俺は、ずっと昔から、ある一つの理想を抱いていた。
思い描いていたその理想を実現することは、そう難しいものではない。
俺の周りにいる人たちが、いつも笑顔で、幸せでいてくれたらそれでいい。
特に、彼女が幸せそうならなおのこと良い。
いつも何かに怯え、追い詰められている彼女が、心からの笑顔で俺に微笑んでくれるのなら、それ以上の喜びはない。
その笑みが、その元気が、みんなを笑顔にすることだってきっとできるはずだから。
きっと、その時・・・彼女の笑みがみんなを幸せにしてくれる頃に、俺はこの場にいることはできないだろう。
でも、その時まで俺は彼女の力になると決めた。
立派な人になりたがる彼女を・・・、きっと立派な人になれるであろう彼女を、この命を賭して守ると・・・。
―――それなのに、どうして・・・。
どうして、こんなことになってしまったのか。
どうして、こんな選択を取らないといけなくなってしまったのか・・・。
俺は、みんなの傍から・・・彼女の隣から、離れないといけないのだろう。
彼女の一番近くには俺がいた。
彼女が気づいていなくても、自然に彼女の傍へと行くようにしていた。
俺が彼女を守っていた。
彼女に危険が迫ろうとしたら、この身の全て、全身全霊で彼女のことを守った。
だが俺は、どうしても彼女の傍に居られなくなった。
この体は未だ動かすことができるというのに。
この命は未だ尽きることはないというのに。
このまま、俺がここにいるだけで、みんなを・・・彼女を傷つけてしまう。
彼女はいつも俺を目標にしていてくれた。
こんな俺のことを・・・、ただ一人の人間として初めて見てくれた。
こんな俺を憧れの対象として純粋に見ていてくれた。
だからこそ、命尽きるまで彼女のことを守り抜こうとそう誓ったのに・・・。
彼女のことを支えようと、全力を尽くしてきたけれど、まだ足りない。
彼女のことを守ろうと、全力で戦ってきたけれど、まだ足りない。
時間も体も何もかも、大切なものを守るには全てが足りない。
だから、俺はこんなところで、彼女の傍から離れるわけにはいかない。
離れたら俺は、彼女のために動くことができない。
それだというのに―――
なぜ、彼女の傍からいなくなるという選択を取らないといけないのか!
彼女のことがわかる俺だけしか、彼女を救うことができないのに・・・!
彼女の傍にい続けた俺だけしか、彼女を守ることができないのに・・・!!
―――それでも、いや・・・だからこそ、俺はこうするしかなかったんだ。