一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@76 宣戦

「あ、ラジオネーム恋するマダラさんじゃないッスか。チーッス!」

「貴様は黙っておけ!」

「で、何の用でしょうか?」

「前回といい貴様はこの“うちはマダラ”を相当バカにしているな。…いや、貴様の処分は後回しだ。それより、オレの目的“月の眼計画”について貴様らに問いたい。オレに協力するか、それとも、戦争をするか、だ。」

「戦争だと!?」

「それについては順を追って話そう、雷影。さて、と…。」

 

マダラの右目の空間が渦巻を描き、サスケを時空間へと飛ばす。

 

「サスケを戻せ!」

「だったら、オレの説明を聞け。それの返答次第だ。」

「少し落ち着け、雷影。聞くだけ聞いて、それからじゃぜ。」

「チィ…!」

 

マダラは香燐の近くに移動する。

 

「サスケを回復させておけ…。」

「キャ!」

 

香燐を時空間へと送ったマダラは元の位置、会談に使われたテーブルよりも少し高く設置された観覧席へと移動する。

 

「さて…そろそろ聞く気になってくれたかな、諸君。」

「なぜ、お前がサスケを手懐けようとする?」

「“須佐能呼”まで開眼する写輪眼は稀だ。いい眼をストックしておきたくてな。五影との実戦でさらに瞳力を鍛えさせておきたかった。ここにサスケを送り込んだのはオレだ。」

 

我愛羅の疑問に答え、グルリと周囲を見渡したマダラは言葉を続ける。

 

「五影を弱らせて人質に取ろうとも思っていた。そこまではまだ無理だったようだが…。」

「人質?一体、何の為に?」

「さっき言った“月の眼計画”を円滑に運ぶ為だ。」

「本当にあのうちはマダラがまだ生きていたとは驚きじゃが…お前ほどの男がなぜこんな回りくどいやり方をする?お前の力ならどんな計画でも思い通りのハズじゃぜ。」

 

土影の評価が妙に高いが無理な物は無理だ。例え、輪廻眼を持っていたとしても、できないものはできない。人間ってのはそういうもの。輪廻眼はできることを大幅に増やすツールでしかないし、その輪廻眼の下位である万華鏡写輪眼ではできることは高が知れている。

 

「初代火影柱間との戦いの傷が深すぎたのだ…。今のオレに力はない。言わば、今のオレはただの形骸化した存在に過ぎない。」

 

だから、マダラはオビトを巻き込んだ。

万華鏡写輪眼では柱間を殺すこともできない程の瞳力でしかない。仮に柱間を上回る力であっても、控えている二代目火影扉間が見逃さないからこそ、本物のマダラは自ら死を偽ったのだろう。

 

「お前が本来の自分に戻る為の計画って奴か?」

「うむ、そうとも言えるが…ただそれだけではない。」

「何を企む?“月の眼計画”とは一体何だ?」

「…ゆっくり話したい。腰を下ろさせて貰う。」

「どんな計画かって聞いてんだろうが!」

 

オビト、とうとう腰痛持ちになっちまったか。歳は取りたくないものだな。

指をゆっくり立てる彼の仕草を見ながら目を細める。

 

「全てがオレと一つになる!全ての統一を成す完全体だ。」

 

多分、全てが終わった後にアイツの記憶があれば、枕に顔を埋めて足をバタバタさせるだろーなと下らないことを考えながら、舌の運動を始める。長台詞はしっかり準備しないと噛んじゃうからね。

 

「一つになる…?全ての統一じゃと…?どういう事じゃ?」

「…うちはに代々伝わる古の石碑がある。今も木ノ葉の地下にある。そこには、かつての六道仙人が書きつけた秘密が記してある。瞳力がなければ読む事ができず、写輪眼、万華鏡写輪眼、輪廻眼の順に解読できる内容が増える。」

「話が眉唾ものになってきたな。六道仙人など…。」

「これは事実だ。彼は実在した。そして、その石碑を残した。」

「話が逸れた!お前の計画とその六道仙人と何の関係がある!?」

「なぜ、彼が伝説となり忍の神のように崇められるようになったのか知っているか?そこにオレの目的とこの男との繋がりがある。」

「…うちはマダラ。アナタは万華鏡写輪眼を持ち、“暁”には輪廻眼の輩もいた。アナタも全てを知っているのね。」

「聞こう。」

「彼はかつて世界を救った。あるバケモノから。」

「バケモノ…?」

「我愛羅…お前もそのバケモノの一部が封印されていたにすぎない。そいつは尾獣全ての集合体。最強のチャクラを持つ存在…。」

「十尾だ。」

「十尾?尾獣は九尾までじゃ…?」

「十尾は尾獣全ての集合体。というより、尾獣は全て十尾から分けられた存在だ。そして、強大な力を持つ十尾を押さえる為、六道仙人はある方法を思いついた。それは、人の中に尾獣を封印する人柱力システム。そう、六道仙人は十尾の人柱力だった。月の核とすることで十尾を一度封印した六道仙人だったが、十尾の暴走で世界は荒廃していた。その為、六道仙人は十尾の人柱力となり、十尾のチャクラを使うことで壊された世界を復活させた。そして、十尾をその身に宿すことで世界に安寧を齎した六道仙人は人々から神のように崇められた。しかし、あまりに強大にして邪悪な十尾のチャクラは己が死ねば、封印が解けてしまうというもの。十尾が外に出る事を恐れた六道仙人は死に際に十尾のチャクラを九つに分散した。そして、六道仙人は自らの最期を月で迎えることにより、十尾を復活させる術を完全に絶とうとした。しかし、現在になって十尾を復活させようとする組織が生まれた。…“暁”だ。六道仙人によって分散させられたチャクラは意志を持ち、その力を時と共に増大させてきた。その力を再び一つにする為に尾獣を集めてきた“暁”の目的は十尾復活。そして、六道仙人が残した忍宗の中の一つである封印術を使うことで十尾の人柱力として世界に君臨しようとしている。」

「………オレのセリフを取るな!」

「さーません。」

 

プルプル震えながら血走った万華鏡写輪眼で俺を睨み付ける自称うちはマダラ。しかし、すぐに落ち着きを取り戻す。

 

「赤胴ヨロイの言う通り、オレは十尾の人柱力となる。そして、その力を利用して己の瞳力を強大化させ…そして、ある術を発動させる。」

「ある術?なんじゃ、それは?」

 

土影が投げやりに自称マダラに尋ねる。俺とあいつのやり取りを見ていたせいでやる気がなくなったのだろう。少し申し訳ないことをした。

 

「月に己の眼を投影する大幻術。無限月読…。地上に存在する全ての人間に幻術を掛ける!オレが全ての人間をその幻術の中でコントロールし世界を一つにするのだ!蟠りも争いも無い世界だ。全てがオレと一つになる全ての統一。それがオレの“月の眼計画”。」

「その術の本当の目的を知らない人間が言うのはどうもなァ…。」

「何が言いたい?ヨロイ。」

「その術の詳細、赤銅一族に伝わっているんだ。」

 

我愛羅が俺の方を向く。

 

「赤銅一族?」

「風影様が知らないのも無理はないことです。多くの忍から軽蔑されている一族ですからね、赤銅一族は。雲と木ノ葉が対立する原因となったクーデターを起こした金銀兄弟で有名な一族です。で、俺はその末裔。つまり、六道仙人の系譜なんですよ。」

「なるほど、それでさっきの情報を知っていたという訳ね。」

「水影様の言う通りです。それだけじゃなく、無限月読についても伝わっています。なんでも、無限月読はそれ単体では防ぐ手段がかなり限られる強力で超広範囲な幻術ってだけです。それを補完するようにある術で無限月読に掛けられて身動きの取れない人間を捕まえてチャクラを吸収し続け、術者に提供するのが本来の目的なんですよ。…マダラさん、その表情から察するに、知らなかったみたいですねェ?」

「し、知ってたし!このオレが知らないということがないだろう。」

 

慌てて取り繕ってもオビトの素の部分が凄い勢いで出ている。敵ながら大丈夫か、コイツ…。顔が仮面で隠れているからこっちからはオビトの表情が見えないということを忘れてツッコミ忘れているというのが何ともオビトらしいと言えばらしいが…。

 

「無限月読って術は二次創作の、鬼畜オリ主の前に都合良く現れた小悪党を捕まえて、ハガレンの賢者の石の材料にしたり、地下室に眠らした状態で監禁して力を吸い取り続けてマルタって呼ぶのと似てるけども。」

「訳が分からん!」

「簡単に言えば、プレティーン全開な発想だけど頭大丈夫、マジダセェよってことなんだ。止めた方がいいと思うなァ、俺は。」

 

ブチッて音が聞こえた気がした。

 

「戦争だ…。」

 

あっちゃー失敗しちゃったか。まぁ、戦争が起こる流れで計画を進めていたから問題はない。オビトが月の眼計画のことが嫌になって俺に協力してくれれば、一足飛びで終わらせることができたけども、それは所詮できないことだったということだ。本気でやったら、手の内を晒すことになって本当に必要な時には対策を打たれる可能性が高いから本気でオビトを説得するということはできないしね。

 

「八尾と九尾を貴様らから奪い、五影共!貴様らに希望などないということを丁寧に教え込んでやる!そして、ヨロイ!貴様はタダでは死なさんから覚悟して置け!」

「ハハハ、『希望などないということを丁寧に教え込んでやる!』ってハハハハハ!キラー・ビー一人に翻弄されているのに何言ってんだよ、ボケか?」

「貴様ッ!」

 

怒れるオビトを遮り、雷影が驚いた声で俺に尋ねる。

 

「八尾…?しかし、ビーは“暁”に…。」

「マダラの言い方からすれば、ビーさんは上手くやった様ですね。サスケを騙し、自分は里の外へと逃げた。流石は完璧な人柱力と言われるだけはあります。」

 

雲の三人が呆れた様に顔を見渡す。

 

「ああ…やっぱりそんな気もしてたんスよね…。」

「ハァ…。」

「あのアホーンめ!これを機に里の外へ出て遊んどるのかァァア!許さん!鉄の爪(アイアンクロー)じゃ!!」

 

雲の三人から自称マダラに顔を向ける。

 

「ってな訳ですけども、皆さんどうします?俺は二人をコイツに渡したくないと思います。」

「うずまきナルトは渡さない。」

「私も同じく!」

「雷影、お前は?」

「もちろん弟は渡さん!」

「オレには力はないが…今までに集めた尾獣の力がある。お前たちに勝ち目はないぞ。」

「希望は捨てない。」

「では、第四次忍界大戦…ここに宣戦を布告する。」

「また、オレのセリフを取ったな、貴様!」

 


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