暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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ものすごく長くなりました!()
……が、一学期を締める大事なお話であり、オリ主とカルマとそれを見守るE組の関係をはっきり描く大事な部分なのでしっかり書き込みました!

お時間ある時にぜひ読み進めてください。
このお話の変更に伴って、番外編も一部差し替えます……!




39話 終業の時間・一学期

 一学期末テストという、私たちにとっての激闘の2日間を終えて、生徒にとっては少しの休息期間、先生たちにとっては大量の採点に追われただろう……3日後。全ての採点を終えたテストの答案たちが、E組の教室に届けられた。

 この学校では答案と一緒に学年順位も届けられるから……一覧とかになった掲示を待たなくても殺せんせーの触手破壊権も、A組との賭けの勝負も、一目瞭然というわけだ。

 

 窓にA組との勝敗を記録する紙を準備してくれた優月ちゃんも、テスト結果を待ち望んでいたみんなも祈るように先生を見つめている。

 

「では、……発表します。まずは英語から……E組の1位、そして、学年でも1位!中村莉桜!!」

 

「どや〜!」

 

 莉桜ちゃんが1位……さすがすぎる。やる気にムラっ気があるとか殺せんせー言ってるけど、そのムラっ気のあるやる気に触手破壊権なんて特典をつけて、火をつけたのは先生だよ。

 莉桜ちゃんに答案を返したあとに他の人にもマッハで答案が返却された。私は98点……単語記述問題を1つ間違えて減点されちゃった。

 

「続いて国語……E組1位は神崎有希子!……がしかし、学年1位は浅野学秀!!」

 

「やっぱ点とるなァ、浅野は……」

 

「中間テストよりも難易度はかなり高かったのに……それで満点とってきたか。しかも英語なんて中村と1点差だぜ?全教科に隙が無いよな……」

 

 浅野くんは満点……各教科のスペシャリスト、なんて言われている人たちでも浅野くんの点数には及ばない……つまり、五英傑と呼ばれていても、結局は浅野くんに勝たない限り意味が無いんだ。……英語、莉桜ちゃんと1点差だったみたいだし。

 ちなみに私の国語は95点だった。

 

「では、続けて返しますよォ……社会!E組1位は磯貝悠馬君、そして学年では……おめでとう!浅野君を抑えて学年1位!」

 

「よっし!!」

 

「これで2勝1敗だよ!」

 

 普段落ち着いている姿ばかり見る磯貝くんが、立ち上がってまで大きくガッツポーズをしている。ここで学年1位を取れたことは大きい。私は……95点。

 

「次は、理科……奥田か!」

 

「っ、」

 

「……だいじょぶだよ、愛美ちゃん」

 

 発表する直前に緊張で体を固くした愛美ちゃんの肩を後ろから軽く撫でる。愛美ちゃんの理科への愛情はみんながよく知ってるから……きっと、結果にも出てるはずだから。

 

「E組1位は、奥田愛美。そして……素晴らしい!学年1位も奥田愛美!!」

 

「「「よっしゃーーっ!!!」」」

 

「3勝1敗!数学の結果待たずして、E組が勝ち越し決定だ!」

 

「仕事したな奥田!触手1本お前のモンだ!」

 

 ほっとしながら答案を取りに行く愛美ちゃん。みんなに褒められ、讃えられて……普段こういう場で注目を浴びることがないからか照れくさそうだ。席に戻ってきた彼女と目が合い……ハイタッチで讃えた。

 ……ちなみに私は94点だった。ボルタ電池とダニエル電池……両方書いて正解だった……これも、愛美ちゃんに聞いておいたおかげ。

 

「最後は数学だな!」

 

「カルマと真尾か……!」

 

「さぁ、最後の主要5教科の返却ですよ……数学!E組の1位は……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルマside

 各教科それぞれのテストが返却される中、数学以外の教科は、まぁ、こんなもんかな……って感じだった。若干点数が下がった気がしないでもないけど、総合点トップじゃなくても俺の得意教科は数学……当然トップだろうし。

 だから……だから、数学が返却された瞬間、「ありえない」って思いと「なんで」って気持ちでいっぱいになって、気が付いたら教室を飛び出していて……いつの間にか校舎から離れた木の幹にもたれかかっていた。

 

 ぐしゃりと握りしめた答案には、受け入れたくないけど現実でしかない点数が大きく記されている。

 

 

 

 ──赤羽業、数学85点……学年10位。

 ──5教科総合469点、……学年、13位。

 

 

 

 ……何が正しい勝ち方だ。

 

 ……何が、通常運転で、余裕で浅野に勝つ、だ。

 

 どこにもぶつけようのない自分への怒りと悔しさで、歯を食いしばるしかなかった。

 

「……さすがにA組は強い」

 

 ……くそ、何でここに来てんだよ。せっかく5教科争いでA組に勝って、クラスはお祭り騒ぎにでもなってんだろ……そっちにいればいいのに。

 

「5教科総合はアミサさんを除いて7位まで独占。E組のトップはアミサさんの4位が最高でした」

 

 ……アミサ。

 

 

 

 ──真尾有美紗。数学99点……学年2位

 ──5教科総合481点、学年4位

 

 

 

「アミサさんは今回あらゆる知識(もの)を吸収し、入院による勉強の遅れというハンデをものともせずに自分なりの戦術でぶつかってみせた……当然の結果です。A組の皆も負けず劣らず勉強した、テストの難易度も上がっていた、怠け者がついていけるはずもない」

 

 コイツがなんとなく、言いたいことは分かる気がする。明らかに俺を煽りに来てんだろ……いつもなら適当にはぐらかして、軽く流してやればいいのに、今は何を言い返せばいいのか、こんな時に限って俺の頭は働かない。

 

「…………何が言いたいの」

 

「『余裕で勝つ俺カッコいい、これならあの子も俺のことを見直して他の奴より俺を頼ってくれる』……なんて考えてたでしょ。恥ずかしいですねぇ〜」

 

「……っっ!!」

 

 やっとの思いで返した言葉に対する殺せんせーの指摘は、完全に図星だった……自分でも分かるほどに一気に顔がアツくなる。

 自分の努力不足が招いた屈辱と、考えていたことを見透かされていて……しかも全く実現できずに妄想で終わった恥ずかしさとで、きっと首まで真っ赤になってるんだろう。

 

「先生の触手を破壊する権利を得たのは……中村さん、磯貝君、奥田さんの3名。暗殺においても賭けにおいても、君は今回何の戦力にもなれなかった。……君は周りを見くびったあまり、彼女に言ったのではないですか?俺の方ができるのに、とか」

 

 ……言った。

 

 いつでも俺のところに最初に来てたくせに、最近は俺を頼らず周りのヤツらに懐きにいくあの子にイライラして、元々容姿も仕草も可愛いからあの子の本質を分かったヤツから人気が出ているのにムカついて、なのに本人は懐いた奴には距離が近いし無自覚に誘惑してるし……周りの気持ちを察するのが上手いくせに、俺の気持ちに気づいてくれないし。

 渚君に相談してもどうにもならないから、1人で抱えてた気持ちがもう、抑え切れなくて……あの時、なんで、俺に頼る前に他の奴なんかに頼るんだよって思ったら、気付いた時には口走ってた。

 

「分かりましたか?殺るべき時に殺るべき事を殺れない者は、暗殺教室(この教室)では存在感を無くしていく。刃を研ぐのを怠った君は暗殺者じゃない。錆びた刃を自慢げに掲げた、ただのガキです」

 

「つっ!!」

 

 ……言い返せるわけ、なかった。いつの間にか俺は彼女が1番嫌ってる、自分の立場に驕って人を見下すってことを自然にやってたってことじゃん。

 完全に人のことを舐めた顔をした先生に痛いところを言葉でも物理でも突かれまくって、いろんな感情が複雑に混ざりあって、その場に居続けることなんてもうできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数学のテスト結果が発表された後。カルマは自分の答案を見た瞬間に目を見開いたかと思えば、机に乱雑に広げていた答案を全て掴んで外へと出て行ってしまった。

 ……彼の点数とか、順位は分からない。もしかしたら一緒に呼ばれるかもしれないと思っていた数学のE組1位を取って、名前を呼ばれたのは私だけだったから。

 

 A組に勝って祝賀ムードのみんなは、きっと彼が教室を出ていったことにほとんどの人が気づいてない……途中で「少し野暮用です」っていって出て行った殺せんせーは知ってるのかもしれないけど。

 

 そして、その殺せんせーが帰ってきたのに……カルマの席は空席のままだった。殺せんせーはまだ嬉しそうに喜びあってるみんなを見て、ニコニコして頷いて……あ、何か話そうとしてる。

 ……殺せんせーはもしかして、今回カルマに触手の破壊権は無いからってことで、彼が自分で落ち着いて帰ってくるまでに破壊を終わらせておくつもりなのかな。みんなが彼の存在を気にしないまま進んで……それで、いいのかな。

 

「うだうだ悩んでんなよ、真尾」

 

「!」

 

 寺坂くん……?彼の席に顔を向けてみると、顔は前だけど、目線だけは私の方へ向けていた。……そっか、彼もカルマの隣の席だし、外に出るには彼の後ろを通らなきゃだから出ていったのに気づいて……

 

「テメーが1番こいつを気にしてるんなら、動くのもテメーだろが。ほっといたら他の奴ら、マジで気付かねぇままだぞ」

 

 ……そうだ、寺坂くんの言う通りだ。気にしてる人が動かなきゃ、誰も動くわけがない……大事なのは自分がどうしたいか、だね。

 

 でも私授業とか抜け出したことないんだけど、どうやればいいのかな……1つだけ知ってる方法あるけど、でも……ああもう、なるようになれ、かな。

 

「ヌルフフフ、さて皆さん素晴らしい成績でした。5教科プラス総合点の……」

 

「……ッ、せ、先生!」

 

「にゅ?はい、アミサさんどうしました?」

 

 私がいきなり声を上げて席を立つ、なんてことを1人でやったことがないからだろう……みんなが見てる。心臓がバクバクする……ホントに、このやり方でいいの?……でも、これしか私には思いつかないから。

 

「私、これから……っ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふ、腹痛が痛くなる予定なので行ってきますッ!」

 

「はい、いってらっしゃ……、ん?……んにゅあああっ!?あ、アミサさんんんんっ!?!?!?」

 

 ……言い逃げするように走って出ていった教室から、殺せんせーのものすごい叫び声が聞こえた気がしたけど、あえて聞かなかったことにした。だって、私が今したいことは、彼に会うことだったから。

 

 

 

 

 

「ぶふっ、ま、真尾の奴……あの時のカルマとほとんど同じこと言って出ていったぞ……っ!!!」

 

「お、思いつかなかったんでしょ……っ、こうやって1人で堂々と抜け出すの、あの子初めてだから……っ、あははははははっ!!!」

 

「結局は、なんだかんだと頼りにしてるのはカルマ君ってね。お互い早く気づけばいいのにー……」

 

「まったく、みなさんも人が悪いですねぇ……普通に迎えにいくといえば普通に送り出したというのに……では、先生は様子を覗きに行ってきましょうかね……ヌルフフフ」

 

「「「ずりぃ!!」」」

 

「先生のマッハのスピードは、こういう時に使うためにあるんですよ!……と言っても、納得いってなさそうですねぇ……では、これならどうです?」

 

『……?よく分かりませんが、おまかせください!』

 

「……なーるほど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルマside

 

「…………」

 

 ある程度、気持ちに整理がついて、落ち着いたら教室へ帰るつもりだった。そのつもりだったのに、今度は俺が傷つけてしまった彼女に顔を合わせづらくなって……俺はよくサボる時に使う1つの木の上に寝転がっていた。

 結構な高さがあるから、ほとんど邪魔されることもないし下からも見えにくい……今みたいな気分の時には絶好の隠れ場所だと思ってた。なのに。

 

「……カルマ」

 

「……!……何」

 

 ……今、1番顔を合わせづらい相手が、自分から来てしまった。なんでだよ、俺この場所教えたことないと思うんだけど……

 

「教室、帰ろ?……降りてきてよ」

 

「……アミサだけ、帰りなよ。どーせ磯貝がそろそろ賭けで奪ったアレの使い道を先生に話してるとこじゃないの」

 

「……やだ……降りてこないなら、私がそっちに行く」

 

「……話聞いてる?……って、は?」

 

 アミサと話がどこか噛み合わなくて思わずツッこんで体を起こした時だった。座る枝に軽い揺れがしたかと思えば、俺が寝転んでいた枝の上にアミサが乗っていた。

 ……今の一瞬で俺がいつもここに登る時のように木登りしたとは思えない……まさか、跳躍1つでここまで来たってこと?

 

「……これくらいなら、ジャンプで届くよ。私のこと、カルマなら知ってるでしょ?……朝飯前なんだから」

 

「……そういえば、そうだったね」

 

「……ねえ、カルマ……私ね、カルマに近くで見ててほしかったの。最近、いつ話しても、カルマは遠くにいて、私のことを見てくれない……ずっと不機嫌で、でも、なんでかなんて分かんなかった。どれだけ考えても分からないし、誰も、教えてくれなかった。」

 

 俺が近くにいなかったって……だってそれは、アミサが、俺や渚君以外の人のところにばかり最近行くようになったからで……いつの間にか味方を増やして、いつの間にか俺等以外にも寄りかかるようになって。

 このままじゃ俺等を、俺を必要としなくなるんじゃないかって……気付いたら、嫌な感情ばかりが胸を占めていた。

 

 俺自身が抱えてたこの感情……あの時、抑えきれなくなってアミサにあたってしまった時。

 

〝きっと中間テストより、点数を取りにくくなってる……それに、A組との対決があるからってみんなが頑張ってるから……〟

 

〝殺せんせーが言うことがつまんないのは私も思った。だけど……努力は、しなくちゃ……ついてけないと思う。だから、みんなで……〟

 

 この子は、無理やり押さえつけて、キツイ言葉を投げかけるなんて酷いことをしたってのに、俺をずっと気にしてた。校舎裏(あの場所)から離れた後、何となくすぐに帰る気になれなくて校舎を曲がった所で立ち止まっていたら……声が聞こえた。

 

〝……もう、分かんないよ……っ!カルマが不機嫌になってる理由も、なんで私がこんなにぐちゃぐちゃな気持ちになるのかも……分かんないよ……こんなの、知らない、なんで……これ、……なんで、いたいの……いたいよぉ……〟

 

 俺が分からないって、心が、いたいって…………あれ、俺……ちゃんと、最後にちゃんと彼女の目を見て話したのって、いつだっけ……?

 

「私、知らないことが多いから、考えることはできるけど、答えは教えてくれなきゃ分かんない。何も言ってくれなかったら、わかんないよ……ねぇ、どうしたら、また近くにいられるの……?私、やっぱり近くにいすぎたの?カルマの、迷惑なの……?」

 

アミサはいつでも真っ直ぐだ。

……目を逸らしてたのは、アミサじゃない

勝手に嫉妬して避けてた、俺の方じゃん

 

「……ッごめん!」

 

「!!」

 

 いてもたってもいられなくて、木の上で狭い中、アミサに体を向けて頭を下げる。理由も言わずに避けて、あたって、謝って済むなんて思えないくらい、傷つけたと思う……今回悪いのは、完全に俺だ。

 

「……最近アミサ、女子も男子も関係なく俺や渚君以外の奴ばっか頼るし、甘えに行くし……俺以外の男子に撫でられても嫌がるどころか撫でられて嬉しそうにしてるし……イトナにセクハラされても気付かないし、浅野君には告白されてるし、岡島のハグとか拒もうとしないし、いつの間にか進藤にまで気に入られてるし……」

 

「え、と……?つまり、どういうこと……?」

 

 言わなきゃわかんないって言うから、今まで思ってたことをこの際ぶっちゃけちゃえばいいかとつらつら口から出してみたら……俺自身、何言ってるのか分からなくなってくるくらい、後から後から出てくる。

 どんだけ俺、周りと関われるようにしたいとか言って、実際は他の奴らと関わらせるのが嫌だったんだっての……つまり、

 

「……ずっと、1番俺のそばにいると思ってたのに、アミサが他の奴らに近付けるようになってから……なんで1番知ってるのは俺なのにって、嫉妬してた。でも、それをそのままアミサに言うのもかっこ悪いから……俺が、勝手に避けてた。その結果、傷つけて……本トに、ごめん……」

 

 外の世界へ関われるように、広げようとしたのは俺等のハズなのに……いざ、広げさせてみたら、思ってた以上にアミサが人気者になってて、俺だけが知ってたのにって、嫌になってた。

 アミサのことを好きだって自覚してから、それまで以上にアピールしてきたつもりだったけど気付かないし……そんな時に仲のいい男子はできるわファンはできるわ告白されてるわで、正直焦ってたんだと思う。

 

 だけど、俺とアミサは家族に知られて応援してもらえてるとはいってもただの友だちでしかなくて、他に名前のある関係があるわけじゃない。強いて言うなら保護者と被保護者のようなものだけど、それでも嫉妬した気持ちをぶつけるわけにはいかない……吐き出し口がわからないままに、気が付いたら本人を傷つけてた。

 

 頭を下げたまま、じっと彼女の反応を待っていたら、いつもより小さな声が聞こえた。

 

「……私、あの日から、ずっとカルマがそばにいてくれて……これ以上、寄りかかってたらカルマの自由を奪っちゃうから……迷惑になるって、思って。だから、カルマと渚くんから、少しずつ離れなくちゃいけないのかなって思ってた」

 

「そんなこと……」

 

「でも、やっぱり……どんなにたくさん頼れる人ができても、特にカルマはずっと一緒にいてくれたんだもん、離れていっちゃ、やだ……ッ!崖から落ちた時も、全部……全部信じられなくなった時に言ってくれた……『死んでも一緒にいるから、一人にしない』って、……私はカルマが迷惑でもその言葉、信じてて、ッ!?」

 

 アミサはいつも素直で正直だから話す言葉はほとんど本音だけど、我慢してることはきっとある。……今、彼女が漏らした本音は……離れていったらヤダ、なんて初めて聞いた思いだった。

 俺がアミサと一緒にいたことは、彼女に言ってきた言葉は全部無駄じゃなかったんだって……それがよく伝わってきた。

 

 今この子の手を掴まなかったら、離したら、この先絶対後悔するって思ったから……離れようとした彼女の手を取って、俺の方に軽く引っ張る。

 不安定な場所にいることもあって驚いた顔をしながら、でも抵抗も無く簡単にこちらへ倒れてくるから、そのまま腕の中に閉じ込める。……そうやって、俺が支えるって信じて体を預けてくるところも、ずるいんだよね……

 

「──ごめん、本トに。迷惑なんかじゃないから……むしろ、頼ってよ。俺はアミサに誰より1番に頼ってほしいし、俺だって一緒にいたいんだから」

 

「……うん」

 

「腕も、ごめん。俺、あの時は勝手に溜め込んだイライラの吐き出しかたもわかんなくて、抑えらんなくなってた。怖かった……?」

 

「……うん、カルマの気持ちも真っ黒でぐちゃぐちゃしたものしか、感じなかったし、私もわけわかんなく、なってて」

 

「うわ、それは俺でも嫌だわ……、……E組の皆のこと、正直侮ってたよ。俺も負けてらんないや」

 

「……、う、ん……ッ…」

 

 最後に返事をした後にアミサは自分から俺の胸に顔を押し付けて……それから俺にしがみつきながら小さく聞こえた嗚咽……それだけ、我慢させてたんだ。

 少しの間、そのまましがみついていたアミサがもぞもぞと体勢を変えようとしてるのに気づいて腕を緩めてやれば、遠慮がちにこちらを見上げて口を開く。……うん、ちょっと刺激的な表情だけど、雑念はどっかいって欲しい。

 

「カルマ……もう1個だけ、約束増やしていい……?」

 

「いいよ、なに?」

 

「……私、ここにいるよ。いつか、離れなきゃいけない時が来るまで、E組のみんなのところに、カルマの隣に、いたいの。……だから、ちゃんと見ててくれる……?」

 

「……ん、約束。ちゃんと見てるし、何かあっても引き戻してあげる」

 

 『死んでも一緒にいる』……これは俺からアミサへの誓い。なんでも1人で抱え込んで、自分1人で不幸を背負えばみんなのためになると平然と行動するこの子を1人になんてできない。

 愛しい子を独りぼっちになんて絶対させるものか……何かあっても、最期まで一緒にいるんだと、あの時、まだ自覚してない時から俺は誓ってたんだ。

 

 『アミサを見てる』……アミサからの、初めてのお願い。今までは俺が勝手に見て、世話をしていた感覚だったけど、これからはアミサが望むことであり、ついでに俺自身が望むことでもある。

 

 小さな彼女の額に俺の額を合わせて、改めて誓う……涙で濡れた表情で嬉しそうに笑うその顔を、もう俺のせいで歪めたくない。

 

 しばらくの間、俺自身の気持ちを全部整理できるまで、彼女が落ち着くまで……俺達は抱き合ったまま木の上で過ごしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教室へ戻ってきたら私は女の子たちに、カルマは男の子たちに教室の別々の隅っこの方へと連れ去られた。……表現は間違ってない、連れ去られたのだ。

 

「なるほどねー……カルマの嫉妬が全ての原因だった、と。……あーあー、目ぇ真っ赤にしちゃって……ねー?カルマのせいで!

 

「E組には構い方がオーバーな奴はいるけど、カルマ君がいるって分かってるんだから妹分を構ってるに過ぎないって、ねー!気づいてもよくなーい?嫉妬する対象は外でしょ外!」

 

「これみよがしに言わなくても分かってるって……」

 

「分からず嫉妬爆発させて傷付けて泣かせてんのどこの、誰だっけー?

 

「…………ぅぐ、……俺、だけどさぁ……」

 

 そして同じ教室内だから、なんだかんだと両方の声は丸聞こえ、というか、女の子たちもわざと聞こえるように話してる気がするからナイショ話ではない、と思う。

 分かれてる意味はなんかあるのかな……真ん中の教卓でニマニマしてる殺せんせーは、どっちも聞こえて楽しそうだけど。

 

「はい、アミサちゃん、冷やしてください……」

 

「あ、ありがと、愛美ちゃん……カルマがずっと不機嫌だったのも、そのせいだったんだって。やっと分かったけど、……嫉妬って、何にというか……これ、私にどうにかできるやつ……?これからどうすればいいの?」

 

「とりあえずは、私達女子はともかく男子に頼りに行き過ぎないことかな〜」

 

「そっか……うん、分かった」

 

「「「(女子はともかくって……今サラッと女子に予防線張ったよね、倉橋ちゃん)」」」

 

「今まで通りに、基本はカルマに頼りにいきなさい。それでダメな時とか、……また見当違いなことしだした時は遠慮なく他の男子を頼って焦らせときなさい

 

「え、あの、狭間サン;?」

 

「狭間が参戦するのは珍しいな……よっぽどだぞカルマ;」

 

「……ウン……」

 

「それがいいわよ、いいお灸になるでしょ」

 

「……正直、あの厨二になりきれない斜め上の、そのまた斜め上の、そのまた斜め上男のどこがいいのか知らないけどね」

 

「……、……ん?綺羅々ちゃん、言葉が難しいよ……?」

 

「……そのままでいなさい、アミサ。あんたは闇に染まれないわ……」

 

 

 

 

 

「真尾との勉強会やった奴らに聞いたけどよ……お前の嫉妬怖ぇーわ。どんだけ溜め込んでんだよ」

 

「女の肌にアザつけるほど掴むかフツー。そりゃ真尾も泣くわ」

 

「そもそもカルマ、女子にやることじゃないって……右腕かなり強く握り締めた跡がついてた上に、左肩まで打撲みたいなアザできてたぞ?」

 

「……え゛っ」

 

「えって、お前まさか……」

 

「……右腕、だけだと思ってた……」

 

「おまっ……」

 

「「「カルマ君、さいてー……」」」

 

「……分かってるから女子、声揃えないでくれる……?」

 

「というかシチュエーション的には壁ドンのはずなのに、お前のソレはカツアゲなんだよ……キュンと来るどころが恐怖与えてるだろ……」

 

「は?なんで知ってんの?」

 

「殺せんせー曰く、〝校舎裏なんて誰が通るかも分からない場所で話すなんて、誰かに聞かれても仕方ないと思いませんか?〟だってさ。ちなみに俺以外にも中村と渚、茅野と神崎と奥田が知ってるからな、必要とあらば広めるぞ」

 

「うん、磯貝もなかなかにE組に染まってきたな」

 

「…………りょーかい」

 

「一応僕達も彼女を恋愛感情の有無に関係なく可愛がってるんだ。律に並ぶE組の癒し……それなりに心配してることを忘れないでほしいね」

 

「……悪かったって。俺もこんなにめんどくさい感情あんの今回初めて知ったし、もつのも初めてだから、勝手が分かんないの。……でも、もう俺のせいであんな顔はさせないって決めたから」

 

「……できる限り、離すなよ。じゃなきゃお前がなんて言おうがどう思おうが、お前より先に俺等が構いに行くからな」

 

「……モチ。離す気は無いから安心して」

 

 女の子も、男の子もみんな、私たちの仲違いをだいぶ心配してくれていたことには変わりなくて、仲直りできたことを自分のことみたいに喜んでくれたのが、嬉しかった。

 

 まぁ、全部それで丸く終わる……ってことがないのがE組なわけで。

 

「カルマ〜……あそこまでやっておいて、なんで言わねぇんだよ!?手ぇ引いて抱きしめて挙句に額合わせて?『一緒にいたい』とまで言っといて、なんで告白(あっち)は言えねーのか不思議で仕方ねー!!」

 

「あ、バカ!」

 

「無理だって、ああいう子だから俺もまだあれ以上手が出せ、な、…………今、なんて言った?」

 

「ギクッ」

 

「校舎裏のことはまだいいよ、確かに見られる可能性のある場所でやったんだから。……で?俺誰にも言ってなかったサボり場所でなぜか見つけてきたアミサと話してたはずなんだよね……ねぇ、なんで知ってんの?」

 

「い、いや、なんでも……」

 

「……なんで、知ってんの?」

 

『──あ、カルマさんにアミサさん、おかえりなさい!皆さん映像はしっかり送れてましたか?』

 

「り、律!?タイミングが……!」

 

「律を使ったってわけ……へー……そー……ふーん……。

律、《誰》に頼まれて《誰》《いつ》《どこ》から《どこ》まで《どんなの》撮って《誰》に渡したのか、詳細」

 

『……?はい!《殺せんせー》に頼まれて、《殺せんせー》《先程》《アミサさんが木に飛び乗るところ》から《最後にお二人が抱き合ってるところ》まで撮影されて、《カルマさんが謝るところからは音声付き》で、《お二人以外のクラス全員》にお送りしました!編集は私が担当してます!』

 

「…………その動画送った全員のスマホと携帯、バグらせるウイルス開発できたりする?」

 

『?できますし既にありますが、今すぐ実行しますか?』

 

「あ、本ト?じゃあ……」

 

「じゃあ、じゃねーよ!!!」

 

「おい、カルマ止めろ!口塞げ!」

 

「いいじゃん、散々こっちに心配かけまくった代わりとして、覗き見たって!」

 

「え、映画のワンシーンみたいですごく感動しました!」

 

「もご、……うっさい!プライバシーの侵害だし、人のプライベートで楽しみやがって……!」

 

 まさかの、あの時の様子、動画に撮られていたらしい。律ちゃんが音声の一部をカットして編集したみたいだけど……あ、あのやり取りをみんな知ってるっていうの……!?

 

「うぅ……なんで、あんな恥ずかしいとこ……っ」

 

「アミサ、可愛かったよ〜っ、結局カルマを1番頼りにしてるんだなってよくわかって」

 

「約束とか物騒なとこはあったけどね……」

 

「しかも、奥田さんも言ってたけどほんと恋愛映画のワンシーンみたいでさ……これは後からカルマをからかえ……んん゛っ、記念に持っとくしかないなと思って、つい」

 

「つい、じゃないよ……泣いてるとことか、醜い感情全部出しちゃってるとこ、みんな持ってるってこと、でしょ……?あんなの……は、恥ずかしいのに……っ」

 

「……そこか;」

 

「もっと照れなきゃいけないところあるだろうに;」

 

「今までの距離感が近すぎた弊害かな……」

 

「カルマ君、本ト前途多難すぎる……;」

 

 いたたまれなくなって両手で顔を覆う、顔がアツくなってきてるのを自覚できる……。そんな私を周りの女子たちが撫でてくれる……のは嬉しいんだけど、みんな見て知ってるってことには違いないよね……?!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、動画を……というよりも、あのやり取りをみんなに見られてしまった事実はもう変えようがないから、もしも拡散した場合は問答無用でウイルス汚染、もしくは携帯をへし折るということで決着がつき、やっと全員が席についた。

 ……これ、悪いのって喧嘩してた私たちでも、悪ノリしたクラスメイトでもなくて、言い出しっぺの殺せんせーだよね。1人だけこの騒ぎのこの時に限って教室の外に避難するなんて……!

 

「では、気を取り直して……」

 

「(じー……)」

 

「……シクシクシク、アミサさんの視線がとても痛いですが、進めます……。5教科プラス総合点の6つ中、皆さんが取れたトップは3つです。早速暗殺の方を始めましょうか……トップの3人はどうぞ3本ご自由に」

 

 ご自由に、と破壊予約済の触手3本を差し出す殺せんせー……烏間先生に教えてもらったあの舐めた顔をしてるのを見ると、この程度では殺せんせーにとっては、軽いハンデくらいなものなんだろう。

 運動能力が30%落ちるくらいならどうとでもできるってこと?だったらどうすべきか……と、思っていたら、いくつか椅子を引く音が教室に響いた。

 

「おい、待てよタコ。5教科のトップは3人じゃねーぞ」

 

 それは寺坂くんを筆頭に、吉田くん、村松くん、綺羅々ちゃんの4人だった。4人ともがテストの答案を持って前に出ている。

 

「にゅ?3人ですよ、寺坂君。国・英・社・理・数、合わせて……」

 

「はァ?アホ抜かせ。5教科っつったら、数・英・社・理……あと、『家』だろ」

 

 バサリと、宣言と同時に教卓の上に広げられたそれは、一学期末テスト9教科の内、副教科扱いである家庭科のテスト用紙で……それが寺坂くんを筆頭に村松くん、吉田くん、綺羅々ちゃんの計4枚分。もちろん自信を持って叩きつけられたそれは、全て100点満点なわけで。

 

か、家庭科ぁ〜〜〜ッッ!?!?!?ちょ、待って、家庭科のテストなんてついででしょ!?こんなのだけ、何本気で100点取ってるんです君達は!?」

 

「だーれもどの5教科、なんて言ってねーよなァ?」

 

「くっくっ、クラス全員でやりゃ良かった、この作戦」

 

 ……家庭科。主要5教科でない分、受験に使われない家庭科はあまり重要視されない……よって試験問題は教科担任の好みで自由に決められるもの。

 本校舎の人たちは1人の同じ家庭科の先生から授業を受けているだろうけど、私たちは殺せんせーって別の先生から授業を受けていて……好みも授業内容もまったく違う。

 

 そんな中で100点を狙ってとって1位になるというのは主要5教科で100点をとるよりも難しいことのはず……まさか『どの5教科か指定がなかったから傾向さえ掴めば点数を稼ぎやすい家庭科で100点を取る』なんて盲点をついたことをしているなんて思わなかった……さすが、実行の寺坂くんだと思う。……そういえば病院でカルマも言ってたっけ。

 

〝寺坂組、コソコソと本校舎の方で何やら情報収集してるみたいだよ?何やりたいのかまでは興味無いから知らないけど〟

 

 ……って。それに、殺せんせーは最初の条件の提示の時に言っていた。A組との5教科トップ争いのせいで、『主要5教科のトップは触手の破壊権を得る』ってみんなすり変わって考えちゃってるみたいだけど。

 

〝教科ごとに学年1位を取った者には……触手を1本破壊する権利を進呈します〟

 

〝総合点と5教科全てでそれぞれ誰かがトップを取れば、6本もの触手が破壊できます。〟

 

 最初に言ってるよね、教科ごとにって。どこにも主要5教科でなくてはいけないなんて縛りはなかった、ということは家庭科もオーケーだと思うけどな……

 

 と、ここまで考えたところで、私は思い出したことがあった。慌ててファイルにしまった私の期末テストをあさって……うん、寺坂くんがいいならこれもいいはず。せっかくだから、殺せんせーにはもうちょっと刃をプレゼントしてこよう。

 

「……アミサ、何してんの?」

 

「えへへ、いいこと思いついたんだ。カルマ、後から援護してくれる……?」

 

 チラ、とその答案()()を見せればカルマは納得したのかニヤリと笑って背中を押してくれた。私も笑い返してから、寺坂くんたちとまだ言い合いしてる殺せんせーの元に私は近づいていく。

 

「で、ですから……!」

 

「殺せんせー」

 

「にゅや、アミサさん……?」

 

「先生はこの暗殺教室の期末テストでは、教科ごとに学年1位をとった人に触手1本って言ってた、よね?数・英・社・理・家の5教科中で、」

 

「「「(な、ナチュラルに家庭科が5教科入りしている……!!)」」」

 

「数学って私がE組トップだったけど、学年1位じゃなかった、もんね」

 

「そ、そうですね……?」

 

「なら、これ、あげる」

 

 

 

──真尾有美紗。音楽100点、学年1位

 

 

 

「お、音楽〜〜ッ!?!?」

 

「あ、すっかり忘れてたけど……音楽って真尾の得意教科じゃん!」

 

「てことは……」

 

「これで、英・社・理・家・音……5教科全部トップ、だよ」

 

 むふー、とちょっと覗きに対する意趣返しができた気分で、得意げに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()笑っていると、殺せんせーはさすがにやばいと思い始めたのか、ワタワタと言い訳し始める……だいじょぶ、逃がしてあげない。

 

「ちょ、待って待って待って待って!アミサさん!?」

 

「……えっと……たりない?」

 

「……エ?」

 

「……出さないどこっかなって思ってたんだけど……」

 

 

 

───バサリ

 

 

 真尾有美紗。家庭科100点、学年1位

 

 

「待っ、え、はい???!?!?」

 

「だって、先生……5教科の中で学年1位を取ることは言ってたけど、触手の破壊権は1人1つだけ、なんて条件、なかったもんね……?」

 

私の思う、1番いい笑顔を向けて言ってみたら、殺せんせーはカチリと固まった。それをいいことに、他のクラスメイトたちは一気に畳み掛ける。

 

「……()()()とか、家庭科さんに失礼じゃね?殺せんせー……5教科の中じゃ最強といわれる家庭科さんにさ。それに、音楽だって、先生が最初に提示した条件はちゃんと満たしてるよね〜?」

 

「そーだぜ、先生!約束守れよ!」

 

「1番重要な家庭科さんで5人がトップ!音楽でも単独トップだぜ!」

 

「くそ、もう少し力入れてれば、俺も保健体育で満点だったのに……!」

 

「俺も、美術があればなー」

 

「合計触手9本!!」

 

「きゅ、きゅうほんっ!?ひいぃぃぃぃっ!!?!?」

 

 まだ、私たちだけが言い張ってるなら殺せんせーがあの手この手の言い訳を重ねて撤回できたかもしれないけど……E組で1番悪知恵が働くカルマを筆頭にクラス全員が盛り上がってしまえば、正当性のある理由を持ち出さない限り撤回することなんてできないだろう。

 上手くいってホッとしていたら、背中に答案を隠し持っていた時に、多分『家庭科』の文字が見えていたことで、ギリギリまでずっと笑いをこらえていたひなたちゃんと磯貝君、莉桜ちゃんと三村くんが笑いだした。

 

 そこで、殺せんせーがいない間にこっそりみんなで話し合った条件をさらに提示するため、笑いながら磯貝くんが立ち上がる。

 

「それに、1人1本だって言うならそれでもいいです。それでも8本……先生の運動能力を80%削れるから。……代わりに、1つだけ、認めてほしいことがあるの」

 

「ははっ、真尾もやるようになったな。ふぅ……殺せんせー、これはみんなで相談した事なんですが……この暗殺に、今回の賭けの『戦利品』も使わせてもらいます」

 

「…………What?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 期末テストが終わって程なくして……1学期の終業式。だけどまだ、私たちにはやるべきことがある。

 

「おお、やっと来たぜ……生徒会長サマがよ」

 

「……何の用かな。式の準備でE組に構ってる暇なんてないんだけど」

 

「おーう、待て待て。なんか忘れてるんじゃねーの?」

 

 ……A組に、浅野くんたち五英傑に対して、賭けのことを、みんなの前でしっかり報告して……後からごねられないようにしなくちゃいけない。

 

「浅野、賭けてたよな。5教科学年トップの数、勝った方が1つ要求できるって。要求はさっきメールで送信したけど……あれで構わないよな」

 

 磯貝くんがメールで要求はしたけど、この本校舎の体育館で結果を公開した理由は他でもない……全校生徒の前で認めさせるため。ちらほらと集まってきてる本校舎の生徒たちは、私たちの会話を聞いて噂はホントだったんだとひそひそ話し合ってる。

 寺坂くんたちはA組が家庭科とかの副教科を捨て教科として扱ってるのを知ってるから、わざわざそれをこの対決に含めてもいいって挑発を重ねてる……私も含めて5人も満点がいるからね、E組(こっち)には。

 

 そしてテストとは関係なく、私は彼に伝えたいことがあった。他の日でもいいのだけど、本校舎の生徒と必ず会えるのはこの日だし……カルマに相談したら、逃げられないようにこの日にやるべきだって言われたから。

 でもどうしたって周りの人たち、……他のクラスも、浅野くんの脇を固める……五英傑だっけ……の人たちが怖いので、カルマについて来てもらいながら前に出る。

 

「……浅野くん、その……」

 

「!……真尾さん、どうかしたのかい?」

 

「あ、あの、えっと……これ……」

 

 寺坂くんや磯貝くん、そしてE組みんなに向けていた荒々しい気配を、私が話しかけるとすぐに収めて優しく聞く姿勢に入ってくれた彼に、私が差し出したのは……入院の時に彼が差し入れてくれた2冊の本と、私がオススメしたい1冊の本。

 先に事情を話しているカルマ以外、周りはA組とE組っていうクラスの違う対立するはずの私たちが何の話をしているかわからずにビックリしてる。

 

「……病院にお見舞い、来てくれてたんだよね……お手紙も、本も、嬉しかった……これがあったから、つまらなくなかったの。借り物だから、本は返すけど……代わりに、私のオススメも読んでくれると、嬉しい、なって……」

 

「……ありがとう。ならこっちだけ受け取るよ……その2冊はもともとキミにプレゼントするつもりで買ってあったんだ」

 

「え、」

 

「それに……こちらを借りておけば、また会って話す口実になるだろう?あと……『運び屋とシスターのカバー裏』、確認しておいてくれ

 

 そう言って私が差し出した3冊の本の中から、私がオススメしたい本だけを抜き取ってふわりとした笑みを浮かべる浅野くん。最後に顔を近づけられて耳元でこそりと言われた言葉……それって、『カーネリア』のこと……?

 言われた言葉について少し考えて思考が飛んでいたのだけど、気がつけば隣にいたカルマが浅野くんを引き剥がして私をカルマの方へ引き寄せたところだった。

 

「……ちょっと、近いんだけど浅野君」

 

「……ふん、番犬のつもりか?赤羽。じゃあまたね、真尾さん」

 

 ……やっぱり、この2人って仲悪いけど、どこか仲いいよね。似てるところ、いっぱいあるし……絶対に否定されるから口に出さないけど、同族嫌悪って奴なのかな。しばらくカルマと浅野くんは2人で睨み合ってたけど、今度こそ式の準備のために浅野くんは去っていった。

 他の五英傑もあとに続く……あ、榊原くんが振り返って一礼していった。個人的に、彼は結構好感が持てるんだけどな……見下してないで、ちゃんと相手の実力を認める人だし。

 

 そして始まる終業式……ここで、いつものようにE組いじりがあったわけだけど、どうもウケが悪い。当然だよね、『エンドのE組』がトップ争いに参加しちゃったんだから。E組の最下位でも菅谷くんの95位……学年中位の成績を収めて見せた。もう、私たちは下を向かなくていい……私たちは式の最中、最後まで前を向いていることが出来た。

 

 

 

 

 

(彼女に対してだけ、声が甘くないか?浅野……)

 

(浅野君、やるじゃないか……耳にキスとか。意味は誘惑だっけ)

 

(……伝言を伝えただけだ。彼女はそんなことを知るはずもないだろう)

 

(やっぱり彼女の事だったんだね……あの協定書の一項……『A組トップの指定するE組の生徒はこの協定書の拘束に囚われないこととする』というのは)

 

(ふん……そういえば蓮、なぜ分かったんだ?僕は名前を出した覚えもなかったが)

 

(……ふっ、中1からずっと君の近くにいるんだ……それくらい分かるさ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「1人1冊です」

 

「でたよ、恒例過剰しおり……」

 

「これでも足りないくらいです!夏の誘惑は枚挙に暇がありませんから」

 

 終業式が終わって教室に帰ると、殺せんせー特製のしおりが配られた。……修学旅行よりもこれ、進化してるよね……分厚さ増えてるし重い……修学旅行のでさえふらつく重さだったのに、どうやって持って帰ればいいんだろう。

 数ページパラパラとめくっていると、ふと印刷の字がぶれているところを見つけた……あれ、ここも……違う、これぶれてるんじゃなくて……

 

「(殺せんせー、まさか、この人数分この分厚い冊子を……手書きしてる?)」

 

 文字の形がよくよく見ると一定じゃないのだ。ホントに、私たちの先生はいろいろと人外じみてると思う(外見から既に人外の担任に、人類最強完璧超人の体育教師に、世界に並ぶ者がいないほどのハニートラッパーに……)。

 

「さて、しおりが行き渡ったところで……これより夏休みに入るわけですが、皆さんにはメインイベントがありますねぇ」

 

「あぁ、賭けで奪ったこれの事ね」

 

「本来なら成績優秀クラス、つまりA組に与えられていた特典ですが、今回の期末テストはトップ50のほとんどをA組とE組で独占している……君達にだって貰う資格は充分にあります。────夏休み、椚ヶ丘中学校特別夏季講習、沖縄リゾート2泊3日!!!」

 

「「「いやっふー!!!」」」

 

 椚ヶ丘中学校の学校案内用パンフレットには、大きくそれの要項についてが載っている。みんなで1つの目標に向かって努力し、勝ち取った国内旅行……すごく、楽しみだ。

 

 ただ、楽しんでばかりはいられない。私たちE組にはこの旅行を使ってやりたい最大の目的があるのだから。

 

「君達の希望だと、触手を破壊する権利は教室(ここ)で使わず、この離島での合宿中に使いたいと」

 

「はい、触手を壊す権利はここで使います。もし認められなかった場合は、真尾の言う通り音楽の学年トップを利用しようかと思ってました」

 

「触手9本の大ハンデでも満足せず、四方を先生の苦手な水で囲まれたこの島で使い、万全に貪欲に命を狙う……正直に認めましょう。君たちは侮れない生徒達になった……アミサさんの学年トップを交渉に使う必要はありません。むしろ、アミサさんは違うことを願いたいのでは?」

 

「え、」

 

「えへへ……バレてましたか……先生の暗殺にコレの使用を認めてください。どこまで先生に効くのか、試してみたいんです」

 

 そう言って私が取り出して見せたのは戦術導力器(エニグマ)……これは何も無いところから創り出して放つ高位属性、空・時・幻のアーツよりも、環境に働きかけてそれを操る低位属性、火・水・風・土のアーツの方が負担が少ない。

 それに、私自身カンを鈍らせないための訓練にもなるし、きっと暗殺の要になるだろう水を大量に使うから役に立てる気がしたのだ。

 

「もちろん構いません。持てる力の全てをぶつけて、全力で向かってきなさい!……親御さんに見せる通知表は先程渡しました。これは、標的(せんせい)から暗殺者(あなたたち)への通知表です!」

 

 その言葉と同時に、殺せんせーが教室中にばらまいたのは……大量の二重丸。頑張ってきた1学期の、最高の通知表だった。

 

「一学期で培った基礎を存分に生かし、夏休みも沢山遊び、沢山学び、そして……沢山殺しましょう!」

 

 その締めの言葉と共に、殺せんせーは教室の窓から外へ出ていく。みんなも荷物を持って外へ出ていく。

 

「椚ヶ丘中学校3年E組、暗殺教室。基礎の一学期。これにて終業!!」

 

 

 

 

 




殺せんせーによる盗撮……もとい、オリ主とカルマのやり取りをみんなで見る番外編はこちら
https://syosetu.org/novel/138458/3.html



「アミサ、沖縄行く前に買い物、一緒に行くかんね!特に水着!私に選ばせなさい!」

「莉桜ちゃん……うん、一緒に行きたい!」

「中村、あんまり過激すぎないやつにしてよ?」

「へーへー、番犬さんが気に入りそうなやつ選んでやりますよ」

「…………なら、いいか」

「いいんだ……」





「……カーネリアのカバー裏……」

【@○○○○○○】

「……これって、メッセージアプリのアカウント……?」



++++++++++++++++++++



終わりました……!
一学期末テスト編、終了です!
お互いに初めてのものが多いせいで、周りがハラハラしてます。テスト含めていろいろ自覚していろいろ成長した一件となりました。

撮った動画はなんだかんだで消せなかったようですが、いざとなれば律のスイッチ一つで全データ吹き飛ぶようにされてます。さりげなくカルマのスマホにもその動画は送られていたりするのかも(オリ主には内緒)。

個人的に五英傑の中では榊原君は嫌いではないです……結構、人のことをよく見る人だと思うんですよね。なので、浅野君と対等に話せる1人として、ちょっとした理解者的立ち位置に。彼は周りに隠しまくってる浅野君の好意を早々に感じ取っていたり。でもナンパはやめない。

オリ主が音楽好きな設定覚えていた方はいるでしょうか?笑

では、次回からは夏休み編!
まだリゾートへは行かないで、ぼちぼち進めていこうと思います。


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