一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@28 四代目の死闘!!

仮面の男に呼応するように俺も前に出る。

 

「ヨロイ!?」

 

ミナト先生の声が後ろからするが、そこは無視だ。ミナト先生なら俺の行動から意図を読んでくれるだろうし。

足場となっている顔岩は思ったよりも狭く、すぐに仮面の男に近づいた。

 

「無駄だ。」

 

仮面の男の顔に伸ばした手は彼の顔をそのまま通り抜け、次いで俺の体も彼の体を通り抜ける。体が通り抜けた瞬間、俺の肩に手が置かれる。

振り向くと満月を後ろに仮面の男の周りの時空が乱れていた。

 

「眠っていろ。」

「やだね。」

 

神威の空間に吸い込まれる前に飛雷神の術で飛ぶ。

 

「ここは!?くっ!」

「うらぁ!」

 

掴んでいた仮面の男を力任せに建物に向かって放りなげるが、建物が壊れる様子はなかった。神威をすり抜ける能力にシフトした結果だろう。厄介な。

 

「ヨロイ!大丈夫かい?」

 

横から声が掛けられる。ポーチに入れていたマーキング付きのクナイの方に飛んだのであろうミナト先生が傍に立っていた。

 

「さーません。あの状況じゃ話ができないと踏んで個人プレイさせてもらいました。」

「ああ、いいよ。俺も同じ考えだったし、君が飛ばなければ俺が奴を連れて飛んでいたしね。それで、奴の術は?」

「おそらく、時空間忍術が一つ。クシナさんを連れてすぐに移動できたのはこの能力かと。それと、原理がわからないすり抜ける能力が一つ。」

「なるほどね。ただし、すり抜ける時は相手もこっちを攻撃できないみたいだね。となると、君がさっきしたように、チャクラの鎧を手の形に形態変化させて掴むような相手の不意を衝く攻撃、それかカウンターしか攻撃を当てられないか。」

「ええ。厄介ですがそうなります。」

「話は終わったか?」

 

ちょうどミナト先生との情報交換が終わったと同時に目の前の空間が捩れた。

 

「ごめん、もう少し待って。ミナト先生、後ですね、奴は写輪眼を持っているんで直接目を合わせないようにしてください。そして、それが万華鏡写輪眼だと印もマーキングも使わない時空間忍術の説明が付くので狙うなら右目をお願いします。」

「す、少し待て!」

「それ、こっちのセリフだから。まだ伝えなきゃいけないことがあるしもう少し待ってね。それとですね、チャクラ感知をしてみたら、うちは一族のチャクラだけではなく変なモノが混ざったようなチャクラをしているんで写輪眼を持っていたとしても、うちは一族とは決められませんよ。」

「なるほどね。しかも、君たち暗部二小隊をやり過ごし最高機密の結界を潜り抜け、出産時に九尾の封印が弱まることを知っていた…さらには九尾の封印を解き手懐け、そして、木ノ葉の結界に引っかかる事なく出入りできる忍。俺の知るかぎりでは一人しかいない。」

「お、おい!」

「もうちょい待って!で、ミナト先生。その忍とは?」

「うちはマダラなのか?」

 

仮面の男は落ち着きを取り戻したらしく、俺たちの方に少し伸ばしていた手をフードに掛け、それを頭から外す。

 

「いや…そんなはずはない………彼は死んだ。」

「……さあ…どうだろうなあ…。」

「ミナト先生。この際、あいつが誰なのかは置いときましょう。どうやって倒すのかっていうのが重要ですよ。」

「ヨロイ、君には教えてなかったね。相手の逃げ足が速い場合は相手がいつ逃げてもいいように話から情報を引き出すことが大切なんだ。ところで、あなたはなぜ木ノ葉を狙う?」

「言うなら…気まぐれであり…計画でもあり…戦争のためでもあり…平和のためでもある。」

 

ジャララと鎖を鳴らしながら仮面の男はミナト先生の質問に答える。

 

「なるほど、こうするんですね。勉強になりまーす!」

「ん。次は君も質問してみたらいい。きっと答えてくれるよ。」

「分かりました!ところでラジオネーム 恋するマダラさん。素敵な恋のエピソードを教えてください。あ、初代火影千手柱間とのホモネタじゃなくて真面目なエピソードでお願いしますよ。」

「どうやら貴様たちはこの俺を…うちはマダラを随分と嘗めているらしいな。」

 

自称マダラの肩がプルプルと震えている。会話に入れないのは随分辛かったらしい。

 

「あれ?答えられないってことはネーム詐称かもしれないッスね。まぁ、それは置いときましてミナト先生。ラジオネーム 恋するマダラさんが泣きそうじゃないですか。肩、プルップルしてるし。これ、とりあえず謝った方がいいッスよ。」

「え?俺のせい!?」

「…どこまでもふざけているな、貴様らは。…いいだろう。すでに希望などお前らにはないということを丁寧に教えてやる!」

 

ダッとこちらに向かってくる自称うちはマダラ。それを見てミナト先生は俺に耳打ちをして仮面の男に向かって駆けていく。

仮面の男のすり抜ける攻撃とミナト先生の飛雷神の術の攻防を見ながら、俺は印を結んだ後、足にチャクラを溜める。あとはタイミングを見計らって飛び出すだけだ。

ミナト先生が飛雷神の術で仮面の男から距離を取り体勢を立て直したと思ったら、すぐに仮面の男に向かって走り出す。それを迎え討つように仮面の男も飛び出す。二人の距離はみるみる縮まっていき、残り3mの時ミナト先生の左手からクナイが放たれた。そして、右手には青いチャクラが渦巻始める。クナイは仮面の男の頭を確実に捉えていた。俺が見えていたのはそれまでだった。

 

「ぐはっ!!」

「飛雷神 二の段だよ。」

 

腹に響く破壊音と共に見えていた景色は一瞬で変わる。螺旋丸で地面に押し付けられた仮面の男が見えた。

ここだ!

足に溜めていたチャクラを爆発させた瞬身の術で仮面の男に肉薄し掌を押し付ける。

 

「契約封印!」

 

封印の文様が拡がり九尾の口寄せ契約が効力を失ったことを確認する。と、視界が黒に包まれた。しかし、それは一瞬で視界にはミナト先生の横顔と前方の岩に降り立つ黒い影を確認した時に確信した。神威ですり抜けたか。

それにしても、ここまでサポートしてオビトを追いつめたんだ。これ以上したら、あいつマジで死ぬしなぁ。そうなったらマズイよな、やっぱ。

脚を摩りながら座り込む。そう、『脚痛いからもう闘えませんよ』アピールだ。四代目火影が相手とはいえ、逃げに徹したら神威持ちのオビトなら逃げ切れると踏んでの行動だ。

 

「ヨロイ、大丈夫かい?」

 

俺の下手な演技にも心配してくれるミナト先生。これが優男か。もちろん、いい意味でのだ。俺が女だったら惚れていた。

 

「さっきの瞬身の術で脚が痛くなりました。シスイみたいに上手くいきませんね、これ。あ、それよりも九尾はまだ里で暴れているみたいですよ。九尾の奴、里から離れる様子はないんですが、どうします?」

「俺はこいつを片付けてから里に行く。君は少し休んでてくれ。」

「ふっ。」

 

鼻で笑われた。やっぱり、あいつぶちのめそうかな?

 

「図に乗るなよ。左腕落っことしてる奴に脚を痛めただけの俺が笑われる謂れはねぇんだよ。」

「いや、赤銅ヨロイ。そうではない。九尾のことだ。…四代目火影。貴様が九尾をどうしようが九尾はいずれオレのものになる。オレはこの世を統べる者…やりようはいくらでもある。」

 

仮面の男はその言葉を最後にこの空間から姿を消した。

 

「統べるっていうか、彼は滑ってましたね。」

「ハハ、そうだね。…俺は先に行くよ。ヨロイ、君は安全な場所に待機だ。」

「了解。」

 

ミナト先生も俺の前から姿を消した。さてと、始めますか。

ゆっくりと立ち上がり、オビトが落とした左手を拾い上げる。チャクラ感知で分かっていたことだが、改めてチャクラを感知してみるとその異常性が良く分かる。

オビトのチャクラをベースに柱間細胞のチャクラが大部分を占めているが自然エネルギーが混じり変なチャクラが出来上がっている。

おそらく、外道魔像の細胞がオビトの体を浸食し同化したという所だろう。柱間細胞だけでは拒絶反応のリスクが非常に高いが、外道魔像を介することで拒絶反応のリスクを押さえているのだろう。

オビト、ミナト先生に続き、俺も時空間忍術で姿を消す。その行先は以前作った俺専用の研究所だ。目の前が白い部屋に変わる。扉を開け、研究室に入り手術台の上に持ち帰ったオビトの左手を置く。

 

「あ、ヨロイ。どうしたの?」

 

暗がりから声が掛けられる。そちらに目を向けると白衣を着たリンが居た。

 

「研究のためのサンプルを取ってきた。けど、研究は後だな。用事があるからすぐに出る。」

 

今は…九尾のチャクラを頂く方が先だ。新しいペイン六道の為にも取れる分だけ分捕っておく。

それが最優先事項だ。

リンに背を向け、飛雷神の術で飛ぶ。四代目の顔岩から見下ろす木ノ葉隠れの里はボロボロだった。それはもう盛大にボロボロだった。

…必要な犠牲だ。世界を救うためにはやむなしという奴だ。仮面越しにも分かる程の閃光に目を向ける。壊された里を背に閃光に向かって空に跳び込む。

10月10日。夜はまだ終わらない。


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