青春とは人生のある時期ではなく、心の持ち方を言うのだ。
優れた想像力、
安易を振り捨てる冒険心。
こういう様相を、青春というのだ。
――――著・サミュエル・ウルマン「青春」
もし、その心の在り方が青春で。
俺の周囲の連中が青春を謳歌しているというのならば。
俺はそんなもの要らない。
もし、その心の在り方が青春で。
青春を謳歌することが、青少年にとっての正義であるならば。
俺は正義なんて要らない。
この世界のどこに勇猛心を持った人間がいる。
この世界のどこに冒険心に溢れた人間がいる。
俺を拒絶し、俺を認めず、俺に悪を押し付け、俺を排斥することで、見知らぬ他の誰かが得たもの。
それが青春と正義だ。
俺にとって欺瞞と偽善と悪意でしかないそれらのどこに、情熱があるというのだ。
青春を送ることが綺麗で豊かで愛ある人生であるというのなら。
俺はそんなもの要らない。
俺は汚く、腐りながらも、独りで生きていく。
それを惨めだとは言わせない。
何故ならその生き方の先に欲しい物があるからだ。
排斥された結果などではない。
そのために独りでいることが最善だと――俺自身が、俺の意思で、考え、選択し、捨てた結果の道なのだ。
信念をもって、独りでいよう。
人の優しさを疑い、人の笑顔に失望しよう。
愛を信じず、けれど憎しみを拒絶しよう。
他人を理解出来るはずだなんて傲慢さを捨て、
他人に理解してもらおうだなんて期待せず、
俺が決めた、俺だけにできる、俺だからできる、俺の生き方を貫く。
その生き方が、たとえ誰かから見て間違っていたものだとしても。
どれだけ汚く腐り果て、地を這い、血を吐き、泥を啜り、涙が枯れても。
自己満足の果てに、何も残らないのだとしても。
きっとその先に、俺が求める、俺の本物があるはずだから。
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「フフフフ」
日時はもうすぐ七時半。あと数時間後に、俺の魔法科高校での生活がスタートする。その俺の高校初日にふさわしい、決意の表明だ。
日記帳に記した言葉の芸術を眺め、満足げに閉じたその先に――
「お兄ちゃん、それ、なんかとっても中二病臭いよ。黒歴史になるだけだからって、もう卒業したんじゃなかったっけ? 小町的にポイント低いからやめてね。後、さっさとご飯食べちゃわないと入学式遅刻するよー」
「ぐはぁっ!」
妹の容赦ない一撃が深々と俺の心を抉ったのだった。