日本一周の特別列車の乗車記。列車に乗っているだけで観光地にはいかない。

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特別列車

本日2020年8月15日は画期的な列車が品川駅から発射する記念すべき日だ。7番線に降りる。しばらくして東京方面からゆっくりと2つのライトが近づいてくる。20時00分発の寝台列車だ。ここ数年、寝台列車を取り巻く環境が劇的に変化している。乗車券を購入しての寝台特急は廃止され、豪華ツアー列車が台頭してきた。そんなことを考えていると目の前に列車が停止しドアが開いた。この列車もツアー列車だが、これまでのJRの豪華列車とは違い観光というものをしない。ただ列車に乗っていようという「乗り鉄」御用達の列車なのだ。部屋に入る。以前あった北斗星という列車のロイヤル個室と同等のつくりだ。ピィィィィィッ!、汽笛一声ゆっくりと列車が動き出した。

奇しくも品川駅の発車メロディの「鉄道唱歌」と相まってわくわく感が最高潮に達した。一応客扱いをする駅もあってどこから乗車しても、どこで下車しても構わないが、私は全区間乗ることにした。少し走って横浜に着く。

左に赤い電車が見える。ここから客扱いの駅は新宮駅までない。食堂車に行く。ここでは、自由にメニューを選べる。厨房は隣の車両なので食堂車内も広々だ。ハンバーグ定食を食べる。肉がかなりブ厚い。肉汁もたっぷりと出る。次々と東海道の夜景が過ぎていく。小田原を過ぎて相模湾が顔を出す。が、夜なのでよくわからない。昼間に乗ったら綺麗だろうなと思う。静岡を過ぎる頃、ベッドに入る。大きくてやわらかい。ぐっすりと眠れそうだ。

2日目

朝目が覚めると南紀地方を走っていた。山を眺めながら食堂車に行く。紀勢線は海沿いを走ると考えていたのだが、それほど海の区間は多くない。9時過ぎ、新宮駅に到着。ここから高速バスを除く路線バスの最長路線が発車するのだ。熊野大社への路線らしいが、列車は10分停車し出発。紀勢線は新宮を境にしてJR東海からJR西日本の管轄に変わる。紀伊田辺で後続の特急に抜かれた。ここらへんが団体列車の苦悩の点なのだろう。和歌山で30分停車して大阪へ。その停車時間中柑橘ゼリーを購入し部屋で食べた。列車はそれから1時間後、新大阪で方向転換して大阪駅に滑り込んだ。ここは大都会なので1時間30分も停まる。折角なので大阪の列車を写真に収めることにした。大都会でもなぜか下町のにおいがする駅だ。大阪環状線はオレンジが基調だったのだが、最新型に変わっている。最近思うのだが、鉄道車両の個性というものがなくなってきている。18時過ぎに出発。須磨付近で夕焼けが鮮やかに輝いていた。感動だ。姫路通過を見て食堂車へ。昨日は肉だったので今日は魚にしよう。白身魚のムニエルを注文。やや塩気が強いか?と思うのだがもちろん不味くはない。酒も少々飲む。食事は旅の楽しみの一つではあるのだが、地方色のあるメニューがないのは残念だ。広島駅停車したのを確認して寝る。

3日目

目が覚めると博多駅に停車中だった。1時間近く停まるのでここでも列車の撮影。ここ博多は一番最初に豪華ツアー列車が出発した駅だ。「ななつぼしin九州」ほどの豪華さはないもののこういう旅もなかなかユニークで面白いと思う。熊本に停車して鹿児島へ。八代から第3セクター「肥薩オレンジ鉄道」に乗り入れる。もと鹿児島本線で以前は特急も走っていたが今では完全なるローカル線。水俣を過ぎると九州の南端鹿児島県へ。時々海を見ながら鹿児島中央駅へ入線。ここでは1時間の停車。もう陽が落ちる時刻だ。3回目の食堂車。今夜はワインとサイコロステーキ。肉が少し硬いと感じるのは気のせいか歳のせいか。これから九州東海岸を夜通し走る。

4日目

山陰を走っていた。朝の日差しが眩しい。その眩しさで目が覚めたのだ。このあと客扱いは松江・鳥取だ。単線なので交換のための運転停車が頻繁にあった。山陰も海は素晴らしい。だが、家などはいかにも地方といった規模の町の中に鎮座している感じだ。港町が多いせいか寂しい感じの風景が続く。特急停車駅でもそんな大きな町にはなっていない。出雲市駅に停車するが客扱いはしない。それほど人口が多くないのだろう。鳥取には午後2時くらいに到着。もちろん砂丘は見えないが観光中心の列車だったらよる場所かなと思う。これから舞鶴線・小浜線経由で北陸に乗り込む。でも通過するだけだから特に興味をそそられない。この列車は日本列島の外周をぐるりと周回するだけだからどうしても海の景色が中心となる。北陸では立山などの山も有名だが夜に通過するだけなので暗くてよくわからなかった。金沢・倶利伽羅・市振・直江津では事業体が異なる区間のため乗務員交替のために運転停車をする。でもそれも布団の中で何となく感じただけ。新潟駅での運転停車以外はよく眠った。

5日目

目を覚ますと右に山が迫り、左に海が見えた。新潟県から山形県へ。ここまで23都府県を通過。景色を見たり食事をしたり、普通の人なら退屈になってしまうだろう列車での生活。特に何かイベントがあるのではなく列車に揺られているだけなのだから。秋田駅10時過ぎに到着。40分停車なので新幹線を写真に撮る。ここでふと不安がよぎる。この時刻でここなのだから、東京帰着は夜になるのではないか?中途半端な帰京だけはやめてほしいと思う。

しかし新青森に停車し新幹線で早めの帰京組を降ろしたあと、青森で何と6時間停車。時間調整とはいえずいぶんと悠長なことだ。せっかくなので町に出ておみやげや町歩きを楽しんだ。久しぶりの町なかなのでのびのびとした気分になれた。列車に戻ったのは19時過ぎ。20時に青森出発。食堂車に行き最後の食事をする。メニューが洋食中心なので少々物足りないがビーフカレーと単品でタンシチューでフィニッシュとする。青森から青い森鉄道・IGRいわて銀河鉄道の路線を通る。ちなみにIGRとは「IWATE・GALAXY・RAIL」の略だそうだ。勘違いされやすいのが「IWATE・GINGA・RAIL」との誤認だ。一ノ関を通過するころに眠りにつく。仙台駅に運転停車したらしいが気づかなかった。

6日目

目を覚ますとすでに大宮を過ぎ「さいたまスーパーアリーナ」が見えた。横には京浜東北線の電車が駅に停まっていた。ついに帰ってきたのだ。6時30分、上野駅13番線ホームに入線した。ほぼ一周。乗客もスタッフの皆様もご苦労様だが、もうひとエッセンスあればもっと楽しい旅になったかも、だ。鉄道のあり方が再考されている現在、

このような列車の旅も貴重な体験となるだろう。これからもより良い旅のためにいろいろ考えていきたい。


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