一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@71 五影会談、開幕…!!

俺が鉄の国に到着した次の日。五影会談が始まった。

 

「五影の笠を前へ…。雷影殿の呼びかけにより、今ここに五影が集った。」

 

それぞれの影の名を冠する忍たちはそれぞれの影の名が書かれた笠をU字型のテーブルの上に置く。

 

「この場を預かるミフネと申す。」

「同じく赤胴ヨロイです。…対“暁”に関して、五影会談の開始を宣言致します。」

 

俺の宣言で始めに動いたのは、風影・我愛羅だ。

 

「オレから話す。聞け。」

「随分と五影も様変わりしたの。その歳で影を名乗るとは大したもんじゃぜ、風影殿よ。オヤジさんの指導がさぞ素晴らしかったようじゃが…礼儀は躾けられてないようじゃな。」

「だろうな…。だから風影としてここにいる。」

「ガハハハ!生意気な奴じゃぜ!」

 

我愛羅の尊大な態度が鼻に付いたのか、土影・オオノキが言葉を挟む。それに対して、彼の皮肉を受け流す我愛羅。それを見かねた水影・照美メイが二人の話を止めるべく動いた。

 

「土影様、チャチャを入れないでください。風影様、続けて…。」

「…オレは元人柱力だ。“暁”に拘束され尾獣を抜かれ殺されかけもした。だからこそ、“暁”が極めて危険な存在であると考えている。オレは何度も五影に協力を求めたが無視されてきた。…前火影以外はな。そもそもここまで人柱力を奪われて置いて協力するのが遅すぎる。」

「そうは言いましても、風影様。まず、協力関係が無いと言っても過言じゃない里もありましたし、それは仕方のないことですよ。そもそも、五影会談自体が何度かの大戦を経てイレギュラーな物となってしまい、今では開催されることが大戦の戦後処理ぐらいですからね。こんな形で会談を開くことは極めて異例です。」

「赤胴ヨロイ。お前の言うことも分かるが、尾獣を何匹も集めた暁もまた異例な組織だ。それに対抗する手段も異例な手段を取らなくてはならない。四の五を言っている暇はないとオレは考えて五影会談の要請を長い間してきた。なぜ、協力しなかった?」

「フン…。五大国の隠れ里が人柱力を奪われたとあっては他国に示しがつかん!大恥じゃぜ!」

 

土影の言葉に頷き、俺も言葉を続ける。

 

「土影様の言う通りです。人柱力は里にとっての切り札。それが奪われたと他里に知れたらパワーバランスの崩壊に繋がります。奪われた人柱力、尾獣は秘密裏に回収するのが常識ですよ、風影様。」

「体裁…面目…。くだらぬ古い考えだ。」

「人柱力がいなくなったって情報は大量破壊ができる忍がいなくなったってことです。つまり、大幅な里の軍事力の低下とも言えます。その情報を出したら、その時点で力が落ちたその里を奪おうと戦争が起こる可能性が高い。だから、砂隠れ以外の里は言えなかったってことなんだけど、おわかり?体裁とかの問題じゃないってこと。」

「各隠れ里が人柱力を奪われても協力し合わないと予想した“暁”の方が一枚上手だったということでしょうか?」

「ええ、水影様の言う通りです。まぁ、このことはある程度の政治知識がある者だったなら誰でも考え付くと思われますが…。問題はその考えを実行に移せるほどの力を持ったメンバーが“暁”に多数所属しているということです。そもそも、尾獣は奪われただけでは上手く活用できないのがネックですからね。それを上手く活用するために…。」

「人柱力として実力ある者を使おうとしていた訳じゃな。人柱力狩りと同時にできる効率的な方法じゃぜ。前任の人柱力を狩る実力者でも、尾獣のコントロールは難しい。おいそれとはいかん。そうじゃろ、風影殿よ?」

「…。」

 

今まで沈黙を守ってきたダンゾウ様が口を開く。

 

「そもそも尾獣を本当の意味でコントロールできたのは、かつてのうちはマダラと初代火影柱間。それに四代目水影のやぐら、雷影殿の弟、キラービーぐらいだった。だが…。」

 

雷影のチャクラが一気に膨れ上がる。

 

「ぐだぐだといいかげんにしろ!!」

 

雷影が怒鳴り、その拳を机に叩きつける。その一瞬後、影の護衛たちが臨戦態勢を整えていた。そして、雷影を守る為にその護衛たちと雷影の間に体を入れた雷影の護衛であるダルイとシー。

張り詰めた空気を壊すのはミフネさんの一言だった。

 

「ここは話し合いの場でござる。礼を欠いた行動は慎んで貰いたい。」

「…ザク、戻れ。ドス、お前も腕を下ろせ。」

 

俺の前に出て右腕を雷影に向けているザクと、俺の後ろに立ちザクと同じく右腕を雷影に向けているドスを諌める。俺に続いて他の影たちも自分の護衛を下がらせる。

 

「確かに雷影様の言う通り、少し意味のない議論をしていましたね。では、話を戻して雷影様。どうぞ。」

「フン!」

 

雷影は睨み付ける様に周りを見渡す。

 

「…木ノ葉!岩!砂!霧!お前らの里の抜け忍で構成されとるのが“暁”だ!それだけではないぞ!前任者の影も含めたお前らの中には“暁”を利用してきた者がおることも調べはついとる!」

「利用してきた…?」

「ワシはお前らを信用しておらん!話し合いすらする気もしなかった!だが、ワシがここへきて五影を招集したのはいいかげんお前らの信義を問う為だ!」

「利用してきたとはどういう事だ!?」

 

信じられないという表情を浮かべた風影が雷影に問いかける。

 

「風影の癖に何も知らされてないのか!自里のじじい共に聞いてみろ!お前らはかつて戦争に“暁”を利用してきた!」

「雷影様の言う通りに捉えることはお勧めできませんねェ。」

「何か文句があるというのか!ヨロイ!」

「少し補足説明をさせて頂きます。“暁”の発足は今から大体20年前。そして、“暁”が尾獣を集め始めたのは5年程前です。それまでの約15年間、“暁”はただの戦闘傭兵集団でしかなかった訳です。そして、そのメンバーは全員がSランク犯罪者と同等の力を持つ実力者ばかり。そんな組織が低価格で雇えるとなったらどうでしょう?戦時中ではどの里も魅力的に感じたハズです。」

「それに、今の軍縮に移行している風潮が“暁”の魅力に拍車を掛けておる。各国間の緊張緩和で戦争の脅威が小さくなれば、国にとって軍事力である里は金食い虫の邪魔な存在じゃ…。かと言ってじゃぜ。それはリスクでもある。突然戦争になってみろ!実戦経験のない忍に頼るには問題があるじゃろ。」

「土影様の仰るリスクを減らす為に各国、また各里は“暁”を雇っていたという経緯があります。この時、“暁”がここまで厄介な存在になるということは誰も予想できなかったことです。」

「安い金で最良の結果を持ってきてくれたからのう。雇う側としてはその時の“暁”は魅力的だったということじゃ。」

「開き直るな、土影!」

「フン!」

 

雷影は土影から目線を俺に移す。

 

「砂は“暁”を利用し、木ノ葉崩しに利用した。大蛇丸だ!その時、“暁”を抜けていたかどうかは…」

「あ、その時既に“暁”から脱退していました。」

「…定かではないが!人の話の間に言葉を突っ込むな!」

「さーません。しかしまぁ、また話題がズレてきてますね。他里の問題を追及するのではなく、“暁”をどう処理するかの議題に戻しましょうか。再発防止案ではなく、今の“暁”を処理する案に関して。…では、暁に対して何らかの情報を持っている方はいらっしゃいますか?」

「…では私から。」

 

水影は言い難そうに言葉を紡ぐ。

 

「先代…四代目水影は何者かに操られていたのではないかという疑いがありました。それが“暁”の可能性もありました。ここに居る皆様は聞き及んでいるかもしれませんが、我が里が“暁”発生の地という噂もそれが元になっていると思われます。」

「どいつもこいつも…!」

「口を慎め、雷影!そもそも、この軍縮の時代にお前らが形振り構わず力を求めて忍術を集めよるから、対抗する為に“暁”を雇わざるを得んようになってきたんじゃぜ!」

「何だと!」

 

口論がヒートアップする雷影と土影。並の忍なら、その迫力に白目を剥いていたかもしれない。しかし、それに口を挟む男が居た。

 

「…立場の事で言い争う前に、先程言おうとした事を皆に伝えたい。」

「何だ!?」

「“暁”のリーダーはおそらく、うちはマダラだ。」

「!?」

 

火影陣営と俺以外の全ての人間の顔が驚愕の色に染まる。

 

「あやつはとっくに死んどるハズじゃぜ…?」

「ワシもよくは分からん。ただ、複数の証言があり信頼性は高い情報だ。…ワシからよりもその情報を持ってきた者から説明した方がいいだろう。ヨロイ、話せ。」

 

周りの視線が俺に集まる。

 

「えー、俺ッスか?あんまりこういうの好きじゃないんですけども。」

「…ヨロイ。ここでは忍術は禁止されているが、そのルールを破ってみるのも一興だとは思わんか?」

「全然思いませんよ!ええ、全然思いません!すぐ話すんで、ダンゾウ様はそこから動かないでください、マジで!あー、見苦しい所をお見せしました。…あれは、今から16年前のことです。木ノ葉の里の九尾来襲事件の黒幕が“暁”の面を被っている男です。」

「なんだと!?」

「それは間違いありません。チャクラ感知をすることで確かめたので。そして、そいつは自分のことを“うちはマダラ”だと名乗りました。それだけならブラフを張ったとも考えられますが、問題はそいつが写輪眼を持っていたことです。いや、特殊な瞳術を使っていたので万華鏡写輪眼と予測できます。そして、その時に万華鏡写輪眼を使える忍は木ノ葉にはうちはシスイを除いて誰もいなかった。ちなみに、うちはシスイの万華鏡写輪眼の能力は“別天神”という幻術。ここから考えてもシスイはそのうちはマダラと名乗る男とは別人です。」

「なら、お前が幻術を掛けられていたとは考えられるだろ!」

「俺には幻術が効かない。先天的な体質でしてね。試してみても結構ですよ。」

「ムムム。」

「雷影様以外に意見がある方はいらっしゃいますか?いなければ続けます。時空間系統の万華鏡写輪眼の忍術を高レベルで使いこなし、更に九尾を手懐けることができ、木ノ葉に恨みを持つ人物。…うちはマダラ以外には俺には思いつきませんねェ。」

 

静観していたミフネさんが口を開き、“自分の”考えを口にする。

 

「中立国の長の立場から言わせて頂こう。“暁”のリーダーは時代の流れを読んでいた。国々の安定、そして国々の不信感の隙を突き、力の拡大を謀った。このままでは鉄の国も…。しかし、災い転じて福となす…。五影が全員揃う事も滅多にあることではない。どうであろう?“暁”を処理するまでの間…。」

 

ミフネさんの口から衝撃的な言葉が飛び出した。

 

「世界初の五大隠れ里…忍連合軍を創ってみては?」

「連合軍だと?」

「…いい案だ。今は非常事態に等しい。協力こそが必要だ。」

「指揮系統は統一するのが望ましい。これ以上の混乱は避けねばならぬ。」

「…で、問題は連合軍の権限を誰にするかじゃが…。」

「中立国である鉄の国の長であるミフネさんに決めて貰ってはいかがでしょう?ミフネさんは公私共に清廉で知られる人物です。そして、彼とは少し話し合っただけですが、私心無く、信用に足る人物だと俺は思います。…音隠れの長である俺、赤胴ヨロイは忍連合軍の大権の任命権があると推薦します。」

 

右手の人差し指と中指を立てた印を会談会場にいる全員に見せる。

 

「では私も。五代目水影・照美メイも侍大将ミフネに忍連合軍の任命を願います。」

「五代目風影・我愛羅。右に同じ。」

「六代目火影・志村ダンゾウ。右に同じ。」

「それがいいかのう。…三代目土影・オオノキも賛成する。」

「よかろう!四代目雷影・エーもミフネに任せる。」

「…では。」

 

ミフネさんは自分に向けられた六つの印に向かって頷く。

 

「今や人柱力は木ノ葉の九尾だけだ…。それをどう導くかがカギとなろう…。」

 

ミフネさんの目が一人の男に注がれる。

 

「火影に忍連合軍の大権を任せてみてはいかがか?」

 


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