一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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OP:キミシダイ列車/ONE OK ROCK
ED:シュガーソングとビターステップ/UNISON SQUARE GARDEN


第2部 リクドウブラッド
@59 サスケへの道!!


「ヨロイさん。」

「カブトか。どうした?」

「天地橋への同行をお願いします。」

「ああ、もうそんな時期か。…大蛇丸様は?」

「すでに…。」

 

椅子から立ち上がる。

五人衆を失ったが、それ以上に良いモノを手に入れた。サスケが“音”に来てから2年。

カブトが開けた扉を潜り抜け、外に出る。

さぁ…始めようじゃないか…。

 

+++

 

第二部 開始!

 

+++

 

天地橋は峡谷に掛けられた橋だ。下の川からの距離はかなり長く、そこからの景色は良いものの高所恐怖症の人にはお勧めはできない。マジで高いし風も強いし。

そんな橋の中央に白いローブを纏ったカブトが立っている。そして、その向こうから傀儡であるヒルコを纏ったサソリの姿を模した者がカブトに向かって近づいている。

 

「お久し振りです、サソリ様。…五年ぶりですね。」

「尾行は…?」

「大丈夫です…。」

 

サソリの姿をした者と話すカブト。俺の隣はまだ動かない。彼からの指示が出るまで待つ。

カブトたちを観察していると、カブトが急に振り向いた。

 

「何だ…。野ウサギか…。」

 

カブトに見つかった野ウサギは今しがた出てきた草むらにすぐさま隠れる。そして、カブトから距離を取るようにこちらに逃げてくる。

気配を消した俺たちに気付かない野ウサギは何の警戒もなく俺たちに近づく。

と、隣の蛇が動いた。音も立てず、蛇はウサギの頭から咥える。

 

「そろそろ行こうかしらね。」

「サソリの方に?それとも、ネズミの方に?」

「そうね…。まずは旧友に挨拶をしようかしら。」

 

犬歯を見せて笑う大蛇丸様。ここまでワクワクしている大蛇丸様を見るのは随分と久し振りだ。

笑顔が少し怖かったので、大蛇丸様から目線をカブトに移す。

 

「…では、すぐにでも例のモノを渡してください。ボクもこれ以上ゆっくりはしてられません。ここでアナタとこうしていることがバレたら…ボクは殺されてしまう。」

「分かった…。」

「…!?」

 

サソリの姿をした者が袖口からクナイを取り出す。

 

「面白そーな話ね。私も会話に混ぜて貰えるかしら?」

「大蛇丸様はこう見えて以外とメンタル弱いんで、陰口とかは効果抜群なのね。まぁ、嘘だけど。」

「!!」

 

カブトの背後に瞬身の術で現れた俺たちからすぐに距離を取るカブトとサソリの姿をした者。

 

「サソリ様がクナイを出さなければ、気付かずに逃げ遅れる所でした。」

 

前の二人は油断なくこちらを見つめる。

 

「その装束…懐かしいわね、サソリ。」

「カブトを尾けて来たのか?」

「なに…少し礼を言おうと思ってね。アナタが送り込んでくれたこの子…すごく重宝したわ。」

「大蛇丸様が実験体を使い潰すから、その検体を回復させるのに俺だけじゃ手が足りなくて…。ホントーにありがとうございます、サソリさん。」

 

言葉を切り、カブトにアイコンタクトで合図を送る。

カブトはすぐにチャクラメスを右手に作り出し、間を置かずにサソリ、厳密に言えばヒルコの頭を掻き切った。風に煽られ、下の川へと落ちていく頭と対照的に、中身はヒルコを捨て後ろに跳んだ。だが、それは悪手だ。

宙に飛んだため動きが取り辛くなったヒルコの中身を、大蛇丸様が潜影多蛇手で袖口から蛇を大量に口寄せして拘束しようとする。しかし、蛇がそれの首元に噛み付いた瞬間、捕えた人間が木偶に変わる。

 

「これは木遁忍術での変わり身…。アナタ、まさか…。」

「大蛇丸様。こいつがサソリの本体ですか?」

「いいえ、違うわ。カブト…お前、サソリの部下だったクセに本当の顔も知らないでいたの?」

「…いつも傀儡の中に隠れている陰気な奴でしたからね。」

「あの人は色々と残念なイケメンだからなぁ。それと、カブト。目の前の男の額当てをよーく見てみろ。」

「…木ノ葉、ですか。ということは…。」

「サソリは死んでいるか拘束されている。又は、こいつらを囮にしているって考えられるな。で、そこんとこ詳しく教えてくれない?なぁ、テンゾウ?」

「そう簡単に教える訳にはいきませんよ。『相手がいくつかある選択肢で迷っていたら何も言うな』。アナタからの教えです。後、今のボクは“ヤマト”と呼んで欲しいですね。」

「そんなこと教えたっけ?ヤマト。って言うか、名前(コードネーム)は教えてくれるんだ。」

 

ヤマトと親しく話す俺をカブトが訝しげに見る。

 

「ヨロイさん。彼は?」

「ヨロイ。詳しい説明は後にしたら?カブト、説明は後ででもいいわね?」

「ええ、ボクは構いません。」

「ここでペラペラ話していると不意を取られかねないですしね。そう…後ろの三人にね。」

 

ヤマトの目が細くなる。ヤマトは右手を縦に振り、後ろの三人に指示を出した。

指示を待っていましたとばかりに、橙色と桃色と黒色がすぐさま駆け付ける。

 

「…また君か。」

「クク…幾度か見た顔ね。九尾の子もいるみたいだし、少し遊んであげるわ。サスケくんとどっちが強くなってるか見てあげるわ。…ヨロイがね。」

「え?」

「さぁ来なさい、ナルトくん!」

「そのセリフはおかしい!」

「サスケくんの力を一番知っているのは、今まで彼と修業してきたアナタよ。なら、ナルトくんとどっちが強いかより正確に比べることができるのはアナタじゃないかしら?」

「せやかて大蛇丸様。態々、危険を冒してまで比べる必要なんてありませんやん!」

「フフ…気になったのだから仕方ないでしょう?」

 

大蛇丸様と話をしていると、何の脈絡もなくナルトの声が響いた。

 

「…サスケを…返せ。」

「返せは無いだろ…ナルトくん。ズレてるよ、それ。サスケくんは望んで我々の元へ来たんだ。引きずり過ぎだよ。男のくせに未練たらしいね…。」

「黙れ!メガネ!」

 

カブトの物言いにサクラは頭に来たらしい。カブトに喰ってかかる。

 

「ナルトの気持ちも知らないクセに!そうやって冷静に何でも…。」

「ハハ、お前がナルトのことを知っているような口ぶりだな。本当にお前はナルトのことを知っているのか?ナルトにウザいとか言ってた奴の言葉とは思えねェな。」

 

俺はサクラの言葉を遮り、言葉で動きを鈍らせる。

 

「そ、それは…。」

「知ってる!サクラちゃんは俺のことを知ってるし、サスケのことも知ってる。サクラちゃんは俺たちと同じ第七班だってばよ。」

「ナルト…。」

 

そうは上手くいかないか。

次の言葉を考えていたが、大蛇丸様の声で前に集中する。

 

「フフフ…。でも、“今の”サスケくんは知らないでしょう?サスケくんのことが知りたければヨロイを倒してみなさい。それができたらサスケくんのことを教えてあげるわ。」

 

赤いチャクラが大蛇丸様に向かって猛然と襲い掛かる。なるほど、速いが…。

 

「その程度の速さは嫌と言う程見てきた。」

 

赤いチャクラの衣を纏ったナルトの右腕を掴み取り、反撃されない内に後方の森の中に投げ飛ばす。木をへし折りながら森の向こうへと飛んで行くナルトを見ながら過去に思いを馳せる。

シスイとの修業で度々行っていた実戦形式の組手がこんな形で役に立つとは思いもしなかった。アイツのスピードに追い付くために動体視力と相手の行動の先読みを鍛えていたかいがあった。アイツも草葉の陰で喜んでいることだろう。いや、草葉の陰なんて所にシスイはいないけど。

カブトが俺に話しかける。

 

「…ナルトくん、人柱力としてかなり成長してますね。」

「いや、まだまだ足りない。最低でも二代前の人柱力のうずまきミトと同等のレベルになって貰わないと、暁には対抗できない。…カブト、ここは任せた。」

「はい、分かりました。」

 

仙人モードなしだったらという注釈が付くが、と心の中で付け足して橋の上から森の中に瞬身の術で移動する。

緑の中で赤い色が一際目立つ。

 

「2本か。いや、3本か。…!?」

 

ナルトの3本目の尾が現れたと同時にチャクラが一気に膨れ上がる。膨れ上がったチャクラは物理的な力となり、俺に襲いかかる。尾獣の中で一番強いと言われている九尾の人柱力なだけはある。だが、想定内だ。

ナルトが形態変化をさせて伸ばした右手のチャクラを避ける。

 

「体捌きが上手くなったな。」

 

ナルトの右手から発せられたチャクラが縮むと同時に、ナルト自身が俺に向かって飛んでくる。印を組み、土遁で土に潜ってナルトを躱し、次の術の準備の為に両の親指を噛み、続けて印を組む。

ちなみに、この状況でカウンターを狙うのはかなり危険だ。チャクラの衣で守られているナルトにダメージを与えるには強力な術が必要だし、近距離の攻撃を当てようにもチャクラの衣を形態変化して俺に攻撃を加えてくることが厄介だ。で、こういう場合は相手の攻撃を躱して改めて強力な遠距離対応の術を使うか、又は…。

俺が避けたことでそのまま橋まで飛んで行ったナルトを土の中から頭を出して見ると、ナルトの着地で橋が真っ二つに折れたのが見えた。

バンジージャンプのように伸ばしていた右手のチャクラの衣を使って俺に向かって再び飛んでくるナルト。

 

「口寄せ 羅生門!」

 

…真っ向から受け止めるか、だ。

砲弾が壁に当たったような音が響き、羅生門がこちら側に少し出っ張る。3本目だというのになんて威力だ。

 

「ガアッ!」

 

ナルトの声が羅生門の向こう側からしたと思ったら羅生門が斜め後ろに吹き飛んだ。尾獣玉を使っている訳でもないのにこの威力。人柱力なだけはある。

俺の後ろに木を薙ぎ倒しながら落ちる羅生門。ダメージが大きかったらしく、羅生門はボフンと煙を上げて消える。

 

「あら、尾獣の力を借りてその程度?サスケくんと比べるまでも無かったわね。」

 

いつの間に来たのやら…。大蛇丸様が俺の後ろに立ち、ナルトを挑発する。

 

「うるせぇ!」

 

物凄い勢いで俺たちに殴りかかってくるナルトの攻撃を瞬身の術で距離を置くことで躱す。

ズドンと大きな音がして、地面が大きく凹む。

 

「大蛇丸様も人が悪い。いや、人相の事を言ってる訳じゃないんですよ。」

「黙りなさい。」

「さーません。けど、今のナルトにサスケの話題は禁句じゃないですか。しかも、サスケと比べられるなんて、サスケをライバルと思っているナルトにしたら耐えられないことだと思うんですよ。」

「あら、この程度の挑発はいつもアナタがやっていることじゃない。」

「TPOは守っているんですけどね。…精神が未熟な人柱力に行き過ぎた挑発をすると取り返しのつかないことになりますよ。そう…ちょうど、あんな風に。」

 

自分のチャクラで周りの木を吹き飛ばしたナルトが動きを止める。

ナルトが纏うチャクラの密度が濃くなり、ナルト自身の体に影響を及ぼす。皮膚が剥がれ、そこから漏れだした血がチャクラの衣を黒く染める。黒く染まったチャクラがナルトを包むように球状になる。

 

「グオオオォォオ!」

 

咆哮と共に黒い球から暴風が吹き荒れる。その風は地面を削り、木を根っこから摘み取る。

吹き荒れた風が落ち着くと、黒い球を中心としたクレーターが出来上がっていた。クレーターの中にいるのは三人だけとなった。

ここに居るのはチャクラの鎧を纏い、身を守った俺。土遁で土の中に避難したが、隠れた所まで土を吹き飛ばされて体が露わになった大蛇丸様。そして…。

 

「ヴヴヴ…。」

 

…全身を黒いチャクラで覆われたバケモノだった。

 


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