とある飛空士の重巡航管制機《アイガイオン》   作:篠乃丸@綾香

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自分はエースコンバットを3Dから始めました。
それから5、0、04、3と見てきました。
中でも3が1番好きですね、架空機がたくさん出ていてめっちゃ興奮してましたw

賛否両論って言われているけどあの攻殻みたいな世界観、今でもお気に入りです。


第2話〜目覚め〜

2016年2月21日08:01

 

暗く、沈んでいく感覚。

体に力が入らず視界には何も見えない、海の中に沈んで行くような、かと言って苦しくない道の感覚。

 

 

「……しれい、……令」

 

 

マカロフ大佐は体が重くなり、もう動けないことを察していた。青く広がる無限の空から一寸先まで見えない暗い暗い水の中に沈んでいくような……そうか、私は死んだのだったな。

 

 

「……司……司令」

 

 

確かアイガイオンが飛んでいたその下はかなり広い海だったはず、ならば水に沈んでいくこの感覚も納得できる。今アイガイオンは沈んでいる最中だろう、マカロフ大佐は機長らしくアイガイオンとクルーの事を考る。

 

この巨大飛空艇の機長となってからまだ数年しか経っていないが、私は良い機長だっただろうか?機長として未熟だった私のせいでアイガイオンは奇襲を受けた、そして撃墜された。私を恨んでいるクルーは居ないだろうか?

 

彼らはどうしているだろうか?

私と一緒に海に沈められたのだろうか、それともあの爆風で全て吹き飛んでしまったのだろうか。彼らは私のことをどう思って死んで行ったのか、それだけが気がかりだった。

 

 

「……起きて下さい司令!!!」

 

「……はっ!」

 

 

聞き覚えのある声で起こされた私はその場から飛び起きた。見れば私を起こしたのはアイガイオンの副機長であるレオナード・セムショフ少佐ではないか。

 

私はアイガイオンの司令室にある機長席にもたれかかって寝てしまって居たよう……待てアイガイオン?

 

間違いはない、ここはアイガイオンのコックピットである第1司令室だ。どういうことだ、あの時私たちは死んだのではないのか?飛んできたミサイルにやられて機体が誘爆、それから……ダメだ思い出せん。

 

 

「レオナード君、ここは……」

 

「司令、信じられないかと思われますが、ここはアイガイオンの中です」

 

「アイガイオンだと?」

 

 

やはりそうか、とわまりを見渡すと確かにここはあのアイガイオンの機内だ。何度も言うが我々は撃墜され、海に沈んだはずでは?それだけではない、他のクルー達も生きているではないか、彼らは全員戸惑った様子で計器を操作していた。ミサイルに破壊されたと思っていたコックピットの窓、それどころか計器などあちこちがあの攻撃を受ける前の状態に戻っていた。

 

──まるであの時の戦闘など無かったかのように。

 

 

「現在、状況確認の真っ最中です」

 

「状況確認?アイガイオンは今どこを飛んでいるのだ?」

 

「それが……GPS及び軍事衛星とのリンクが途絶。現在座標を割り出せません」

 

「なに、GPSが?ここはアネア大陸では……」

 

「いえ、司令。我々は今どこかの大海を飛行中です」

 

 

窓は防護シャッターで閉じられているが、周りのモニターに映し出された映像を見ると、遥か遠くの彼方まで続く大海原が広がっている。

 

ここまで大陸どころか島ひとつ見えないところから、ここは我々が戦ったあの海域でもなければ、エストバキアとユークトバニアの間のラーズグリーズ海峡でもない。可能性があるとすれば太平洋くらいだが、GPSが使えない状態では断定できない。

 

 

「機体の状態は?」

 

「機体はほぼ万全の状態です。火災も損傷もありません。

しかし、コットス、キギュゲスともに連絡途絶、シュトリゴン隊とも連絡が取れません」

 

 

完全に孤立か……これはまずいことになった。アイガイオンはその巨体と制空能力から、戦争中だったエメリア共和国だけでなくオーシア、ユークトバニア、ISAFまでもがその存在を警戒していたのである。このまま何処かの国の領空にでも入ってしまえば単機での戦闘となる。なるべく孤立した状態では戦いたくはない。

 

 

「司令!通信機器が回復しました!」

 

 

と、ここで通信士官であるグリゴリー中尉が整備士とともに通信機器を回復させた。なんてグットタイミングなんだ!とそこに居た全員が喜びを露わにして歓喜に沸いた。

 

 

「よくやった!早速無線の傍受を……」

 

「それが……これを聞いて下さい」

 

<<……こちら、エストバキア連邦海軍所属、空中艦隊だ。アイガイオン聞こえるか?

こちらはコットス、キュゲス、シュトリゴン隊共に無事だ、応答願う。繰り返すアイガイオン、応答願う。こちら……>>

 

「⁉︎これって……?」

 

「司令、後方カメラにキュゲスたちが!」

 

 

モニターに後方の映像が映し出される。アイガイオンに負けず劣らない巨体を持つ航空機が4機、さらには血塗られた赤黒いペイントに期待を包んだsu-33・シーフランカーが、シュトリゴン隊だ。彼らの姿を見て、私は迷う事なく通信機を取った。

 

 

「こちらアイガイオン、マカロフ大佐だ。無事で何よりだよ、みんな」

 

<<そ、その声は大佐⁉︎ご無事だったのですか?>>

 

「まるで私が死んだみたいな物言いじゃないか。私は“生きている”よ、“正確には生き返った”だがね」

 

<<おお、やったぞ!皆んな!アイガイオンは生きてるぞ‼︎>>

 

 

途端、ジェットエンジン並みの大きさの歓声が湧き上がった。恐らく通信機の向こうでは肩を抱き合い、長らく続いた孤独から解放されたクルーたちがいるのだろう。

 

 

<<こちらシュトリゴン2、マカロフ司令、ご無事で何よりです。早速ですが燃料が残り少ないので、着艦の許可を>>

 

シュトリゴン2ことダリオ・コヴァチ少佐がアイガイオンに着艦を求める。シュトリゴン隊の面々も気が湧き上がっているのがよく分かった、長い時間孤独にさらされ続けたのだろう。

 

「ああ、いつも通り、後方の乱気流には気をつけたまえ」

 

<<了解!>>

 

 

だが、そんな喜びを打ち砕く出来事が──

 

 

「司令!」

 

「どうした?こんな時に」

 

「そ、それが……あれを見てください」

 

 

彼はおもむろにアイガイオンのコックピットの防護シャッターを開いた。ゆっくりとした動作の後、久しぶりに差し込む光が眩しい。そしてそこに映し出された光景に我々は絶句した。

 

 

「なんだ……あれは……」

 

「なんて事だ……」

 

 

ありえない。

そんな言葉が我々の脳をよぎった。

かつてこの光景を見た事のあるものはいるのだろうか?我々の持っている『常識』だの『自然の摂理』だのが音を立てて崩れ去って行くのが分かった。とても美しく、そして常軌を逸脱していた。

 

海原がどこまでも、どこまでも──視界の果てまで真っ青に吹き上がっていた。

 

海面と噴水の境目は吹き上がる水蒸気の蜃気楼で霞み、吹き出す海水はおよそ200mまで水の飛沫を飛び散らかす。それが視界の端まで横に広がっている。

 

時刻は午後12:30分、この謎の海原に来てからも我々を照らし続けた太陽も少し傾き始め、その光がアイガイオンによく反射している。しかし、その太陽すらも蜃気楼で霞んでしまうほどの水量が吹き出している。

 

アイガイオンの司令室ではその光景にただただ項垂れるもの、言葉が出ないもの、美しさを感じるもの、この世の終わりだと神に祈るもの、様々だったがその誰もが目の前の光景を信じられていないだろう。

 

飛行甲板上でも騒ぎが起きていた、クルー全員が集まり、どよめきが轟いているのがアイガイオンをとうして伝わってきた。

 

 

「司令……我々はあの世の空を飛んでいるのでしょうか……?」

 

 

傍に佇むレオナードが不安からか、ここはあの世ではないかとボソリと呟く。

 

 

「レオナード君、少なくともここは天国の空だ……ここまで美しい光景は地獄では見られないよ」

 

 

私はそうとしか言えなかった。

同時に私の中に一抹の不安があったのもまた事実だ。『我々はどこへ向かっているのか?』この果てしなく続く空の下、その不安は風に煽られ、消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2月21日08:10

 

 

「皆、忙しい中よく集まってくれた」

 

マカロフ機長は各機の機長を集め、アイガイオンにて緊急の機長会議を開いた。

 

現在彼らが置かれている状況の確認とこれからの行動について、この場の指揮官同士で話し合う事にしたのだ。

 

先程の巨大な噴水を見せつけられ、クルーの中にはかなりのストレスを抱えている者がいる。その光景を間近に見ていたシュトリゴン隊にも、かなり不安感が感じられる。さらに長時間飛行による疲労なども溜まっている。何でも燃料ギリギリになるまで7機編隊で飛び続けたのだとか、これではしばらく偵察飛行は無理だろう。

 

ちなみにどうやってアイガイオンまで移動したのか?という問いにはコットス、キュゲスの機体上部に取り付けられたプローブを使ってアイガイオンの下にくっ付き、上り下りしたと答える事にする。

 

 

「全く、こんな事態初めてだ……」

 

「司令、それは我々もです」

 

 

冷静な口調でニコライ少佐はそう言った。

ニコライ少佐はキュゲス2番機の機長、冷静沈着で戦況を読むのに長けている。まさに艦隊の頭脳、と言った人物だ。

 

 

「まずは各機から何か報告は?」

 

「レーダーの修理は終わったのですか?」

 

 

と、口を開いたのは艦隊唯一の女性機長、タイーシャ中佐だ。彼女は35歳と高齢だが、溢れ出る母性愛と、指揮能力に長ける艦隊の紅一点。コットス1番機の機長を務める。

 

 

「一応はな、それでも海原しか映らないが……」

 

「司令、燃料の方も心配です。

目が覚めた時アイガイオンの燃料は満タンでしたが、後もって70時間と言ったところでしょう」

 

ニコライ少佐は冷静に眼鏡を揃えながら指摘した。

 

「うーむ、何とか空中給油を受けなければな」

 

 

さて、問題は山積みだ。燃料、弾薬、食料などなど。アイガイオンは補給なしでは飛ぶことはできない、ここで補給が受けられないのは痛手だった。特に、燃料が切れれば戦闘機を飛ばすどころかアイガイオン自体の飛行ができなくなる。せめて、補給を行ってくれる国や勢力があれば。

 

 

「全く、どうしてこんな場所に……」

 

 

その場にいた全員がうな垂れたのが分かる。

自分達は撃墜され、全員あの世へ行ったかと思ったら、今度は全く知らない海域に連れてこられた、孤立無援の状態で。

誰もが混乱していた。

 

 

「あ、あの……司令?」

 

「何だね?」

 

 

おもむろに口を開いたのはセルゲイ少佐、艦隊の機長の中で最少年である24歳ながらもその将来性溢れる技量が認められ、空中艦隊のコットス2番機の機長を務める若者だ。

 

 

「一つ……気になったことがあるのですが……」

 

「……続けてくれ」

 

「はい、この海の海面を調べて見たところ、どうやらこの海域には……その……地平線が無いのです」

 

「「「「「は?」」」」」

 

 

その場にいた全員が驚きに満ち、それしか言葉が出なかった。

 

 

「え、えっと……ほら、我々の地球は丸いでしょ。だから……その……地上から見られる地表には限りがあるんです、その先は地球の影に隠れて……視界に入りませんからね。

大体、高さ160cmに視点があると約4.5kmの長さになるらしいです」

 

 

彼は独特のオドオドした口調で自分の意見を話した。皆がポカンと口を開け、彼の話を聞いている。皆信じられない様子だ。そして、一呼吸置いて彼はこう続けた。

 

 

「ですが、先程コットスの機器を使って地平線らしき境目までの距離を測定して見たところ、500kmはありました、いえそれ以上です!

なので……この海域は我々の知っている様な丸い惑星では無いことがわかります。もしかしたらここは……平面惑星かもしれません」

 

「つまり、我々は別の地球に迷い込んだ。という訳ですか……?」

 

「もしくは異世界……かと」

 

「異世界……」

 

 

私はその三文字を噛み締めた。そして、今までの辻褄が一気に合わさった気がした。そうか、ここはあの世でも地獄でも天国でも無い別の地球……

 

 

「馬鹿な!そんなオカルトみたいな話、あるわけ無いだろ!」

 

 

そう声を荒げたのはアズレート中佐、熱血漢に溢れ、ルールに対して厳格な性格を持つ。少し好戦的なのがネックだが、かなり優秀な軍人だ、キュゲス1番機機長。

 

 

「で、ですが……GPSが使えないんでしょう。それにあの噴水、我々の地球にあるとお思いですか……?」

 

「なるほど、そう考えるのが妥当だろう」

 

「司令⁉︎」

 

「確かに、200mまで吹き出す海の噴水だなんて我々の地球のどこにもない」

 

むしろ、本当にあったとしたならば大発見である。オーシアかユークトバニアの探検家がこの噴水を見つければ世界中のメディアは大騒ぎとなり、新聞の見出しはおそらく『新たな世界の七不思議、発見か⁉︎』だろう。

だが、もうすでに南極、北極など世界のほとんどが探索されてしまっている今の時代、ここまで目立つ噴水が見つからないわけがない。

 

 

「やっと不安が溶けた気がするよ、私も少し不安でね。

戦争から解放されたと思ったら地球は海に覆われ、滅亡したのでは無いかと」

 

「「「「「…………」」」」」

 

「セルゲイ君の言葉を聞いて少し前向きに考えられた気がするよ。

何故、死んだはずの我々が生きているのか?何故、知らない世界に放ったらかしにされたのか?それはわからない」

 

 

しかし、ここまで美しい世界に放たれたのなら、理由があるはずである。いくら傲慢な神といえど、後先を考えないで人々の運命を決めるとは思えない。

 

 

「もし、ここがあの世でないならこの世界にも人間がいるはずだ。

こうは思えないかね?我々は試されていると。戦争をするしか能がなかった我々に協力と平和の心を見出そうとしているのだと……」

 

 

私はいつにも増して前向きに、かつ力強く命令した。

彼らの不安を吹き飛ばすかのごとく、部下を不安にさせる上官だなんてたまったものじゃない。

 

 

「そこで、これより我が空中艦隊は近空域への偵察調査を開始する!

情報収集を重点に置き、出来ることならこの世界の住民達とのコンタクトも考える事とする!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

「では、確実行動に移れ。解散!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令、それと整備班長からこんな報告が……」

 

「整備班長から?」

 

 

レオナード君がたった今入ったであろう報告を私にした。

 

 

「ええ何でも、不審な人物を捕まえたとか」

 

 

彼は報告を続けた。

何でもアイガイオンの飛行甲板で艦載機であるsu-33のコックピット内でクルーの戸籍にない若い軍人がパイロットスーツを着て気を失っていたと言うのだ。代わりにベルガ人亡命者である、あのロレンズ・リーデルが何処にも見当たらない、との事。

 

 

「現在、尋問室にて身柄を拘束中。目が覚め次第、尋問を開始するとの事です」

 

「そうか、分かった」

 

 

にしてもロレンズが行方不明か……あのパイロットも一緒に来ていたかと思ったが。機長は少し残念に思った、彼とまたたわいのない話ができると思ったが、それは叶わなそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、尋問室では──

 

 

「何故……私は生きて……?」

 

 

一人の男が自分の顔を鏡を見て、絶句していた。




はい、今回は聖泉との初遭遇です。
丸い惑星から来た人間からしたらあんなでかい噴水見たら、そりゃあんな反応になるって……

因みにロレンズさんはエスコン6のアイガイオン戦でネムード機として出てくるアレです。何でもベルカ戦争の後、エストバキアに亡命して来たのだとか。

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