一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@63 再会の時…!!

冷凍食品のパスタを啜り、部下の入れたアイスコーヒーのグラスを傾ける。コップをテーブルに置き、一息ついてから隣に控える男に声を掛けた。

 

「お前のコーヒーだけが最近の楽しみだよ、ドス。」

「ありがとうございます。」

 

白髪で左目を隠した青年が答える。彼の名前はドス・キヌタ。原作では中忍試験編で我愛羅にサクッと殺された捨てキャラであるが、なんとなしに助けてみたら意外にこれが使える人物だった。戦闘については我愛羅との一件以来、戦場に出ると痙攣が止まらないということで情報整理に回した所、ここで才能を発揮し諜報部隊として重宝している。特に、市中の噂について情報を集めてくるのはこいつの右に出る奴はいない程だ。更に、コーヒーを入れるのが上手いってのがいいね。世が世ならバリスタとして一世を風靡していたに違いない。

そんな訳でドスを傍に置いている。原作で出てきた時から2年が経ち、こいつの衣装も変わっているので説明しよう。特徴的だった顔に巻かれていた包帯は外し、顔を晒している。外に出ることができない程に火傷でも負ったのかと思っていたが、そんなことは一切なく綺麗な顔であった。このことを本人に尋ねるとキャラ付けの為に包帯を巻いていたらしい。確かに、村人Aみたいな地味な顔をしているがこういう所に力を注がなくてもいいんじゃないかと思ったのは声に出せなかった。

次に進もう。ドスの服は音隠れで一般的に着られる忍装束であり、伸縮性に優れた黒色の全身タイツの上に大蛇丸様の服に似たエプロン風の服を白い帯で止めた服装となっている。しかし、ドスは音隠れの忍装束を少し改造して首元のミリタリー柄のスカーフを外し、フェイクファー付きのフードをエプロン風の服に付けている。

 

「ヨロイさん!」

 

せっかくのコーヒーブレイクを邪魔された。

 

「チッ。何だ、カブト?」

「舌打ち…。」

「はいはい、ごめんなさいごめんなさい。…で、何?」

「サイを見ていませんか?」

「いや、見てない。部屋からいなくなったのか?」

「ええ。まさか始めから彼は裏切るつもりだったのでは?」

「可能性はあるが…。こんなに早く裏切るってのは考えにくい。この短時間で何か情報を得るのは難しいし。得られる情報とすればここの位置ぐらいなもの。」

 

ドスに目を向ける。

 

「ドス、全員に命令を出せ。このアジトから移動する。」

「ハイッ!」

 

通信機を取り出し、このアジトの通信係と連絡を取るドスを横目にカブトが俺に尋ねて来る。

 

「木ノ葉の本隊がどこかに潜んでいるという可能性があるため…ですか?」

「ああ、そうだ。相変わらず察しがいいな、お前は。」

 

原作ではサイが捕まっただけって話だけど、アジトにいる全ての人員を移動させる為の理由としては木ノ葉の別動隊が潜んでいるという方が、説得力がある。せっかくのサスケとナルトの再会だ。邪魔がない方がいいだろう。

 

「もう一つ理由があるんだけど分かる?」

「サソリが先程の四人を幻術等で操っている場合もあるということですね。」

「そう。もしサソリが来ていたら、危険過ぎる。大蛇丸様でさえも他を庇って闘うなんて余裕はないしな。犠牲が大きくなることを覚悟しなくちゃならない。」

 

椅子から立ち上がる。

 

「ま、サイを捕まえてからお話すればはっきりするだろ。」

「…そうですね。」

 

なんで、お前の表情が引き攣ってるんだよ。確かに、コーヒーブレイクを邪魔されてイラッとはしたけど、他の誰かに危害を加えるつもりは毛頭ないというのに。

 

「それにしても、疲れている時に立て続けに問題が起こるのは止めて欲しいよな。ああ、こっちだ。」

「はい。」

 

チャクラ感知をした所、サイは地上にいるらしい。カブトを引き連れて地上に上がる階段へと向かう。

 

+++

 

「腕がもがれりゃケリ殺す。脚がもがれりゃ噛み殺す。首がもがれりゃニラみ殺す。目がもがれりゃ呪い殺す。」

「…。」

「たとえ、バラバラにされようが、オレは大蛇丸からサスケを奪い返してやるんだってばよ!」

「青春だねェ…。おにーさん、感動しちゃうな。」

『!』

 

瞬間、三人がサイを拘束していた場所から離れる。眼下に…この場合、眼下にっていうのか分からないけれど、チャクラを使い岩に立ち地面と平行になっている俺は、その正面にサイを捉え、サイから目線を上の方にゆっくりと移動させながら話かけ続ける。

 

「聞き方によっては愛の告白にも聞こえる。ああ、そうそう。一つ、いいことを教えてやろう。なんでも…」

 

きっと、今の俺は魚眼レンズで写した様に描かれているだろう。岸影様ならそうしてくれるハズだ。

 

「…“初恋は叶わないもの”らしいぞ。」

 

ポカンとした表情を浮かべる四人と表情が変わらない一人。ちょっと待て。なんでお前までポカンとしてんだよ、カブト!

 

「カブト、サイの拘束を外してやれ。あの様子からすると、捕まったみたいだ。」

「え?あ、はい。」

 

地面に降り立ち、チャクラメスでサイの拘束を外すカブト。

 

「しつこいわね、あのメガネ。」

「『メガネじゃない、カブトだ』って言ってやってもいいんじゃないか、カブト?」

「ヨロイの兄ちゃん。邪魔するってんなら容赦はしねェってばよ。」

 

カブトの言葉の前にナルトが口を開く。

 

「こっちはもう邪魔された。ここ最近の唯一の楽しみだったコーヒーブレイクを邪魔された。…知ってる?地下って楽しみがほとんどないってこと。大蛇丸様にビリヤードやダーツの設置をしてくれるように頼んだら『却下よ。』って言われて楽しみが無くなった俺にとって、コーヒーブレイクだけが楽しみだというのに、それが突然、取り上げられた俺の気持ちが分かる?JK風に言うとカム着火インフェルノォォォオオオウだよ。」

 

背中に纏ったチャクラの鎧を触手状に形態変化させ後ろに伸ばす。

 

「グアッ!」

 

岩を回り込んで、上から螺旋丸で俺を攻撃しようとしていたナルトの影分身をチャクラの鎧で突き刺す。

 

「だから、容赦はしない。…カブトがな。」

「え?」

 

上を、つまり、岩に立つ俺を驚いた様に見上げるカブト。

 

「今日、結構チャクラを使ったから後はお前に任せる。ナルトと闘った後にサスケと組手だぜ。これ以上チャクラを使ったら足が出る。カブト、いける?」

「はい、ヨロイさん。お任せください。」

「待て!」

 

テンゾ…ヤマトが引き止めようと声を上げたが、瞬身の術でその場を離れる。大蛇丸様への報告はしなくていいか。カブトが後で報告するだろう。俺の原作知識では、あのシーンでサイが変わった重要な場面だ。不自然がないようにカブトに着いて行ったが、世界の修正力とかいうもので、サイがいい奴になるのは変わらないだろう。と、いうよりそうじゃなきゃ困る。第二部で重要な立ち位置だった人物が変われば、最悪、計画が頓挫する可能性もないこともない。

地下への階段を降りる。さて、荷造りは終わったかな?

 

+++

 

大広間に入ると、そこには既に荷造りを終わらせた音隠れの忍たち、だいたい40人ぐらい、が居た。その中の一人に向かって声を掛ける。

 

「ドス。」

「ヨロイさん!こちらは全て終了致しました。いつでも発てます。」

「よし。なら、今すぐ発て。西アジトで落ち合おう。」

「ハッ!…ヨロイさんは如何されるのですか?」

「万が一に備えて殿(しんがり)を務める。」

「分かりました。…では、ご武運を。」

 

ドスたちは印を組み、瞬身の術でその場から姿を消す。

彼らを見送り、蛇のオブジェの前にある段差に腰を下ろして、ドスたちの術によって発生した煙が薄くなるのを見ていた。

しばらくボーッとしていると、遠くの方で爆発がして地面が揺れた。

…サスケが動いたか。

瞬身の術でアジトの入口から先程カブトと別れた岩まで駆ける。その勢いを止めずに、岩の傍で立っているヤマトへと疾走しジャンプして彼の目線から俺を外す。前世だったらこの走り幅跳びで金メダルを取る事も簡単だろう。空中で半回転した俺は、両手を伸ばし、ヤマトの頭の横で両手の掌を構える。平行にならない様に少しずらした両手を内側に向かって思いっ切り振る。

そう、ヤマトの頭を無理やり回転させて“回転ヘッドイリュージョン”をしようという訳だ。今回、タネも仕掛けもございませんをウリにしてみた所、ヤマトの頭が捩じれて何回か回転した後、スポンと取れた。ヤマトの体が傾き倒れると、木材になったヤマトの胴体が地面に転がった。

 

「カブト…お前、負けたの?」

「サイが裏切りました…大蛇丸様。」

 

地面に着地すると、いつの間に来たのか大蛇丸様が拘束されたカブトの前に立っていた。

 

「知ってるわ。サイとはさっき会ってねェ。」

 

草薙の剣を口から取り出した大蛇丸様はそれを振り下ろす。

 

「きっと今頃、サスケくんと会っているんじゃないかしら。」

 

大蛇丸様の剣はカブトの拘束のみを切り裂いた。カブトには心底同情する。動けないのに刀を振り下ろされるなんて体験、ジェットコースター以上にどことはいわないがあそこが縮み上がるに違いない。

 

「ヨロイ。」

「はい。」

「他の子たちはどこに向かわせたのかしら?」

「西アジトです。」

「そう。なら、木ノ葉の方々に挨拶した後に向かおうかしら。」

「了解です。」

 

瞬身の術を使い、サスケの所に向かう。距離はそこまで離れておらず、すぐにサスケの姿を確認することができた。サスケの口元が動く。

 

「終わりだ…。」

 

サスケが左手の甲に着けた“神立”を一度なぞった後、空に向かって自身の左手を掲げる。

 

「その術は止めておきなさい…サスケくん。」

 

流石は大蛇丸様だ。サスケに触れるチャンスを見逃さない。そこに痺れも憧れもしないけど、執念だけは認める。

 

「放せ。」

「こらこら、大蛇丸様に向かってそんな口の利き方を…。」

「止める理由はない。」

「今の“暁”の動きを君も知ってるよね?この木ノ葉の人たちには“暁”を始末しておいて貰いたいんだよ。一人でも多くね…。他の“暁”に邪魔されると…君の復讐も上手く行かなくなるだろ?」

「情けない理由だな。」

「復讐の成功確率を1%でも上げる為だよ。そうだろ?」

「…。」

 

印を組んだ後に地面を足で何回かリズミカルに鳴らしチャクラを伝わらせる。幻術を下にいる木ノ葉の四人に掛けようという訳だ。

幻術とは人の五感にチャクラを使って作用させることで発動する。今回は、聴覚、つまり音と触覚、つまり振動により幻術を掛けている。ヤマト、サイにはレジストされたが、落ち込んでいるナルトとサクラには効果があった様だ。反応が特にないから分かり辛いが、幻術に嵌めた時の感覚が俺にあることから二人は俺の支配下にある。足元から火に包まれている俺たちを見ていることだろう。逃走の準備も整った所で、声を掛ける。

 

「さぁ、行くわよ。」

「あなた、まだ諦めてなかったのね。…殺すわよ。」

 

呆れた目でこちらを見ていたサスケだったがナルトと目線を合わせた。

 

「じゃあな。」

「サスケ。俺ってば…ぜってー諦めねェ。」

 

二人の距離は縮まらない。木ノ葉で過ごした思い出を捨てようとするサスケと、過去の思い出を取り戻そうとするナルト。

これから始まる二人の物語は再び動き出した。

 

 


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