とある飛空士の重巡航管制機《アイガイオン》 作:篠乃丸@綾香
にしても7の空の表現素晴らしいです、ps4になって画質も良くなっているし。7の要素もこの小説に盛り込みたいなー
上空2600m、空賊機はほとんどロレンズの活躍で全て無力化した。先ほどまで空に砲火の華を咲かせていた対空陣地も静まり返り、辺りには静寂が流れていた。
「どうしたものか…」
ロレンズはデジタルコックピットの燃料計に目をやる。燃料は空戦前と比べてかなり減ってしまっている。戦闘機はかなりの燃料食らいだ。ただ真っ直ぐ飛ぶだけならそこまで燃料を消費しない。だが複雑な戦闘機動を行えば機体に掛かる空力は常に変化し、その上アフターバーナーを炊いたりとエンジンの出力を細かく調整するのにも多数の燃料を消費する。出撃前、フランカーには満タンの燃料が備えられていたが長距離飛行と空戦で使い切ってしまい、今となってはガス欠寸前である。
まだ燃料が残っているため墜落はまだないがなるべく早くどこかに着陸したい。そうでもしなければ地表に真っ逆さまである。ロレンズは機体を旋回させながらキャノピー越しで辺りを見回した。上空からは浮島の全景が見える。自機から見て左手、この島の真ん中を縦に貫く形でいくつもそびえ立つ山脈を挟んで反対側には確かそれなりの規模を持った基地があったはずだ。だが、そこまで飛べるかどうか怪しかった。
一方、前方2キロほど先にはもう一つ偵察写真で確認していた小規模の飛行場がある。あそこまでなら燃料に余裕がある。ロレンズは機種の向きを変え、飛行場の滑走路へと向かいあわせる。
この飛行場の滑走路はエプロンから見て斜め方向に伸びており、滑走路の長さは約800メートルほど。コンクリートでは舗装されておらずただ平らにならしただけのようで、長さも通常よりの飛行場より少し短い距離である。シー・フランカーは艦載機のため短距離離着陸性能をある程度持つものの、失速ギリギリまで速度を落とさなければならないだろう。
「シュトリゴン0、着陸態勢に入る」
いくら失速時の安定性が高いフランカーシリーズの機体でも、時速350キロは限界に近かった。わずかな風で誤差が生じれば地面へキスすることになる。そうなればフランカーやロレンズは火のだるまだ。細心の注意を払い滑走路に近づく。
「高度クリア、視界クリア、フラップ確認、ギアアウト」
フラップをおろし、機体の足を降ろすと空気抵抗がさらに増す。機体が不安定になるがそこはエースパイロット、長らくベルカ空軍にいたロレンズは技量をもって対処する。
「高度20、10、タッチダウン!」
フランカーが足をつけると、ガタン!と機体が大きく揺れキャノピーが音を鳴らす。ギアが擦れることとともに機体が減速していくがそれでも足りなさそうだった。
「いい子だから止まってくれよ……!」
ロレンズはフランカーの機体後方に取り付けられたパラシュートを展開、機体はさらに減速を始める。
「止まれっ……!」
ロレンズの願いはフランカーが答えた、約700メートルほど滑走したところでフランカーがようやく停止したのだ。あと100メートルも進めばエプロンにあった整備中の機体に衝突していたところだった。
「間一髪とはこのことか……」
ロレンズはヘルメットを外し、キャノピーを解放して機体の外に出る。すると、滑走路のフランカーから降りた瞬間、向こうの格納庫側から武装した兵士が数名走ってやってくるのが見えた。
「No te muevas!(動くな!)」
左岸にある飛行場に強行着陸して直ぐに短機関銃で武装した兵士たちに取り囲まれた。
(到着早々これか…まあ、勝手に領空侵犯をし、あれだけ大暴れしたのだから当然か)
周りを見渡すと先程戦っていた戦闘機が次々と滑走路に着陸していた。機体は複座型、エンジンは双発型だが意外と小さめだ。複座の後席は前席より一段高い位置にあり、あそこから銃などを撃つようだ。エンジンを翼ごと垂直にして垂直離着陸ができるティルトウィング式の珍しい機体だ。
と、そこへ拳銃を携帯した一人の女性士官がやってきた。金髪の整った体型をしたスタイルの良い女性が目と記憶に焼き付いた。
「貴様の処遇を扱う事となったソニア・パレスだ、所属を言え」
さっきの兵士たちも、空戦時に聞こえた無線もそうだが、どうやらここの言語はサピン語のようだ。島が空を飛ぶような異世界でも自分たちと同じ世界との共通点を見つけらた。ロレンズは心の奥底で胸をなでおろした、意思疎通の不安がまだ残っていたからだ。
「…エストバキア連邦東部軍管区海軍、空中艦隊アイガイオン級重巡航管制機アイガイオン所属、シュトリゴン隊臨時編成隊員、ロレンズ・リーデル。階級は大尉だ」
「エストバキア…か、悪いがそんな国聞いたことない」
「知らないはずはないだろう、今エストバキアはエメリアと戦争の真っ最中だぞ」
「エメリアという国も聞いたことがない」
とソニアに返されて、やはりそうかとロレンズは確信した。あらゆる情報やニュースが一瞬で地球を駆け巡る情報社会の中で、戦争の真っ最中の国の状況が伝わってこないはずがない。そもそもエストバキアなどの国々を知らないとなれば、マカロフ大佐の言う通りここは我々の世界とは別の世界、つまりは異世界ということだろう。
「それより貴様、なぜこの飛空場に着陸したんだ?ナルガス山の向こう側にもう一つここよりも大規模な飛空場があったはずだ」
ソニアはそう言ってロレンズを睨みつけるが、こちらにも事情があるため引くわけにはいかない。ロレンズは反論した。
「すまない、暴れすぎて機体の燃料が心もとなくてな。慌てて着陸させてもらった」
「ここはカドケス高等学校、エスコリアル飛空場だ。貴様は周りにいた飛空科生をあの血塗りの戦空機で危険に晒したんだぞ!」
成る程、やはりここは飛行機関連の訓練学校かだったようだ。それにさっき飛空士と言っていたが、パイロットのことかもしれない、だとすると目の前のソニアという女士官はここの教官のような者だろう。だとしたら生徒を危険に晒したことをロレンズは謝らなければならない、今後の関係のためにも。
「失礼、ここが訓練学校だとは知らなかった。生徒を危険に晒したことも謝ろう、本当にすまない」
「……貴様はこれから一時的に捕虜として扱う、団長からの命令だ。車は用意してある、付いてこい」
そのまま女士官のソニアに誘導され、こちらの世界ではかなり古いタイプの軍用ジープへと案内された。簡単なポディチェックをされ、拳銃を素直に没収させてもらう。が、それだけでフランカーのコックピットから持ち出したサバイバルキットは調べなかったようだ。車の後席に座ると先程の兵士たちもこちらに銃を見せつけながら座った。車は飛行場を後にした。
戦争というのは、戦闘の真っ最中ならば誰もが無我夢中になって任務を遂行したり、生き残るのに必死になる。兵士は目先のことのみに集中して、後先のことは考えないのが常だ。それらは指揮官や政治家の仕事である。
だが戦争というのは「戦って終わり」などという単純なことではない。実際には様々な形での後始末が待っている。例えば戦闘で何かしらの損害、あるいは損失が発生した場合には兵器は修理、戦力を補充。生き残った兵士には治療を、手遅れな兵士は葬いを。そして戦闘で捕虜を捕らえた場合は、時として政治的な形での後始末が待っている。今回、ロレンズは捕虜という位に存在する。
軍用車で約数分揺られ、浮島の山脈を越えて対岸にある軍事施設にロレンズは連れてこられた。
「ここに座れ」
石造りで出来た施設をしばらく歩かされ、地下に降りて牢屋らしき場所を経由させられて(なにかの当てつけだろうか?)尋問室らしきところに入れられた。この尋問室は周りをコンクリートで固められた狭い部屋で、中には木製の椅子が二つ、白熱電球のスタンドが乗った机を挟んで向かい合うように並んでいた。ロレンズはその片側の椅子に座るように女士官から促され、拒否する理由もないので素直に従う。
「初めの質問だ、貴様はどこからやってきた?」
「エストバキア連邦東部軍管区海軍、空中艦隊旗艦アイガイオンから来た。目的は君たちとの接触し、協定交渉の為に我々の存在を提唱する事だ」
「空中艦隊?飛空挺艦隊のことだろうか……つまり、我々への接触が目的だと?」
ソニアの疑問符付きの質問にロレンズは今の空中艦隊の孤立無援の寂しさを丁寧に伝える。
「そういう事だ、俺たちは今疲弊している。エメリアとの戦争をしていたが気がついたらこの海域に居た。味方の支援がない中、空中艦隊を動かすにはどうしても味方が必要だからだ」
「気づいたら聖泉に居た?と言うことは聖泉の調査隊では無いのか?」
「少なくとも、我々はこの海域を目指しいていたわけではないので、そういうことだ」
ソニアはますます頭を抱える、気づいたら聖泉にいたと言う事象に対してだろう。ここでレンズは機体から持ち出したあるものを取り出す。マカロフ大佐から受け取った通信筒だ。
「?……それは通信筒か?」
「ああ、俺たちの司令官から手紙を預かっている。受け取ってくれ」
黒く塗られた円筒の中身はマカロフ大佐からの手紙の他に、空中艦隊の写真や我々の世界の地図などが入っている。全て我々の存在を提示し、交渉を円滑に進めるための措置だ。だが……
「ん、この言語はなんだ?」
返って来たのは疑問符付きの言葉だった。
(まさかオーシア語を知らない?)
これもまた誤算だった、ここの言語がサピン語で話されていることからこちらの世界で共通言語であったオーシア語の手紙をマカロフ大佐は書いていたのだが、案の定読めないと言われてしまった。やはりこちらの世界を基準にいたのが間違いであったようだ。
「それは俺たち知っている言語を使っているのだが、読めないか?」
「ああ、全く」
「なら俺が通訳しよう、紙にまとめてお偉いさん方に渡してくれ」
ロレンズはおそらく、この状況で選べる選択肢の中で最も円滑なコミュニケーションを取れる選択をすることにした。紙にまとめておけば、後でどんな高官が回し回しで読み回すことができるからだ。
「その前に一ついいか?」
「なんだ?」
「貴様はエストバキア連邦出身だと聞いた。だが、さっき言ったとうりエストバキア連邦だなんて国は聞いたことがない。貴様の知っている国をいくつか上げてくれるか?」
この質問をするということは、彼女自身まだ頭の情報の整理が追いついていないのだろう。ロレンズは「わかった」と応えると自分たちの世界の著名な国々を上げる事にした。
「まず俺たちの国であるエストバキア連邦、それからエメリア共和国、オーシア連邦、ユークトバニア連邦共和国、南北ベルカ、ウスティオ、サピン、エルジア王国、ノースポイント、どうだ?」
「悪いがどれも聞いたことがない……我々のまだ観測していない地域の国々だろうか?たしかに聖泉の先はまだ未探索だ。そんな国々があってもおかしくはないな」
どうやら彼女とはまるで話しが噛み合わないようで、彼女の解釈が一人歩きをして余計に混乱させるだけであった。ロレンズは頃合いかと思い、あることを口に出す。
「いや、違うな。そもそも俺たちはこの世界の住民じゃない」
「なんだと?」
ソニアは目を見開いて問う。
「俺たちはこの世界の平面惑星とは違う別の地球からやってきた。さっき聖泉と言ったな、今お前から名前を聞くまでこの海域がなんなのか知らなかった」
「何を馬鹿な!そんなことあり得るはずがない。並行世界からやってきた?聖泉を知らない?貴様、聖アルディスタの創造神話まで侮辱するつもりか⁉︎」
「悪いが創造神話なんてものも聞いたことがない」
「⁉︎」
そう言ってロレンズは通信筒の中身から小さく折りたたまれた紙を一つ取り出す。無論、こちらの世界の地球の大陸達が描かれた世界地図である。
「これが、俺たちの惑星「地球」の姿を描いた地図だ。さっき言った国々もこの中にある」
「たしかに見たことのない国と大陸ばかりだが……」
彼女は少し考え込むと、自身の想像を主張する。
「これが聖泉のまだ未探索の地域に存在する国々という可能性も否定できん。貴様らの国々が聖アルディスタの創造神話を忘れていたのは意外だが、そう言うことだろう」
「何……?」
どうやらこの世界では聖アルディスタという宗教的な存在がおり、創造神話なる神話が存在するらしい。つまりはそれを基準に文化や世界が構築されていると彼らは考えており、どうやらそこから我々と食い違っているらしい。
「我々はバレステロス、斎ノ国、ベナレスという三ヶ国以外の国家を確認していない。この聖泉を含め、この世界にはだから我々はこのイスラで聖アルディスタの神話を元に聖泉とその先の調査をし、世界の全貌を知るためにここにいる。
聖泉の先、または未探索の地域にならこの大陸や国々たちが存在してもおかしくはない」
「イスラ」というのはこの島の名前だろうか?少なくとも彼らがここにいる目的はこの海域の調査であると判明した。
そこまで分かるとロレンズは思わぬ誤算に頭を抱えた。未探索の地域の探索をするべく送り込まれた調査隊である彼らは、我々の存在を「まだ未探索の地域に存在する国の調査隊」と勘違いしてしまっているようである。
別の世界からやってきたと言うのはたしかに信じられないが、こちらは嘘を言っているわけではないし。事実を話しているだけだがどうやら信じてもらえないようだった。このままでは交渉どころではなくなりそうだ。
このままではソニアという女士官を含め、我々が異世界から来たと言う事実を信用してもらえないだろう。それでは円滑に交渉や交流を進めることができない。これは思わぬ障害に突き当たってしまったと、ロレンズが返答に困っていると尋問室の扉がノックされた。
「少し失礼するよ」
ドアの先から軽やかな挨拶とともに、一人の長身の男性が入室して来た。軽快な微笑みをたたえながら碧眼で長髪の似合うその男は、足取りも軽やかにロレンズへと歩み寄ってくる。
「私はイスラ航海長、ルイス・デ・アラルコンだ」
外見と振る舞いさえ見れば、かなり真面目そうな軍人だとわかる。この島の航海を一任されているだけあり、かなり優秀そうだ。同時に女士官も敬礼していることから航海長と位はこの島ではかなりの高官に値するようであった。失礼のないよう、ロレンズも席を立ち上がりこめかみに斜めに手を当て敬礼する。
「エストバキア連邦東部軍管区海軍、空中艦隊アイガイオン級重巡航管制機アイガイオン所属、シュトリゴン隊臨時編成隊員、ロレンズ・リーデル大尉です」
「ロレンズ大尉と言うのか、よろしく。ふむ……にしてもかなりの色男だな、君はかなりの女性を虜にして来たのだろう。無論、私の次にな!」
途端、彼は軽く笑い声をあげながら想像のピッチ斜め上方向のことを言ってロレンズを驚かせた。前言撤回、こいつは真面目どころかユーモラスすぎる軍人だだったようだ。ロレンズやソニアもこれには苦笑いしかできなかった。
「さて、それより。我々は君と君の乗って来た機体に少し好奇心がわいてね、直接話しが聞きたいのだがよろしいかね?」
ルイスは軽く微笑みを浮かべ、好奇心旺盛な子供のように目を輝かせてそう言った。笑みは女性一人を軽く撃ち落とせそうなほど、魅力に溢れている。私の次に、と言う言葉も納得できる。だが、残念ながらロレンズは男性だ。そっちの気は一切ない為、その笑みをこちらへの誠意と捉え、ロレンズも笑みを返す。
「ええ、もちろん。航海長が直々に話をしてくださるとは、光栄でございます」
ロレンズはベルカ空軍で恩師に教わった騎士風の礼儀技法に習い、誠意を持って承諾した。
用語解説コーナー
《ストレンジリアル》
皆さんご存知エースコンバットの舞台となる世界。私達の世界とは大陸の形状や科学の進歩に大きな違いが見られ、我々から見たオーバテクノロジーの類も数多く見られる。ユージア大陸、オーシア大陸、ベルーサ大陸、アネア大陸の四つの大陸で構成されている。