ちょっと?変わったコードギアス   作:はないちもんめ

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久しぶりの投稿です


84 自分を通すって言うのは簡単だが、実行するのは難しい

(この人たちは一体…)

 

カオルは目の前であっという間に壊滅させられたチンピラ集団を見て呆然と立ち尽くす。

 

断っておくが、彼らは決して弱いわけではない。

 

勿論、正規軍と比べては格がかなり落ちるのは間違いない。だが、曲がりなりにもこの界隈を長い間仕切っていた連中だ。荒事にもある程度慣れているだろうし、弱いなどということがあるわけがない。にも関わらずたった三人の人間によって圧倒されてしまった。これは何を意味するのか。

 

ただ単純に彼らが強すぎるという事実だ。ある程度荒事に慣れている程度の連中では、話にならないレベルで。

 

「まあまあやるじゃん、堅物委員長さんよ。口だけじゃなかったみたいだな」

 

「その言葉そっくりそのままお返しします。ここまで戦闘もできるとは思いませんでした。どうやら実力は中身とは反比例しているようですね」

 

「…お前ら二人とも喋る時に相手の悪口を言わなきゃいけないとかの決まりでもあるのか?」

 

カオルの驚愕を知る由もなく、この惨状を生み出した三人は平然と会話を繰り広げている。結果として当然ではあるのだが、集まってきた野次馬連中さえも無視して。今更ながら色々ぶっ飛んでいる連中である。

 

「カオル!何の騒ぎだこれは」

 

「リョウ…何処から話せば良いのかしらね…」

 

野次馬の波をかき分けてカオルの元までたどり着いたリョウと呼ばれた日本人の青年は、カオルのことを心配している顔を浮かべながら事情を問うてきたがカオルとしても何処から話したものか分からない。この僅かな間に発生した出来事は余りにも濃密過ぎた。

 

どう答えたものかと逡巡していると、リョウは何を勘違いしたのか懐に収まっていた銃を彰へと向ける。

 

「テメェら!カオルに何をしやがった!」

 

「リョ、リョウ!何やってるの!?誤解よ!」

 

「何もやってねぇよ。やれやれ…面倒な奴だな。勝手な誤解をしやがって」

 

(私が止めてなかったら誤解じゃなくて、本当に手を出していたでしょうに…)

 

リョウの意見を完全に誤解だと答えた彰はため息を吐いているが、それをレイラはジト目で見つめる。よくもここまで、自分の行いを棚に上げて偉そうに言葉を述べられるものだ。

 

レイラからすると上記のように言いたいことは山のようにあるが、カオルからしてみればそもそもそれが金を稼ぐ手段であるのでそれを問題視させるようなことはしない。まあ、リョウからすればそんな仕事をやっていること自体が気に食わないのであろうが。

 

「おい、カオル!お前、まさかそんな身体になってまで仕事をしようとしてたんじゃねぇだろうな!?ふざけんな!お前、自分の身体の状態を分かってんのか!?」

 

「ご、ごめんなさい。だけど今日は随分と調子が良いから」

 

「そういう問題じゃ…ちっ!」

 

舌打ちをしながら頭をガシガシとかくリョウを尻目に、何処に隠れていたのかワラワラと仲間と思われる人間が集まってきた。十数人程度の人数だ。まあ、別にその程度のことであれば別に彰としては気にしなかったのだが

 

「お前、何処にでもいるな。何?俺のこと好きなの?」

 

「それは私のセリフだ!何でこんな所にまでお前らがいるんだ!」

 

その中に知り合いがいるとなれば話が変わってくる。何故かいるアヤノは髪を逆立てているような雰囲気で言葉を発する。どうやらあまり歓迎されてはいないようだ。まあ、歓迎されるようなこともしていないが。

 

「まあ、いいや。そらよ」

 

話の流れをぶった斬った彰は懐から多少の金を出すとそれをアヤノへと手渡した。

 

「わっ…と。って、何の金だこれは」

 

「こないだの礼だ。流石にアレだけで済ますわけにもいかんだろ」

 

「あ、ありがとう」

 

「ま。頼んだのは俺だしな。気にすんな。じゃあな」

 

「あ、おい!」

 

予想外の金を受け取ったアヤノが何やら声をかけてきたが、それを無視した彰は背中越しに手を振ると、レイラや卜部に声をかけてその場を後にした。

 

その帰る道でレイラは疑問に思っていたことを彰に尋ねた。

 

「意外とアヤノちゃんには優しいんですね」

 

「あん?」

 

「先程の話です。別にアヤノちゃんから請求された訳でもないのに、あの時のお金を今になって払うとは思わなかったもので」

 

普通のお前なら、依頼を有耶無耶にしてただろという言葉を暗に含んでレイラは尋ねる。普段の態度の悪さが目に見えるようだ。

 

「別に大したことでもないさ。後でギャアギャア言われるのも面倒だったからな」

 

「それだけじゃねぇだろ?」

 

レイラからの問いに応えた彰に後ろから卜部がぼそっと呟いた。

 

「それだけですよ。他に何かあるとでも?」

 

「思い出したんじゃないのか?あの時のどっかの誰かさんをよ」

 

誰かさん?レイラとクラウスにとっては疑問でしかなかったが、彰には分かったのか微妙に渋い顔をしながらも平然と答えた。

 

「さて。分かりませんね。俺にゃ、どっかの誰かが誰なのか分からんので」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、やっと帰ってきたわね。お帰りなさいって…四人とも一緒だったの?」

 

確か二組でバラバラに出て行ったはずでは?

 

そんな疑問がアンナには浮かんだが故の発言だったが、レイラからしてみれば誰かに聞かせるようなことをしてきた訳でもないので誤魔化すことにした。

 

「いえ、偶然合流しただけですよ。ところで急いでいる様子ですが何かあったのですか?」

 

「そうそう。実はアノウ少尉が貴方達のことを呼んでたのよ」

 

「アノウ少尉?」

 

誰なのか全く思い浮かばなかったのでレイラが尋ねると、信じられないといった顔を浮かべるアンナ。そんな顔を浮かべられたことが心外だったレイラが再度誰なのかを尋ねると、この間自分たちの上官に就任した人だとアンナは答えた。

 

確かにそんな人の名前を忘れていたとあっては信じられない顔をされても仕方ない。だが、許して欲しい。それは全て悪魔のような男の対応で他に向けられる思考のリソースが奪われてしまったが故の反応なのだ。

 

そう、つまり原因は

 

「全て貴方のせいです」

 

「心外にも程がある発言だな」

 

訴えたら勝てるのではないだろうかと考える彰だが、自分の普段の行動を省みれば不可能だということを瞬時に悟るだろう。

 

「まあ、それはともかくとして、何故そのアノウ少尉が私たちのことを探してるんです?」

 

私たちとはこの四人のことだろうか?何故この四人が出てくるのか謎だったが、レイラ以外の三人には心当たりがあった。

 

「随分とお早いこって」

 

「ま。邪魔されたのが不快なんだろ」

 

「釘を刺しとくって所だろうね」

 

三人の話が理解できないレイラは頭に疑問符を浮かべるが、それを理解したクラウスはレイラに理解を促すため説明を始める。

 

「つまりね。今、君たちがやったことがもう上の方にバレてるって訳」

 

「はい?」

 

「お前、さっきまで何してきたんだよ?それが分かれば凡その答えが分かるだろ」

 

彰の補足説明でレイラは自分たちがやってきたことを振り返る。信じられないが、そこで出てきた結論はただ一つ

 

「あのごろつき達とアノウ少尉が繋がっていると?」

 

「もしくはそれに近い誰かが…だ。この早さで伝わってんだ。相当近い関係だろ」

 

「まさか。あんな連中と軍が繋がっている訳ないでしょう」

 

「相変わらず頭の硬いこった。お前が軍にどんな理想を見てるのかは知らんがな、大体の権力者は私利私欲に走るもんだ。これぐらいの不正なら日常茶飯事だよ。どんな組織だろうとな」

 

まあ、この組織はそれがかなり多そうだが。

 

彰はそんなことを思ったが、そこまでは言わなかった。言ったところで簡単に解決できるような問題でもない。

 

彰の言葉に思案顔になるレイラ。そんなレイラに何を言うでもなく、黙って成り行きを見守っていた彰達だが、突然部屋のドアが開くと怒り心頭といったアノウ少尉と見たことがない男が二人で立ち入ってきた。

 

「レイラ・マルカル!そこに居たのか!さっきから私が探してるというのに一体何処…に」

 

しかし、その顔はレイラと彰を見ると驚愕の表情に変わっていった。

 

「あーーーーーーーーーーー!!!貴様らはぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「おい、誰だあいつ」

 

「あの人がアノウ少尉ですよ!というかレイラと彰さんを見て驚いてるみたいだけど…知り合いだったの?」

 

「あの方がアノウ少尉ですか…いえ、初対面のはずですが」

 

「そんな訳あるかぁぁぁぁぁぁ!!思いっきり会ってるだろうがぁぁぁぁぁぁ!!」

 

彰とレイラの初対面であるかのような対応にアノウは青筋を浮かべながら怒鳴りつける。しかし、そんなことを言われても彰とレイラは何のことか思いつかない。

 

「どうやら本当に顔見知りみたいだな。どっかに挨拶巡りをした時にあったっけか?」

 

「そんなはずはありません。挨拶回りに行った相手であれば私も覚えているはずですし」

 

「そんな綺麗な出会いではない!貴様らが私にした仕打ちを忘れたとでも言うつもりか!」

 

そんなことを言われても、彰とレイラには残念なことに本気で記憶に存在しない。思わず二人で顔を見合わせるが、本当に忘れているので見たところで思い出すことなどない。

 

まあ、会った展開が怒涛の展開過ぎてちょい役のアノウのことなど記憶から消去されたのだろう。彰は船酔いで余裕など無かったし、レイラは彰の存在が濃過ぎたことが原因だ。

 

しかし、それを正直に言うのは酷いと思った彰は何とか思い出そうと考えに考え抜いて一つの結論を出した。

 

「あー、ごめん忘れてた。幼馴染の田中君だったね。元気だった?」

 

「誰だそいつは!?」

 

「ごめんなさい、田中さんでしたか。いや、忘れてた訳じゃないんですよ?ただ、少し思い出すのに時間がかかっただけです」

 

「いや、お前完全に忘れてるだろ!だって私は田中じゃないから!そんな人この世にいないから!」

 

「そんなに卑下するなよ。忘れてたなんて冗談だよ冗談。俺とお前の友情の繋がりを忘れるなんて有り得ないだろ」

 

「私とお前に友情なんて存在するかぁぁぁぁぁぁ!!存在するのはゲロをかけられたという記憶だけだ!」

 

彰とレイラの発言で完全にブチギレているアノウを見て、コホンと咳をした後に、後ろに控えていた男が口を開いた。

 

「失礼。話が進まないので私から話させていただきます。実は先程、市民の間で乱闘騒ぎがありました」

 

「へぇ、そうだったんですか?知らなかったです」

 

男の言葉にサラッと卜部が応える。知ってるどころか、思いっきり関係者なのだが堂々とこんな所で白状するようなことはしない。まあ、こんな所まで来てこんな話をする時点でほとんどバレているので無駄なのだが。

 

しかし、卜部の言葉が嘘だと確信しつつも男はそれに対して訂正もせずに話を続ける。

 

「そうだったんですよ。物騒な話です。まあ、今回は大した被害が出なかったので特に問題視することはありませんが今後同じことが起こった場合には然るべき処置をくださなければならなくなるかもしれませんね」

 

「市民が少し乱闘騒ぎをしたくらいで処置をくだすと?流石はEUの軍人様だ。お優しいこってすねぇ」

 

嫌味100%の彰の言葉に卜部は黙るように目で促す。とは言え、ニコリと笑っただけで男は大して気にも止めていないように見えるが。

 

「ええ、そうなんですよ。ですから、勝手な行動は控えてください。此処には此処のルールがありますから」

 

そこまで言ってから、アノウと共に立ち去ろうとする男にレイラは怒りを宿した目で何かを問いかけようとするが、この場の全員でそれを押し留めた。これ以上、相手を刺激すればこの場で捕まる可能性すらあるからだ。

 

その様子を見て、男はフッと笑った。

 

「長い物には巻かれた方が良いですよ?平穏に暮らしたいなら…ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




シリアスかギャグなのか微妙な感じになりました…

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