一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@50 うちはイタチ!!

木ノ葉の隅っこで痛い程の殺気を受けています。怖い。

飛雷神で帰っておけば良かったとは思うけど、“暁”がどれだけ俺たちについて知っているのか確かめなくちゃいけない。いきなり本題に入るのもどうだかなぁと思い、会話を繋ぐ。

 

「…で、イタチ。なんで、俺だと分かった?」

「あんな登場の仕方はアナタしかありえません。」

 

そういった後、イタチは周りを見渡す。

 

「どうやら、影分身は置いていないようですね。」

「何の対策も打たずに私たちの前に姿を現すとは…。アナタも耄碌しましたねェ。」

 

イタチに続き、鬼鮫も俺に話しかける。

 

「そんなこと言っても、まさか、木ノ葉で大事を起こす訳にはいかねェだろ?“暁”にとって、人柱力の情報を集めきるまでは目立つことは避けたいハズだ。違うか?」

「それはそうですけどねェ。アナタを殺す為には多少目立つのも許容範囲ですよ、ヨロイさん。」

「何それ?俺みたいな小物に対してすっげー高評価じゃんよ。」

「アナタを捕えるか殺せば、大蛇丸まで芋づる式に出てきますからねェ。サソリさんには悪いですが、私がアナタを処理させて貰いますよ。イタチさん、よろしいですか?」

「好きにしろ。ただし、他の方には消えて貰え。お前とあの人の会話で“暁”の情報が流れたからな。」

「決まりですね。」

 

鬼鮫から殺気がぶつけられる。それを受け流して、考えを巡らす。鬼鮫の『大蛇丸まで芋づる式に出てきますからねェ』って一言から推測するに、俺たちの居場所は掴んでいないと考えられる。俺が木ノ葉に来てすぐにこいつらが現れたから勘繰ったが、どうやら杞憂のようだ。原作通りの予定調和らしい。目的も達したし、ここで飛雷神の術を使って帰ってもいいけど…。少し遊んで行くのも悪くない。

首を後ろに傾ける。

 

「…って訳だ。アスマ、紅。手伝ってくんねェかな?」

「はぁ!?…アンタ、正気なの?あれだけのことをしておいて、今更!」

「紅!状況を良く見ろ。…S(ランク)犯罪者二人に加えてヨロイまで敵に回ったら俺たちは確実に死ぬ。ここは、ヨロイと共闘するのが俺たちに打てる最善の一手だ。」

「…分かった。アスマ、アナタがそういうのなら。」

「話は終わりましたか?」

 

鬼鮫が静かに俺たちに尋ねる。

 

「流石は“暁”の中で一番紳士な鬼鮫さん。待ってくれるついでに見逃してくれたら嬉しいんだけどな。」

「そうは問屋が卸しませんよ。」

「しゃあねェなぁ。…フォーメーションC!」

 

紅と共に後ろに下がる。以前、二人と組んだ時にフォーメーションを決めておいて良かった。フォーメーションC、それは前衛を一人置き、後衛が幻術を相手に掛ける時間を稼ぐというものだ。前衛が強くないとあっさりとフォーメーションを崩される危険性があるが、彼はかつて大名直轄の“守護忍十二士”に選ばれたエリート忍者。

俺の声に反応した鬼鮫が鮫肌を振るう。

 

「やりますね。」

 

鬼鮫が“霧の忍刀七人衆”として名前を馳せた実力者でも、アスマを一刀の元に葬り去るなんてことは流石にできない。

鮫肌をメリケン式のチャクラ刀でアスマが受け止めた。俺は印を組んでいたが、これはブラフである。イタチの写輪眼対策としてチャクラは練っていたが幻術を発動させずに終わる。ここから始めましょうかね。

地面を蹴り、空中に跳び出す。ポーチから幻術用に閃光札が巻かれたクナイを二本取り出し、それをアスマの頭を通り越すように暁の二人に向かって投げる。

 

「幻術か…。いや、避けろ!」

「はい!」

 

クナイに当たらないように後ろに回避する鬼鮫とは対照的に、イタチはその場から動くことはなかった。自分に向かって来るクナイを一瞬で掴み取り、腕の力だけでそれを頭上に向かって放り投げる。閃光札が付いているのに気づきやがったか。

俺が着地したタイミングで紅が動いた。紅の幻術が完成したらしく、イタチと鬼鮫のチャクラの流れが変わった。しかし、それは一秒にも満たない時間だった。やっぱ、暁だけあって幻術耐性が高い。いや、幻術耐性が高いだけならまだ良かった。問題は、その幻術を逆に利用されることだ。

突如、紅の動きが止まる。幻術返しによって体のコントロール権が奪われたようだ。

 

「オレにその程度の幻術は効かない。」

 

紅の名誉の為に言っておくが、彼女の幻術の精度は群を抜いて高い。里一番の幻術の使い手であった紅の父であり、俺の担当上忍であった夕日真紅の血を引いている紅の幻術は他里の忍を含めても並ぶことができるのは10ぐらいだと言われている。それを軽々超えてくる“うちは”が異常なだけであって、紅は弱いなんてことはない。その証拠に、イタチの幻術返しを自分の唇を噛んで解いていた。一瞬の内にあの判断は流石としか言いようがない。大した奴だ。

アスマの目を掌で覆いながら考えを巡らしていると、閃光札が強烈な光を発した。俺の黒レンズは遮光最高レベル。その筋で有名なサングラスメーカー“零番”の特注品であるこの黒レンズは信頼が置ける良い物である。これのおかげで、鬼鮫が自分の腕で光から目を守っている様子を見る事ができた。

視線を横にずらし紅とイタチを見ると、イタチの蹴りが紅の顔に襲い掛かる光景が目に入った。紅は幻術タイプではあるが、感知の性能も悪くはない。閃光の中でイタチの動きを感知し続けていたのだろう。間を置かずに対応する紅は自分の顔の前に腕を交差させ盾とした。しかし、イタチの蹴りは重く、紅の軽い体を川まで吹き飛ばす。

 

「紅!」

 

俺の手を退け、アスマが弾かれるようにして紅の元に駆け付けようとするが、鮫肌が目の前に差し出され、アスマの進路を阻む。

 

「よそ見してる間は無いですよ。」

「!」

 

これは余談であるが、鮫の感覚は非常に優れている。聴覚では2km離れた物音を聞き取れる、嗅覚では100万倍に薄めた血を嗅ぎ分ける事ができる、生物が発する微量な電気を感じ取れることができるというように感知能力については事欠かないのが鮫という生物である。鬼鮫は鮫に似ているということで、もしかしたら感知能力が凄いのかもしれない。

鬼鮫がヨロイとアスマを引きつけている間に、イタチは瞬身の術で紅の後ろに回り込んでいた。

 

「さすが紅さん…。でも…。」

「!」

「でも、ま!ここまでだよ、お前がな。」

 

新しい声がした。

 

『水遁 水鮫弾の術!』

 

ヨロイの前から、そして、ヨロイの後ろから鮫の形を模した水の塊が飛び出してくる。そのまま両者はぶつかり合い、術が相殺される。

 

「ま、気になるでしょ。お前までいるとは思わなかったけど。」

 

ヨロイの後ろに居るシルエットが話す。

 

「これは驚いた。通りで私の術を…。」

「カカシ。」

 

鬼鮫と共にヨロイがカカシに話しかける。

 

「俺と一緒に鬼鮫をやっちまわない?」

 

カカシに向き直り、そう言ったヨロイだったがそれが間違いであった。その隙を逃さず、鬼鮫はヨロイに鮫肌を振り下ろす。しかし、その姿は煙となって消え失せる。

 

「影分身ですか。」

 

そう呟いた鬼鮫はヨロイの姿を探す。前、カカシとアスマ。右、雑木林。左、居た。

睨み合うイタチと紅。紅の後ろにヨロイが立っている。一番左横に立っているヨロイに向かって瞬身の術で肉薄した鬼鮫は今度こそ彼の体を捕えようと、最上段に構えた鮫肌を振り下ろす。しかし、鮫肌は宙を切った。鮫肌をギリギリで躱したヨロイの姿が煙を立てて変わる。

 

「イタチさん?」

「鬼鮫!奴の変化に騙されるな!」

「これは失礼しました。」

 

振り切った鮫肌を鬼鮫はイタチに向かって振り上げる。鬼鮫の斬撃は速く、並の忍では躱すこともできない。それをイタチは軽々避ける。写輪眼の見切りの性能を最大限に引き出してやがる。このままじゃまだ無理だな。印を組み、水面に手を付ける。

 

「やはり、ヨロイさんでしたか。イタチさんの助言がなければ騙される所でしたよ。」

 

手を休めず鮫肌を振るう鬼鮫だったが、横からの風切り音に反応し、一旦ヨロイから距離を取りながら印を組み上げる。

 

「水遁 水陣壁!」

 

鬼鮫が先程まで居た箇所に起爆札付きのクナイが飛んで来ていた。音だけでそれを判断した鬼鮫は術を発動し、爆発から身を守る。と、影が鬼鮫の顔を覆った。

 

「!」

 

顔を上げると、鬼鮫の視界一杯に黒い影が入った。ヨロイだ。鬼鮫は右手に持った鮫肌を振るうが、一瞬遅くヨロイが鬼鮫に当身をする。

 

「グッ!」

 

鬼鮫のチャクラが安定した。変化でイタチに姿を変える。

 

「鬼鮫!止まれ!」

 

今度は“本物の”イタチが鬼鮫に命令を下す。

 

「鬼鮫!殺れ!」

 

イタチの声で俺が鬼鮫に命令を下す。どちらの命令が“イタチ”なのか鬼鮫は判断が付かないらしく、俺とイタチを見比べキツネにつままれたような顔をする。

イタチめ。鬼鮫の体に触れてやがる。もう幻術を掛けても無駄だな。写輪眼で鬼鮫のチャクラの動きを見ているイタチからしたら、鬼鮫が幻術に掛けられているかどうか簡単に分かる。そして、体に触れているから鬼鮫に掛けられた幻術をいつでも解ける。状況判断は大したものだ。

 

「一体…何が?」

 

まだ頭が追いついていない鬼鮫にイタチが説明する。

 

「ヨロイさんの幻術だ。閃光が発した時の明滅を利用してお前に幻術を掛けていた。」

「な!?」

「その上、俺がお前に掛けられた幻術を解くのが遅れたり、これから、再び幻術を掛けられた時に判断を鈍らせる為に一度、ヨロイさん自らお前の幻術を解いていた。…気を引き締めろ。」

「これはご迷惑をお掛けしました。」

 

解いた回数までバレちゃうなんてな。観察眼はずば抜けてるな、コイツ。

 

「よくできましたー。俺の“夢現の法”は写輪眼相手でも効果があったんだけどな。」

「…シスイ、ですか。」

「そ。シスイからお墨付きの方法だったんだけど、うちは始まって以来の天才さんには効かないか。実に残念だ。」

 

この“夢現の法”は術の名前とかじゃなくて戦闘方法の名称だ。これは、幻術を掛けたり解いたりして、相手に自分が幻術に嵌っているのかそうじゃないのか全くわからない状況にさせることができる。

ミソは幻術を解いた時に、相手に向かって言葉や視界の制限でミスリードをさせる事が大切になってくる。そして、上手い具合に騙された相手は何が何だか分からなくなり『オレのそばに近寄るなああーッ!』って感じに最終的にはなっちゃって、そんな相手の背後から頭に向かってクナイを投げつけるのがこの“夢現の法”の正しい運用方法。

…今回はイタチの邪魔立てで上手くいかなかったが。

 

「クク…やはりアナタはここで殺すことにします。」

 

復活早い。もう少しブルーになっとけよ、鬼鮫。

 




途中訳が分からなくなった文章があったと思いますが、それは幻術を掛けられています。自分のせいじゃないです、幻術のせいです。もしかしたら、妖怪のせいかもしれません。

もし、わからなくて、それでも読み飛ばしたくないという方は人物の目線に注目して頂ければ解りやすくなります。視点が一人称の時はヨロイが見ている現実、視点が三人称の時はヨロイがコントロールしている幻術の中の光景としています。

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