大変長らくお待たせしました!第二十七話、始まるよ!
あと、今回の話は短いです。すいません!
兄さん達のレーティングゲーム当日。
私、兵藤清羅はチームの皆と共に、各勢力の重鎮達が招かれているVIPルームで待機していました。
「清羅。一つ聞きたいことがある」
抹茶ラテを飲みながらまったりしていたら、ヴァーリ君から質問されました。
「君がリアス・グレモリーの対戦相手なら、眷属の中で確実に誰を取る?」
誰を確実に取るか、ですか。
それは当然――
「兄さんですね。チームの皆はもうとっくに知ってると思います。チームの精神的な柱が誰なのかを・・・・」
どんな状況でも前を向き、諦めず進み続ける兄さん。
そんな兄さんの諦めの悪さが、良くも悪くもチームの皆の活力となっています。
その中でも、特に影響を受け、自らの精神的な柱としているのが、『
「同じだな。俺も彼を狙う。戦いにおいて、敵の精神的柱を折るのは当然のことだからな」
ヴァーリ君も同じ考えだったようで、手を組み、頷いていました。
『皆様、このたびはグレモリー家、シトリー家のレーティングゲームの審判役を担うこととなりました。ルシファー眷属「
グレイフィアさんの試合開始のアナウンスが聴こえたため、私達は試合会場に目を向けました。
『我が主、サーゼクス・ルシファーの名のもと、ご両家の戦いを見守らせていただきます。どうぞ、よろしくお願い致します。早速ですが、今回のバトルフィールドはリアス様とソーナ様の通われる学舎「駒王学園」の近隣に存在するデパートをゲームのフィールドとして異空間にご用意いたしました』
今回のゲームの会場である、学園の近くにあるデパート。両チームが内部の構造を知っているため、本来なら比較的やりやすい部類に入るでしょう。しかし――
『今回、特別なルールがございます。陣営に資料が送られていますので、ご確認ください。回復品である「フェニックスの涙」は今回両チームに一つずつ支給されます。なお、作戦を練る時間は三十分です。この時間内での相手との接触は禁じられております。ゲーム開始は三十分後に予定しております。それでは、作戦開始です』
今回の特別ルール
『デパートを破壊し尽くさないこと』により、グレモリー眷属側がかなり不利となります。
おそらく、全力を出せるのは木場先輩くらいですかね?・・・・・・いや、それも厳しいですかね
―●●●―
その後、グレイフィアさんが試合開始宣言をしてからかなりの時間が経ちました。
あっという間に時は過ぎ去り、ゲームはもう終盤です。
それにしても、小猫ちゃんの猫耳姿、可愛いなぁ。
しかし、ギャスパー君が試合開始してから即座にリタイヤさせらたことには驚きを隠せませんでしたね。
それでも、リタイヤの理由が理由なので、観戦していた方々は皆、理解しながらも微妙な表情をしていました。
そんな私も、微妙な表情をして見ていた一人です。
「ほっほっほっ、面白い試合じゃな」
目を輝かせ、モニターで試合の様子を見ているオーディンさん。
それにしても珍しいですね。あのオーディンさんが、ここまで楽しそうにしているなんて。
「あのシトリー家の『
数時間前まで名前すら知らなかった匙先輩に対して、最大級の賛辞を贈るオーディンさん。
「そうでしょうそうでしょう!オーディンおじいちゃんったら話が分かるんだから☆」
先程まで泣きそうな顔だったセラフォルーさんは、妹の眷属を褒められたことで一気にテンションアップ。
「・・・・やられたか、兵藤一誠・・・・」
その一方で、兄が撃破されたことに対し、難しい顔をしているヴァーリ君。
あぁ、兄さん。これ、帰ったらヴァーリ君による鬼のしごきコースですよ・・・・
―●●●―
ゲーム終了後。俺は医療施設の一室で目を覚ました。
「お目覚めですか?兄さん」
声のした方を見ると、そこにはりんごの皮を剥いている我が妹の姿。
「なぁ、清羅。試合の結果は・・・・?」
俺は、清羅が剥いたリンゴを食べながら、恐る恐る質問する。
「試合は、兄さん達の勝利です」
「・・・・・・・・そっか」
俺は、清羅の回答に、力なく答えた。
「喜ばないんですか?初の勝利なのに」
そんな俺に疑問を持ったのか、今度は清羅が質問をしてきた。
「・・・・あぁ。喜べない。なにせ、ゲーム前、圧倒的な力を持っているって言われてたのに、実際結果を見てみればギリギリの勝利だったからな・・・・」
その中でも、俺は赤龍帝なのにやられちまった。
おっさん、カール、ヴァーリに協力してもらって『
「そうですか・・・・」
清羅はそう言うと、それ以上何も言わず、黙々とリンゴを食べ始めた。
俺は悔しくて、悔しくて。ただ自分が情けなくて、一言も話さずにいた。
「あぁ、そうでした」
そんな中、静寂を破ったのはリンゴを食べていた清羅だった。
「ヴァーリ君から伝言です。『修業内容。更に厳しくするから覚悟しておくように』だそうです」
清羅は、申し訳なさそうにヴァーリからの伝言を伝えた。
「わかった」
俺はそれに対し、ただ一言、そう答えた。
清羅は、心底珍しいものを見たといった表情をしていた。
「意外ですね。もうあんな修業やりたくないって泣き言を言うかと思っていましたが・・・・」
清羅の言うことはもっともだ。
以前の俺だったら、嫌だ、死にたくない!って言って全力で断っていただろう。
・・・・・・・・断っても意味なさそうだけど
「俺だって、本当は厳しい修業なんてしたくないさ。でも・・・・」
でも、今回の試合を通じて、理解した。
今のままじゃ、俺は何の役にも立たない。
―――だから
ヴァーリに清羅、アザゼル先生といった自分より格上の相手に戦い方を学ぼう。
部長や朱乃さん。アーシア、ゼノヴィア、ギャスパー。同じチームの仲間達と強くなろう。
同じチームの仲間で、悪魔になった当初から超えたかった相手、木場。
そして、今回の戦いで思いと拳をぶつけ合った新たな俺のライバル、匙。
この二人と競い、高め合あって、強くなる!
「いい顔つきになりましたね、兄さん」
隣にいた清羅が、そう言って微笑みながら、優しく頭をなでてくれた。
女の子特有の柔らかい手触りと、温もりが頭に伝わってくる。
「ありがとな、清羅」
俺は、更に頑張れる気がした。
―●●●―
「へぇ、あれが清羅の兄にして今代の赤龍帝、兵藤一誠か」
とある施設の中にある一室。そこで若手悪魔同士のレーティングゲームをモニターで観戦していた黒髪の青年が口を開いた。
「うん。彼もまた、予想の斜め上を飛んで成長していきそうだな。性格も戦い方も違うとはいえ、そこはやはり兄妹というわけか」
黒髪の青年は、愉快気に笑う。
「しかし、それでもまだ俺達の領域には程遠い」
彼は、その言葉とともに、先程の愉快気な笑みを一変させ、表情をかたいものにする。
「さてさて、一刻も早く強くなってもらうために何か仕掛けたいところだが・・・・うちの構成員達と保護した子供達は、現在ハワイでバカンスの真っ最中だしなぁ」
どうしたものか、と彼は腕を組み考え込む。
「――そうだ、あれがあったな」
何か閃いたのか、彼はニヤリと口元を歪め、カバンから携帯電話を取り出した。
「さて、そうと決まれば早速手配しよう。まずは清羅に連絡を入れて―――『おかけになった電話番号は、現在使われておりません』だと・・・・!?」
最後に出てきた黒髪の青年。一体何操なんだ・・・・
彼が今はどんな立ち位置なのか。清羅とはどういう関係なのか、それらのことはこれから判明していきます。お楽しみに!