おしとやか
身の振る舞いや話し方が落ち着いていて上品なさま。「御淑やか(おしとやか)」と言う風に「お」を付けて使われる場合は、特に「おしとやかな女性」といった風に、女性の立ち振る舞いや所作について形容されることが多い。
(Weblio辞書より)
おしとやかな女性が男性から好まれるのはよく聞く話だ。まあ、好みはあるとは思うから一概には言えないが恐らくあの守ってあげたくなる雰囲気とかに惹かれるのだろう。気持ちは良くわかる。まあ、だからといって
『カレンにおしとやかな所?ある訳ないだろそんなものが!』
外見がそう見えるからといって、内面がおしとやかな保証など何処にもないのだ。
「おいおい、ルルーシュ〜。勿体ぶり過ぎたって。早く言えよって、なんだお前その汗の量!?」
「ははは、気、気にするなリヴァル。な、何かこの部屋が妙に暑いだけさ」
「むしろ、少し涼しい気がしますけどね〜」
楽しそうにニコニコと笑うイブの顔面をルルーシュはぶん殴りたくなったが、殴り返される未来しか浮かばないので止めにした。いつか必ず仕返しをしてやると誓った。
(クソっ!これというのもカレンの完成度の低い演技を見抜けないコイツらのせいだ!何故、あんなバレバレの演技に気付かない!?どう考えてもおかしいだろ!?)
自身が知る限りでも、病弱でおしとやかなお嬢様とはかけ離れた言動を学校で繰り返している自らの彼女の姿を思い出してルルーシュは歯軋りをしながらリヴァルと後輩を睨みつける。
しかし幾ら睨んだ所で解決策など出てこないということに気付いたルルーシュは、諦めて再び思考の海に沈む。自らの優秀な頭脳をフル回転させる。もっと他の所で役立てろよ。
(一個くらい…一個くらい出てくるだろ!!記憶を手繰り寄せろ!)
ルルーシュにカレンと過ごした時間が蘇る。
強烈なツッコミで吹き飛ばされたこと
戦地で危機的状況を助けられたこと
ルルーシュが作ったご飯を大量に平らげたこと
彰と纏めて殴られたこと
そしてルルーシュは辿り着いた。
(アイツ…どんだけおしとやか要素がないんだ!?)
無から有は作り出せないという真理に。
しかし、作り出せないからといって諦めるという結論はルルーシュには存在しない。そんなことをすれば、カレンに何をされるか分からない上に黒の騎士団としてもカレンには病弱設定でいてもらう方が助かるからだ。
(男らしさ要素なら満ち溢れているというのに!…いや、まだだ!考えろ!思考の海に沈め!底まで潜るんだ!)
ルルーシュは一縷の希望を抱いて再び思考の海へと潜った。
どれだけ潜ってもルルーシュには答えが見えない。
だが、海にはまだ先がある。その先には暗闇しかないと思われたが、ルルーシュは気にせずに潜り続けた。
もうダメかと思われたその時、ルルーシュの先に微かな光が見えた。
ガムシャラに伸ばされたルルーシュの手がそれへと触れる。やった。俺は勝ち取ったんだ。
ルルーシュの顔に勝利の笑みが見えたその時に目の前に扉が現れた。
(しまった…)
その扉から伸びてきた腕はルルーシュの身体を掴む。
(リバウンドだ!)
ルルーシュが気付いた時には、その腕はルルーシュの叫びなど無視してルルーシュを扉の中へと引きずりこんだ。
その直後、ルルーシュの頭の中にイメージが流れ込んだ。ifの光景が。カレンが本当におしとやかな性格だったとした場合の光景が。カレンが恥ずかしそうに喋っている光景が。なお、ただの妄想である。
そのイメージの濁流が収まり、辺りを見渡すと扉以外には何もない白い部屋に辿り着いていた。その光景にルルーシュが呆気に取られていると、突然声をかけられた。
「あれ?来たのか?」
その声に驚いてルルーシュが振り返ると、そこには自らが良く知る顔があった。
「彰…何だここは!?」
「彰じゃない…そうだな。俺はお前たちが夢と呼ぶ存在…あるいは妄想か…はたまた希望か」
何を言っているのかルルーシュには分からなかったが、そんな場合ではなかったので即座に扉に手をついて頼み込んだ。
「お前が誰でも構わん!頼む!さっきの映像をもう一度俺に見せろ!もう少しで!もう少しで答えに辿り着きそうなんだ!」
「残念ですが、無理だな。お前の通行料(キャラ崩壊)では、ここまでが限界だ」
「何?」
疑問符を浮かべたルルーシュは自らが吐血していることに気が付いた。
それを見た彰はニヤリと笑う。
「等価交換だぜ?妄想を話しちゃいけねぇ。なあ、錬金術師」
「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ルルーシュが吐いた血が生徒会室に舞い、ルルーシュの身体はその場に崩れ落ちた。
「ルルーシュ君!!!」
だが、その身体が地面に触れる寸前でイブはルルーシュの身体を抱き抱えた。
「ルルーシュ君!大丈夫ですか!?」
「くそっ…持っていかれた…」
「え!?何を持ってかれたんです!?」
「子供を産めない身体にされてしまった…」
「だからあれほど…妄想錬成はやっちゃいけないって教えたのに…」
「どうやら俺は…ここまでらしい」
「ルルーシュ君!?しっかりしてください!」
薄らと涙ぐむイブにルルーシュはフッと笑いかける。
「最後に…頼みがある…どうか俺の代わりに…カレンのおしとやかさを…皆に伝えてもらえないだろうか…」
「嫌です!それはルルーシュ君の役目です!」
「そこを押して頼む…どうか…俺の分…まで…」
そこまで言うと薄らと開いていたルルーシュの目は閉じられ、腕もパタリと地面へ倒れた。
「ルルーシュ…君」
ワナワナと震えたイブは一筋の涙を流しもう一度叫んだ。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「あのさ…2人とも何やってんの?」
声の方向に泣き顔のままイブが振り返ると少し引きつりながら、その様子を見ているリヴァルと後輩の姿が映った。
その様子を見てイブはため息を吐く。
「全くリヴァルさんはダメですね〜。これだから地味キャラになっちゃうんですよ。せめて「じゃねぇだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!何処の錬金術師だお前らは!?」くらいのツッコミ入れてくれないと〜」
「いやいや、イブちゃん何言ってんの!?」
「これはルルーシュ君の教育不足ですかね〜」
「俺のせいじゃない。本人のやる気の問題だ。リヴァルしっかりしろ。生徒会役員なら正確なツッコミは必須の技術だぞ」
「そんなもん求められた覚えねぇよ!!」
平然と起き上がり、口の周りに残ったトマトジュースを拭きながら告げるルルーシュの言葉にリヴァルは反論するが、残念なことにこの世界ではそんな真っ当な意見は通用しない。
「こんなことじゃ、会長が振り向いてくれるのは何時になるんでしょうかね〜」
「イイイ、イ、イブちゃん!?何で急に会長が出てくんの!?」
「え?隠してるつもりだったんですか?」
「そんな話はどうでも良い。とにかくだ!」
イブとリヴァルの話を断ち切って立ち尽くしていた後輩にルルーシュは話しかける。
「こう言うわけだ。他人の彼女の話など聞いた所で価値はない。お前はお前の為すべきことをやれ!」
「は、はい。分かりました」
いや、どういう訳だとイブは思ったが後輩はルルーシュの勢いに押されたのかよく分からないまま返事をしてから生徒会室を出て行った。こんなポンコツどもに相談したのがそもそも間違いである。
「相変わらず人を騙すのが上手いですね〜。そうやってシャーリーさんや会長とかも誑かしたんですか〜?」
「な、何ぃ!?シャーリーはともかく会長まで!?おい、ルルーシュ!どういうことだよ!?」
「知るか。俺は何もやってないし、シャーリーや会長も別に俺のことなんて別にどうとも思ってないだろっておい!いきなり何をする!?」
ため息を吐いて否定するルルーシュの頭上に何処から取り出したのかチェーンソーを持ったイブの手が振り下ろされる。
「自分への好意にだけニブイ、イケメンラノベ系主人公なんて死ねば良いんです」
「何の話だ!?おい、リヴァル!この馬鹿止めろ!」
「誰が止めるか!全女子生徒を傷つける前に傷者になっとけ!」
「どう考えても傷くらいじゃ済まないだろ!?」
ブリタニア本国
とある部屋で2人の男が向き合いながら会話をしていた。とはいえ、1人は椅子に座りながら足を組み、もう1人は完全にその前に跪いている格好ではあるが。
「ふむ…君もエリア11に行くことが希望かな?」
「はい。コーネリア殿下の実力は知っておりますが、流石に手が足りないと思いまして」
「おやおや。随分高く買っているんだね。ゼロのことを」
その内の座っている方であるシュナイゼルの質問に男は肯定する。内容に色々問題があり、周囲の兵はざわめくがシュナイゼルが手で制した。
「それもありますが、もう一匹の方が私は気になります。今は表には出てきておりませんが、あれが本気になれば下手すればゼロに匹敵する脅威だと私は考えております」
「ほう。それは気になるね。だから、コーネリアを助けるために向かいたいと?」
「そうですと答えたい所ですが…殿下に嘘を申し上げてもバレてしまうでしょう。私はただ、その男を」
ニィと擬音が聞こえるように男は邪悪に笑う。
「終わらせたいだけです」
その笑みにシュナイゼルも一瞬黙るが、すぐ様立て直し返答した。
「理由を聞きたい所だけど…戦果の報酬にエリア11に行くことを望まれては私としても断り用がない。許可するよ。準備が出来次第向かってくれ。ナイトオブ3」
それは聞いた男は立ち上がり敬礼した。
「イエスユアハイネス。シン・ヒュウガ・ヴァインベルグ謹んで命令を承ります」
漸くこのキャラ出せましたわ〜