ちょっと?変わったコードギアス   作:はないちもんめ

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久しぶりの投稿です。

何故、遅くなったか?

仕事が忙しいのもありますが…

何よりこのシリアスが気に食わなかった…


85 誰かの行動が不愉快に思う時って結構自分がやったことあるのを自覚してるからな気がする

「何処行くんだよ、リョウ!」

 

「アイツらから金を取りに行くに決まってんだろ!このままじゃ…カオルの奴はもう、もたねぇ…」

 

アヤノへの返答にリョウは自身の拳をグッと握りしめる。認めたくはないが、歴然とした事実であった。こんなボロ屋で症状が改善するほど今のカオルの状態は甘くない。

 

加えて昼間の妙な連中が煙たがれている奴等をボコボコにしてしまったことがそれに拍車をかけている。奴等からしてみれば降りかかった火の粉を払っただけなのかもしれないがその火の粉が振り払われる先は何時だって弱い側。ここで言えば自分たちだった。

 

要するに何時腹いせに来るか分からない。逃げねばならないが、今のカオルを連れて逃げ回るのは不可能だった。

 

「だったら私も!」

 

「来るな!足手まといだ!」

 

「一人で行くよりマシだろ!」

 

「守ってる余裕がないって言ってんだ!」

 

そう言うと、リョウは振り向きもせずに駆け出して行ってしまう。アヤノも追いかけたが元々、大人と子供の足だ。本気で走られてはアヤノが追いつく道理などなかった。追いつくはずもなくアヤノは転んで地面へと横たわる。

 

(何で…何で何だよ!私は…私たちは大きなことなんて望んでいないのに…)

 

アヤノの望みはごく普通のブリタニア人から見れば大したことではなかった。

 

ただ自身が大好きな人達に笑って側にいたいだけ。

 

だが、アヤノの現状から見ればそれを叶えられる可能性は皆無だった。

 

「くそ…私だって…私だって…」

 

何かを決意した目を秘めてアヤノは立ち上がり、歩き出す。

 

その進む先が絶望か希望かは誰にも分からないのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「現状、不正を行っている者を取り締まるのは不可能のようです」

 

「知ってた」

 

スマイラス将軍の所から帰ってきて怒り心頭のレイラに彰は当たり前のことを聞いたかのように平然と返事をした。

 

まあ、本当に彰から見れば当たり前のことだったのだが。

 

「さっきの男の人も言ってたでしょ。長いものには巻かれた方が良いって。オスカー・ハメル君だっけ?」

 

「調べた所そうみたいですね。分かったところでどうしようも無いですけど」

 

クラウスと卜部も特にレイラの発言に思うことはなかった。

 

当然だ。こんな簡単な言葉で何とかなるような問題ならとっくに何とかなっている。

 

しかし、自分たちが起こした騒ぎで問題が起こっていないか心配したレイラは三人を連れて問題を起こした場所に向かっているが、その最中でもレイラの怒りは止まらない。

 

「何故なんですか!日本人だろうと関係ないじゃないですか!」

 

「関係あるんだよ。それが全てと言っても過言じゃねえ」

 

「どうしてですか!」

 

「他のほとんどのEU市民が日本人を同じ人間として認識していないからさ」

 

EUは民主主義だ。理念として国民が政治を決めることとなっている。

 

そして残念ながら日本人はその国民としてカウントされていない。

 

「それは…」

 

その事実をレイラは否定しきれない。レイラは違うし、周りの友人達も違うだろう。

 

だが、残念ながらここではレイラ達は完全に少数派だ。そんなことくらい少し調べたレイラだって知っている。

 

その事実を認めないほどレイラは子供ではない。

 

「自分たちにとって都合が良いことで、しかもそれをしたところで国民が喜ばなければ自分たちの票に結びつかない。なら、政治家が動く道理がない。ま、よっぽどの犯罪行為が明るみに出れば別だけどね」

 

レイラの思いはクラウスの正論に封殺される。

 

レイラがEUを変えたいと思うのであれば本当に根っこからこの国を変えるしかない。

 

この国にはレイラの理想を叶える基盤が無さすぎる。

 

「そういうこった。だから、アヤノもお前らを敵視してんだよ。ま、当然だな」

 

自分たちを人間として見ていない連中に敵対心を抱かない訳がない。それを彰は知っている。

 

「ちっ」

 

アヤノの話題で思い出したくもないことを再び思い出した彰は不機嫌な顔になる。何故、こうもアイツのことを考えると嫌なことを思い出してしまうのか。

 

間違いなく卜部さんの発言のせいだろう。後で覚えてろよ。

 

「あれ?アヤノちゃんじゃありませんか?」

 

彰がそんなことを考えていることなど知らないレイラは以前のように突然現れたアヤノに気付いて声をかける。

 

しかし、アヤノの様子から妙な気配を感じ取った卜部はスッと前に出ようとするが、その前にアヤノは懐から取り出したナイフをレイラに向ける。

 

だが、ナイフを使った所でそれでは足りないほどの実力差がレイラとアヤノの間には存在する。突然、向けられたナイフにも冷静に対応したレイラはナイフを避けながら距離をとった。

 

「と、突然どうしたんですか!?」

 

「うるさい!金がいるんだよ!いいから早く金を出せ!」

 

何やら事情があるようだが、だからと言って流石にそうですかと金を渡すことはできない。

 

「落ち着いてください!なんでお金が欲しいんですか?」

 

「…姉さんのためだよ」

 

「お姉さん?」

 

「お前らも知ってるだろ?香坂カオル。私の姉さんだ。姉さんは…病気なんだ」

 

「だろうね。あんな仕事をずっとやってれば病気にもなるでしょ」

 

話を聞いてクラウスは自分たちの相手をするはずだった女性を思い出す。

 

あんな不衛生な環境でそんな仕事をしていれば病気にもなるだろう。

 

「好きでやってたんじゃない!姉さんは…私のために…したくもない仕事をしていたんだ!」

 

だが、クラウスの言葉をアヤノは全力で否定する。

 

ルルーシュのような才能があれば話は別だが、殆どの人間はそうではない。

 

幼い妹を連れた姉にどんな仕事ができたのだろうか。

 

こんな環境で妹と自分の暮らしを守るためには身体を売る以外に方法はなかった。

 

その事実をアヤノは知っている。

 

自分のために姉が何を犠牲にしてきたのかと言うことを。

 

「今まで姉さんが私を守ってくれていた分!今度は私が姉さんを守るんだ!」

 

そう言ってアヤノはナイフを自身へと突き刺そうとする。

 

意味がない行動に見えるかもしれないがレイラのことを知る彰達三人にはアヤノの真意が良く分かった。

 

「どうだ?お優しいEU軍人のお前には私が死ぬのは応えるんじゃないのか?させたくなかったのなら金を取ってこい!」

 

「ま、待ってください!」

 

「無駄なことは止めろ!いくらレイラ君が優しいと言ってもそんなことをできるはずがないだろう!」

 

「うるさい!外野は黙ってろよ!」

 

卜部の正論をアヤノは大声で黙らせるが自分の行為が無駄だということはアヤノだって分かっていた。

 

何処の軍人がある意味テロリストの要求を飲んで金を渡すだろうか。

 

そんなことをすれば他の日本人も大挙してレイラの前に押し寄せるだろう。

 

だが、だからと言って何もしないという選択はアヤノには取れない。

 

意味がないと分かっていても意味がない行動をするしかない。

 

(私たちは…私たちだけで守っていくしか…ないんだ)

 

殆ど自暴自棄になったアヤノの凶行をレイラと卜部は止めようとしたが、アヤノの手の方が早い。

 

止められるはずがなかった。だがしかし

 

「茶番は止めろよ」

 

彰の声でアヤノの動きは止まる。

 

「本当は死にたくなんてないんだろ?誰かに助けて欲しいんだろ?」

 

根拠などない。だが、彰は知っている。この顔を彰は知っている。

 

「ち、違う。私はそんな気持ちじゃ…」

 

あからさまに狼狽えているアヤノを見て再び誰かを思い出す。

 

だから、コイツは嫌なんだ。

 

見たくもない顔を思い出してしまうから。

 

誰か側にいて欲しいのに、裏切られるのが嫌で、また一人に戻ってしまうことが嫌で、強がってばかりいた、そこから連れ出してくれる手を何処かで待っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『誰だよ、お前らは。俺は助けてくれなんて頼んでねーよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何処かの誰かを見ているようで。

 

「たく…めんどくせー」

 

「何処に行くんだ?」

 

「何とかしに行くんすよ。このままじゃ、嫌なことばかり思い出しちまうんでね」

 

突然、歩き出した彰に声をかけた卜部に返答したが、その言葉にアヤノは激昂した。

 

「適当なこと言うなよ!!

 

ふざけるな、そんなことを簡単に言うな

 

私の気持ちを何も知りもしない癖に

 

「何で俺がそんな嘘を言わなきゃならんのだ。そんな趣味はねーよ」

 

「ただの偽善者だろ!口だけなんだろ!」

 

私の生活を知りもしない癖に

 

「偽善でも何でもねーよ。不快なんだよ。今のお前を見てると」

 

「そんな理由で…助ける奴なんている訳ないだろ!」

 

私のことを何も知らない癖に

 

「いるんだからしょうがねーだろ。諦めろ。お前に拒否権はねーぞ」

 

私がようやく…ようやく…諦められかけてたってことを…知りもしない癖に…

 

「お前は俺に黙って助けられてれば良いんだよ」

 

彰の言葉にアヤノの中で押し留められていた思いが徐々に口から外に漏れ出す。

 

止めようとした。しかし、一度動き出したその流れは止められなかった。

 

「…けて」

 

「あん?」

 

微妙に聞こえた言葉に彰はめんどくさそうな顔で振り返る。

 

その顔を見てアヤノの我慢は限界を超えた。止めどなく流れる涙と共に言葉は決壊した。

 

「助けて!助けて!助けてよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

しゃくりあげながら発せられた言葉を受けても彰の表情は変わらない。ポリポリと頭を掻きながら呆れたように呟いた。

 

「耳悪いのかお前は」

 

「え?」

 

そこで聞いた言葉をアヤノは生涯忘れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから、最初からそう言ってんだろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時からそうなのだ。永遠に変わらない。

 

殴りたいと思うことばかりだった。

 

ムカつくことばかりだった。

 

馬鹿だと思うことばかりだった。

 

まともになれと思うことばかりだった。

 

でも、それ以上にアヤノは彰に対しての想いがあった。

 

あの時、あの瞬間、あの言葉を理解できた刹那から続いてきた想いだ。

 

本人には絶対に言えない。だが、間違いなくそうなのだ。

 

アヤノは照れながらもカレンに堂々と告げる。

 

「アイツは私にとって…ずっと…ずっと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

英雄(ヒーロー)なんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今のところ描写でそれを表してないですし、今後もそんなに表に出ることはないでしょうが

愛とか友情とか親愛とかそういうのを全部好きってことに合算すると彰のことを一番好きなのはアヤノです。

ただ原作軸だとそれを表に出すのが恥ずかしい年頃になってるだけです笑

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