなことをするなんて、余程の大馬鹿野郎だよ」

 

「そ、そんなことは」

 

何かを諦めているアヤノの言葉に、アンナは反論したかったが出来なかった。今の自分の立場や周りの人間を巻き込んで日本人を助けることができるかと言われれば、出来るとは言えないと思ったからだ。

 

「ま。そうだろーな。どう考えてもレイラの考えは理想論だよ」

 

話が一区切りしたのを見計らって彰も会話に加わるが、その内容はレイラを肯定するものではなかった。

 

しかし

 

「…理想だからなんだって言うんですか?」

 

「あん?」

 

だからと言って、それはレイラが諦める理由にはならなかった。

 

「理想だってことくらい分かっています。ですが、私はその理想を叶えるために軍人をやっているんです!それを諦めてしまえば軍人である意味がありません!」

 

レイラは自分の言うことが夢物語だと知っていた。だが、そんなことは関係ない。自身が望んだなら。それが間違っていないのならば、その夢を諦める理由にはならなかった。

 

そして、そのレイラの瞳の輝きは彰に過去の誰かを思い起こさせたが、打ち消すように首を振って話を続けた。

 

「難儀な女だな…何年かける気だよ」

 

「一生をかけてやり遂げます」

 

「大した覚悟だが…そんな時間をかけたらアヤノが言う通り、間違いなくあそこの女連中死ぬぞ」

 

彰はそう言って、元々の話の主題である女達が閉じ込められている箱に指を指す。それを見てウッとレイラは声を漏らす。それへの対処法はないのだろう。

 

その事実に彰はため息を吐く。典型的な理想を追うお人好しだ。全く本当に…

 

(何であの二人を思い出しちまうかねぇ…)

 

全く似てはいないはずなのだが、思い出さずにはいられない。自身が殺したあの二人を。

 

そして更に思い出す。自身を救い上げてくれたあの人の言葉を。

 

『死ぬ暇があったら、そいつらの夢でも叶えてみせろ!ただ無駄死にするよりも、よっぽど上等の生き方だ!繋いでみせろ!受け継いだその想いを!』

 

(今がその時だってーのかい…?千葉さん)

 

答えてくれるはずのない過去に、彰は問いを投げかける。その姿を見たレイラは首を傾けるが、それを無視して彰はサッサと歩き出した。

 

「ちょ!?ど、何処行くんですか!?」

 

「ラピュタの所だよ。しゃーねぇから、ここは俺が何とかしてやる。お前のクセェ夢を聞いた駄賃ってことにしといてやるよ」

 

その言葉に驚いたのはレイラよりもアヤノだった。

 

「そ、そんなことしてお前に何の得があるんだよ!?知り合いでも居るのか!?」

 

「居る訳ねぇだろ」

 

「じゃあ、何で!?そもそもどうやって!?」

 

「一辺に聞くんじゃねぇよ。それにどうやってってお前」

 

そこまで言うと、彰はニヤリと笑って振り返るが、そこには彰の顔はなかった。

 

「EUの軍人が入れない道理はねぇだろ?堂々と正面突破だよ」

 

それからの彰の行動は素早く、ラピュタの所まで辿り着くと、そこにいる門番に賄賂を渡した。すると、文字通りあっという間に門番はそこから居なくなった。

 

それから、堂々と中に入る彰を心配して近くから見ていたレイラとアヤノも、一緒に中に入ったのだった。

 

 

 

 

そして現在に戻る。

 

 

「さあ、皆さん逃げる準備をしてください。今ならまだ間に合います」

 

現実を受け入れられずに呆然としている女達に、急いで逃げるようにレイラは促す。だが、それに待ったをかけるように彰は言う。

 

「待て待て。このまま逃げても捕まるだけだ。おい、アヤノ。頼みがある」

 

「え?」

 

この展開で頼まれるとは思っていなかったアヤノは流石に驚くが、即座に冷静になって耳を傾ける。

 

「お前、こんなに普通にここに入ってこられるってことは、何か抜け道でも知ってんだろ?悪いけど、この女達連れてそこから逃げてくんねぇか?」

 

「い、いや確かに知ってるけどそんな万能な道でもない。こんな昼間に大人数で向かったらバレるに決まってる」

 

「そうか。なら問題ないな」

 

アヤノの否定に近い返事にも関わらず、彰は全く問題ないかのように悠々と出口へと向かう。その姿に慌てたアヤノはすぐさま声を上げる。

 

「お、お前話を聞いてたのか!?私は無理だって言ったんだぞ!?」

 

「知ってる。要するに昼間だと目立つから無理だってことだろ?」

 

「あ、ああ。そうだよ」

 

「だから問題ねぇんだ。要するに他のことを目立たせれば良い。見てろよ?」

 

そう言うと彰はニヤリと笑ってデータベース出口に立ち、こう叫んだ。

 

「バルス!」

 

「いや、出てたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!お前何時までふざけてるんだ!?良い加減にし…ろ?」

 

完全に呪文を叫んだ彰にアヤノはツッコミを入れるが、最後まで言い切ることは出来なかった。何故なら、彰が出した手の先の建物の奥の方から、火の手が上がっていたからだ。

 

「嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!何でバルスで火が出てくるんだ!?お、お前まさか本当に呪文を…?」

 

「たりめーだろ?知らなかったのか?俺はシータの友達のいとこの彼女の兄貴だぞ」

 

「す、すごい!もう、ほとんど他人だけどシータって実在したのか…」

 

「いや、しませんよ!?ダメですよ、アヤノちゃんまで信じては!私もうツッコミきれませんからね!?」

 

本気でバルスを信じかけているアヤノに慌ててツッコミを入れたレイラはふうとため息を吐き、落ち着くと彰をジト目で見つめた。

 

「で?本当は何をしたんです?」

 

「さあな。俺は滅びの呪文を唱えただけだし?まあ、大方どっかでエロ本でも燃えたんだろ」

 

「エロ本って…まさか、貴方本当は最初から?」

 

「何のことか分からんな。おい、アヤノ急いで案内してやれ。借りは今度返してやるよ」

 

そう言われたアヤノが周りを見てみると、確かに突然発生した火事で周囲の注意がそちらに向かっている。今なら逃げることも問題なくできそうだった。

 

その事実にアヤノはマジマジと彰を見つめる。先程の言葉が事実だとすれば、彰はエロ本を手に取った段階で、ここにいる女の子たちを助ける気だったことになる。今は助けられた女の子達に泣きながらお礼を言われて、礼なら身体で払えと最低なことを言っている男だが、アイツはこいつらを助けるためにここにいたのだ。

 

(もしかして…こいつなら…)

 

そんな薄らと湧いた思考をアヤノは全力で振り払う。知ったはずだ。自分たちを助けてくれる人達なんていないってことを。自分たちは自分たちで助け合いしかないということを。

 

「…ああ、分かった」

 

「よろしくな。あと、ついでだ。受け取れ」

 

「わっと!な、何だよ?」

 

彰に放り投げられたビニール袋をアヤノは反射でキャッチする。中身が不明なのだが、これは何なんだろうか。

 

「貰っとけ。損はしねぇよ」

 

「…物凄く怖いけど、受け取っとく」

 

「良し、後は任せたぜ。俺はもう少し騒ぎを大きくしてくる。レイラ。お前はサッサと戻れ。怪しまれる前にな」

 

トントン拍子に進んでいく展開にレイラは呆然としていたが、自分一人だけ安全圏に置かれることになったので、急いで抗議の声を上げる。

 

「ま、待ってください!私も手伝います」

 

「いらねーよ。お前はお前の役目を果たせ」

 

「私の…役目?」

 

「変えるんだろ?この腐った世界をよ」

 

彰の言葉にレイラは驚きに目を広げるが、ニヤリと笑って彰は続きを話す。

 

「俺はテメェに賭けたんだ。こんな所でこけられたら困るんだよ。上手くいったら俺に可愛い子でもあてがってくれや」

 

そう言うと、彰はそのまま振り向きもせずに何処かに駆け出した。呆然とその後ろ姿を見ていたが、有言実行とはこのことだと体現するかのように、次から次へと騒ぎが広がっていく。一体何をしているのだろうか。

 

「レ、レイラ?大丈夫?」

 

そんなレイラの背中に少し離れた所からアンナが声をかけた。

 

逃げても問題ないのにわざわざ待っているとは、この親友のお人好しも相当なものだとレイラは苦笑いをする。

 

「問題ないですよ。私は何もしていませんし」

 

「そ、そんなことないと思うけど…それにしてもレイラって意地悪ね」

 

「何がです?」

 

「彰君のことよ。とっても優しくて頼りになる人じゃない」 

 

目を輝かせてそんなことを言うアンナに、レイラはため息を吐く。普段を知らないからそんなことが言えるのだ。

 

ぐうたらで適当でめちゃくちゃで、人の迷惑なんてカケラも考えない人物だ。とてもではないが、優しくて頼りになる人物とは程遠い。

 

だがまあ

 

レイラは彰が向かったであろう場所を見ながら、薄く笑う。

 

良い所があるのは認めてやっても良い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アヤノ「何だよこの袋の中身は?パンか?」バラバラと袋を開ける。

助けられた女A「手紙も入ってますよ」ペラ

『せっかく貰ったもんだから食ってやれ。お前にとっちゃ侮辱かもしれんが、あいつに悪意はないからよ』

アヤノ「…」

助けられた女B「どういう意味ですか?」

アヤノ「…本当によくわからない奴だな」ふん



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