一流の銅ヤロー   作:クロム・ウェルハーツ

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@91 うちはマダラ 4

地面へと目を向ける。

チャクラを感知すると、マダラのチャクラはビンビンに感じられた。あれで大してダメージを与えられていないとは本当に大した奴だ。やはり、当初の予定通り奴が最も油断した時に全ての手段を奪い一撃で仕留めた方がいいだろう。

 

「ヨロイ、奴は?」

「仕留め切れていません。」

「まだ足りないか…。皆、すぐ行けるか?」

「もちろんです。」

「ああ。」

「当たり前だ!」

「行くしかなかろう。」

「では、行きましょうか。」

 

木を伝って地面に向かって駆け下りる。あ、土影様と我愛羅、ズルい!空を飛びやがって。俺も空を飛びたいところだが、天道の力を使い過ぎてまだ力が戻っていない。残念だ。

地面に降り立つと、マダラが膝を付いていた。

 

「…少々驚いた。まさか貴様らがここまで踊れるとは。」

「この戦いはもう終わりだ。」

「ワシら忍連合の勝利でな!」

 

ゆっくりとマダラは立ち上がる。

 

「…認めてやろう。かつての死闘とまではいかないが、及第点の一戦だったとな。」

「随分、上から目線ですね。クレイジーサイコホモの癖しやがって。」

「…知らん言葉だが、どうやら貴様はこのうちはマダラを相当嘗めているらしいな。」

「そういえば、アイツも『この俺を…うちはマダラを随分と嘗めているらしいな。』って過去に言っていたし、今、思えば演技が上手かったんだなぁ。」

「貴様…奴にも同じようなことをしたのか?…いや、いい。これ以上聞いたところで更に怒りが増えるだけだ。」

「はい、同じようなことで怒らせてアイツ、プルップルしてました。」

「いいと言っただろうが!木遁 花樹界降臨!」

 

フラストレーションが貯まりに貯まり、とうとうブチ切れたマダラが大技を放ってくる。巨大な木がそこら中から生えてきて視界を埋め尽くす。

 

「アレは…おじい様の!」

「近づいて来る!…どうします!?」

「風影!」

「分かっている!」

 

我愛羅が砂を使って、六人全員を再び宙へと運ぶ。空から見た風景はまさに極楽。蓮の花に酷似した花を付けた美しく大きな花が至る所にあった。

 

「何だ?」

「なんて規模なの…。一瞬で森を作るなんて!」

 

驚く者に綱手様は注意を促す。

 

「皆、花粉に気をつけろ!吸い込むな!」

「…ッ!後ろです!」

 

視界から消したマダラの存在を感知した。場所は俺たちの背後だ。

俺の注意で全員が後ろを向くが、時はすでに遅かった。

 

「花に気を取られ過ぎだ。」

「!」

 

後ろに現れたマダラは須佐能乎の掌底を俺たちに向かって打つ。

 

「グッ!」

 

四本の巨大な手で以って俺たち六人を一網打尽に地面に叩きつけるマダラの須佐能乎。

これはマズイ!花樹界の花粉の効果が出る前に対策を…。

印を組みながら体内のチャクラを風の性質に変化させ、掌から暴風を作り出しながら体を回転させる。これで、周囲の花粉は吹き飛ぶだろう。

 

「風遁 気流乱舞!」

「フッ…それは悪手だぞ、ヨロイ。」

「!?」

 

マダラの声に冷たいものを感じる。

 

「“火”は“風”に強い。…火遁 豪火滅失!」

 

マダラの口から放たれた豪火滅失が俺の気流乱舞を飲み込み、更にその勢いを上げる。

 

「しまった…。」

 

マダラめ。花樹界を作り出したのは俺が風遁を使うと見越してか。

辺り一面赤く染まった視界の中、頭の中を高速回転させる。

水遁で消火…風の性質が加わった火を止めるほどの水量を発生させるためのチャクラを練り込む時間がない。

餓鬼道で術を吸収…ダメだ。それで助かるのは俺だけ。360°から火が迫っている今の状況では他の五人は火に焼かれる。

天道で弾く…天道の力はまだ戻ってきていない。不可能。

飛雷神の術で一旦、本部に帰還…ここで俺たちが戦場を離れるとマダラは九尾を取りに行くだろう。ナルトが危機に陥る。それはダメだ。この場所にマーキングをするとしても、火が消えるまでは、ここに来ることはできない。マーキング付きのクナイを火の外に投げるとして、その火の中には木があり、そこにマーキング付きのクナイが刺さったらもう目も当てられない結果になる。

土遁で土の中に隠れる…マダラは写輪眼を持っている。土中の俺たちのチャクラを感知することなど造作もないことだろう。そして、土中で動きが制限される俺たちの隙をマダラは見逃すとは思えない。これもダメか。

 

「…何か、何かないか。」

 

焦燥が心を焼く。そして、目の前には俺が自ら陥れた状況が俺たちを焼こうと迫る。

考えることを諦めるな。

自分に言い聞かせるが、上手い策が出てこない。

上からキンと甲高い音がした。慌てて見上げる。

 

「塵遁 原界剥離の術!」

「土影様!」

 

体を独楽の様に回転させた土影様は塵遁を柱の様に伸ばして周りの炎を消し飛ばす。その手があったか。

 

「なにが“やはり年か…”じゃ…。言い訳して…いいわけあるか!じゃぜ。」

「土影様!ありがとうございます!」

「気にするな。お前が花粉を吹き飛ばしたからワシらは意識を失うことはなかった。それに…炎の中で昔のことを思い出したからの。」

 

土影様は目線を前に向ける。そこには、塵遁を上手く躱したマダラが中腰になっていた。

 

「よく踊る。」

 

塵遁で切り開かれた木の切り株の上に立つマダラはこちらに体を向ける。

 

「だが、踏み込みがまだ浅い。」

 

その胸にはある男の顔があった。

 

「うっわー。これはキツイわー。好きな男の顔の形に胸を整形するなんて正気の沙汰じゃないね、どうも。」

「これは自然にこうなっただけだ!」

「自然にって…。意識せずにそんなことができるとはますます正気の沙汰じゃねェよ。」

「だから、そうではない!」

 

鼻息も荒く、俺の言うことを否定するかのようにマダラは腕をブンブンと振る。

 

「柱間の細胞を胸に入れたのは奴の力を手に入れるためだ!そこに余計な感情は入っていない!それと、この顔が出たのは奴の生命力で自ずから形が出てきたものだ!オレは整形などはしていない!…それと!この穢土転生体を弄ったのはカブトとかいう輩だ!」

「でも、生前に初代火影の細胞を同じ場所に入れたのは事実でしょう?」

「それは!…事実だがッ!」

 

おお、ペラペラ話してくれる。少しカマ掛けただけなのに。なるほど、自分で柱間細胞を胸に入れたか。いい事を聞いた。

 

「まぁ、アナタが柱間大好きっ子なのは置いときまして…。」

「置いておくな!」

「いや、置いておけ!孫娘の私の前でお前は何を言っているんだ!?」

 

ノリで『置いておくな!』と叫んだマダラさんを慌てた様子の綱手様が彼を止める。

 

「アナタが“うちは”の力だけではなく“千手”の力をも持っているその理由が分かりました。」

「…お前はこの事実を前にして絶望をしないのか?いや、その“眼”を持つ余裕からか。だが、今までの攻防で分かっただろう?貴様の力ではうちはの、そして千手の力を持ち、輪廻眼を開眼したオレの力には届かぬということを。」

「…そうですね。」

 

目を伏せ、マダラに向かってゆっくりと歩みを進める。

 

「確かに、今の俺の瞳力だけではアナタには勝てない。」

「それが分かっていながら、なぜ、お前は諦めない?」

「勝てるって信じているからだ。」

「どういう意味だ?先ほどとは逆のことを言っているが。」

「俺の後ろには世界最高峰の忍が五人。そして、俺たちの仲間は“世界”だ!」

 

マダラの胸に集まっていく塵が傷ついたマダラの体を万全の状態に戻していく。

 

「たった三人とゾンビとクローン人間だけで俺たちに勝てると思うなよ。…“忍”を嘗めるな、うちはマダラ。」


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