俺が生きている意味なんて、これっぽっちも無いと思っていた。
この世界は、とても生きにくい。
人間だけじゃなくて、ほかの動物たちですら当てはまる程に。
強い者だけが生き残り、弱い者は死んでいく。
単純な弱肉強食の世界なら、まだ、救いはある。
だが、そんな強い者ですらその強さを維持出来ず、最終的に絶望に呑まれて死に至る。
そんな、生きていることが無意味だと感じてしまう世界を憎んでいた。
でも、何もできない俺はもっと憎んでいた。
そんな俺を変えてくれたのは、彼女だった。
数年前に、初めて彼女と出会った。
彼女を一目見て、命を懸けて守りたいと思った。
それ程までに彼女は、純粋で、素朴で、そして美しかった。
その日から彼女は、この絶望で埋め尽くされた世界を、そして絶望していた俺を明るく照らしてくれた。
何をするにも、そこには彼女が居た。
どんな時にも、その輝かしい笑顔を見せてくれた。
握った手の温もりは、冷え切った体を温めてくれた。
語りかけてくれる言葉は、小鳥の
―――だけど世界は、無常で、無慈悲で、無責任だ。
彼女が生きていくには、あまりにも酷だった。
俺が理解できないところで、きっと彼女は蝕まれている。
その美しさをやすりで削るように、擦り取られている。
瞳の中に移る世界は、どれほど醜く恐ろしく映っているのだろうか。
吸っている空気は、どれほど汚く淀んでいるのだろうか。
聞こえてくる音は、どれほど
漂う匂いは、どれほど臭く耐えがたいものなのだろうか。
・・・触れている俺の手は、どれほど毒々しく穢れているのだろうか。
そう思うたび、頭がおかしくなりそうになる。
彼女の幸せが奪われていると、そう頭が警鐘を鳴らしている。
このままだと、彼女は俺のようになってしまう。
世界に絶望し、生きている理由を持たない孤独な状態に。
それだけは絶対にあってはならない。
彼女の幸せを絶えさせることなんて、起こってはならない。
だから俺は彼女を守る。
この世界に存在する、ありとあらゆる異物から。
彼女の視界を隠すものは、視界からその一切を消す。
彼女の喉を嗄らすものは、その代わりに喉を潰す。
彼女の耳を潰すものは、耳障りだから黙らせる。
彼女の鼻を詰まらせるものは、消臭するために何処かにやろう。
彼女の肌を傷つけるものは、その死をもって償うがいい。
あの日、夕陽が照らすいつもの帰り道で。
彼女に敵意を向ける全てから、彼女を守ると、そう誓ったんだ。