・・・・・・・・それはそうと皆様。曹操さんのアニメでの声、中の人が中の人なだけに、声を聞いてると某ニートを思い浮かべてしまうのは私だけでしょうか?
すっかり夏も明け、高校生活が再開した頃、私のもとに思いもよらぬ相手から連絡が入ってきました。
『やぁ、久しぶりだね。清羅』
どことなく胡散臭さを感じる声で挨拶してきた相手は、師匠のもとでともに修業に励んだ兄弟子にして、現在はとある一大組織を束ねる首領、曹操さんでした。
・・・・・・・・あれ?というか私、この人に携帯番号教えてないはずなんですが?
『おそらく君は、何故俺が君に電話をかけられたか疑問に思っていることだろう。答えは簡単。ゲオルクに携帯番号を教えてもらったからさ』
あぁ、そういうことでしたか。それで、私の番号を知らないのに電話をかけてこられたわけですね。
『というか清羅?うちのメンバーの殆どが番号を知っているのに俺だけ知らないとか、軽く・・・・いや、かなりショックだったんだが・・・・?』
若干悲しんでるような声で質問してくる曹操さん。
嘘偽りは好きではないので、ここは正直に答えることにします。
「あぁ。それは携帯番号を変えた際、他の人達にはちゃんと伝えたんですが、あなたには面倒くさくて伝えていなかったからですね。ごめんなさい」
『ひ、酷くないか?俺は一応、君の兄弟子にあたる存在なのだが・・・・」
先程よりも、悲しみが増したこのような声で抗議してくる曹操さん。
彼の事を何も知らない相手が聞けば、本当に悲しんでいると判断し、すぐに謝罪するであろう声音と態度。
でも、彼の事を知っている人からしたら――
「そろそろ悲しむふりもやめてください、曹操さん。いい加減鬱陶しいです」
私のように、ただ鬱陶しいだけです。
『・・・・つれないなぁ。ここは「ごめんね!曹操お兄ちゃん!」って涙声で謝ってくれたっていいだろうに』
「死んでもそんなことはしません」
おぉ、自分でも驚くくらい早く言葉が出ました。
ていうか曹操さんの私の声真似、驚くほど似てませんでしたね。寧ろ気持ち悪いです。
『冗談だよ。そこまで本気になって否定しなくてもいいだろうに。すぐムキになっちゃって・・・・・・・・全く、可愛いなぁ』
「いい加減にしなさい。切るぞ?」
『・・・・・・・・分かった。これ以上おちょくって君が怒ると本気で切られそうだからやめよう。だから清羅、言葉遣いを戻すといい。ぶっちゃけかなり怖い』
曹操さんに指摘されるのは癪ですが、自覚はあったのでいったん深呼吸をして、心と体を落ち着かせます。
『落ち着いたかい?』
「はい」
『それは良かった。では、早速本題に入ろう』
彼は、私の呼吸を確認したあと、ようやく今回の件の本題に入り始めました。
『実はだね―――』
―●●●―
「・・・・・・・・なるほど」
あの電話のあと、私はヴァーリ君に曹操さんから連絡があったことを伝えました。
と言っても、向こうがヴァーリ君には伝えてほしいと頼んできたからなんですが。
「まさか、彼がわざわざそんな事を頼み込んで来るとはな・・・・」
全力で面倒くさそうにしているヴァーリ君。
うんうん、その気持ちは理解できます。
「しかしいいのか?そんなことをして。この町は今や、三大勢力の重要拠点の一つなんだが・・・・」
曹操さんの頼み事の内容に首を傾げるヴァーリ君。
そう。普通ならこの町で何かすることは愚か、入ろうとするだけでも難しい事なのですが・・・
「彼曰く、アザゼルさん、サーゼクスさん、ミカエルさんと楽しい楽しい『お話し』をしたところ、すんなり入る許可を頂けたみたいですよ」
「・・・・そういうことか・・・・」
私の話した曹操さんの内容に、ドン引きするよりも、あぁ、やっぱり。と納得した表情を見せるヴァーリ君。
あぁ、やはりヴァーリ君の中では彼、そういう扱いなんですね。ま、大賛成ですが。
そんな感じで、私達は曹操さんの頼み事の準備に取り掛かりました。
―●●●―
「ええっと・・・たしかここの一軒家で合ってるんだよな?」
俺、兵藤一誠は悪魔稼業のため、この町にある一軒家を訪れた。
ここのところ、悪魔稼業そっちのけで、夏休みの課題と修行漬けの毎日だったから、今日の仕事はきっちりこなさなきゃな。
「ごめんくださーい。悪魔稼業で参りました!」
「――あぁ、入ってくれ」
聞こえてきたのは、若い男性の声だった。
「失礼します!」
中に人がいることが分かったので、扉を開け玄関に入る。
「やぁ、よく来てくれたね・・・・・・・・それにしても本当に自転車で来るんだな。驚いたよ」
入った先で出迎えてくれたのは、漢服を羽織った二十代くらいであろう黒髪のイケメンだった。
・・・・イケメンからの呼び出しかぁ。どうせなら木場みたいに、美人さんに呼ばれたかったなぁ。
「・・・・なるほど、自分を呼び出した相手が男性で、がっかりした、というところかな?」
「とととと、とんでもありませんよ!!あなたのような美男子に呼び出してもらえて、本日は光栄の極みです!」
しまった!顔に出てたか!?できるだけ顔には出さないよう気をつけてたんだけど・・・・・・・・だとしたらとんでもなく失礼なことしちゃったぞ!
「ハハハ、そう畏まらなくてもいいよ。俺だって、どうせ自分を呼び出してくれるなら、男性より女性の方がいいからね。素直なのはいいことだ」
「・・・・すいません」
まずいな、こうは言ってくれてるけれども、第一印象最悪だろうな。
よし!これから巻き返していかなくちゃな!
「それで、本日悪魔を召喚した理由はなんでしょうか?願いがあったから呼んだんですよね?」
気を取り直して、少しでも先程の悪印象を払拭するべく、まずは今回彼が俺を召喚した理由を聞いてみた。
すると、彼は腕を組んで考え込みだした。
あぁ、やっぱり悪魔との契約だからリスクとか考えてるのかな?
「――決めた。願いは、君と話すことだ」
しばらく考え込んだ末に彼が口に出した願いは、俺が予想していたもの願いより、単純で軽いものだった。
・・・・え?もっと大きい願いかと思ったけどそれだけか?なんかこう、大金持ちになりたいとか、モテモテになりたいとか・・・・
――いや、この人なんかできる人っぽいからそういうのは間に合ってるのかな?
だとしたら羨ましいぞこんちくしょう!
「そ、それだけ・・・・ですか?」
あ、つい思ったことを口に出してしまった。
それに、多分顔も引き攣っている。あれだけ注意しようと決めたばかりなのに、もうやらかしちまった。
「あぁ。他にもいくつか候補を考えたんだが、互いが互いをを知らない状況では、それは叶えられないことだからね」
なるほど。そういうことだったんだ。
しかし、何を考えていたんだろうか?互いが互いを知らなきゃ叶えられない願いって、一体何がある?
「でも、いいんですか?そんな願いで・・・・正直申し上げますと、俺と話なんかしても全然面白くないと思うんですが・・・・」
話すのはいいけど、相手を不快にさせて契約が取れなくなってしまったら意味がない。
俺は、清羅や部長みたいに話上手、聞き上手というわけではない。どちらかといえば、話すのや聞くのが下手な部類に入るだろう。
だから、一応確認しておく。
「なんだ、そんなことか」
俺の確認に対し、相手は手をポンと叩き、俺の反応を意外そうに見て呟いた。
・・・・何かおかしなところでもあったか?
「別に構わないよ。話さえできればそれでいい。―――それに」
そ、それに?
「現赤龍帝とのお話だ。面白くないはずがないだろう?」
彼は口元を歪め、ニヤリと笑いながらそう言ってきた。
「ッ!?」
――俺の背中に悪寒が走り、即座にその人から離脱する。
しまった・・・・!まさかこの人、『
だとしたらまずい!警備が強化されているこの町に難無く侵入できている時点で、相当な実力者だ・・・・!
「・・・・『
彼は呆れた様子で、やれやれと肩をすぼめた。
「あんた。なんで俺の『
相手を睨みつけながら、声を低くして質問する。
「知ってるも何も、君は有名人だからね。そのくらいのこと、調べればすぐに分かる」
しかし相手は、俺の睨む視線なんか気にも止めず、あっさりと答えた。
・・・・え?そ、そうなのか?
「そこまで意外だったかい?兵藤一誠君?リアス・グレモリーの『
なるほどなるほど!俺、そんなに有名だったんだ。
・・・・いや、この場合は部長の知名度に感心すべきなのか?
「・・・・君、顔に出やすいタイプだろう?」
相手に苦笑されながら、思わぬところを指摘されてしまった。
「そ、そんなに分かりやすいですか?」
「あぁ。その顔を見てると嫌でも分かるよ」
きっぱりとイケメンスマイルで断言された。
なんだろう、ポーカーフェイスとか俺には向いてないのかな?そこまで分かりやすい顔?
「って、話が逸れましたけど・・・・・・・・じゃああなたは、『
話の調子が狂ったけど、気を取り直して再び質問する。返答次第じゃ即戦闘になるかもしれない。
「あぁ、刺客ではないよ。仮に、もし俺が本当に刺客だとしたら、君は今頃死んでる」
サラッと恐ろしいことを言いながら否定された。
「だってそうだろう?ターゲットから情報を抜き出すためならともかく、ただ殺すだけならこうして会話を楽しむ理由がない」
お、恐ろしいこと言ってるのには変わりないけど、言いたいことは理解できた。
「それで、願いは叶うのかい?」
「あ、はい!叶います!じゃんじゃん聞いてください!」
「それは良かった。では早速なんだが―――」
―●●●―
「ありがとう。今日は楽しかったよ」
「こちらこそ!有意義な時間を過ごせました!」
あのあと、いろんな事を話した。
最初は、聞かれたことだけ答えればいいやと思ってたんだけど、気が付いたら俺の方から一方的に話してしまっていた。
話してみて分かった。この人、ものすごく聞き上手だ!話しててこんなに楽しかったのは『ドラグ・ソボール』について語った以来かもしれない。
「あ、そうだ。最後に名前を教えてもらってもいいですか?まだ聞いていなかったので」
たくさん話しておきながら俺は未だにこの人の名前を知らない。聞いて教えてくれるだろうか?
「あぁ、そういえばこちらは名乗っていなかったね。分かった、俺の名前は曹操だ。気軽に曹操さんと呼んでほしい」
「はい!分かりました!それでは、これからもご贔屓に!曹操さん!さようなら!」
「あぁ、さようなら」
挨拶を交わし、俺は家から出た。
それにしても曹操さん、か。
どこかで聞いたことある名前だけど、多分気のせいだよな!
ありがとうございました!次回もお楽しみに!