それまで静かだった教室がざわめく。その中心は意外性No.1忍者、うずまきナルトだ。
ナルトのたった一言でここにいる全員が色めき立つ。中には、ナルトを殺そうという輩までいる。
「だから、やめろって。」
「ヨロイさん。あの糞生意気なガキに世間の厳しさを教えてやるんです。ただそれだけのこと。」
「状況をよく見て話せ。周りのみんなはそんなことしないよ。」
小さい子どもに教え諭すように殺気だったチームメイト、つまりミスミに語りかける。
「周りも俺と同じ考えですが?」
「…あちゃー。」
動揺して周りが見えていなかったのは俺の方だったらしい。辺りを見渡す。下忍とはいえ彼らも忍。殺気の放ち方は十二分に知っているようだ。ナルトを怖い表情で睨む奴らばかりだ。いつどいつが大胆な行動に出てもおかしくはない。
それを見越してだろうか?桜色が動いた。
「なにふいてんのよアンタ!」
春野サクラ…。お前はナルトのオカンか?
羽交い絞めにするサクラにナルトが抗議する。
「だってホントのこと言ったままだってばよ!」
あ、ナルト…首締まったなぁ。それにしても…このままじゃ、中忍試験が始まる前にリタイヤすることになりかねん。もちろん、今ナルトを怒鳴っているサクラが奴を締め落とすからじゃない。第一、サクラはもう腕を解いてナルトを叱っているし。
問題は教室の中の下忍たちだ。サクラの行動で溜飲を下げた奴は少しいるが、以前としてナルトに敵意、ってかいつでも攻撃できるようにチャクラを練っている奴が教室内の半数近くいる。正直、危ない。
…少し動くか。
手を打ち鳴らして教室内の注意を引こうとした瞬間、チャクラを練っていた三人組が動いた。
まぁ、あいつらならいいだろう。原作通りだからな。
ダンッと鈍い音がした。『死』と三つ縦に並んだ上着を着て、珍しいヘッドギアタイプの額当てを付けた少年が机を踏み台にして跳び上がる。
その勢いのままクナイをナルトの傍にいたカブトに向かって投げる。しかし、狙いが甘い。カブトはそれを簡単に避けるが、クナイは牽制だったようだ。
カブトの目の前にもう一人男が現れた。その男がカブトの顔に向かって右腕を振るが、これも、カブトは難なく躱す。いや、ネタを知らない奴はカブトが完全にこの攻撃を躱したと思っただろう。
しかし、周囲の考えをあざ笑うかのようにカブトのメガネが割れる。
「どういうことだ…?かわしたはずだ。なぜ眼鏡が…?」
「鼻先をかすめたんだろ。けっ…いきがってるからだよ、あのクソ。」
天才うちは一族のサスケもIQ200以上あるシカマルもこれには驚いた様子を見せる。だけど、驚くのはここからなんだよなぁ。
カブトの体が傾く。そのまま地面に膝をついたかと思うと嘔吐する。
「あ!吐いたァ!?」
「カ…カブトさん?」
慌ててカブトの元に駆け寄るナルトとサクラ。
「フン。」
その二人を冷やかに見つめる三対の目があった。
それにしても…ダセぇなぁ、あれ。ヘッドギアタイプの額当てと『死』なんて卑劣様をおもいだすじゃねぇか。だから、原作じゃあ…この話は別にしなくていいか。
それから………なんじゃ、あれ?ツッコミどころが多すぎてツッコミが間に合わない。前々から思っていたけど、アイツ、変人じゃね?顔を包帯でグルグル巻きにして顔が出ている所が左目しかないし、でっかいファーを背負ってるって何がしたいの?ホント。
ああ、お前はいいや。特徴ねぇし、かわいくねぇし、乳もねぇ。Dカップ以下は認めねぇんだよ、俺は。
ま、簡単な容姿を説明した所で、名前の紹介に移りましょう。左からザク・アブミ、ドス・キヌタ、キン・ツチの三人です。三人合わせて『KAMASE NO KIWAMI』です!可哀想に。
「カブトの兄ちゃん!」
「大丈夫!?」
「……ああ…大丈夫さ………。」
「なーんだ…大したことないんだぁ、四年も受験してるベテランのくせに…。」
「アンタの
カブトを心配するナルトとサクラにドスとザクが言う。その二人の肩に腕を回す。
「おいおいおーい。ウチのメンバーに随分やってくれるじゃねぇか、音隠れの方々?こんなことされたら木ノ葉は熱烈に歓迎するしかないよね?ね?」
『!』
「ウ、ウソでしょ。全く見えなかった。」
「ヨロイの兄ちゃん!?」
サクラたちが驚くのは解るが…おい、お前らは驚きすぎでしょ。確かに、打ち合わせはしてなかったけど、俺の動きを知ってるお前たちはアドリブで合わせてよ。
あれ?…もしかして、俺………滑った?
「フ、フン。木ノ葉の歓迎がどの程度のものか見定めさせて頂きますよ。」
内心ビビっていた俺をドスが安心させてくれた。やっぱり、お前をこの小隊のリーダーに任命しておいて正解だったよ、マジナイス!
「ヨ、ヨロイの兄ちゃん。なんでここに?」
「…ヨロイ。あんたも中忍試験を受けるのか?」
「え?二人とも、この人と知り合い?」
原作のメインたちに向かって笑顔を浮かべて答える。
「サスケの言う通りだ。俺も今回の中忍試験に参加する。ああ、後、春野サクラっていったか?」
サクラが無言で頷く。
「こいつら二人の御守は大変だろ?こいつらが小さいときに面倒を見たから、お前やカカシの大変さがよく分かる。まぁ、がんばれや。おっと、自己紹介がまだだったな。そこのカブトと同じ班の赤胴ヨロイだ。よろしくな。」
と、なんの脈絡もなくボンッと爆発音が上がり、煙幕が教室内に発生した。
「静かにしやがれ、どぐされヤローどもが!!」
せっかく胸を撫で下ろしたばかりだというのに大きな音で胸がまた跳び上がった。
…ったっく。こんなことをするなんて、どこのどぐされヤローだ?
振り向くとズラリと中忍連中が整列していた。そのド真ん中の一番前にいる一際人相が悪い男が口を開く。
「待たせたな…。『中忍選抜第一の試験』、試験官の森乃イビキだ。」
いつもと変わらない黒頭巾を被ったイビキが俺たちに向かって指を指す。
「音隠れのお前ら!試験前に好き勝手やってんじゃねーぞ、コラ。いきなり失格にされてーのか?それと、ヨロイ!てめぇもだ。」
「すみませんねぇ…。なんせ初めての受験で舞い上がってまして…つい…。」
「まったく…。お前ら、しっかり反省しろよ。」
「てめぇがまず一番初めに反省しろ!」
イビキにツッコまれた。つか、反応速いな、あいつ。
「フー。」
息を吐き出すイビキ。
「いい機会だ、言っておく。試験官の許可なく対戦や争いはありえない。また、許可が出たとしても相手を死に至らしめるような行為は許されん。」
そう言って、イビキは教室をギロリと見渡す。
「オレ様に逆らうようなブタ共は即、失格だ。わかったな?」
教室がイビキの言葉でざわつく。それが収まるのを待った後で、イビキは再び口を開く。
「では、これから中忍選抜第一の試験を始める…。志願書を順に提出して代わりにこの………座席番号の札を受け取りその指定通りの席に着け!その後、筆記試験の用紙を配る。」
「…ペッ…ペーパーテストォオォォオ!!」
ナルトの悲鳴が木霊した。
+++
「試験用紙はまだ裏のままだ。そして、オレの言うことをよく聞くんだ。」
黒板の前に立つイビキがこの第一の試験のルールを説明していく。
「この第一の試験には
説明しながらチョークを黒板に滑らせる。
「第1のルールだ!まず、お前らには最初から各自10点ずつ持ち点が与えられている。筆記試験問題は全部で十問、各1点。そして…この試験は減点式となっている。つまり、問題を10問正解すれば、持ち点は10点そのまま。しかし、問題で3問、間違えれば持ち点10点から…。」
『2. 3問不正解』と書かれた文字の左に右矢印を引く。
「3点が引かれ、7点という持ち点になるわけだ。」
イビキは一呼吸置く。
「第2のルール…この筆記試験は
ゴンという音がイビキの説明を止める。そして、音がした方向から声が上がる。…サクラだ。
「ちょ…ちょっと待って!持ち点減点式の意味ってのも分かんないけど、チームの合計点ってどーいうことぉ!?」
「うるせぇ!お前らに質問する権利はないんだよ!これにはちゃんとした理由がある。黙って聞いてろ!」
サクラは有無を言わさず黙らされる。
「分かったら
悪い顔で微笑むオッサン、もとい、イビキ。一体、誰得だよ?
「その行為
「あ!」
サクラか。勘付いたな。
「そうだ!つまり、この試験中に持ち点をすっかり吐き出して退場して貰う者も出るだろう。」
「いつでもチェックしてやるぜ。」
イビキの言葉に同調してコテツが椅子をキーキー言わせながら、バインダーで自分の膝を軽く叩く。
「無様なカンニングなどを行った者は自滅していくと心得てもらおう。仮にも中忍を目指す者、忍なら…立派な忍らしくすることだ。そして、最後のルール。この試験終了時までに持ち点を全て失った者…及び、正解数0だった者の所属する班は…3名全て道連れ不合格とする!!」
…さて、ここにいる奴らの中でどれだけ気づくか。
曖昧な記憶を辿って行くと、確か…合格者は76人だったかな?いや、3で割り切れねぇから違うな。72か78だろう。122人中、2人は中忍だが、優秀なものがここまでいるとは大した奴らだ。
「試験時間は一時間だ。よし…。」
教室内の緊張が高まる。
「始めろ!!」
0点で出すのはおもしろくない。かといって、満点というのもインパクトに欠ける。…時間ギリギリで行動を起こすとするか。
思わず、笑みが零れる。やっぱり…この中忍試験。楽し過ぎる!