そして、関係ないですが今年のコナンの映画凄く良かったです!
一方変わってアッシュフォード学園では
「久しぶりだねぇ、パーティーなんて。イブも来れれば良かったのに」
「そうね。ハハ…居ないで本当に良かったわ」
嬉しそうに呟くシャーリーの言葉を受けて、カレンは引き攣った笑顔を浮かべる。イブの中身を知っているかどうかの違いである。
そんな二人が何をしているのかと言えば突然決まったマーヤの生徒会入りを祝したパーティーの準備である。
マーヤの生徒会入りは混沌を招く可能性があるため、ある副会長とその恋人は全力で止めたのだが、会長にはそもそも意見を聞く気がなかったので強引に採用が決定した。民主主義って何だっけ?
基本的に騒ぐ理由を気がしているのがミレイである。上記の理由を利用してパーティーの開催を決定し、スザクとリヴァルは買い出し。ミレイは少し用事があると出かけていったのでその他の面々で軽い準備をする運びとなっていた。
「あの、すいません何か無理させちゃって」
「気にしないでください。久しぶりに賑やかで嬉しいです」
何処か申し訳なさそうにしているマーヤを見て、ナナリーは微笑む。久しぶりに楽しい行事なので気分はとても良いものになっている。ちなみに、ナナリーの担当は「主役であるマーヤの話し相手になること」である。
あるシスコンはその担当の危険性を体感していたため、「相手は動物園の猛獣と思え。決して近づくな」とナナリーに真剣に伝えたのだが「失礼すぎます」と逆に怒られていた。
こうしてマーヤと対面しても、猛獣などとは似ても似つかない穏やかな性格が伝わってくる。全く兄の心配性にも困ったものだと苦笑する。知らないということは誠に幸せな事である。
「ところでナナリーはさっきまで何をやってたの?」
「折り鶴を折っていたんです。あ、折り鶴って知ってますか?」
「うん、知ってるわ。でも、意外ね。ナナリーがそんなこと知ってるなんて。誰から聞いたの?」
「私たちの身の回りのお世話をしてくれている方が日本人なんです。その人からお話を聞きました」
へぇ、そうなんだと答えながらマーヤの内心では驚きを隠せずにいた。
どう見てもナナリーは話し方や身なりからしてもそれなりの家柄に見える。それなりの家の人が日本人を雇っていることなど珍しくも何ともないが、基本的に日本人蔑視の連中ばかりだ。だが、ナナリーの話し振りから蔑みの感情は全く伝わってこない。むしろ、親しみすら感じる。主義者の家系なのかなと思っているとマーヤの前に作った食事を置きに来たルルーシュが言葉を紡ぐ。
「別に珍しいことでもないさ。この学校には日本人を蔑視しないブリタニア人が多いからな。生徒会メンバーを見れば分かるだろ?」
「確かに皆、枢木スザクとも普通に話してたけど」
「スザクが来た時には流石に少しは反発されることもあったが、かなり穏便な部類だったぞ。あまり激しくすればシャーリーが激怒したからな」
「そ、そんなことないから!」
「いや、あれは激怒だったと思うけど」
「そんなこともありましたね」
カレン!?ナナちゃんまで!?と顔を真っ赤にしているシャーリーを見て、話題が変わったことにルルーシュは一安心する。
彰にはナナリーの態度や話し方から出生に疑問を持たれていたのだ。マーヤが彰並みというつもりはないが、頭はキレると聞いている。用心しておくに越したことは無い。
また人間不信かと思われるかもしれないが、ルルーシュの立場からすればこのくらいの用心は必要だろう。何も気にしないのは流石に警戒心が薄すぎると言える。だからナナリーにも少し注意を促した方が良いのだがシスコンのせいで考えが及ばない。脳の構造に疑問を覚えるレベルだ。
「そ、そんなことより、マーヤが折り鶴を知ってるなんて意外だね。マーヤは何処で知ったの?」
「あ、うん。陽菜っていう日本人の子が教えてくれたの。千羽折れば願いが叶うって」
「へぇ、そうなんだ。マーヤはどんな願いをしてるの?」
シャーリーの問いにマーヤは顔を赤くする。
「え…と…そんな聞いて楽しい内容じゃないですよ?」
「えー、いーじゃん。教えてよー」
「そ…そこまで言うなら…大体は…ブリタニアの男性の撲滅を願ってます」
「アウトォォォォォォォォ!!」
側で聞いていたカレンが即座にマーヤの頭をぶったたいた。色々アウト過ぎる願いだった。
「だ、だから言ったじゃないですか!楽しい内容じゃないですよって!」
「限度があんのよ!TPO考えて、言葉を発しなさいよ!」
「ま、まあまあ、カレン!マーヤの場合、ブリタニアの男性にはトラウマがあるんだし、しょうがないよ」
「アレの何がコイツのトラウマなのよ!むしろ、コイツにやられたブリタニア男性の方がトラウマになってるわよ!」
「ほ、本人には本人なりの悩みがあるんだよ。そうだ、他には!?他にはどんな願いがあるの?」
何とか話を逸らそうと、シャーリーは必死に何か別の願いはないのかとマーヤに尋ねる。
「そうですね、他には…ブリタニアの攻撃で死んだ陽菜達の冥福を祈ってます」
「暗過ぎるわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
女子高校生とは思えない願いにカレンは今度は思い切り頭を叩く。手加減などなかった。
「な、何か変なことを言いましたか?」
「全てが変よ!花の女子高生がどんな願い込めて折り鶴作ってんのよ!?」
「そ、そう言われても事実ですし、嘘をつく訳にも…コレでもオブラートに包んだんですよ?」
「アンタのそれオブラートじゃないから!!思いっきり底が破れてるただのゴミクズだから!」
流石は彰がやべー奴認定した女…
あまりのとびっぷりにカレンは内心戦慄していた。数えられない変人に出会ってきたが、トップクラスに認定する必要があった。
カレンが脳内の変人ランキングの順位を書き換えていると、少し離れたところから穏やかな声が聞こえてきた。
「聞きましたか?お兄様。鶴を千羽折ると願いが叶うんですって」
「そうみたいだな?ナナリーは何を願うんだい?」
「何してんの彼氏ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
そんな平和な空気を作り出していたルルーシュの脳天にカレンは思いっきり踵落としを振り下ろす。
ルルーシュは頭ごと地面に埋まることになったが、その姿を見てカレンはにこやかに続ける。
「ねぇ彼氏?妹の願いも良いけど、彼女の願いも聞いてくれないかしら?」
「あ、ああ、もちろんじゃないか。か、彼女の願いは何なんだ?」
「もちろん、現実を見据えてあのボケと向き合うことよ。ね、病弱な彼女を助けてくれるわよね?」
コホッと咳き込む彼女を埋められた影響で血だらけになった顔を引き攣らせながらルルーシュは見る。
可能であれば無視したい。無視したいところだが、このまま無視し続ければ彼女という名の破壊兵器ギガデストロイヤーによって自身の身体は崩壊させられるだろう。信じられない境遇だった。客観的に見て彼氏であり、彼女の兄の看病の場まで提供しているというのに何故こんな扱いをされねばならないのか。しかもそれを口に出すことさえできない。だって、怖いもん。
「それでだ、マーヤ。お前は自分の行動について問題がある認識はあるのか?」
「いや、その前にルルーシュ君は自分が病院に行ったほうが良い認識を持った方が良いと思いますよ?顔面血だらけですから」
「気にするな。この程度で病院に行っていては病院で暮らすことになりかねない」
「普段どんな生活送ってるんですか?ゲットーより危険じゃないですか」
「彼女がいるんだぞ?当たり前じゃないか」
「聞いて良いですか、ナナリー。会話が成立してない気がするんですけど私だけですか?」
「すみません、お兄様は最近被害妄想が激しくて」
どうやら、二人は交際経験が不足しているため知らないらしいが、彼女がいるということは常に肉体の脅威にさらされるという事だ。
つまり、彼女を作る際に必要なのは理不尽に耐える肉体と現実に耐える精神力ということになる。
「いいなぁ、カレン。ルルと仲が良さそうで」
そして、シャーリーに関してはもはや訳が分からない。
先程行われた行為は純然たる暴力であり、そこにあるのは加害者と被害者しか存在しない光景のはずなのだが…
「俺のことは良い。それよりも、マーヤのことだ。そんな性質を持っていればまともに授業など受けられないだろう」
「それについては心配いらないわ!」
ルルーシュがそう言うと、ミレイがバンと扉を開けて満面の笑顔を浮かべていた。心配しか無かった。
「一応、聞きますが何で心配ないんですか?」
「マーヤってルルーシュ達と同じクラスでしょ?だから、担任の先生にお願いして、ルルーシュとリヴァルとスザク以外の男子はマーヤの席の近くに近づかないようにお願いしたの。大丈夫だってさ!」
「え!?じゃあ、これからはマーヤは学校に来られるんですね!」
「俺とリヴァルの犠牲があればな」
喜んでいるシャーリーの返答にボソリとルルーシュは呟く。スザクは日本人なので心配ないだろうが、ルルーシュとリヴァルは完全に生贄だった。
「す、すみません。皆さんにご迷惑をかけてしまって」
「気にしないで。生徒のサポートをするのが私たちの仕事なんだから」
「俺たちのサポートが無さすぎる気がするのですが」
そんなことを言ってはいるがルルーシュはそこまで心配していなかった。
今後はゼロとしての仕事が増えることで、学校に来ることは必然的に減少する。来ることも確実にあるが、その時はマーヤに黒の騎士団の仕事を任せて、近づく頻度を減らせば良いだけの話だ。リヴァルにだけ犠牲になってもらおう。
友人を見捨てることを決めたルルーシュの肩にポンとミレイは手を置く。
「大丈夫よ、ルルーシュ!アンタ達のサポートはちゃんとするわ!」
「一応聞きますが、どうやって?」
まともなサポートなど最初から期待していなかったルルーシュは、適当に返事をする。どうせ、役に立たないと諦めていた。
「それはね…これよ!」
「…何ですか、それは」
「見て分からない?マットよ」
そんなものは見ればわかる。問題は何故ここにマットが出てくるのかということだ。と言うより、本当は内心分かっていた。分かっていたルルーシュは冷や汗を大量に流しながら即座に離脱しようとするが直ぐに取り押さえられた。
「は、離してください!何をするんですか!?」
「アンタが逃げるからでしょ?良いルルーシュ?教室とかでマトモに投げられたら流石に危ないわ。でも、その時に受け身ができてたらどう?安全だと思わない?」
「思いませんね!俺ならまず投げられない方法を探します!」
「ねぇ、マーヤ。ルルーシュの受け身の訓練をしてくれない?多分、この後ずっと投げ続けていれば少しは上手くなると思うわ」
ルルーシュの必死の叫びを無視して、ミレイはマーヤに話しかける。これはマズイと考えたルルーシュは周囲に味方を探した。
「カレン!」
「あ、私、飲み物とってこないと」
「シャーリー!」
「カ、カレン一人じゃ大変だと思うから私も手伝うよ」
「ナナリー!」
「頑張ってくださいお兄様!」
味方など居なかった。その現実にルルーシュは青褪める。
「あの…本当に良いんですか?」
「良いのよ。ルルーシュが後で怪我をしちゃ大変でしょ?暫くしたら、リヴァルも帰ってくると思うから順番に頼むわ」
その後、ルルーシュの絶叫が響き続けた。買い物から帰ってきたリヴァルの絶叫も加わり、深夜近くまで止むことはなかった。
なお、その後不登校の少女は登校してきたが、二人のブリタニア男子学生が恐怖で暫く不登校になったのは余談である。
ルル「」ガタガタガタ
カレン「だ、大丈夫よ、ルルーシュ!マーヤは近くにいないから!安全よ!」
ナナリー「マーヤさんってお強いんですね。女性なのに凄いです。私も見習いたいです」
カレン「止めてあげてナナリー!ルルーシュの逃げ場になってあげて!」