とある飛空士の重巡航管制機《アイガイオン》   作:篠乃丸@綾香

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皆さんお久しぶりです、かなり間が空いてしまいましたが本編を改変してまた投稿を再開しようと思います。

変更内容としてはオリキャラである空挺騎士団中隊長の視点をやめ、フランカーを撃退するレオポルドの命令もやめ、カルエル視点で新しく作り直しました。

そして、エースコンバット7の発売日決定おめでとうございます。いやー今から一月が楽しみすぎますわもう。しかも、VR編の主人公はメビウス1ですよ!VR買わなきゃ!


第6話〜空戦の火蓋〜

2016年2月21日17:30

 

オペレーション「ユキカゼ」

それがこの作戦の名前だ。

 

名前の由来は70年以上前のノースポイント海軍の駆逐艦「雪風」から。様々な戦争、いずれの海戦でも多数の戦果を挙げ、必ず帰還してきたことから「幸運艦」の異名がついた、その武勇伝は世界中の全ての海軍に伝わり、今でもその伝説は語り継がれている。

 

思えば「ブーメラン」というTACネームもそうであるが、これはマカロフ大佐の「必ず帰ってこい」という願いがよく表れている。

 

フランカーのキャノピーの外には幻想的な光景が広がっている。現在高度6000メートル、高度が高い方が目標を発見することの出来る視界を確保しやすい為、かなり高く飛んでいる。高度200メートル付近には吹き出す巨大な海の噴水が辺り一面に広がり、どこまで飛ぼうと終わりがない。

 

 

「飛行開始から約二時間、どこまでいってもこんな光景だ」

 

 

6000メートルからでもその異様さが垣間見える、あの空域の噴水に入ればどうなるかわからない。ここまで高度を取っているのもその不安からかもしれない。

 

既に機体は自動操縦モードに切り替えており、時速600キロの巡航速度を維持している。ロレンズは手元の多機能ディスプレイMFDに火を灯し、中央の画面にあの画像を映し出す。アイガイオンの小型無人機が見つけたあの浮島の画像をまじまじと見つめ、改めてその機能を観察する。

 

1枚目、島の外観全体を写した画像。

縦長のギザギザした海岸線の端に旧世代の要塞砲らしき建造物がいくつか見える。湖があり、島の真ん中に走る雪をかぶった山脈はとても小さな島に掛かっているとは思えないくらいの大きさだ。むき出しの岩肌を曝け出す島の後尾にはプロペラ推進装置がいくつも取り付けられている事から、あそこで揚力を生み出しているのだろう。

 

2枚目、浮島左岸の街を写した画像。

湖に隣接した街は小規模だが、教会や商店街らしきストリート、湖周辺には小型ボートらしき木製の波止場があり、漁なども盛んなのだろう。ストリートを下ると並木道の先に学校らしき建造物がある。その先には何故か滑走路らしき施設と数機のプロペラ機が確認されている。何かの訓練学校かだろうか?

 

3枚目、右岸の軍事施設を写した画像。

双発レシプロ戦闘機群と、同じく双発の雷撃機群、推定200機以上。滑走路も長く、800メートル程。先ほどの左岸の飛行場と同じくらいの滑走距離はある。

 

 

「これが、敵になるとしたら1番の脅威か」

 

 

もちろん、彼らが敵対してくるような場合だが。以下の写真を脳裏に焼きつくほどまじまじと見ればこの島の兵器群の配置が分かる。対空砲らしき物もさっき見つけた為、島中に配備されていると予想していい。

 

何故ロレンズはここまで島を観察しているのか、それには有事の際の参考にする為である。彼らが本当に友好的な勢力とは限らない、戦闘にでもなればレシプロ機とジェット機の差があるとは言え、地の利がある彼らの有利だ。対空陣地に誘い込まれればフランカーでもひとたまりもない。

 

 

 

敵を知り、己を知れば、百戦殆うからず。

ノースポイントのことわざだ。

 

 

 

幸いにも相手はこちらの素性を知らないのだろう、だからこそ私が接触し、我々の存在を提唱する必要がある。だが、我々は事前の小型無人機の偵察によりある程度は敵の素性を把握できる。

 

現代戦においても敵の戦力を把握することは重要だ。情報を元に作戦を立案するのは参謀の、遂行するのは兵士の役目だ。ベルカ空軍にいた頃からアントンに叩き込まれていたのを今でも死ぬほど覚えている。

 

戦況を把握することのできる人物(マーセナリー)であったアントンは常に相手を自分に有利な戦況に持ち込むことを得意としていた。ゴルト隊はそんな隊長に率いられ、まるで頭脳戦をするかのごとく、敵を欺き、時には不利な戦況覆した。だが、強さを求める人物(ソルジャー)である円卓の鬼神には敵わなかった。

 

 

「それよりも……一体いつになったら島が見えてくるんだ?」

 

 

マカロフ大佐によれば浮島は進路を変えずに突き進んでいるのだと言う、2時間飛行し続けてまだ見えないとなると行き先を間違えたか?と不安になる。

 

ロレンズは日が傾き始めた空に目を向ける。この世界には地平線が確認されていないと聞くが太陽はどうやって沈むのだろうか?そんな素朴な疑問に答えるものはいない。あるのは吹き出す海水、雲と空、そして遠目に見える島影のみ。

 

 

「島影?」

 

 

はっとしたロレンズはフランカーの機首に取り付けられた後付けの電子工学式標準システム「EOTS」を起動、MFDに映る倍率を上げ解像度を対応させると影は形を帯びてきた。縦長の全体像、むき出しの岩肌、中央を掛ける山脈、そして多数の推進装置を従え、浮遊する空飛ぶ島。

 

 

「間違えない、見つけたぞ!」

 

 

長い孤独から解放されたように、ロレンズは歓喜の気持ちに沸きそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、カルエル達カドケス高等学校飛空科生は久し振りの飛行練習。その訓練が終わった後、イスラへと帰還途中であった。

 

水素電池で動く飛空機達は、燃料として水が必要となる。だが、巨大な噴水である聖泉では水の補給は出来ない、そもそも着水できないからだ。外周約70キロのイスラにはシルクラール湖と呼ばれる巨大な湖が存在するが、いつまで持つかわからない聖泉探索のため節約せざる得なかった。

 

それでも飛空科生達は、将来の飛空士としての訓練を怠るわけにはいかなかった。聖泉に入ってからかなり久しぶりのローターの震えが空へその音を轟かせ、プロペラが空気をつんぐさぐ。

 

 

「あの飛空機は…」

 

 

カルエルは気づいた。自分たちのエル・アルコン編隊のはるか前方、丁度十時あたりの方向に渡り鳥の群れのような編隊が見える。機体は古めかしい木製の高翼機と複翼機、だがかなりの数で構成された戦空機と爆撃機の群れだ。

 

 

「空賊……」

 

 

そう、約三ヶ月前。突然イスラに飛行してきた謎の勢力の飛空機、聖アルディスタの神話に出てくる空の一族。『空賊』、それが彼らの名だ。

 

カルエル達飛空科生の編隊は、イスラ左岸の南西のかなり離れた位置を訓練飛行していた。このままエスコリアル飛空場に戻るとすれば、イスラ左岸からまっすぐ飛行してくる空賊編隊と斜め方向から接触するコース上だ。

 

 

<<こちらイスラ偵察隊、敵編隊襲来!繰り返す、敵空賊と思わしき飛空機編隊を確認した。敵襲だ!>>

 

 

通信網もすでに彼らを把握しているが、発見が遅れたようだ。周りは雲に覆われており、晴れているのはイスラ上空のみ。発見が遅れたため空挺騎士団の迎撃が遅れているようであり、まだイスラの山脈のあたりから飛び立ったばかりの機体が編隊を組んでいる。イスラの要塞砲がその長身の主砲を空賊に向け、発射の瞬間を待っているのが、ヴァン・ヴィール地区上空を飛ぶカルエル達にも分かった。

 

だが、一斉射では全てを退治することはできないだろう。相手は複翼爆撃機24機、直掩高翼機16機の大編隊だ。飛空機の性能は劣るものの、その数は驚異的となる。恐らく何機かはイスラ左岸のヴァン・ヴィール地区に到達してしまう。空賊はだいぶイスラへ近づいてしまっている。このままではイスラ上空での空戦を強いられるだろう。

 

そして、あたりの空域が震え始める。イスラ右岸、ヴァン・ヴィール軍港から錨をあげ、黒く光る巨大な物体が浮きがってくる。のっそりとした巨鯨、湾曲した胴体、せり出した艦首、艦尾には空気を切り裂く揚力装置、分厚い装甲板の上に46センチ砲塔両舷合わせて6基、計18問。舷側からハリネズミの如く取り付けられた禍々しい数の対空砲塔、そして飾り付けられた装飾が同時に美しさを醸し出す巨大飛空戦闘艦。

 

 

「ルナ…」

「ルナも支援に着くつもりだね」

 

 

超弩級戦艦ルナ・バルコ。元バレステロス共和国の巨大戦艦は今やイスラの守護神として君臨している。鈸鯪した目的はただ一つ、ヴァン・ヴィール地区へと進軍する空賊戦空機を退けるための砲台になる為だ。

 

 

<<上空にいる飛空科生共、聞こえているか?>>

 

 

後席に取り付けられた無線機が、教官であるバンデラス先生の音声を拾った

 

 

<<よく聞け、見ての通りの緊急事態だっ。貴様らはエスコリアル飛空場付近まで退避。空賊機は空挺騎士団が引き受ける、空賊との戦闘は自衛のみの最低限とし、戦闘には加わらずまっすぐに帰ってこいっ!>>

 

 

帰還任務でありながらも、立派な実戦である事にカルエルは生唾を飲んだ。空賊が現れてからというもの、カドケス高等学校飛空科生の機体には訓練団の他に実弾が支給されるようになっていた。今回のような事態を想定していたのだろう。腹はくくってあるが、それでも滲み出る汗は止まらない。

 

 

<<俺も東岸にいるソニアが戻り次第、空に向かう。これは、貴様らが一人前の飛空士となるための試練だっ。その試練の経験を生かすためにも、貴様らが戦死することは許されん。必ず生還しろっ!>>

 

 

バンデラス先生の重い声を飛空科生全員が聞き入れた。気合いを入れる者も、怯えている者もいたが、全員が決意に満ちた目をしているのがわかった。

 

その時、突然空が震る音がした。イスラ第3要塞砲台「アロンドラ」からの援護砲撃だ。50センチ口径砲弾3つ、空賊の飛空機達へと迫っていく。

 

 

「きゃぁ!」

「す、すごい音だね…」

 

 

砲撃のあまりの轟音に操縦していたカルエルと後席のクレアは耳を塞ぎこむ。カルエルの義妹であるアリエル達や他の飛空生も50センチ砲の威力を耳で抑えきれなかったようで、軽く悲鳴をあげている。

 

撃たれた空賊編隊は回避行動を取るも、時限信管により夾叉の範囲内にいた機体は無残に翼を引きちぎられ、木製の機体を燃やすことに成功した。だが、今の攻撃では僅か8機程しか撃墜していない。

 

カルエルは空挺騎士団に一抹の不安を抱えていた、発見が遅れた事に対してだ。

 

 

(くそぅ!僕も戦えたら…!)

 

 

天使とのファーストコンタクトはもうすぐだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

高度6000メートルから島の全景を確認するため、ロレンズはMFDの写真を右隣の画面に並べ、見比べる。映し出されたガンカメラの高解像度画像はほとんどぼやけることなく島のあちこちに配置している対空砲の姿まできちんと確認できる。

 

 

「相変わらず壮観だな……」

 

 

1枚目、島の外観。

全体的に細長い全体像はまるで矢の先の鏃のよう、ギザギザの海岸線はリアス海岸を思わせ、海に浮かんでいたならば魚の宝庫となっていだろう。島の中央を縦にまたがる山脈は島を完全に二分して隔てている。おどろおどろしい長身の砲塔を備えた要塞砲台はこちらに気づいていないようだ。

 

2枚目、左岸の街。

湖に面した小規模ながらも様々な施設がある活気のありそうな街。その先のストリートを下れば飛行場が隣接した学校らしき建物が建っている。今はあのプロペラ航空機を確認することはできないが、それでも十分だった。

 

3枚目、軍事施設。

おかしい、200機以上いた航空機たちがほとんど見当たらない。いや、正確には雷撃機はそのままに、戦闘機らしき機影が見当たらないのだ。そこでロレンズは倍率を変え、辺りを捜索し始める。

 

 

「……いた」

 

 

数は少ないが、アイガイオンでマカロフ大佐が説明したとおりの複座型レシプロ戦闘機が編隊を組んで飛行している。演習かだろうか?

 

 

<<……ザッ……ザザッ……>>

「ん?」

 

 

ロレンズは急にフランカーの無線機に雑音が入ったのを聞き逃さなかった。

 

 

<<……こちら……ザザッ>>

「なんだ?通信か?」

 

 

ロレンズは無線機の周波数をデジタルパネルで調節し始める。しばらく調節していると通信がクリアに近づいたのか、雑音が少なくなり始めた。しかし、拾った電波はフランカーの電波無線機とは違うの旧式の無線機で発せられている周波数だ。それも、フランカーの無線機でギリギリ拾えた規格であった。

 

 

<<こちらイスラ偵察隊……ザザッ……敵編隊襲来!繰り返す、敵空賊と思わしき飛空機編隊を確認した。敵襲だ!>>

 

「敵襲?」

 

 

偶然にも、通信の内容はサピン語で喋られている。いくつかわからない用語が確認されたが、敵襲という言葉に慌ててあの浮島の周りを見渡す。するとロレンズは島の進行方向から見て西に鳥の群れのような機影たちを発見した。レシプロ戦闘機とも違う、セスナ機のように主翼が胴体の上端についているデザインの旧式戦闘機、まるでオーシア戦争に出てきそうなほど古く、小さく、ひ弱そうな機体たち。高翼機だ。

 

 

「あれは……」

 

 

何が起きているのかロレンズにも分かった。

この島は今、攻撃を受けている。防衛のために彼らは戦っている。

 

ロレンズは操縦桿を握りしめた。彼らを助けよう、そう思った。見知らぬ彼らに恩を売るわけでもなく、目の前の高翼機達を敵として排除するのではなく、唯この島の住民を「助ける」と言う名目のもと、動こうと考えた。ロレンズは操縦桿を倒し、スロットルを超音速まで開いた。

 

 

 

戦いの火蓋は切って落とされた。




解説コーナー

《オペレーション ユキカゼ》
TACネームのブーメランを含め、戦闘妖精雪風が元ネタです。エスコン世界にジャムが現れたらフェアリ空軍はどんな編成なんだろう?メビウスとかガルムとか化け物パイロットがジャムと戦う小説も読んで見たいですね。

《ラガルディア》
イスラ空挺騎士団に60機配備されている機体。翼全体を傾けて垂直離着陸機が可能なティルトウィング式(アニメ版基準)の機体。固定武装はないものの、水上発着・水上発電が可能という点で融通が利く、その為旅の前途に何があるかわからないイスラでは重宝されている。



イスラ空挺騎士団って騎士らしい戦いを望でいるそうです……ってそれだとイスラサイドの登場人物、エーススタイルが全員ナイトになっちゃうやん。
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