一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@86 ナルト戦場へ…!!

夜。

暗く、疲労が貯まる時間だ。しかも、それが命のやり取りだと精神がより磨り減る。

 

「…。」

「んぐっあぐっ。」

「…。」

「はふはふ。」

「…。」

「ずるるっ。」

「オイッ!」

 

コップに手を伸ばした俺に綱手様が怒鳴った。

 

「じゅー。」

「人の話を聞け!」

 

食事中だというのに、うるさい人だ。

 

「聞いてますよ。俺が本部に戻った後に金銀兄弟の封印架が紛失したって話ですよね。」

「話は聞いているようだな。だが、食事をしながら会議に参加するとは何事だ!戦場の忍たちに申し訳ないとは思わないのか?」

「戦場に出てチャクラが少なくなったので補給です。綱手様もどうぞ。」

 

すっと綱手様の前に焼き鳥の串を差し出す。それをじっと見つめる綱手様。

 

「ああ、さーません。戦場の忍たちに申し訳なかったッスね。」

「ああッ!」

 

綱手様の前から串を引っ込めると、綱手様の声が響いた。

 

「あれ?もしかして…欲しかったんですか?」

「くッ!」

「いつでもどうぞ。まだまだ食材はありますし、デスクワークで使った体力を回復させるためにも食事は必要ですからね。」

「そ、そういうことなら仕方ないな。」

「ああ、でも責任感の強い綱手様は現場の方々を置いて一人で食事というのはしたくなさそうですね。さーません、今の俺の言葉は忘れてください。」

 

綱手様がショックを受けた顔で俺を見る。見せつけるように手に持った串を頬張る。

俺たちの様子を後ろから眺めていたシカクさんが溜息をつく。

 

「ヨロイ、綱手様をおちょくるのはそれぐらいにしておけ。今はそれよりも重要なことがある。金銀兄弟の封印架よりも、な。」

「ビーとナルトのことだ。」

 

左手に持った肉の塊を頬張りながら雷影様が頷く。

 

「あの馬鹿者どもが結界を破って戦場に出てきた。お前で奴らを止められるか?」

「無理でしょう。チャクラがまだ半分ほどしか回復していませんし、封印ならともかく、拘束だけで人柱力を止めるためには相手の立ち上がれないほどのダメージを与える必要があります。あと、幻術は八尾と信頼関係を結んだビーさんには効かない。力で止めることは不可能ですね。」

「何か策はあるか?」

「ビーさんとナルトに親しい人間の説得。それが彼ら二人を捕らえるベストな方法です。」

 

雷影様は綱手様を見る。

 

「ビーはワシが止める!綱手、お前はナルトを止めろ!」

「ああ、それはいいが…。」

「本部の指揮は俺がして置きます。」

「そうか…。」

 

しかし、綱手様は動かない。となると…。

 

「…綱手様。ナルトたちを止めるためにはかなりのチャクラを使うと思います。チャクラ回復のための料理を用意して待っているので心置きなく出動してください。」

「そうか!…ネギマを頼むぞ。口寄せの術!」

 

テーブルの上に、つまり、俺が食事をしている目の前にカツユ様を口寄せする綱手様。少し、げんなりする。フォルム的に食欲を減衰させるカツユ様ではあるが、彼女が礼儀正しい性格の上、彼女に罪はないため怒るに怒れない。

 

「何かあれば、カツユを使って連絡しろ!」

「了解です。」

「よし!行くぞ、雷影!」

「ああ!」

 

雷影様は少し呆れたような顔で綱手様の後に続く。

 

「ここは任せるぞ!」

「はい、お気を付けて。あと、壁とか窓は割らないように…」

「ヌラァ!」

「…って聞いちゃいない。」

 

先に走った綱手様よりも早くドアに到達した雷影様はこの部屋のドアを蹴破った。慌ただしい方々だ。

 

「ヨロイ、今の状況を整理しておこう。」

 

二人の影を見送ったシカクさんが提案する。

 

「そうですね。現時点の被害は?」

「連合軍の死亡・負傷で戦闘続行ができないものは約二万人。敵軍は約五万人だ。」

「このまま進めば勝てますね。」

「ああ。しかし、相手はあのうちはマダラだ。何もしてこないということはないだろう。それに、総力戦に近い昼の戦闘で疲労が貯まっている者も多い。夜での睨み合いで更に疲労が貯まるだろう。」

「ローテーション方式で見張りの人員を減らして見張り以外の人員は回復に充てさせてください。そして、陣地の設置などはなくし、即戦闘が行うことのできる状況を作り続けさせてください。」

 

シカクさんは一つ頷く。

 

「短期戦で決める腹積もりか。」

「ええ。こちらはすでに白ゼツのサンプルを回収しています。それに対して有効な薬品を研究班に作らせている所です。自分の見立てでは約3日で戦場に投入できる量の確保が望めるでしょう。」

「戦闘開始直後のアレか。」

「そうです。穢土封滅で捕まえた白ゼツたちを十体ほど研究班に渡し研究させています。奴らはクローン人間と推察されるので、一つに効く薬品を作り出すことができたら、あとは全員に効くってことが予測されますから戦争を有利に持っていくことができます。」

 

俺とシカクさんが話していると、突然の連絡が入った。

 

「各地の連絡班から連絡!どうやら闇討ちが行われているようです!」

「…どういうことだ!?夜襲の動きはなかったハズだ!それに、感知タイプの忍が目を光らしている中でなぜ敵を見つけられない?毒か何かか?死体の状況は?」

「皆、外傷があるそうだ。クナイで後ろから刺されたものが多い。」

「いのいちさん。今、暗殺は何件起こっていますか?」

「大体20件。今も増え続けている!」

「では、早急に命令を下してください。全員、1mほど互いから距離を取るように、と。」

「了解!」

 

シカクさんが呟く。慌ただしくなってきた本部の様子を見て、ドスが俺の目の前から食事を片付けていく。

 

「…イタチ、か?」

「幻術で連合の忍を操る。その可能性もあります。」

「オレたち感知部隊からも感知されない距離に隠れて幻術で操れるような奴はうちはイタチぐらいだが…これだけの広範囲の各場所で大勢を細かく同時に操るのはイタチでも無理だ!」

 

俺がシカクさんの疑問に答える前に青さんがその答えを出した。

 

「待て!医療部隊から連絡だ!敵の…正体は…白いゼツが連合の忍に変化している模様!チャクラまで真似る術を使うようだ!」

「道理で…。」

「どうやら昼間の戦いでそいつにチャクラを吸い取られた忍はそっくりに変化されてしまう!」

「では、昼間に戦闘のなかった部隊、我愛羅第四部隊などは大丈夫だと考えて良さそうですね。」

「そうだな…ヨロイ!その白ゼツに対して有効な薬品というものを投入できるのはいつだ?」

「現時点で30アンプル。1アンプルで一体の白ゼツを倒せると考えてください。しかし、見分けるのはもっと少量でいい可能性があります。」

 

携帯電話のメール確認画面を開き、その内容をシカクさんに伝える。

 

「少量の薬品をスプレーすることで白ゼツだったら、肌の表面に変化がある可能性があります。彼らにとっては毒である薬品を使うので、なんらかの変化があるかと。」

「それでいくしかないか。」

「その証明のためには変化している白ゼツを見つけなければできません。」

「確かに、効果があるかどうかはっきりしていないのに使うというのは効率的ではないな。」

 

トンという軽い音がテーブルから響いた。

 

「こちら、連合軍の忍に関する資料になります。」

 

ドスと雲のマブイさんが大量の巻物を持って立っていた。

 

「ああ、済まない。」

 

文字の海の中にシカクさん、ドス、マブイさんと共に飛び込む。連合軍の被害は全員が距離を取り、互いを監視し合う状況に隊列を変化させたため一旦、減ったらしい。

しかし、どうなるか…。雷影様を説得するには言葉じゃダメだ。このまま何もないことを願い、ナルトが出てくるのを待つしかないな。

 

+++

 

情報を整理してから30分後。シカクさんが答えを出した。

 

「九尾チャクラモード時のナルトは敵の“悪意”を感知できるとある。これなら、白い奴の変化の術も見抜けるハズだ!それに影分身の使えるナルトなら各戦場へ出向き、これを対処できる。…これ以上時間が経てば、もう取返しのつかぬ状態になる。だが…問題は…。」

「それでは本末転倒ですよ。そもそも雷影様がそんなこと許すとは到底思えません!」

「だよな…。」

「あのー。」

 

おずおずと言った様子で声を掛けるカツユ様。

 

「どうされました?」

「それがですね…。綱手様の肩についている私の分体からなのですが、綱手様、そして、雷影様はナルトくんが戦場に向かうことを許可されました。」

「何だと!?」

「はい、信じられないことですがナルトくんの意志を汲み取られた雷影様がナルトくんとビーさんが戦場に出るということを許されています。」

「地面から雨が降る勢いです。…雷影様の意見を変えさせるなんて…。」

「考えられないこともない…ナルトは少しそういう所がある不思議な奴だ。」

「しかし、これは敵の思うツボかもしれませんよ…。白いゼツのこの変化の能力にしても…まるでナルトを誘い出すような…。」

「確かに罠かもしれん。だが、今はナルトに任せるしか道はない。」

「では、ナルトに…」

「医療部隊から連絡!白いゼツのデータです!」

「そっちから先に処理しようか。データを。」

「ハッ!」

 

受け取ったデータに目を通す。その中で興味深い一文が乗っていた。

 

「木ノ葉暗殺戦術特殊部隊員コードネーム、ヤマトの個人配列に近くなっている、か。」

「帰ったぞ!」

 

本部に声が響いた。資料に注いでいた目線を声がした方に向ける。綱手様と雷影様が本部に帰還していた。

 

「白い奴が変化し、戦場を撹乱しているのは聞いた!偶然にしてはいいタイミングでナルトを行かせられた。」

「おかえりなさい、綱手様。さっそくですがこちらを。白ゼツの個人配列のデータです。」

「ああ!」

 

目を左右にすばやく動かし、資料を読み取っていく綱手様。

 

「マダラと大蛇丸の初代への執着がこんな形で一つになろうとはな…。おじい様の体で造った植物忍者共か…。これで、マダラが初代の細胞を持っているのは間違いない!それを培養し、増やす技術を開発したということはマダラの体も…。通りで長生きできていたハズだ。」

「で、マダラを倒すヒントでも分かったのか?」

「いや、逆だ。どうやって倒すのか分からなくなった。おそらくマダラは本当の意味で……不死だ!」

「マダラのことは一先ず置いといて…白ゼツの対処をしましょうか。連絡員!研究班に対白ゼツ用の噴霧式の薬品をできる限り用意しろと伝えてください。そして、ナルトに白ゼツのことを伝え、影分身を使い各戦場へと向かって貰いましょう。」

 

マブイさんの方を向く。

 

「マブイさんの天送の術で各部隊の責任者にスプレーを送ってください。そして、ナルトが到着し次第、ナルトが指定した変化している白ゼツに向かってスプレーを噴射して様子を見るようにと伝えてください!」

「これで白ゼツの対策は何とかなるだろう。オレがナルトとビー殿に伝える。いのいち!準備はいいか?」

「ああ、もちろんだ!」

 

本部の光取り窓から朝日が差し込む。

第四次忍界大戦。二日目の幕が上がった。


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