とある方の誕生日祝いで望月の短編を書きました。

誕生日であることを隠す提督と、全て知っている望月の話です。

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机上情報は参考までに

秋も終わりに近づき、外にいる艦娘らが厚着をし始めた頃のこと。

俺はいつもより早いペースで提督業をこなし、さっさと自室へ帰ろうとしていた。

 

「司令官、今日やけにキツくない?」

「普段サボっている分のツケだ。やれ」

「うぇー」

 

隣で「いぁー」だの「ヴァー」だの呟きながら書類を捌いているのは、睦月型駆逐艦の望月。

彼女は普段から秘書艦という立場にいるのだが、まるでその仕事を全うしないのだ。

いなくても仕事は回るのだが。

 

「にしてもさぁー。あたしを駆り出すくらいだし、今日はなんかあるのさ?」

「別に。望月には関係の無いことだ」

「えー? いいじゃん、ちょっとくらい教えてくれよー」

「…………」

「無視かー」

 

眼で威圧するように望月を見つめる。彼女は見るからに落胆している様子だった。

 

「あ、そういえばさ」

「まだ何かあるのか」

「さっき食堂の冷蔵庫覗いたら、中に変な箱が入っててさ。気になったから間宮さんに聞いたんだけど、冷蔵庫を貸してるだけの一点張りでさー。司令官、何か知らない?」

「……………………俺は知らんな」

「その間はなにさ」

「いや、記憶を掘り起こしてただけだ。気にするな」

「ほーん……」

 

なんだ、その含みのある返事は。俺が関わってると思っているのか。

──まあ、俺のものなんだが。

 

「そんなことより、さっさと手を動かせ。仕事押し付けるぞ」

「ヴゥー、おにーあくまー」

「悪魔も筑摩もあるか、さっさとやれ」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

深夜の食堂。飯時には賑やかな場所も、消灯時刻を過ぎると静寂に包まれる。

 

「…………」

 

俺はその静寂をなるべく壊さないように動く。その行為に意味などないが、こういうものは雰囲気が大事だろう。

 

「……よし」

 

俺は食堂に置かれている、共用の冷蔵庫を開く。冷蔵庫の中には、望月の言っていた白一色の箱、栓の開いている一升瓶と、残った隙間を埋め尽くす野菜の数々。

俺はその中から白一色の箱を取り出した。

 

「さっさと戻ろう……」

 

そう言って引き返そうと冷蔵庫を閉めて振り返った時だった。

 

「しれいかーん?」

 

突然、食堂の明かりがつけられた。

目の前には──望月が立ち塞がっていた。

 

「なにしてるのさー?」

 

それも満面の笑みを浮かべながら。

 

「……あー、望月の言っていた箱の中身を確かめようとな」

「司令官のものでもないのに?」

「…………」

 

言い返せなかった。

 

「まあ、司令官は嘘が下手だからねぇ……こんな事だろうとは思ってたよ」

「ぐ…………」

「……仕方ない。望月、お前も付き合え」

 

俺は近くのテーブルに腰掛け、箱を置く。望月は反対側に座った。

望月が座ったのを確認すると、俺は箱を開いた。

 

「司令官……」

「なんだよ」

「司令官って、意外と甘党なんだ……」

 

箱の中身は、一切れの苺のショートケーキだった。

望月には意外だったらしく、少し頷いていた。

やがてその頷きを止めると、姿勢を整えてこちらを向いた。

 

「……司令官」

「やらんぞ」

「そうじゃないってば」

 

ケーキのおねだりかと思ったが、どうやら違うらしい。

 

「あー……」

 

──誕生日おめでとう、司令官。

 

「……ありがとう、望月」

「な、泣くなって!!」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「でも、何故俺が誕生日だって分かったんだ?」

「いや、机の上の小さいカレンダーに思いっきり『誕』って書いてあったし、分からない方がおかしいんじゃ……」

「…………」

「……なんかごめん」




タイトルはオチから考えて、発音の似てる気象情報をもじったものですが、物凄くわかりにくいですね……


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