第二十二話、始まるよ!
僕、木場裕斗はイッセー君達が転移したあと、魔王様からの命を受け、ゼノヴィアと共に魔術師達の討伐を行っていた。
しかし、僕達はほとんど役に立っていないと言っていい。
その理由は、僕達以外に戦っている者達が、圧倒的な力で敵を殲滅しているからだ。
――規格外
今戦っている清羅ちゃん、ヴァーリ、フリードを表す言葉は正にこれだろう。
何せ、僕とゼノヴィアが敵を一人倒してる間に、向こうは単独で数十〜数百人程の数を倒している。そして、その中には上級クラスの悪魔達も確認できた。
「オラァ!その程度かぁ?悪魔さん達よぉ!」
「クッ!舐めるな!」
フリードに襲いかかる悪魔と魔術師達。
しかし、そんな彼らの攻撃は意味を成さず、フリードの神速の一閃により、彼らは逃げる間もなく両断されてしまう。
「ったく、上級悪魔クラスの力があるからと思って期待してみたらこの程度かよ・・・・バルムンクちゃんも暴れ足りねぇみてぇだし・・・・」
幾多もの敵を斬り伏せてきたフリードは、疲れた様子など一切見せず、期待外れといった様子。
・・・僕達の時は、本気じゃなかったんだね・・・
「さて、張り合いある奴もいないことだし、俺は旦那と旧魔王様の戦闘を観戦させていただくとしますかね。そっちはどうするんスか?」
「君と同じく、観戦させてもらうよ」
「あぁ、私もだ」
「・・・・そうッスか」
フリードは僕達に確認を取るなり、アザゼルとカテレア・レヴィアタンの戦闘に目を向けた。
そこで僕達が見たのは凄まじいオーラの暴力。
あちらも、僕達グレモリー眷属とは次元が違うレベルの戦いだった。
アザゼルが幾多もの光の槍を放てば、カテレアはそれを防御魔法陣で防ぎ、即座に自らの得意属性であろう水系の力で反撃を繰り出す。
しかしそのガテレアの反撃を、アザゼルは難なく弾き返した。
その余波で吹き飛ぶ校庭や学園の建造物。
「・・・・!へぇ〜、旧魔王様。予想以上に旦那に食い下がってるッスね〜。てっきりあのまま殺られて終わりかと思ってたんッスが・・・・・・・・・・・・・あぁ、そういうことか・・・・」
「何か分かったのか?」
ゼノヴィアが、あの戦闘で何かに気付いたであろうフリードに問いかける。
「ん?あぁ、あんたらは気付いてなかったんスね。ほれ、旧魔王様のオーラ、よ〜く見てみな」
彼の言う通り、僕とゼノヴィアは注意深くカテレアを観察する。
・・・・?何かおかしい。纏っているのが悪魔の魔力じゃない?
「気付いたッスか?」
「あぁ、あれは一体何だ?」
「オーフィスだよ」
「「!?」」
僕達は思わず目を点にした。
バカな!?彼女を包むあの不気味なオーラは、オーフィスの力だっていうのか!?
「お察しのとおりッスよ。大方、組織のボスであるオーフィスから力を借り受けてるんだろーね」
「そうか・・・・」
なるほど。そう言われてみれば納得できる。
道理で、本来アザゼルに劣る彼女があそこまで食らいつけているわけだ。
「ん?・・・・へぇ!了解、リーダー!」
そんな中、僕の隣にいたフリードが、何かに応答した。
何があった?
僕が考え込む中、フリードは楽しそうに、僕達に問いかけてきた。
「あんたら、まだ戦えるッスか?」
「う、うん。戦えるけど」
「まさか・・・・新手か?」
「正解!ほら!あれあれ!」
そう言ってフリードはゲートを指差す。
そこから出てきたのは、夥しい数の魔獣達!
『グギャァァァァァ!!!』
耳障りな咆哮を喚き散らし、ゲートから次々と飛び出してこちらへ襲い掛かってくる・・・・!
「ふむ、向こうは何が何でも、この会談をぶち壊したいみたいッスね。魔術師と悪魔達だけでなく魔獣まで投入してくるとはなぁ」
フリードはそう言いながらも、むしろ楽しそうに魔剣を構える。
そして、フリードの魔剣の柄に埋められた青い宝玉が煌めき、凄まじい魔力を放出する!
ッ!!この構えは、あの時のっ・・・・!
「受け取れ!これは挨拶代わりだ!」
そして放たれる黄昏の波!
その波を受け、魔獣達の九割が消失した!
「ほら、あんたら!何ボサっとしてんスか!ゲートが破壊されるまで、魔獣達の相手をするッスよ!」
「!分かった!」
しまった、出遅れたか!
―●●●―
「張り合い無いですね、ヴァーリ君」
「まぁ、たしかにな」
私、兵藤清羅は、悪魔達と魔術師を全滅させたあと、ヴァーリ君と共に上空から襲い掛かってくる魔獣達の相手をしています。
しかし、あまりにその魔獣達が脆く、攻撃も貧弱なため、私達は動かずして殲滅することが可能。
現に、ヴァーリ君は大量の弾幕を放ちながら、私の『
「・・・・しかし、君の『亜種
「ありがとうございます。実はこれ、発現した際に纏っている衣が、アザゼルさん曰く、今は亡き『聖書の神』が纏っていたとのものとそっくりみたいですよ?」
「なるほど。道理で、天使達が見惚れてしまっているわけだ」
私の言葉に納得するヴァーリ君。
それにしても、アーシア先輩が停まっている状態で本当に良かった。
この衣と、今の状態の槍を、信仰深い彼女が見たら心が持ってかれるだけじゃすまない。
ゼノヴィア先輩あたりは、まだ大丈夫みたいですが、それでも見続けるのは危ないですからね。
「ただではやられません!」
む、アザゼルさんの戦闘に変化が。
どうやら、カテレア・レヴィアタンが自らの命を糧として自爆を目論んだ模様。
――まぁ、やらせませんけどね。
「キャァァァァァァ!!!!」
触手を伸ばしてアザゼルさんに巻き付こうとする彼女を、聖槍の投擲によって貫く。
その体を、悪魔にとっては必殺の猛毒である聖槍に貫かれた彼女は、悲鳴をあげながら、塵一つ残らず、この世から消滅しました。
その後、投擲した聖槍が、光の軌跡を空に描いて私の手元に帰ってきます。
これは、私が師匠から教わった術式の一つ。
もう一つの槍の方は、ほぼ自動的に手元に戻ってくるのですが、聖槍の方はそうでないため、術式で補っています。
そして、私が聖槍を手元に戻してすぐ、こちらへ近付いてくるアザゼルさん。
「いやぁ、助かったぜ清羅。体の一部を犠牲にせずに済んだ・・・・・・・・それにしても、槍の投擲技術、また上がったんじゃねぇか?」
「・・・・いえ、師匠からは、『まだ甘い』と」
「あ、相変わらずだな、あの女は」
若干引きつった笑みを浮かべてくるアザゼルさん。
まぁ、あの人からしてみれば、仕方ないことなんですがね・・・・
「・・・・にしても、『人工
「改良に熱中しすぎるのだけはやめろよ?アザゼル。でないと、シェムハザあたりに、またこっぴどく叱られるぞ?」
「う・・・・そりゃ勘弁だ」
シェムハザさんの説教を思い出して、げんなりするアザゼルさん。
・・・・確かにあれはキツイでしょうね。
『ゴギャァァァァァ!!!!!』
私達が会話してるところに響く獣の咆哮。
声の発信源に視線を向けると、そこには全長数十メートルはあろう巨大な魔獣と、それと激しい戦闘を繰り広げるフリードさんの姿。
ゼノヴィア先輩と木場先輩は、戦闘に付いて行けずダウンしてますね。
これ、私達が行ったほうが良いでしょうか?
「いいね!いいねぇ!どいつも張り合いの無い奴ばかりかと思ってたが、てめぇだけは別だぜぇ!」
・・・・いや、加勢しようかと思いましたが、どうやら、その必要は無さそうです。
「おい!フリード!その魔獣、殺るのにあとどのくらいかかる?」
アザゼルさんがフリードさんに問いかけます。
それに対し、フリードさんは。
「ん?あぁ。その気になれば即座に片付けられるッスよ?そうした方がいいッスか?」
と、魔獣に幾多もの傷をつけながら冷静に返答する余裕ぶりを見せました。
「ならそうしてくれ!」
「了解だ!旦那!」
アザゼルさんからの指令。
この指令を受け、フリードさんは魔獣から少しばかり距離を取り、魔剣を再び構え直し、この戦況を変える一撃を放つための詠唱を始めました。
「――悪しき竜は堕ち、世界は今落陽に至る。
撃ち落とせ――『
放たれるは半円状に広がる黄昏の波。
それを受けた巨大な魔獣は、断末魔をあげる暇もなく、この世から消え去りました。
「・・・・ふぅ、ま、こんなもんかねぇ」
「お疲れ様です。フリードさん」
「おう!ま、あの程度の魔獣なら、はっきり言ってどうってことないッスよ」
うん、本当にどうってことなさそうですね。
だって、一切汗をかいてないですし。
すると、ヴァーリ君がアザゼルさんに質問します。
「ところでアザゼル、あの魔獣で最後か?」
「あぁ、奴らに利用されてたハーフヴァンパイアも解放されて、一件落着ってとこだな」
「・・・・そうか。もう少し張り合いのある奴が来てくれれば暴れられたんだがな・・・・」
「おいおいヴァーリ、勘弁してくれよ。ここを更地にするつもりか?」
「・・・・・・・・・・・・冗談だよ」
「・・・・うわぁ、こいつマジだ」
あ、本当ですね。
ヴァーリ君、大分消化不良みたい。
その証拠に、不満が顔から滲み出てます。
・・・・・・・・仕方ないですね。
「ヴァーリ君、今度相手してあげます。
だから、そんな顔しないでください」
私の言葉を聞き、嬉々とした笑みを浮かべるヴァーリ君。
そんな中、アザゼルさんは何故かげんなりした表情を浮かべてました。
「ありがとう、清羅。では、次の日にでも全力でやろうか!」
「えぇ!望むところです」
「・・・・・・・・頼むから自重してくれよ」
アザゼルさんが何か言ってるけど、気にしないでおきましょう!
私もはっきり言って消化不良だったのでね。
―●●●―
俺、兵藤一誠が校庭に足を踏み入れた時、三大勢力の軍勢が事後処理を行っていた。
「終わったんだよ・・・・な?」
「えぇ、終わりましたよ、兄さん」
俺の疑問に答えてくれたのは清羅だった。
それにしても、清羅は先程までアザゼルやヴァーリと話してたけど、何を話してたんだ?
気になった俺は尋ねてみることにした。
「なぁ、清羅。アザゼルやヴァーリと何話してたんだ?」
「あ、はい。ちょっと今後の予定について少々」
「・・・・そっか」
なんだ、そんなことか。
なんかアザゼルがげんなりした表情を浮かべてたから、何事かと思っちゃったぜ。
げんなりしたアザゼルに、サーゼクスさんとミカエルさんが話しかける。
どうやら、『
・・・・あ!そうだ!俺、ミカエルさんに頼みたい事がもう一つだけあったんだ!
「あの!ミカエルさん!」
「どうしました?兵藤一誠君」
「・・・・一つだけ、お願いがあります」
「分かりました」
この場にいる皆が疑問に満ちた顔をしている。
「アーシアとゼノヴィアが祈りを捧げる際のダメージを、無しにできませんか?」
「!?」
俺の言葉に驚愕するミカエルさん。
やっぱり、こんな事言われるなんて予想外だったのかな?
しかし、ミカエルさんはすぐに表情を戻すと、小さく笑って頷いてくれた。
「分かりました、二人分位ならなんとかできるでしょう。本部に帰ったら早速取り掛かることにします」
やったぜ!ありがとうございます!ミカエルさん!
「私も手伝った方が良いですか?ミカエルさん」
「いえ、たった二人分なので問題ありませんよ。流石に、十人以上だったら協力してもらう必要がありましたが」
清羅がミカエルさんに確認を取った。
そうか、清羅も協力してくれるつもりだったんだな。ありがとう!
「さて、サーゼクス、後始末は任せたぞ」
「あぁ、もちろんだ」
そう言って、アザゼルはヴァーリとフリードを始めとした部下達と共に帰っていった。
「兄さん、私も一旦ヴァーリ君達の所に行きますね」
「お、おう。分かった」
そう言って、魔法陣で帰ろうとした清羅だが、ふと立ち止まり、俺に向かって話しかけてきた。
「そうでした、兄さん。これだけは伝えときますね?アザゼルさんとフリードさん、ヴァーリ君がこれから当分、ここに滞在するそうですよ?」
「・・・・・・・・・・・・え?」
・・・・ちょっと待て、マイシスターよ。今、なんとおっしゃいましたか?
「それでは兄さん、また明日」
「おい!?どういうことだよ!?」
俺の疑問には答えず、清羅はただ笑って去っていった。
・・・・え?マジでどういうこと?
ありがとうございました!
ちなみに、フリードは『幻想大剣・天魔失墜』《バルムンク》!を放つ際、「撃ち落とす――」ではなく「撃ち落とせ――」と言います。
二十二話にて、ようやく清羅の『禁手』の名称が登場です!詳しい説明はまたいつかさせていただくので、その時までお楽しみに!