シャーリー「え?何で?」
彰「気になる奴等がいたんでな。ちょっと顔出してくる」スタコラ
シャーリー(余計なことしかしないんだろうなぁ)
「リョウにアヤノにユキヤ。3人ともありがとうございます。わざわざ私の依頼を聞いてくださって何とお礼を申し上げれば良いか…そうだわ!良ければ今度遊びに来ませんか?お礼も込めておもてなしをしたいので」
「「丁重にお断りをさせていただきます」」
即答で断るリョウとアヤノにユーフェミアは項垂れるが、二人からしてみれば自分たちの命がかかっているのでそんなものに気を使う余裕などない。
叩けば埃しか出てこない3人には、ユーフェミアの誘いは悪夢以外の何物でもないからだ。
ほとんど拒絶に近い断り方をされたユーフェミアは項垂れているが、リョウはこれ幸いと話を進める。下手すれば、強引にでも3人を招待させようとするのではないかという疑念もあるので今のうちに話を別の方向に持っていくためだ。
「で、皇女様?目的のものはアレでよろしいんで?」
クイッと自身たちが運んできた荷物を指差しながら問いかけるリョウにユーフェミアは笑顔で肯定するが、何故こんなものを自分たちに頼んでまで運んできたのかリョウには意味が分からない。
アレは普通に考えればどう見ても…
(墓石…なんだよな。何に使うんだあんなもん…)
そこには大小二つ並んだ墓石が置いてあった。まあ、ユーフェミアに頼まれたリョウ達が買ってきたものなのだが、何に使用するとか詳しいことは全く聞いてないのだ。
(誰か大切な人でも亡くなったのかね…まあ、俺にゃ関係ない話だが)
聖人君子どころか完全に悪党のリョウから見れば、別にどうでも良い話だ。自分の親しい人間でなければ、誰が何処で死のうが至極どうでも良い。
リョウがそんなことを考えているとユーフェミアはポケットの中に入れていたナニカを取り出したかと思うと、それを3人に見せて微笑んだ。
それを見た3人の顔は引きつった。何故なら
「とりあえずはあの機械のコレを葬らないといけないですよね。私が壊してしまったんですし」
((亡くなったんんじゃなくて、無くなったんだったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!))
先程失われたクロヴィスのクロヴィスだったからだ。
(おぃぃぃぃぃぃぃぃ、あの天然ドS皇女様どこまでドS街道貫いていくつもりだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!悪気無しにクロヴィスの男としての人生終わらせに来てんだけどぉぉぉぉぉぉぉぉ!!)
(何に対して微笑んでるんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!もう悪意あるだろコレ!て言うか、頼むから悪意があると言ってくれ!無自覚でコレとかもう手がつけられないから!)
(純粋な人ほど冷酷なことをするってのは真実だね…僕も見習わなきゃ)
(誰のナニを見習おうとしてんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)
3人がそんなことを考えているとは露知らず、ユーフェミアはクロヴィスのクロヴィスを埋めたかと思うと、その上に小さな墓石を乗せると手を合わせて祈りの言葉を述べた。
「来世ではきちんとした役目を果たせますように」
(きちんとした役目を奪ったのがお前だよ!)
(というか終わらせたのもお前!どんなマッチポンプだ!)
ユーフェミアの祈りの言葉にリョウとアヤノはそんな感想を抱いたが、ユキヤだけはそのユーフェミアに近づくと共に手を合わせた。
そんなユキヤに気がつくとユーフェミアは嬉しそうに話しかけた。
「ユキヤ…一緒に弔ってくれるんですか?」
「当然だよ、ユーフェミア様。失ったものを悲しむのは人類共通なんだから」
ユキヤはそう言うと、自身のポケットからナニカを取り出してユーフェミアに見せた。見せられたユーフェミアはそれが何かわからずに首を傾げた。
「それは何ですか?」
「埋まってる棒だけじゃ可哀想だと思って取ってきてたんだよ。言うでしょ?棒には玉がつきものだって」
「あら、そうなんですか?ユキヤったら物知りですね」
((クロヴィス、トドメ刺されてたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!))
微笑ましそうに会話を続ける二人を見ながら、リョウとアヤノは心中で再び絶叫を上げた。
(何が玉だ!玉は玉でもクロヴィスのゴールデンボールだろうが!?)
(本当に何してるんだあの馬鹿!どんな方向に対抗意識燃やしてるんだ!?)
そんな二人の気持ちなど関係ないと言わんばかりにユーフェミアとユキヤは玉までも墓の中に入れていく。その姿を見ながら、リョウとアヤノは冷や汗を流す。
え?これ私たちやばいんじゃね?側から見たら完全にクロヴィスの男としての人生終わらせた奴らじゃね?
そんな二人を無視するかのようにユキヤとユーフェミアは玉を埋める作業を進めているが、目の前に一人の男が現れた。
その男はマスクと帽子で顔を隠しながら突然話しかけた。
「探したぜ…その玉寄越しな。お前らには無価値なもんだ」
「無価値ではないです。ちゃんと棒とセットになってますから…と言うか急に出てきて貴方誰ですか?」
「その玉を探してた男さ…それらの玉と俺が持ってる玉を差し出せば揃う…そうすれば願いが叶えられる」
「願い?」
そんなユーフェミアの疑問には応えずに、男は持っていた5つの玉を地面へと落とし、手を掲げた。
「そう…俺の願いだ!出でよ、神龍!そして願いを叶えたま「「じゃねぇだろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」ウソップ!」
原作的に色々まずいことを言い出した男、と言うか彰を今まで黙って見ていたリョウとアヤノが思いっきり蹴飛ばした。
「いきなり出てきて何を叫んでんだテメェはよぉぉぉぉぉ!!ただでさえ、ボケが渋滞起こしてたんだよ!処理しきれてなかったんだよ!んな時に、テメェまで出て来てんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「鳥山明に今すぐ謝れぇぇぇぇぇ!!同じ「あきら」でも、天と地くらいに差があるんだぞ!!」
「この馬鹿ども…折角変装してた俺の苦労を無駄にしやがって…何を考えてんだお前らは」
「そりゃ、お前だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!何を考えて生きてるのか全力で聞きたいのはこっちなんだよ!」
リョウとアヤノに全力で蹴られた彰は流石に痛かったのか、俯きながら蹴られた箇所を押さえているがそんな姿を見ても罪悪感を抱く者などいるはずがない。いきなり現れてボケ始めたコイツが悪いと全力で思っている。
そんな彰の姿を目に留めたユーフェミアは目を丸くしながら話しかけた。
「あら?貴方はもしかして…ホテルの時の人ですか?」
「見りゃ分かるだろ。よお、ハゲ。久しぶりだな」
「ハゲじゃありません、カツラです」
「おいおいおい、命が助かったんだから髪くらい諦めろよ。それを女々しくもカツラに頼ってハゲを隠しやがって。ハゲだってカッコいい人いるんだよ。ブルースウィルスだって格好良いじゃん。諦めてハゲとして生きていけよハゲ」
「ハゲじゃありません、カツラです」
「いや、いい加減会話を先に続けろよお前ら!?会ってから髪の話しかしてねぇぞ!?」
「しょうがないです。私はカツラですから」
「おい、お前が折れろ彰!皇女様これでも気にしてるんだよ!失われた秘宝(髪)を求めて永遠の旅に出発してるの!」
「失われた秘宝はないんだよ。諦めて先に進め。というか、お前ら何しにここまで来てんだよ。この大馬鹿ハゲまで連れてよ」
「私がここまで連れてきて来てくれるように頼んだんです。やりたいことがありまして」
「やりたいことぉ?」
怪訝な顔をしてユーフェミアを見る彰だが、そんなことは気にせずにユーフェミアは、はいと答える。
「はい。二つのお墓を作りたいと思いまして」
「二つ?今度は何を埋めるんです?」
二つという単語にアヤノが反応する。今のクロヴィスの一部だった物以外に何を埋める気なのだろうか。
ユーフェミアは大きな石の下に懐に持っていた幾つかの備品を埋め出した。
「あのホテルで亡くなった日本人の方々の…遺品です。一部ですが」
「ホテルって…あのホテルを襲ったテロリストのこと…ですか?何でわざわざそれをユーフェミア様が埋めるんで?」
予想外のユーフェミアの行動に興味がなかったはずのリョウも会話に入ってきた。ユキヤも興味ありげに聞いていたが、アヤノだけは心配気に彰のことを見ていた。仇であるブリタニアが仲間の墓を作ることが不快なのではないかと心配なのだろう。相変わらず心配症な奴だ。
そう思った彰は無言でポンポンとアヤノの頭を叩きながら、ユーフェミアの答えを待った。
「死んだ人にブリタニアも日本人もありません。人が死ぬことは誰でも悲しいことです」
「色々問題あるんじゃないの?今の発言は」
「そうかもしれませんが、しょうがないです。本心ですので。ですから、一刻も早く私は今のブリタニアを変えなければいけないんです」
ユキヤの質問に悲し気に笑いながら応えるユーフェミアに黙って聞いていた彰が鼻で笑った。
「難儀な奴だな。人殺しをしたくないのにブリタニア皇族とは。お前がどれだけ悲しんでも、ブリタニアの世界戦略は変わらない。今日も多くの人を殺して、その分お前はそれに悲しむ。その繰り返しの日々だ。軽く地獄だな」
「そう…ですね。でも、それは貴方も同じでしょう?」
「あん?」
「貴方は良い人ですから、本当は人殺しなんかしたくないのでしょう?そうじゃなければ、あの時私を殺していたはずです。そんな貴方が人を殺す日常を送っているのですから、平気なはずがありません」
本当に自身を憐んでいるように見えるユーフェミアの態度に彰は舌打ちをする。完全には否定しきれない所が特に。
「俺は確かにお前を殺さねぇし、お前も俺を殺さないだろう。だが、コーネリアは違う。俺はアイツを殺せる機会があれば殺す。コーネリアだってそうだろう。俺は俺の夢の為にもブリタニアを滅ぼすまで止まれないんだよ」
それは彰の本心だった。自らの罪を罪とは認める。そのことで恨まれることだって分かっている。だが、それでも成し遂げねばならないことがある。それを感じたユーフェミアは暫し黙っていた。
「じゃあ…勝負しませんか?」
突然、スクッと立ち上がったユーフェミアは彰のことをしっかりと見つめながら、力強い声を出した。
そのことに少々驚いた彰だが、当たり前のように平然な態度を作り出して問いかけた。
「勝負?何のだよ?」
「簡単な勝負ですよ。貴方がブリタニアを滅ぼすのが先か。それとも…」
二人の間にサッと風が吹いた。
「私がブリタニアを変えるのが先か」
意外すぎる勝負内容に側で見ていたリョウ達は暫し唖然とするが、彰だけは違った。
クククと喉の奥で声を鳴らす。血…って奴なのかねぇ。ブリタニア皇族ってのは揃いも揃って
彰の脳裏に格好付けのシスコンの姿が浮かぶ
俺をワクワクさせやがる。
「悪くねぇ、勝負だな。どっちも勝率は似たようなもん。ほぼ無理ゲーのクソゲーだ。そのクソゲー同士で勝負とは…相変わらず頭沸いてんな」
「人々を助けられるなら、幾らでも沸かせます。沸騰だってさせちゃいます。ですから、私が勝ったら一つだけお願いを聞いて貰えませんか?」
「別に構わねえが、どんな願いだ?」
「貴方が人殺しを止めて、真っ当に生きることです。そしてその上で…私の夢を…手伝ってください」
今度こそ、彰は驚きで目を見開いた。そして思わず笑ってしまう。この皇女が、そこまでして俺を助けたいというその事実に。
「…願いが二つになってんぞ」
「あら?本当ですね。でもまあ、良いじゃないですか」
ペロッと舌を出しながら言うユーフェミアに内心なんとも言えない思いがする彰。これはもう世紀の大馬鹿か天才かどちらかだ。
彰はそのユーフェミアを尻目にサッと手を挙げて立ち去ろうとする。そして背中越しに答えた。
「まあ、別に俺としても構わねえよ。どうせ、勝つのは俺だしな。お前は精々、俺が勝った時のことを心配しとくんだな、ハゲ」
「ハゲじゃありません、カツラです…いや、違いますね」
すると、ユーフェミアはコホンと咳をしてから改めて言い放つ。
「カツラでもありません。私はユーフェミアです。今度から名前で呼んでください。今度は貴方の番ですよ。何て名前なんですか?」
「あんだけ呼ばれれば覚えてんだろ」
「貴方の口から聞きたいんです」
ボソッと面倒くさいヤツと呟いた彰はため息を吐くと、振り返らずに答えた。
「桐島彰…だ。面倒だから、勝負がつくまで会わないことを祈っておくよ。ユーフェミア」
そのまま立ち去る彰の背中を見つめていたユーフェミアにアヤノはそっと近寄って恐る恐る話しかけた。
「あ…あの…ユーフェミア様?すいません、アイツが無礼なことばかりでも言ってしまって!で、でも、良いところも沢山あるんですよ?ただ、それが恐ろしく見えづらいだけでして!」
「分かってますよ、そんなことは。大丈夫です。気にしてはいませんから。むしろ…嬉しいんです」
「え?何でです?」
何が嬉しいか分からないというアヤノに対してユーフェミアは心からの笑顔で答えた。
「競争相手とは認めてくれたようですから」
彰「悪いな、シャーリー待たせた」
シャーリー「別に良いよ。あ、言っとくけど彰。私はユーフェミア様の味方だからね」
彰「あー、そーかい」
シャーリー「ところで彰、聞きたいんだけどあの女の人って彰の知り合い?恋人?」目がキラキラ
彰「そんなんじゃねぇよ。アイツ等は出来の悪い家族みたいなもんだ。だがまあ、アイツだけに限れば…」
シャーリー「限れば?」
彰「初めて俺の中に入ってきた奴…かな」
シャーリー「え?どういう意味?」
彰「そのままの意味だ。言っとくけど、下の意味じゃねぇぞ」
シャーリー「知ってるよ!」