一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@73 サスケ包囲網…!

「そこを退け。」

 

赤い双眸の光が俺を貫く。

 

「そうはいかないな。お前はもうS級犯罪者。見逃すわけにはいかない。」

「退けって言ってんだろうが!」

 

瞬きの間で距離を詰めた煌めく白刃を、艶を消した黒刀で受け止める。

 

「お前は知っていたんだろ?イタチのことを!そうじゃなきゃ、イタチを殺すのは止めた方がいいとか言わないよなァ!」

 

金属と金属、そしてチャクラとチャクラが奏でる甲高い音が何度も響く。

 

「なぜ真実をオレに言わなかった!答えろ、ヨロイ!」

 

相手が一際強く打ちこんできた刀を黒刀で受け止め、その衝撃を逃がしながら後ろに下がる。

 

「こうなるからだよ、サスケ。」

 

黒刀を構え直し、目の前のサスケに向かって冷静に諭す。

 

「イタチがダンゾウ様の命を受け、うちは虐殺の汚名を被ったことをお前に伝えるとお前はダンゾウ様を殺しに行くだろ?そうなれば、危険と見なされた“音”は“木ノ葉”に潰される。それに、あの時、俺は確かにアドバイスをしたハズだ。…イタチを殺さない方がいい、と。それを聞かず、イタチを殺したのは他ならぬお前だ、サスケ。」

 

サスケの両目が細くなり俺を睨み付ける。

 

「あと、ダンゾウ様がイタチに命を出したという証拠はなかった。全ては俺の推論でしかない。…イタチのことは残念だったとしか言えない。」

「何もしなかったお前も同罪だ。退けばまだ生きれただろうな。…ヨロイ、お前も殺す。」

「俺を殺すか…。」

 

サスケの発言に首を少し傾ける。

 

「あまり強い言葉を遣うなよ…弱く見えるぞ。」

 

再び、サスケは俺との距離を詰め猛然と刀を振るう。

 

「この世界に存在する全てのものは自らに都合の良い“事実”だけを“真実”と誤認して生きる。そうするより他に生きる術を持たないからだ。だが、世界の大半を占める力無きものにとって、自らを肯定するに不都合な“事実”こそが悉く真実なのだ。」

 

左手に纏わせた千鳥で俺の体を貫こうとするサスケ。飛雷神の術で先程のマーキングの位置に戻ると同時にサスケから距離を取る。

 

「そして、サスケ。お前の眼に見えている“事実”は“真実”だと本当に言えるだろうか?」

「黙れッ!お前はいつもそうだった!自分に都合の悪いことが起こると詭弁でのらりくらりと逃げる!…オレから逃げるな、ヨロイ!」

「それはお前の都合だ、サスケ。」

 

火花が散る。

 

「俺に逃げるなというのは、その方がお前が俺を殺し易いというお前の都合。そして、俺は俺の都合でお前から逃げる。死にたくはないという俺の都合で、だ。なら、話が平行線になった場合どうすればいいのか? 横やりを入れる。正解だ。」

 

体を捻り、上から降ってきた斬撃を躱す。

目の前に降ってきた影を蹴り飛ばそうとしたが、軽々と避けられてサスケの隣に並ばれた。

 

「しばらく見ない内に随分変わったな、重吾。」

「八尾の人柱力と殺り合った際に少し事情があったからな。」

「いや、そうじゃない。…顔が変わったよ。今、楽しいか?」

「…は?」

「昔は闘っている最中でもどこか影を帯びた印象があったが、今はそれがない。自信と覚悟に満ち溢れていつつも冷静さを残しているいい表情だ。」

「ヨロイさんはいつも通り何を考えているかわからないな。」

「そう?少なくとも俺の言葉には意味があるんだけどな。」

 

“今の”重吾を褒めたのは、呪印状態にさせた時の戦闘力の上昇は厄介だと考えたからだ。褒める事によって呪印の解放の心理的ブレーキになればいいと考えたが、あまり上手くはいかないだろう。

天井を見上げる。

 

「いかにもな強者が現れちゃね。四の五の言っている暇はないか。」

 

ドカッという音がホールに響いた。

感知忍術が使えない者は何の前触れもなく轟音と共に天井が崩れたという光景しか目に写らないだろう。

 

「小僧!憤怒の恐怖を教えてやる!!」

 

全身に雷のチャクラを纏った雷影が砂埃の中から現れた。

 

「侍の皆さんは距離を取ってくださいね。雷影様の戦闘に巻き込まれると命がありませんよ。」

 

俺が侍たちに話している間にサスケが動いた。

 

「サスケ!一人で突っ込むな!」

 

重吾が諌めるが、頭に血が上ったサスケには彼の言葉は届かない。サスケは跳び上がると、刀に雷を纏わせ雷影に切りかかる。

 

「水遁 水陣壁!」

 

それを簡単には通さない。流石、雲隠れの中でもトップクラスの実力を持つ忍だ。

 

「雷遁 感激派!」

 

水陣壁で体勢が崩れたサスケに続けざまに術を放つ。水陣壁によってできた水を通る事によってサスケの体へと雷が流れて行く。

 

「やりますね、ダルイさん。」

「当たり前だ。このダルイはワシの右腕。この程度、できなくては困るからな。それより、お前、いつの間にここに来た?」

「俺の部下の一人は音使いでして。彼の音の振動を使って俺のチャクラを飛ばし、ここの床に飛雷神の術のマーキングを刻み込んだんですよ。」

 

音の振動を細かく制御できるドスの技の真骨頂だ。超音波で物体にマーキングを刻み込めるのは音隠れでも彼しかいない。今回はマーキングした場所がサスケと侍の間の術が飛び交う危険地帯だったが、それでもドスの評価は高い。

 

「飛雷神の術…。四代目火影しかできん術だと思っていたがな。」

「その四代目から直々に教わったので。いやー、しかし習得するまですごく頑張りましたよ。」

「ボス、そして、ヨロイさん。俺がまず仕掛けるので後をお願いします。」

「ああ。」

「準備オッケーですよ、シーさん。」

 

印を組んでいく雷影の部下その2であるシー。

 

「何か来る!」

 

重吾が警戒を強めるのと同時にシーの体が光り輝いた。

 

「雷幻雷光柱!」

 

雷遁 雷幻雷光柱。強烈な光を使い視覚から嵌める幻術だ。しかし、これを掛けられた相手は光による目晦ましの為の術だと考える為、幻術であることに気付かない、又は気づいても反応が遅れる…。

 

「サスケ…!」

「重吾、怯むな。これは幻術だ。」

 

…ハズなのだが、写輪眼を持っているサスケには通じなかった。すぐに幻術だと看破される。それでも、問題はない。

 

「幻術を見抜いたとしても遅いわ!」

 

すでに、雷影がサスケの前、俺がサスケの後ろ、そしてダルイが重吾の前に移動しており、尚且つ攻撃体勢に入っているからだ。振り下ろされる攻撃がサスケと重吾を襲う。

ギンという音が広間に鳴り響いた。

 

「ウグッ!」

 

水月が雷影とサスケの間に割って入り、雷影の攻撃を首切り包丁で受け止める。そして、重吾はダルイの鉈を斧の様に部分変化させた右腕で受け止める。そして、サスケは自分の刀で俺の刀を受け止めていた。見下ろす俺と見上げるサスケの視線が交差した。

 

「天照。」

「しまっ…!」

 

突如、燃え上がる俺の体。それを見てただ事ではないことを感じ取った雷影とダルイは瞬身の術でシーの傍まで移動する。

重吾がサスケの腰に腕を回し、水月と共に俺から離れる。

 

「熱い!熱い!熱い!」

「天照を使ったのか、サスケ。これでは、もうヨロイさんは助からないな。」

「いや、まだだ。」

 

サスケはリストバンドを下にずらし、その下の“ミスティッカー”を曝け出す。

 

「麒麟!」

 

ミスティッカー“神立”を使い、麒麟を発動させ俺に向かって真っすぐ手を向けるサスケ。

一瞬にも満たない短い時間の後、雷の獣の特攻で轟音と共に俺の視界が白く染まった。

 


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