一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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オリキャラ注意!
藍というオリキャラを出しています。霧隠れの上忍で研究肌の人間と設定しています。


@22 再開、そして

木の枝を蹴り、道なき道を進む。そこには希望が在るはずだと信じて…。

 

+++

 

端的に言おう。そこには希望なんてものはなかった。

 

「イヒヒヒ。君たちのお仲間、リンとか言ったかネ、あの実験体は?」

 

ガイ班と別れた俺たち三人、俺、シスイ、カカシの前には一人の男が立っていた。

白衣を着た『はぐれ研究員』というのがしっくり来る男はニヨニヨと笑う。キショイ。

 

「実験はすでに最終段階に入っていてネ。この“藍(あい)”の見立てでは君たち程度では実験を止めることなどはできないヨ。わかるかネ?わざわざ来てもらったのに済まないが…君たちには死んで貰うヨ。」

 

自らを“藍(あい)”と名乗った忍が指を鳴らすと後ろに控えていた大柄な二人の霧隠れの忍が藍を守るように前に出る。その二人のどちらも追い忍部隊とは違った意匠の仮面、追い忍部隊の仮面の地を銀色にしたもの、を被っており、その表情を窺い知ることは出来ない。

ちなみにこの藍という男…我々の業界でもご褒美ではないことを控えの二人にしているのが見て取れる。筋肉で肥大した体を揺らしこちらを見てくる二人の男は異様な雰囲気が漂っていた。

 

「さぁ、イくんだヨ!!」

 

藍の声に反応し、二人の忍が肩に掛けた斬馬刀を引き抜きながら俺たちに向かって走ってくる。鈍重そうな見た目に反し、意外にそのスピードは遅くはない。

 

「火遁 豪火球の術!」

「その程度の術ではこいつらは止められないヨ!」

 

シスイがそれを向かい打つように豪火球の術を放つ。しかし、正面からシスイの術を受けたというのにも関わらず、その二人の忍はピンピンしていた。

 

「な!?」

 

シスイの実力は中忍を超え、今では里の上忍と比べても大差ない程だ。その自信が打ち砕かれるような光景は一瞬ではあるがシスイに体の硬直を促した。

その隙を見逃さず、仮面の男たちはシスイに襲い掛かる。斬馬刀を振り上げ、今まさにシスイを真っ二つにしようとしている。

 

「シスイ、油断するな。こいつら全員、暗部と思って闘え。」

「…ヨロイ、すまない。」

 

蛇睨呪縛。袖口から大蛇を口寄せし、相手を縛り上げる術だ。仮面’zを縛り上げ、藍に目線を向ける。

 

「お前、こいつらに何をした?」

「何って?そいつらは強くなりたいと私に言ってきたからネ。その望みを叶えてやっただけだヨ。マァ、それで理性は永久に吹っ飛んでしまったようだケド。」

「…外道め。」

 

カカシが呟く。その声を聞きつけたのか藍は笑みを深める。

 

「外道。外道ネ。アア、その言葉は聞き飽きたヨ。けど、君たちは忘れてないカ?…君たちのお仲間がその外道に捕まって体を弄繰り回されたってことヲ、忘れてないカイ?」

「!!…貴様!…ヨロイ?」

「挑発だ。」

 

藍に飛びかかっていきそうなカカシの目の前に手を翳し引き止める。

仲間思いは美徳だが、その性で思考に霞がかかるのはいただけない。沸点が低くはないカカシの性格を読み切り、少な目の言葉で挑発を成功させるとは…この男、やはり天才か。

 

「…済まない。」

「気にするな。ん?ちっ!」

 

増幅するチャクラを感じ、仮面’zを蛇で縛り付けつつその場を離れる。

ブチブチと嫌な音がした後、仮面’zの体に巻きつけた蛇が引き千切られ弾け飛ぶ。原作では水月、重吾といった力自慢を押さえたこの術を力任せで引き千切るなんて一体どういった体をしてるんだよとツッコミたい。

 

「サァ、遊びはここまでだヨ。…殺セ!」

「させねぇよ!」

 

仮面’zが動く前に蛇に付けていたマーキングを利用して飛雷神の術で彼らの懐に飛ぶ。

 

「!」

「螺旋連丸!」

 

両手に螺旋丸を作り大きく手を広げて、それを相手に一つずつぶつける。一人に二つぶつけると致命傷、二人に一つずつぶつけてもやっぱり致命傷を負わせる術なんだけど…。

 

「効かないか。」

 

仮面’zには効果が薄く、2mほど後ろに吹き飛ばすだけだった。

 

「次だ。シスイ、どうだ?」

「ああ、準備は出来ている。写輪眼!」

「影分身の術。…カカシ、そっちは?」

「ああ、俺も出来ている。写輪眼!」

「その術…知ってるヨ。四代目火影の術だネ?少々、驚いたヨ。まさかその歳で飛雷神の術や螺旋丸といった会得難易度Aを超える術を使える忍がいるとは思わなかったガ。」

 

藍が何やらほざいている内に俺は影分身を作り出し、二人になった俺の本体の右手にはカカシの左手が添えられ、一方の影分身の左手にはシスイの右手が添えられる。

 

「褒めてくれてありがとう。」

 

藍に向かってにっこりと笑いかける俺の右手とカカシの左手が、本体と同じように笑顔を浮かべた影分身体の左手とシスイの右手が共鳴し甲高い音が鳴り響く。唇をワナワナと震わせながら藍が上ずった声を出す。

 

「何ダ、その術ハ?知らないヨ、そんな術、私は知らないヨ!」

 

でしょうね。俺もミナト先生や自来也様が使った所見たことないし。

仮面’zの元に小走りで距離を詰める。

 

「クッ。お前たち、薙ぎ払エ!何をやってるんダ?動くんだヨ!動ケ!この愚図共ガ!」

「無駄だ。」

 

藍の焦燥した声を遮り、シスイが口を開く。

 

「その人たちは幻術の中にいる。お前はその人たちの理性を壊したと言っていたな?助かったよ。その御陰でこの人たちは自力では幻術が解けない。」

「それなら私が幻術を解いてやればいいだけのコト!」

「出来るなら、試してみたらいい。」

「生意気ナ…。オヤ?体が動かなイ?」

 

自身が幻術に掛かっていることに気づき、焦った様子の藍を無視して仮面’zに向かって掌にあるチャクラの塊を突き出す。

 

「「大玉螺旋丸!」」

 

小さくなっていたチャクラの塊が一気に拡散しながら仮面’zを飲み込む。吹き飛んだ仮面’zは藍の横を通り、後ろの木々を薙ぎ倒していく。しばらくして止まった仮面’zだが、もう生きてはいないだろう。チャクラが消えたのを確認したカカシが俺たちに次の指示を出す。

 

「ヨロイ、こいつの拘束を。シスイはそのフォローを頼む。俺はリンを連れてくる。」

「了解、カカシ隊長。チャクラ量は大丈夫?」

「ああ。千鳥を使うのに比べて温存は出来ている。大丈夫だ。」

 

そう言って、この場を離れていくカカシを見送り俺たちは藍に向き直る。

 

「ねぇ。」

「頼ム。逃がして欲しイ。上の命令で仕方なくやったことなんだヨ。君たちも忍なら解るだろウ?」

「ああ、十分解る。」

「そうだな。任務は絶対だ。」

 

俺とシスイが深く頷く

 

「解ってくれるのカイ?ありがとウ。助かるヨ。サァ、早くこの幻術を解いてくれたマエ。」

「まぁ、それとこれとは別問題なんだけどね。」

 

頷くと、藍が驚いた顔で見てくる。

 

「ヘ?」

「上からの命令でも実行したのはお前だろ?じゃあ、お前も悪いじゃん。あと、リンに何したのかをしっかり教えて貰わないといけないし。」

「それに、木ノ葉の忍は仲間を傷つけた敵は絶対に許さない。…これからお前を木ノ葉に連れて行く。覚悟しろ。」

 

シスイが藍に目線を合わせると藍の体はグラッと傾き地面に伏した。今度は意識を奪う幻術を掛けたらしい。シスイにチャクラを温存してもらうために、俺は懐から巻物を取り出しながら親指を強く噛む。親指から流れた血を使い、巻物に術式を書き込んでいく。口寄せの術の応用で藍を時空間に飛ばすためだ。

 

「よしっと。」

 

藍の体に巻物を乗せ、印を組むと巻物から大量の煙が出て辺りを覆い隠した。

 

「ヨロイ!シスイ!」

 

煙の向こう側から俺たちを呼ぶ声が聞こえる。煙が晴れると見えたのは、安心したような顔付きのカカシ、目しか見えないけど、と無理に笑顔を押さえているような顔をしたリンだった。その姿を見、俺は目を閉じる。

 

「よかった。無事だったんですね、リンさん!」

 

シスイがリンに駆け寄って行く中、俺は動かなかった。

いや、動けなかった。

正直、嘗めていた。

心の中で呟く。

 

「…爺さん。」

「どうした?」

「あれが、あれが三尾か。」

「うむ。」

 

心の中でもそれ以上語ることはできなかった。

三尾。

神楽心眼で感知して悟った。押しつぶされるような黒い感覚。まだ、15にも満たない子どもが御せるものじゃない。いや、これは凡人が御せるものではない。それこそ、ナルトの様に特殊なチャクラを先天的に持っていて、更に才能がある忍じゃないとこれは戦闘で使う所か日常生活を送ることさえ出来はしない。

そう感じる程、三尾の冷たく、暗いチャクラは膨大だった。

…どうする?

ミナト先生やクシナさんから封印術を学んでいたとはいえ、これは荷が重い。写輪眼を持つ忍が二人居ても幻術で止められるのか?

 

「カカシ!」

 

その声で思考に沈んでいた頭が現実に戻される。目を前に向けるとリンがカカシに詰め寄っていた場面だった。

 

「すぐに私を殺して!」

 


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