妹は聖槍使い!?   作:天覧会の部長

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 第二十話!
 お楽しみください!!


第二十話

 き、昨日は災難でした・・・・

 

 ジオティクスさんと両親が日本酒を飲んで意気投合し、授業参観で撮ったビデオを交互に見比べてました。

 あれ程の地獄は体験したことなかったですね・・・・

 

 

 そんな地獄を体験した私は現在。部員の皆と一緒に、旧校舎一階、『開かずの間』と呼ばれる部屋の前に立っていました。

 あぁ、やっと彼を開放するんですね。

 

「さて、皆。開けるわよ」

 

 リアス先輩の言葉と同時に、刻まれていた封印が消え、ただの扉となったところを開きます。

 

「イヤァァァァァァ!!!」

 

 私達が入ろうとすると、部屋の中から絶叫が発せられました。 

 兄さんとアーシア先輩が聞こえてきた絶叫に困惑していますが、私達は気にすることなく部屋の中に入っていきます。

 

「な、ななな、何ですかぁぁぁ!!?」

 

「あらあら、封印が解けたのですよ?もう外に出られるのです。さぁ、私達と一緒に出ましょう?」

 

 朱乃先輩が優しく声をかけます。しかし・・・・

 

「嫌ですぅぅぅ!!ここで引きこもっていたいぃぃ!!外に出たくないですぅぅぅ!!」

 

 返ってきたのは、相変わらずの引きこもり宣言。

 この前とほとんど変わってないじゃないですか・・・・

 

 遅れて中に入ってきた兄さんは、ギャスパー君を見て、歓喜の表情を浮かべます。

 ・・・・多分兄さん、今ギャスパー君の事、女の子だと勘違いしてますね。

 

「イッセー、この子は見た目女の子だけど、紛れもない男の子よ?」

 

 私が訂正しようとしたら、リアス先輩がやってくれました。

 しかし、兄さんは未だ信じられない様子。

 

「いやいやいや、部長。どう見ても女の子じゃないですか・・・・・・・・・・・・・・・・マジで?」

 

「マジです、兄さん」

 

「女装趣味があるのですよ」

 

 私の肯定と共に、朱乃先輩からの追加情報。

 兄さんは、暫く動きを止めます。そして

 

「はぁぁぁぁぁっっっっ!?」

 

「ご!ごごご!ごめんなさぁぁぁい!!!」

 

 兄さんの絶叫に耳を抑えながら必死に謝るギャスパー君。

 まぁ、兄さんの気持ちも分からなくはないですが・・・・

 

「嘘だァァァァァ!!」

 

 兄さんは、ショックで頭を抱えて叫びます。

 

「おかしい!この世界はおかしい!こんな美少女の姿で・・・・お、男だなんて・・・・!こんな残酷な事があっていいのか・・・・!?」

 

 いや、どんだけ納得いかないんですか・・・・

 

「というかなんで女装なんてしてんだよ!引きこもりなのになんで女装してんだよ!誰に見せるんだよぉ!」

 

 兄さんが心の声を叫びます。

 それに対して、ギャスパー君から反論の一言。

 

「だ、だって、女の子の服の方が可愛いんだもん・・・・」

 

「・・・・『もん』とか言うなぁぁ!!一瞬でも金髪ダブル『僧侶(ビショップ)』を夢見た俺の夢を返せぇぇ!!」

 

「兄さん、いい加減諦めてください」

 

「うァァァァ!!」

 

 よし、もうほっときましょう。

 そう私が決めると、ギャスパー君が恐る恐るリアス先輩に話しかけます。

 

「と、ところでこの方達は誰ですか?」

 

 そう言った後、ギャスパー君は兄さん、アーシア先輩、ゼノヴィア先輩を順に指差します。

 

「貴方がここにいる間に増えた眷属よ。『兵士(ポーン)』の兵藤一誠、『騎士(ナイト)』のゼノヴィア、あなたと同じ『僧侶(ビショップ)』のアーシア」

 

 そんなギャスパー君の疑問に、リアス先輩は優しい声音で答え、再びギャスパー君に外に出るように言います。

 

「ギャスパー。外に出ましょう?ね?貴方はもう封印されなくていいのよ?」

 

「い、嫌ですぅぅぅ!!僕に外の世界なんて無理ですうぅぅぅぅ!どうせ僕が出ていっても皆に迷惑をかけるだけなんだぁぁぁぁ!」

 

 しかし、ギャスパー君はリアス先輩の言葉に耳を傾けず、部屋の片隅で喚いています。

 

「ほら、部長が外に出ようって・・・・」

 

「イヤァァァァァァ!」

 

 兄さんがギャスパー君を引っ張り出そうとすると、彼の目が怪しく光り、私と彼以外の時が止まりました。

 

 

「・・・・相変わらずですね、ギャスパー君」

 

「ご、ごめんなさい・・・・」

 

「とりあえず、落ち着きなさい。私も事情説明位はしてあげますから」

 

「本当にごめんなさい・・・・!」

 

 そう言って、ギャスパー君は深呼吸をして興奮を抑え、私以外にかかっている時間停止を解除します。

 

「あれ?」

 

「おかしいです。何か今一瞬・・・・」

 

 停止状態から解除されて、兄さん、ゼノヴィア先輩、アーシア先輩は困惑している様子ですが、事情を知ってる他の皆はまたかとため息をつきました。

 

 すっごく不思議そうにしている兄さん達に事情を説明します。

 

「兄さんアーシア先輩ゼノヴィア先輩。いいですか?彼は興奮すると視界に入る全てのものを停止するという『神器(セイクリッド・ギア)』を所持してるんですよ。

それにより、私以外の皆さんは停まったというわけです」

 

「皆さん。本当に!本当にごめんなさい!!どうか怒らないでぇ!!!」

 

 どうしてこう、ちゃんと謝れはするのに、素直に外に出ないんでしょうかね・・・・

 私がそう疑問に思っていると、朱乃先輩が追加情報を説明します。

 

「先程の清羅ちゃんの説明にもあった通り、この子は、自らの『神器(セイクリッド・ギア)』を制御できないため、大公及び魔王サーゼクス様の命でここに封じられていたというわけです」

 

 私と朱乃先輩の説明に、三人はなるほどといった表情を浮かべます。

 そして、リアス先輩はギャスパー君をそっと抱きしめ、三人にギャスパー君の紹介をします。

 

「この子の名前はギャスパー・ブラディ。私の眷属の『僧侶(ビショップ)』。転生前は人間と吸血鬼のハーフよ」

 

 

 

―●●●―

 

 

「さぁ走れ走れ!さもなくば、このデュランダルの餌食となるぞ!!」

 

「ヒィィィィィ!!こっち来ないでぇ!!」

 

 時間は夕方頃。あれから、リアス先輩に頼まれ、ギャスパー君を鍛えようという話になり、今現在行われているのは、吸血鬼狩り。

 おかしいですね・・・・頼まれたのは引きこもりの脱却だったんはずなんですが・・・・

 

「うぅ。折角、私と同じ『僧侶(ビショップ)』さんにお会い出来たのに目も合わせてもらえませんでした・・・・」 

 

 吸血鬼狩りが行われている中、アーシア先輩は心底残念そうにしています。

 そういえばよく家で「もう一人の『僧侶(ビショップ)』さんに会いたいです!」って言ってましたからね。

 

「ほら、ギャー君。ニンニク食べれば健康になるよ」

 

「やめてくださいィィィィ!!小猫ちゃんが虐めてくるぅぅぅ!!!」

 

 小猫ちゃんはニンニクを持ってギャスパー君を追いかけ回しています。

 ・・・・小猫ちゃん、楽しそうですねぇ。

 

「おーおー、やってるやってる」

 

 すると、ここに匙先輩がやってきました。

 

「おっ、匙か」

 

「こんにちは、匙先輩」

 

「よー兵藤、清羅ちゃん。解禁された引きこもり眷属がいるって聞いて花壇の手入れのついでに見に来たぜ」

 

「そうですか、ちなみに、そこでゼノヴィア先輩に追いかけ回されているのが解禁された引きこもり眷属です」

 

「ゼノヴィア嬢が伝説の聖剣豪快に振り回してんのはいいのか?・・・・って、あれか!美少女!しかも金髪!」

 

 金髪美少女と勘違いして喜ぶ匙先輩。

 そこへ、兄さんが現実を叩きつけます。

 

「残念、あれは女装野郎だそうだ」

 

 兄さんから叩きつけられた現実に崩れ去る匙先輩。

 ご愁傷様です。

 

「・・・・マジかよ。しかも女装で引きこもりってかなり矛盾してんじゃねぇか」

 

「だよな、それには心底同意だ」

 

 兄さん達が共感しあっていると、そこへ見知った堕天使の気配が。

 アザゼルさん、なんでここに来てるんですか・・・・

 

「へぇ、魔王眷属の悪魔さん方はここで集まってお遊戯してるというわけか」

 

「・・・・何しに来たんですか?アザゼルさん」

 

「よー、清羅!いやなに、ただの散歩ついでに聖魔剣使いをだな」

 

「木場先輩なら今はサーゼクスさん達のところです。会いたいのならそこへ行ってみればいいんじゃないですか?」

 

 私の冗談混じりの説明に、アザゼルさんは苦笑いしながら返しました。

 

「馬鹿言え、そんなこと俺がやってみろ。即座に魔王との戦闘だよ」

 

 ここに侵入してきた時点でアウトだと思うんですがね・・・・・・・・

 そうして私がアザゼルさんの適当な部分を心配していると、アザゼルさんは兄さん達に戦闘する意思はないと告げました。

 

「おい、構えを解きな、下級悪魔君たち。清羅以外じゃ束になっても、俺には勝てやしねぇよ。分かるだろう?」

 

 しかし、そう言われても兄さん達は構えを解きませんでした。

 私とこうやって親しげに会話してる時点で大丈夫だと気付かないんですかね? 

 

「まぁ、いいか・・・・あぁ、そうだ。そこに隠れてるヴァンパイア」

 

 兄さん達の態度に若干呆れているアザゼルさんは、何か思いついたのか、ギャスパー君が隠れている木陰に近づきます。

 

「お前さん『停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』の持ち主なんだろう?そいつは使いこなせないと厄介な代物だ。『神器(セイクリッド・ギア)』の補助具で不足している要素を補うといいんだが・・・・」

 

「多分無理でしょう。悪魔側は『神器(セイクリッド・ギア)』の研究が進んでませんから」

 

「・・・・あぁ〜、そうだったか。んじゃあ無理だな。だったら代わりになりそうなもんは・・・・・・・・お?」

 

 アザゼルさんは少し考えたあと、匙先輩の方に振り向きます。

 

「お前それ、『黒い龍脈(アブソリューション・ライン)』か?だったらそれ使って制御の練習してみろ。ヴァンパイアにラインを接続して余分なパワーを吸い取りつつ発動すれば、暴走も少しは抑まるだろうさ」

 

 アザゼルさんの説明に困惑する匙先輩。

 

「・・・・俺の『神器(セイクリッド・ギア)』。そんなこともできるのか?ただ単に敵のパワーを吸い取って弱らせるだけかと・・・・」

 

 匙先輩の発言に、アザゼルさんは呆れた様子を見せました。

 

「ったく、これだから最近の『神器(セイクリッド・ギア)』所持者は自分の力をロクに知ろうとしない。『黒い龍脈(アブソリューション・ライン)』は五大龍王の一匹、『黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン)』ヴリトラの力を宿している。ま、最近の研究で発覚したことなんだがな。そいつはどんな物体にも接続することができて、その力を散らせるんだよ。短時間なら、持ち主のラインを引き離して他の者や物に接続することも可能だ」

 

 相変わらずの『神器(セイクリッド・ギア)』マニアっぷりですね・・・・

 

「じゃ、じゃあさ、俺側のラインを兵藤とかに繋げられるのか?」

 

「あぁ、成長すればラインの本数も増える。そうすりゃ吸い取る力も出力も倍になるさ」

 

 アザゼルさんの説明に黙り込む皆さん。

 そんな空気を気にせず、アザゼルさんは話を続けます。

 

「『神器(セイクリッド・ギア)』の上達で一番手っ取り早いのは赤龍帝を宿した者の血を飲むことだ。ヴァンパイアなら血を飲めば力もつくだろうさ」

 

 それだけ言い残して、アザゼルさんはこの場からさろうとします。

 しかし、再び何か思い出したのか、私の方へ顔を向けました。

 

「そうだった、清羅。当日は会談が始まる一時間前にうちに来てくれ。打ち合わせがあるからな」

 

「あ、はい。わかりました」

 

「おう、じゃあな」

 

 私に伝達して、アザゼルさんは今度こそ、ここから去っていきました。

 

 

「あれが堕天使総督か・・・・・・・・なんとも掴めない男だったな・・・・」

 

 ゼノヴィアさんが相対した感想を述べます。

 やっぱり初対面だとそう思いますよね。

 なんかこう、胡散臭いというか。

 

「と、とりあえず、そこの『僧侶(ビショップ)』君に俺の『神器(セイクリッド・ギア)』を取り付けて練習してみようぜ」

 

 ゼノヴィアさんの次に声を発したのは匙先輩。

 皆は反対することなくこの案に賛成し、ギャスパー君の修行を再開しました。

 

 




ありがとうございました! 
次回もお楽しみに!!

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