一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@51 カカシ vs イタチ

「よせ、鬼鮫。」

 

そんな感じでヒートアップしかけた鬼鮫を止めるイタチ。

 

「ヨロイさんをここで仕留めるには時間が掛かる。他に木ノ葉の上忍三人を相手にしなければならないこの状況では逃げられる可能性が高い。これ以上ここに留まっていても無意味だ。退くぞ。」

「しかし…。」

「目的を見失うな。お前はここに手傷を負いに来たわけじゃないだろう。」

「…その目的とやらを聞こうか…?」

 

カカシが情報を聞き出そうと会話に入る。

 

「…。」

「…。」

「探し物を見つけに来ただけです。」

「…探し物?何だ、それは?」

「…。オレなら鬼鮫と違って時間はかからない。」

 

イタチとカカシの写輪眼の目線が交差した。と、カカシの足元から水がドリルのようになり、カカシに襲い掛かる。カカシは文字通り目にも止まらぬ速さで印を組み、下からせり上がってきた槍状の水を水遁 水陣壁で防ぐ。

 

「流石、カカシさん。洞察眼はかなりのもの…。」

 

サクッと軽い音を立ててイタチのクナイが背中に突き刺さる。

そう…。他でもない俺の背中に、だ。

 

「え?」

「…ですね。」

 

紅が振り向き、俺とイタチの姿を見る。

 

「影分身!?術スピードが速過ぎる!!キャッ!」

 

カカシは冷静に事を運ぶ。紅を掴み、俺とイタチから距離を取る。

 

「離れるぞ、紅!こっちが影分身だ!」

 

俺の水分身が崩れると同時にイタチの影分身が爆発した。“影分身・砕”はいいよなぁ。ナルティメットヒーロー2でめっちゃ使ったわ、あの術。使い勝手のいい人間爆弾だから今世でも使用頻度は高いし。

 

「紅!カカシッ!」

 

アスマが慌てて二人の元に駆け付ける。

 

「気を抜くな…。あいつは13歳で暗部の分隊長になった男だ。」

「ここまでの奴とはな…。」

「いや、あいつの力はまだまだこんなもんじゃない。」

 

カカシの言う通り、イタチの真の力はその洞察眼。そして、その力を最大限に引き出すツールである写輪眼と…そして、万華鏡写輪眼。

木を挟んで頭の上の方にコツンという音がした。バレるかもしれないとは思っていたけど、マジかよ。イタチの視界に入らないようにして隠れた上に輪廻眼の人間道 気配遮断を使ってチャクラ感知をできなくしているってのにバレるのか。木の陰から顔だけそっと出す。

 

「ヨロイさん。闘う気がないのなら、そこでじっとしていてください。そして…カカシさん。うちはの血族でないアナタが写輪眼をそこまで使いこなすとは…。だが、アナタの体はその眼に合う血族の体ではない。うちは一族がなぜ最強と謳われ恐れられたか…。」

 

そう言って目を閉じるイタチ。

 

「写輪眼の…血族の本当の力を見せてあげましょう。」

「!…二人とも奴の目を見るな!!」

 

素早く目を閉じる三人。

 

「いいか、二人とも絶対に目を開けるな。今の奴と目が合ったら終わりだ。…アレとやり合えるのはおそらく写輪眼を持つ者だけだ。」

「いえ、それは違います。ヨロイさんの体質はこの幻術“月読”をも吸収していまいます。しかし、“ただの”写輪眼であるアナタが対抗できるのかというのは疑問が生じ得ます。…オレを倒せるのは同じ“血”を持つ写輪眼使いだけだ。」

「…サスケ…。」

 

カカシがそう呟くと、二人の息遣いが急に荒くなった。カカシは水の上に膝を着く。月読を喰らったせいだろう。

 

「どうしたのカカシ…。まだ目を閉じてろっていうの!」

「一体何があった!?奴がしゃべり終わった途端急に倒れやがって!!」

 

紅とアスマは慌ててカカシに話しかけるが、カカシからの返答は絞り出すような短い一言だった。

 

「ぐうっ…。まだ…だ…。」

 

カカシに変わってかどうかは定かではないが、それに鬼鮫が答える。

 

「ほう…あの術を喰らって精神崩壊を起こさぬとは…。しかし、イタチさん。その“眼”を使い過ぎるのはアナタにとっても危険…。」

 

鬼鮫が一度言葉を切ったタイミングでカカシがイタチに声を掛ける。

 

「ぐっ…。探しもの…とはサスケのことか?それとも…。」

「…。四代目火影の遺産ですよ。」

 

アスマと紅が呟く。

 

「四代目火影の…。」

「遺産?…もしかして、ナルト?」

 

流石は紅。俺と暁の二人との会話を覚えていたらしい。その会話、人柱力を狙っているという言葉からナルトという答えを導き出したのだろう。

 

「…動いているのが…お前らだけじゃないのは知ってる。組織名は…“暁”だったか?」

「ヨロイさんですか。ペラペラとしゃべってくれるとは中々やってくれますねェ。」

「ちょっと待て!俺しゃべってないから!マジ、これマジで!」

 

本当にカカシには暁の情報は流していない。もし、俺がアスマと紅の前で暁について話していた時にカカシが居たなら、カカシはその場で参戦するだろう。意外にも、カカシの責任感は強い。まぁ、そうは言っても重大なこと、任務や他の誰かが傷つくような場合に限るが…。そんなカカシの性格から見て、あの場で参戦しなかったってことは間違いなく来ていないってことに他ならない。

それなのに、暁について知っているってことは、カカシは他の誰かから情報を得たと考えられる。カカシが情報を得た人物は、暁を知る事ができる情報網が広く、更にカカシと少なからず親交がある人物。…自来也様しかいないな。

 

「ヨロイさんが嘘をついている可能性はあるが、万全を期する為だ。…カカシさんは連れて行く。アスマさんと紅さんは消えて貰え。」

「ええ、わかりました。」

 

鬼鮫が駆け出す。それにしても…鬼鮫が感知タイプじゃなくて良かった。

黒い影がエントリーしてきた。その影の動きは速く、鬼鮫の反撃を許すことはなかった。勢いよく体を回転させる回し蹴り、木ノ葉剛力旋風で鬼鮫を蹴り飛ばした影が水面に立つ。

 

「何者です?」

「木ノ葉の気高き蒼い猛獣…。マイト・ガイ!!」

「…。何て恰好だ。珍獣の間違いでは?」

「あの人を甘く見るな。」

 

ニヤリと笑う鬼鮫をイタチは窘める。

 

「…ぐっ。」

 

カカシが意識を失い、水の中へと沈んでいく。ガイは水の中のカカシを取り上げ、自分の肩に担ぐ。

 

「イタチと目を合わせるな、ガイ!術に掛けられるぞ!!」

「そんなものはこっちとて分かってる!カカシとの対戦対策に写輪眼に対する闘い方も考慮してる。…二人とも目を開けろ!」

 

イタチの方を見ながらガイはアスマと紅に目を開けるように促す。

 

「写輪眼と闘う場合は目と目を合わせなければ問題ない!常に相手の足だけを見て、動きを洞察し対処するんだ。」

「そう言われればそうかも知れないけど…。」

「そんなことが出来んのはァ…お前だけだぞ。」

 

紅とアスマも目を開く。

 

「まぁな…。足だけで相手の動きを全て把握するにはコツがいる。だが、この急場にそんな事も言ってられん。ともかく、今すぐ慣れろ!!」

 

アスマはガイを横目で見る。

 

「どうする?」

「紅!カカシを医療班の所へ!アスマはオレの援護だ。…後はオレが手配した暗部の増援部隊が来るまで…少しの間、相手してやる!」

「いい度胸ですねェ…。」

 

再び邪悪な笑顔を浮かべる鬼鮫。

 

「鬼鮫…止めだ。」

「!」

「オレたちは戦争をしに来たんじゃない。これ以上、時間を掛ける訳にはいかない。残念だが、これ以上はナンセンスだ…。帰るぞ。」

「…せっかく…ウズいてきたのに仕方ないですねェ。」

 

瞬身の術で二人は姿を消す。俺もそろそろ帰るとするか。

木の陰から出ると、アスマに声を掛けられた。

 

「…で、お前はどうするんだ、ヨロイ。」

「どうするって?」

「俺たちと闘うか…それとも、大人しく投降するのかどっちだ?」

「んー、どっちもできないなぁ。だって…。」

 

懐から巻物を取り出す。

 

「木ノ葉と不可侵条約を結んじまったもん。お前ら下っ端には聞かされてないのかもしれないけどさぁ。」

「そんな条約など、オレは認めん。認められるか!」

 

…一応、上忍まではこの条約のことを知らされているって考えられるな。アスマがこの条約のことを知らなかったら、まず俺に向かって『嘘をつくな!』と怒鳴るハズだ。または、ブチ切れてそのまま襲い掛かってくるかのどちらか。その何れでもない今回のパターンは、不可侵条約のことを知っていると考えていいだろう。

思わぬ収穫に内心ほくそ笑みながら、アスマに向かって話しかける。

 

「なぁ、アスマ。将棋で“玉”、それを木ノ葉に例えると何なのか分かる?」

「は?」

「それが分かったらまた会おう。一応、ヒントとしては“それを守るために俺は動いている”。…じゃあな。」

 

そう言い残し、飛雷神の術で姿を消す。行先はもちろん、大蛇丸様の元だ。

 

+++

 

時間は飛んで、イタチたちと会ってから六日後。

薬剤庫で、乳鉢を使い鹿の角をゴリゴリと削る。これのコツは無心でやることだ。と、いうより無心でやらないと『俺、何しているんだろう』って思うこと請け合いだ。ムラがまだあるので、乳鉢を少し傾けて粉になっていない部分を中央に寄せる。再び、粉末にする為に乳棒を手に取ると、呻き声が隣の部屋から聞こえた。

…またか。昼と無く夜と無く呼び出されるこっちの身にもなって欲しい。赤ん坊の夜泣きのようでキツイ。部屋を移動すると、今度は悲鳴が聞こえた。カーテンを開けると、一人の男が胸を切り裂かれているという血まみれで凄惨な光景がそこに広がっていた。それを引き起こした張本人に向かって声を掛ける。

 

「大蛇丸様。腕が痛いからって他の人を殺してもどうにもならないッスよ。」

「煩いわね。」

 

凄ェ表情で睨まれる。それを無視して、いつものように大蛇丸様に強力な幻術を掛ける。大蛇丸様の呼吸が落ち着いたのを確認して、隣の小さなテーブルに置いてあるハンカチで大蛇丸様の顔に着いた血を拭き取る。

 

「ちゃんとお薬を飲んでください。…あ~あ、帰ってきて早々部屋掃除ですか。」

「お帰り。」

 

開け放たれたドアから漏れる光を後ろに立つのはカブトだった。

 

「そんな気休めの薬など要らぬ。」

「私とヨロイさんが調合した薬なんですから少しは痛みも和らぐハズです。」

「…アナタたちにこの腕の焼けるような痛みが分かるとは思えないわ。…ここまでの苦しみだとはね。」

 

ベッドの横の椅子に腰かけながら大蛇丸様に向かって答える。

 

「前例がないですからね、これ。“死鬼封尽”で魂を全部取られなかったのって大蛇丸様ぐらいなモンですよ。」

「…御託はいいわ。それより…ヤツは見つかったのかしら、カブト?」

「ハイ。どうやら短冊街という所に居るそうです。」

「…短冊街。…そう…。」

「しかし、そう簡単には…。」

「…フン。…良薬は口に苦い物なのよ。」

 

+++

 

部屋の掃除をカブトに任せ、大蛇丸様の着替えを大蛇丸様の様子を見に来ていた多由也に任せた俺は地下にあったアジトから地上に出る。大きく伸びをすると、ボキボキって音がした。疲れているのが良く分かる。

それにしても、お日様が気持ち良い。ここ一週間ぐらいずっと地下に籠って大蛇丸様の世話をしていたから、新鮮な空気が一際おいしく思える。深呼吸をして気持ちをリフレッシュしていると、後ろから声がした。

 

「これで…腕も…治るわ。」

「それならいいんスけどね。…良薬って言ってもあの“(ひと)”は苦いじゃ済まされないと思いますよ。」

「フン…。行くわよ、短冊街へ。」

「行くわよって言っても…。大蛇丸様、道分かるんですか?」

「…。」

 

どうやら分からないらしい。

 

「行くわよ、短冊街へ。」

 

そう言って、大蛇丸様の前に出る。

 

「…ヨロイさんは道を知っていらっしゃるんですか?」

「…。」

 

動きが止まった俺を見て溜め息を着くカブト。

 

「では、ボクが案内しますね。」

「いや、ちょっと待て。」

 

これだけは言って置かなくちゃならないと思い、先に歩こうとしたカブトを引き止める。

 

「お前、今の場面は『行くわよ、短冊街へ』って大蛇丸様のマネをするべき場面だろ?何、普通に案内しようとしてんの、バカなの、死ぬの?」

「…では、今度から善処します。」

「しなくていいわ。早く案内なさい。」

 

今日は実にいい天気だ。

 


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