とある飛空士の重巡航管制機《アイガイオン》   作:篠乃丸@綾香

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あの料理か?
ああ、知っている。
話せば長い……
そう、古い話だ……
知ってるか?ラーメンってのは三つに分けられる。
さっぱりとした塩ラーメン。
こってりとした豚骨ラーメン。
コクがある醤油ラーメン。
この三つだ。
あいつはー

恋歌といえばこの食べ物、今回はギャグ回ですのでご安心を。


番外編〜食卓の鬼神〜

マカロフ大佐が空挺騎士団の夕食会に招かれる少し前……

 

その夜、センデジュアルの街はアイガイオン空中艦隊の歓迎ムードできらびやかに飾られていた。その様子は上空のアイガイオンからでも確認できるほどであり、夜空の星々のような綺麗さを感じる。

 

「美しいものだな……この街は……」

 

「そうでしょう、この街の住民は皆たくましく素晴らしいです……この灯火もそんな彼らの生きた証です……」

 

マカロフ大佐とロレンズはセンデジュアルの街を歩いていた。二人はあまりに美しいこの夜景に言葉を交わす。

 

彼らは歓迎会に参加するため、アイガイオンを降りてここまで来ていた。その間は他の士官たちが交代でその穴を代替わりする事になっている。

 

「ところで……我々やシュトリゴン隊の面々まで揃えてまで連れて行きたい場所はいったいどこなのかね?」

 

そう、今センデジュアルの街を歩いているのはロレンズとマカロフ大佐だけではない。マカロフ大佐の副官のレオナード少佐などのアイガイオン空中艦隊の主要幹部、そしてシュトリゴン隊各メンバー全員である。

 

普通、ここまで人を呼べば交代に支障が出る。特にパイロットは貴重であるが、今回はシュトリゴン隊のメンバーはパイロットスーツを着ておりいつでも戻れる体制にある。

 

ロレンズは彼らが一斉に降りたところを全員に声をかけて集めて来た。そのため全員で列をなして歩いている感じだ。時々周りから注目されているのか、サインをねだられたり、合い撮りで写真を撮られたり、まるで人気者のようであった。

 

それもそのはず、マカロフ大佐達艦隊の幹部メンバーは昼の演説にて主役級の演説をしており顔も割れている。

 

一方シュトリゴン隊のメンバーも「異世界の飛空士」として注目を集めていた。どこからパイロットスーツの情報がバレていたそうで(ロレンズは大方噂好きのナナコだと予想している)、イスラの住民や空挺騎士団員から質問責めにあっていた。

 

それもそのはず、彼らを「天使の援軍」と称して感謝しているイスラの住民にとっては、幹部メンバーもシュトリゴン隊もさながらアイドルのような存在である(セルゲイ少佐やシュトリゴン隊はともかく、他のメンバーはアイドルだなんて歳ではないが……)

 

そのためロレンズの目的地までたどり着くまでかなり時間を取られてしまっていた。

 

「それでしたらすぐに分かりますよ……もうすぐです」

 

ロレンズ達はセンデジュアルの街の一番はずれに近い場所までやって来た。そこにも屋台ができており、長い行列ができている。どうやらかなり繁盛しているようであり、席はほぼ満席で入り乱れている。見たところ、学生寮の食堂や中庭のテラス席を使ってスペースを確保しているらしいがそれでもだ。

 

ふと、マカロフ大佐は近くの店の看板が目に映る。そこにはサピン語……いやバレステロス語で……

 

「アリーメン……?」

 

と、書かれていた。マカロフ大佐は通訳なしでサピン語を理解できる、彼にとっては読むのは容易かった。たが、この言葉は聞いたことがなかった。見たところ食べ物を表す単語のようであり、あたりには鼻をそそるいい匂いがしていた。

 

「大佐……美味しそうな匂いがしますね……」

 

「ああ、これはおそらく"アレ"だな……」

 

「ええ、"アレ"ですね」

 

「まさかこの世界に来てまで食えるとは思わんかったな……これは楽しみだ」

 

「ま、まさかとは思いますが、ロレンズ少佐がそれを奢ってくれるのでしょうか?」

 

「どうやらそのようです。ですが、この列に並ぶのですか……時間はどれくらいかかるのでしょうか……」

 

幹部メンバーが思い思いに期待していると、店内で接客をしていた二人の少女が空のテーブルを拭いていると、ロレンズに気がついた。そのまま小走りで店の門をくぐると、ロレンズに駆け寄って来た。

 

「あ、来た来た!ロレンズさ〜ん!!」

 

「ナナコ君にシャロン君か、お待たせしてすまないね」

 

「いえ、構いませんよ。?、そちらの方々が……」

 

「ああ、彼らが今回のお客様達だ。司令、こちらがイスラとの一件で知り合ったカドケス高校飛空科の生徒達です」

 

「カドケス高校……君が言っていた島で親しくなったという子供達の事か?」

 

「ええ、ダリオ少佐。彼らがこのイスラの飛空士の卵です」

 

「そうか……彼らが……」

 

「私達だけじゃありませんよ。さぁお客様、席にご案内します」

 

「?、いいのかね?ここまで並んでいるのに……」

 

マカロフ大佐はここまで並んでいるのに自分達だけ入れるのか、疑問に思った。

 

「大丈夫ですよ!うち、予約席を始めたんです!おじちゃん達、お兄さん達の席はロレンズさんが取っておいてくれたんですよ〜」

 

「だ、そうです。では、お言葉に甘えさせてもらおうかな。皆さんもそれでよろしいでしょうか?」

 

ロレンズがアイガイオンメンバーに聞くと、皆笑顔で了承してくれた。中には「ロレンズ少佐のおごりなら、受け取るしかないな」「ロレンズ少佐、ごちそうさまです!!」「今度は私もおごります!」と囃し立てる者までいる。

 

答えは聞くまでもなさそうだ。

 

「では、ナナコ君。ご案内頼むよ?」

 

「は〜い!16名様ご案内、予約席です〜!」

 

ロレンズ達はナナコとシャロンに連れられてそのまま店内へと案内された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロレンズ達は店内で空いている予約席に案内された。周りは夜空が見える中庭の席で、中央に大きくそびえ立つ木ととてもマッチしている。

 

「では改めて自己紹介をしよう。私は空中艦隊司令官、マカロフ・イワノヴィッチ大佐だ。今回はステキな夕食会に招いてくれてありがとう、Niño niña(少年少女)の諸君」

 

「こちらよろしくお願いします!」

 

「よろしくお願いします」

 

「よろしくね〜おじちゃん〜」

 

「お、おじちゃんか……」

 

彼の嘆きに周りは自然と笑いに包まれた、マカロフを『おじちゃん』と呼んだが、マカロフ本人は苦笑いで済ませている。彼は広い心を持った人物だ、それを笑いに変える事だってできる。

 

まずはお互いの自己紹介から始めた。今回は一応全員が非番扱いになるため、所属と階級は名乗るものの民間人である彼らとは隔たりを設けずに語り合った。

 

自己紹介が終わると、ここまで来るときに沢山の民衆に囲まれて参ったことや、隊員の特徴など様々なことを笑いながら時間が経った。

 

そして……

 

「お待たせしました!アリーメンです!」

 

「おお、来たか!」

 

「やはり"ラーメン"でしたか……」

 

ロレンズやマカロフ大佐、そしてシュトリゴン隊のメンバーは運ばれてきた麺料理に頷いた。

 

薄肌色の磯の香りのするスープ、キラリと光り輝く金色の麺、和えられた魚の身を使ったチャーシュー、そして薬味の役割を果たす緑一点のネギ。それらがたったひとつのどんぶりに収まり、これでもかというほどの食欲そそる湯気を立てている。

 

ラーメン、ストレンジリアル世界では麺料理として有名な料理だった。

 

「おお、アリエル君が作ったのかね?」

 

「ええ!というか、私が作ったからアリーメンって名前なんです!」

 

「そうなのか、ラーメンとアリエル君の名前をかけているのか」

 

「はい!そういう事です!」

 

気になったことがあるのかアリエルの反対側からミツオが質問をしてきた。

 

「あ、あの〜ロレンズさん達の世界にも……ラーメンってあるんですか?」

 

「ああ、あるぞミツオ君。確か……エストバキアから遠く離れたノースポイントってところの食べ物だったかな」

 

「へえ……ノースポイントか……ラーメンがあるって事は斎ノ国と似ているのかな〜」

 

ミツオはウキウキした表情でノースポイントの風景を想像する。

 

「へぇ〜そっちの世界にもラーメンがあるのか」

 

「世界は違えど。案外、料理などの文化は似ているところもあるのかもしれませんね」

 

その間もアリエルは笑顔でマカロフ大佐やロレンズ達にアリーメンを振る舞い、満点の笑みで微笑みかけた。マカロフ大佐やシュトリゴン隊のメンバーもこの美味しそうなラーメンに心を躍らせている。

 

ロレンズはそのほのぼのとした光景にロレンズは心を和ませた。思えば戦争しかしてこなかった自分たちが、まさかここまで平和な食事を楽しめるとは夢にも思わなかった。改めて、平和の大切さを感じる。

 

「なるほど……これがラーメン……美味そうではないか」

 

一方、マカロフ大佐達も運ばれてきたラーメンに心を躍らせていた。

 

「おっさん!アリエルの作ったラーメンは普通のラーメンじゃないぜ、アリーメンって言うんだ!」

 

「アリーメン……?」

 

「そう、アリーメンっス!」

 

「アリエルの作ったラーメンは〜そんじょそこらのラーメンとは一味も二味も違うんだよ〜!」

 

なるほど、そこまで美味しいラーメン……いや、アリーメンはかなり期待できそうだ。学生の作ったラーメンが店が満杯になるまで繁盛するのはやはりそういうわけであったようだ。

 

「ラーメンなんて久しぶりです、ノースポイントに旅行に行った時以来で……!」

 

「わたくしもです、その時食べた『トンコツラーメン』がすごく美味しかったのを覚えています……!」

 

「私は家族で近所のノースポイント食堂に行った時以来だな……」

 

「わ、私はラーメンは初めて食べます……美味しいとは聞いていましたが……」

 

空中艦隊の面々も、久方ぶり、もしくは初めて食べるラーメンに心躍らせている。なにせストレンジリアル世界で食べた、又は知っていた料理が出てきたのだ。この世界に来てからまだ1日半しか経っていないが、それでも共通点を見つけられてなぜだか懐かしい思いをしているのだろう。

 

「それでは……そろそろ頂こうではないか」

 

「はい」

 

懐かしむ幹部メンバーをまとめて、

 

マカロフ大佐達幹部メンバーは一斉に手を合わせる。

 

6人「いただきます!」

 

と、食材への感謝を込めた。この挨拶はエストバキアでは普段はあまりやらない、これはノースポイント式の食事の挨拶である。

 

マカロフ大佐はその金色に輝く麺を箸で器用に掬いとる。コシのありそうな細麺にスープがトロトロと絡みつき、キラキラと光り輝いている。温まったスープから湯気が立ち込み、その美味しさを際立てている。

 

マカロフ達はその美しい麺をそのまま口に運び、わざと音を立てて啜る。これがノースポイント式のラーメンの食べ方だ。

 

しかし、アリーメンの麺を舌につけた瞬間……

 

6人「!?」

 

マカロフ達の顔色が変わった

 

「ど……どうしました?」

 

彼らは何も言わない……

 

「も、もしかして……口に合わなかったんじゃねえの……?」

 

しばしの静寂が訪れ、その間幹部メンバーはずっと黙ったままでもぐもぐと口だけを動かしていた。そして六人全員で規律正しいシンクロしたタイミングでレンゲでスープを掬い、飲む。そして、最初に出た言葉は……

 

 

 

 

 

 

 

6人「う、美味すぎる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美味すぎる、であった。

 

「へ?」

 

「何だこれは!美味すぎるぞ、こんな美味い食べ物がこの世にあったなんて!!」

 

ズルズル、ガツガツと麺や具をほうばりスープを飲むマカロフ大佐。あまりのうまさに感動しすぎで、涙が止まらない。

 

「この金色の麺、この喉越し!まさに究極を詰め合わせたラーメンですよ!!」

 

レオナード少佐もアリーメンをかき込みながら率直で芸術的な感想を述べる。

 

「こ、これは……魚系の出汁のスープですね……!麺も具もスープに合う素材や調理法を使っている……!凄い!どうりで美味いわけだ!!」

 

ニコライ少佐は頭の良さを生かし、アリーメンの美味しさを分析する。

 

「くっ……これは美味い!故郷のノースポイント料理店に家族で行った時を思い出すぞ……!」

 

アズレート中佐、男泣きである。

 

「ふぉいひい!こふぇが、ひゅうひょふのらーへん……ひぃや、あふぃーめんなのぉへぇすか!?(美味しい!これが、究極のラーメン……いやアリーメンなのですか!?)」

 

タイーシャ中佐は最早美味過ぎて夢中でほう張っていおり、まともに喋れない。

 

「これは……!なんというか!凄いですよ!!ああ!最高だ、アリーメン……最高だ!!」

 

セルゲイ少佐、語彙力無事欠損。

 

そして彼らはアリエルたちが唖然するレベルの速さで麺を啜り、具をかき込み、スープを飲み干して……

 

6人「ご馳走様でした!!」

 

空中艦隊司令官部、麺も具もスープも全て完食である。後に残っているのはもちろんアリーメンの丼だけである。

 

「あ、あの〜……」

 

目がキラキラの6人「はい、なんでしょう(*゚▽゚*)」

 

空中艦隊の面々は全員がまるで心も体も全て洗われたような清々しい表情をしていた。アリーはそのことに若干引きながらも、彼らにとって衝撃的な事を告げる。

 

「好評みたいなんで良かったんですけど……実は()()()があったのですが……」

 

6人「……え!?∑(゚Д゚)」

 

その瞬間、空中艦隊の面々の表情は一気に暗くなりテーブルに頭を抱えたり地面を叩いたりしてとても暗い雰囲気になった。

 

「ちょ、皆さん!?」

 

「なんという事だ……まさか替え玉サービスがあったなんて……!」

 

「こ、これは一生の不覚……事前の情報戦に気を配るべきだった……」

 

「皆、すまない……すべての責任は私が取ろう。替え玉をご馳走してやれずに申し訳ない……!」

 

5人「司令!!。゚(゚´Д`゚)゚。」

 

「軍法会議にかけられる覚悟はできている……私の失態だ、腹を決めよう……」

 

5人「司令!!。゚(゚´Д`゚)゚。」

 

なんだか責任を取って辞職してしまいそうな雰囲気に押しつぶされ、アリー達センデジュアル組はより一層慌て始めてしまった。

 

「あ、あの!大丈夫ですよ!替え玉にはスープも具も新しく用意しますから……」

 

6人「ほ、本当か?(本当ですか?)」

 

「そ、そうですよ安心してください!僕たち頑張りますんで!」

 

「そ、そうよそうよ!おじちゃん達元気出して!」

 

作ったアリー、ベンジャミン、そしてナナコの順にマカロフ大佐達を宥める。あのまま放っておいたら本気で軍法会議が始まりそうであった為、クラス全員が見過ごせなかった。

 

6人「で、では!」

 

6人はその言葉を聞いた瞬間、希望を持ったかのような表情で……

 

6人「替え玉一つ!お願いします!!」

 

丼を差し出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、隣のテーブルでそれを見ていたロレンズは、唖然とすることしかできなかった。とここでロレンズは、ハッとして自分の時計を見た。

 

「まさか……食べ始めてから1分も経っていないぞ……!」

 

軍人は時間に厳しい、食べ始めた時に時間を見ていたが、それから完食までわずかしか時間が経っていないことに驚いた。

 

シュトリゴン隊のメンバーも同じでピタリと止まっており、アリーメンの実力に呆気にとられている。

 

「ロレンズ少佐、我々も……!」

 

「待て!!」

 

シュトリゴン隊の面々がアリーメンの実力に驚かされながらも、アリーメンを食そうとするが冷静なロレンズは全員を止めた。

 

「ここまで美味いアリーメン、油断してかかればすぐにやられてしまう。作戦プランを立て、慎重に実行するべきだ」

 

「ああ、できれば皆で替え玉までたどり着きたいな……よし、ここは慎重に行こう」

 

ダリオ少佐は厳格かつ冷静な人物である。ロレンズの意見具申に則り、美味さのあまりに暴走するアリーメンに対して、連携して対処する事を選んだ。

 

「全員状況を開始する。作戦目標はアリーメン、任務は全員完食、替え玉までする事!」

 

「「「「「「「了解!」」」」」」」

 

シュトリゴン隊は箸を持ち、手を合わせて臨戦態勢をとる。

 

「皆行くぞ!シュトリゴン隊、エンゲージ!(いただきます!)

 

「「「「「「「エンゲージ!(いただきます)」」」」」」

 

まるで空戦でもするかのような心構えで食卓を囲むロレンズとシュトリゴン隊の面々。ロレンズの掛け声で割り箸を割り、戦闘態勢に入る。アリーメンは只者ではない。ここは食卓、油断したやつからやられていく。

 

「シュトリゴン隊、お残しは許可できない」

 

「だろうな、替え玉上乗せだ」

 

「シュトリゴン2、FOX2!」

 

ダリオ……いや、シュトリゴン2がアリーメンを口に含んだ瞬間、彼の表情が変わった。

 

撃ち込んだミサイルはアリーメンにヒラリヒラリと躱され、たかがラーメンと甘く見ていたシュトリゴン2を驚愕させる。

 

慌てた状態で機首を向け直してヘッドオンへ突入、互いの距離が詰まって行く。敵機はシュトリゴン2へすれ違い様に機銃を叩き込んだ。自機が火を吹いて爆散していく……という幻覚をシュトリゴン2は見てしまった。

 

そして何かに取り憑かれたようにアリーメンをすするシュトリゴン2。愚かなことにスープや具まで夢中で口に運んでしまっている。もはや止めようがない、彼はアリーメンに取り憑かれアリーメンとダンスしている。

 

さっきまで威勢の良かったシュトリゴン2、開始2秒で撃墜。

 

「ああ、シュトリゴン2がやられた!」

 

「落ち着けシュトリゴン3!指揮を引き継げ!」

 

「構うな!ここは食卓、死人に口なし!」

 

そう言ってロレンズは金色の麺を口に含む。

舌に付けた瞬間、味覚神経からのミサイルアラートが。すぐさま機体をブレイクさせて同時に急上昇、続けざまにフレアを炊く。しかし、ここまでしてもミサイルは惑わされることなくロレンズを追尾して来る。ひたいに浮かぶ汗、今まで食べて来た普通のラーメン達の走馬灯、機体の胴体が麺に変わり、翼はチャーシューに、カナード翼はネギ、エンジンからは豚骨スープを吹き出す。

 

「ロレンズ少佐、危ない!ズズズッ……ぐっ!」

 

「シュトリゴン5!」

 

「美味い!美味過ぎます!!」

 

ロレンズを庇ってシュトリゴン5撃墜、こいつは麺や具どころかスープごとすすって全てを吸い込んでしまった。まるでフランカーのAL-31エンジンのような大出力で。そして、食べ終わると魂が浄化されたかのような顔で気絶した。

 

「やられた!シュトリゴン6イジェクト!美味すぎる!!」

 

部隊番号を叫んで箸を置き、戦線(テーブル)から全力疾走して離脱するシュトリゴン8。もちろん、アリーメンを食べながらである。さてどこへ向かうやら……

 

「おれ、艦隊に恋人が居るんスよ」

 

「戻ったらプロポーズしようと」

 

「花束も買ってあげたりしてー」

 

シュトリゴン4はそんな油断丸出しでアリーメンを啜る。それが命取り。

 

ー警告!アンノウン接近、ブレイク!ブレイク!

 

「へぁ⁉︎」

 

スープの色をした謎のレーザーにやられ、シュトリゴン4は自分の機体を貫かれた……という幻覚をシュトリゴン4は見てしった。

 

「シュトリゴン4!!」

 

またも撃墜、シュトリゴン4はスープに顔が付きそうな勢いで屈み込み超音速でアリーメンを食している。

 

シュトリゴン4撃墜である。

 

「なんと言う事だ……」

 

作戦開始から1分も経たずにシュトリゴン隊の4名が撃墜、軍隊では部隊の半分がやられると全滅扱いとなり必ず撤退しなければならない。今シュトリゴン隊はその一歩手前にまで来ている。

 

「これは……本当にラーメンなのか……」

 

ロレンズが抱いた疑問は、その背後のテーブルにいた中毒者が教えてくれた。

 

「ラーメンではない。アリーメンだ」

 

「アリーメンという新しい食べ物だ」

 

彼らはそれだけ告げると自分の手元のアリーメンに戻っていた。

 

ロレンズは自分の手元のアリーメンを見る。

 

「これが……食卓の鬼神、アリーメン……」

 

精鋭中の精鋭のシュトリゴン隊をここまで弄ぶ、ベルカ戦争からの歴戦であるロレンズはベルカ戦争で自分を墜とした円卓の鬼神とアリーメンを重ねた。食卓のテーブルがB7Rなら、こいつ(アリーメン)はまさに鬼神……全てを食べ尽くし、虜にするまさにエース……

 

ロレンズは無意識に冷や汗が出ている、それほどまでにこいつに……アリーメンに恐れを抱いているのだ。

 

「ロレンズ少佐、撤退しますか?シュトリゴン3もやられました!」

 

シュトリゴン3を見てみると、愚かなことにスープも具も麺も全て頬張り尽くしている。どうやら取り憑かれたようだ。

 

シュトリゴン3撃墜。

 

「部隊の半分が壊滅……いや、それでも食卓でお残しは許可できん!」

 

ロレンズは机を叩き、立ち上がって皆に喝を入れながらこういった。

 

「こうなれば総力戦だ!特攻覚悟で戦わなければアリーメンには勝てない!」

 

「少佐……!」

 

「ここからは私が臨時に指揮をとる!作戦は継続、全員フォーメーションを立て直し一気に突撃だ!」

 

「「「了解!」」」

 

ロレンズを含めた残りのシュトリゴン隊メンバーは気合を整え、真剣な趣で食卓と対峙する。食卓の鬼神……アリーメンに勝つために……

 

「行くぞ!シュトリゴン隊、FOX2!!」

 

「「「FOX2!!」」」

 

シュトリゴン隊は決死の覚悟でアリーメンのある食卓へ突撃していった。それから数分の間、シュトリゴン隊たちの記憶は飛んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後残ったのはとんでもなく美味いものを食った記憶と満足感、そして空っぽのどんぶりだけであった。

 

「わ……私は一体……?」

 

「ろ、ロレンズ少佐……」

 

周りを見れば、残りのシュトリゴン隊たちのメンバーも一緒であったようだ。皆麺もスープも具も何もかも完食してしまい、からのどんぶりだけが残っている。

 

「ま、負けたのか……私は……」

 

完全に敗北である。アリーメンはそれほどまでに手強かった。

 

「はははっ!魔術師のエムブレムをかるシュトリゴン隊でも、アリーメンには勝てなかったか!」

 

その時、ロレンズたちの後ろから笑い声がした。ロレンズがその声の方向に振り向くと、そこにはロレンズの知っている人物がいた。

 

「!?、ルイス提督!?ほかの皆さんも……」

 

見れば、ルイス提督だけでなく、バンデラス教官、ソニア教官、そしてアメリヤ外務長の計四人が揃っていた。

 

「ああ、お察しの通り私がルイス・デ・アラルコンだ。でも、今はお忍びだから名前呼びはよしてくれるかな?」

 

と言ってルイスは、伊達男さながらの笑みを顔に浮かべながらそう言った。今まで気付かなかったが、どうやらこの屋台に最初からいたらしく、シュトリゴン隊がアリーメンに四苦八苦しているのを見てやって来たようだった。

 

「いやいや、面白いものを見させてもらったよ、交渉の場ではあんなに油断ならなかったマカロフ大佐までアリーメンの虜とは……どうだね、アメリヤ?」

 

「正直に言えば、アリーメンを交渉の材料にすれば、もっと破格の条件で同盟を結べたかもしれませんね」

 

アメリヤはその整った優美な顔に妖魅な笑みを浮かべる。

 

「しょ、正直私も完敗です……あんなラーメンは初めて食べました、気づいたらどんぶりは空に……」

 

「わっはっは!だろうな、実際初見であれに勝てるのは余程の大馬鹿野郎でなければ難しいしな」

 

「お前は2回目でも負けそうだっただろ!」

 

ルイス提督のツッコミにバンデラスは高笑いでごまかした。

 

「私も最初はまんまとやられました、なんでもアリーメンに選ばれたと……」

 

「え、選ばれた……?」

 

「ええ、アリーメンの妖精が私を誘って惑わしてきました」

 

なんというか、アリーメンは初見ではどんでもない事が多発するらしい。

 

アリエルも確か飛空科生だった、おそらくこのまま行けばラーメンも作れて空戦もできる、ある意味でのスーパー飛空士になるだろう。昨日の夜にまんまと性別を騙されたアスカといい、子供というのはつくづく末恐ろしい。

 

「私は……アリーメンに危うく墜とされそうになりました……こいつは鬼神です!」

 

「ほう……食卓の鬼神ね……」

 

「ええ。こいつは食卓を囲み、食べたものを虜にする!まさに鬼神です!

ですが、私はどうしてもこいつに勝ちたい!何か方法はあるのでしょうか!?」

 

ロレンズの疑問には熱意がこもっていた。どうしてもこのアリーメンに勝ちたい、それが今の彼の目標であった。

 

「そうだな、まず1玉目ではスープは一滴も飲まないようにしろ。替え玉は硬めで頼めばすぐに麺が来るから食べきる前に計算して頼んでおけ。そして、スープや具材に手をつけるのは3玉目からだ。これが、基本の攻略法だ」

 

「なんと……そんな攻略法が……」

 

「油断するなロレンズ、この攻略法でもアリーメンに勝つのは難しい。油断しているとまた鬼神に墜とされるぞ。意識をしっかりとどんぶりに向けて、危ないと思ったら箸を置いて一旦引くんだ。

もしも傍のやつが落とされそうになったら平手打ちしてでも援護する事を忘れるな、放っておけば墜とされる」

 

「もはや食事の域を超えているな……これは空戦だ……!」

 

「ああそうだ。いいか?ここはチームプレーだ。互いを信じあって連携をとらなければ空戦は勝てん!たが、お前たちの隊なら難しくないだろう?」

 

「ええ、そうです。我々はシュトリゴン隊、ロレンズ少佐が加わった今でもそのチームワークをもってすれば……」

 

ダリオ少佐がそう言うとシュトリゴン隊のメンバーは皆互いの顔を見合わせ、意思を確かめ合う。皆、やる気に満ちた表情をしており、それどころかこのアリーメンに勝ちたいという意思すら感じ取れる!

 

「いいだろう、もう一回戦だ!!」

 

「そう言うだろうと思って、新しく用意しておきました〜」

 

と、ここでアリエル達がベストタイミングでアリーメンの追加を持ってきてくれた。これで準備は整った。

 

「ありがとう、アリエル君!よし、みんな準備はいいな!?」

 

「「「「「「「はい!」」」」」」」

 

いつのまにか指揮をとっているロレンズとシュトリゴン隊の面々は、また手を合わせて再びの戦線を心構える。

 

「皆行くぞ!シュトリゴン隊、エンゲージ!(いただきます!)

 

「「「「「「「エンゲージ!(いただきます!)」」」」」」」

 

「さあ!天使(アリーメン)とダンスしてな!!」

 

ここに、第二次アリーメン大戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜。つ、疲れた……」

 

カルエル・アルバスはベンチで空を仰ぐ。彼は今日、ウォルフガングなどの残りの寮学生とともに厨房で働いていた。彼は麺を茹でる仕事をしていたが、あまりにもお客が多く、彼の体力的キャパシティは限界を越えようとしていた。そのため、ちょっとだけサボりを働いて厨房を抜け出してきたのだ。

 

「?」

 

カルエルは中庭にある座席から、まるでお祭りの様なわちゃわちゃとした楽しげな騒ぎが聞こえてきたのを見つけた。

 

アイガイオンのメンバーであった。その中には、アリーメンに対して一心不乱に挑んでいる集団を見つけた。その中にはあのロレンズ・リーデルもいた。

 

「アリーメンの色が何色かってのは、あんたには重要かい?少なくとも私には重要だ……私のラーメンの色は……」

 

ズズズッとロレンズはアリーメンを啜る。

 

「ダークブルーだ……」

 

ロレンズはそのまま満点の星空を仰いだ……

 

「ダメだ!ロレンズが幻覚を見てる、誰か助けろ!!」

 

支離滅裂な発言をしたり、それをバンデラス先生が止めたりと、少々状況がおかしいが、彼らがアリーメンに挑んで四苦八苦している事だけは理解できた。

 

「何やってるんだよあの人は……」

 

カルエルは子供の様にはしゃぎながらアリーメンを食すロレンズ達を、呆れた目で見つめていた。

 

その直後、アリエルに見つかりおたまで頭を叩かれてサボりを注意されたのは言うまでもない。




今回は太字のテストも兼ねて記号を多用しました。

用語解説
《アリーメン》
説明しよう!アリーメンとは、アリエル・アルバスが作る彼女直伝のラーメン料理の事だ!!魚介と豚骨を合わせたスープに中太麺!チャーシュー入りのラーメンだ!もちろん、替え玉も可能だぞ!原作でもさまざまな人物を虜にしてきたアリーメン、あのシュトリゴン隊でも勝てなかったほどのうまさだぞ!
食べれば病みつき、天使や妖精が君を惑わす!!
さあ皆さんが一緒に……
ジークアリーメン!ジークアリーメン!ジークアリーメン!ジークアリーメン!ジークアリーメン!ジークアリーメン!ジークアリーメン!ジークアリーメン!!
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