目を閉じる。
九尾の襲来から10年と少し…。長いようで短い時間だ。こうして思い返すと、時間の感覚が解らなくなってくる。少しずつ、少しずつ思い出していこう。
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ヨロイ、今回の任務に連れて行きたい奴がいるんだがいいか?うちはイタチ。うちは一族でも滅多にいない神童ってやつだ。 これがうちはの力だ…。 ダンゾウには気を付けろ。…もしかしたら、これが最後になるかもしれないな。いや、なんでもない。元気でな、ヨロイ。
おー、今、暇か?ちょっといい?あれ?二人とも知り合い?それはちょうどよかった。こっちはうちはイタチ。新しく暗部に入ってきたからお前、面倒見てあげてね。嫌?んー、なら隊長命令ってことで。
先輩!どういうことですか!?カカシ隊長に新人教育を任されたのはあなたじゃないですか!それに、僕は暗部に就任してませんよ!根で先輩が認めたのは僕ぐらいですって?…仕方ないですね、新人教育は僕にとっても勉強になりそうなので勤めさせていただきます。
ヨロイさん。少しお時間よろしいですか?いえ、テンゾウさんではなくあなたに聞きたい。シスイが影響を最も受けたのはあなたということを聞いて、あなたと話がしたい。…団子、ですか?ええ、好きです。 …まさか、あなたが正メンバーではないとはいえ“暁”に所属しているとは。シスイのことですか?申し訳ないですが、話すことはありません。
あっちー!何すんだってばよ! うっせぇ!里の奴らは皆、俺のことを冷たく見やがって!…痛っ! わかってるってばよ。 え?温泉?行く!俺ってば温泉好きだってばよ。 え?ヨロイの兄ちゃん、俺の父ちゃんと母ちゃんを知ってんのか?なあなあ、父ちゃんと母ちゃんってどんな人だったんだってばよ?
ヨロイ。イタチの情報を教えろ。俺は復讐者だ。奴を殺すためにはなんだってやってやる。…後悔?するわけないだろ。俺は今まで奴の嘘の姿しか見ていなかった。俺にとって兄とは憎むだけの存在だ。
ヨロイさん!なぜあなたがここに!? …そんな。マザーからボクの存在を書き換えたらボクは一体誰なんだ! “暁”のサソリですか?聞いたことはあります。砂の傀儡部隊で一番の使い手だったとか。…おまかせください。 大蛇丸様。ボクとヨロイさんが組んでもいいのですか?…そういうことでしたら。
…ヨロイ。ありがとう。私、アンタのこと好きだ!
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砂漠特有の乾燥した風の音の中に人の声が混じる。俺はゆっくりと目を開けた。
目に写ったのは3人。砂隠れの忍装束の上に白い外套を纏った男性が二人、そして、“風”と意匠をこらした笠を被り口元を布で覆った小柄な男性が一人。
「何者だ?」
三人組から声を掛けられる。
「“音”のヨロイと申します。風影様とお見受けしますが…。」
「ああ、そうだが何の用だ?“音”から“風”に使者を使わせるという報告は来ていないが。」
「ええ、極秘ですのでお察しください。それでですね、“音”の里長より風影様への親書でございます。お受け取りください。」
懐から巻物を取り出し、笠を被った男、風影に向かって差し出す。少し距離があるので近づいたら風影の付き人の一人が俺と風影の間に立ち塞がるように体を入れてくる。
「里長からこの親書は風影様に
風影が頷くと部下は風影の後ろへと下がる。…実に自然な
「では…。」
「ああ。…!?」
そういって巻物を風影に向かって差し出す。それを受け取ろうと伸ばした風影の右手を左手で掴む。
「何を…?」
「喰らえ!卑劣切り!」
「かはっ!?」
風影の口から血が零れる。風影の視線が自分の胸に向かう。艶消しの加工が行われた黒い刀が彼の胸を貫いていた。
「どういうことだ…?」
ほう。心臓を突き刺したというのに意識を保っているとは大した奴だ。
「冥途の土産に教えましょう。俺があなたの手を掴んだ瞬間、体から力が抜けたことを感じたと思います。その理由。それは俺が先天的に持つ特殊体質、チャクラの吸収能力であなたのチャクラを吸い取ったからです。そして、その一瞬の隙をつきました。」
右手に持つ巻物を振る。
「この巻物には時空間忍術である飛雷神の術のマーキングが付いています。あらかじめ作っておいた影分身体がそのマーキングに向かって飛ぶことで隙を少なくした斬撃が可能になります。まぁ、今回は突き刺しましたが。そして、あなたに突き刺したこの刀なんですが…。」
黒刀を指で弾く。
「これ、少し変わっていましてね。チャクラを流すと超振動が起こり、それで切れ味を抜群に上げることのできる特殊なチャクラ刀なんですよ。もちろん、提供はハゴロモフーズです。つまり、ホームメイド。まぁ、そういう訳でガード不可な卑劣切りになっているんで、もし、あなたが砂の鎧を着こんでいたとしても簡単に貫けるように開発したんですよ。で、今回の目玉が!」
後ろの風影の部下二人を指差す。
「3日前に俺の部下たちが殺害した彼らを死魂の術で操り人形にしていました。さて、俺の優秀な部下たちカモン!」
4つの影が俺の後ろに降り立つ。
「ご紹介しましょう。左から左近&右近、多由也、鬼童丸、次郎坊です!拍手、拍手―!」
…誰も拍手してくれない。空しい。
「風影、死んだみたいだな。」
「風影は五影の中でも一番の雑魚ヤローだからな。ヨロイさんに勝てる訳がねーんだよ。」
「これなら木ノ葉崩しもヌルゲーになりそうぜよ。」
「大蛇丸様やヨロイさんに比べれば風影などカス同然。」
…なぜだろう。四人衆の話を聞いていたら木ノ葉崩しが失敗するイメージしか湧かない。
青い空を見上げる。あれから10年と少し。これから、激動の時代になっていく。ここで俺は何を残せるのだろうか?
俺の計画が世界を救うと信じて…!
第0部 完
最後、セリフだけでシュババと飛ばした所は、あってもなくてもいいような箇所なので読み飛ばして頂いても結構です。
最後、打ち切りっぽくなってますが第0部が終わっただけなのでこれからは第1部に突入していきます。これからも応援よろしくお願いします!