【はいふり】繋げシーレーン!〜モグラのふねの輸送道中奮闘記〜 作:すとらっぷ
杉本艦長マジ天使
名残惜しくも『間宮』『明石』と別れたまるゆ御一行、現在潜航しながら行方不明の『照月』を捜索中
男「思ったことがある」
クロウ「どうした?」
クロウは潜望鏡を覗きながら答える
男「照月のコンセプトがよく分からない」
クロウ「黙れ、そこはこの世界に置ける最大のタブーの一つだ」
チビ「ところで艦長、最近不良工作長の様子がおかしいのですが…」
男「あー、照月捜索用に貰った装備を勝手に改造して楽しんでるからな」
チビ「装備?」
クロウ「ブルマーが使ってる無人機の小型版の試作機。十分な浮力が得られなかった失敗作押し付けられた。なーにが照月捜索用だ。ないよりマシだがそのまま使っても何の役にも立たなかった」
チビ「それを改造してる…と。確かにちゃんと無人機を動かせるようになったなら照月捜索にも役立ちますね」
男「不良は前から無人機の改造はしたがってたらしいけど…アレは個人で手に入るようなものじゃないからな」
不良「艦長ぉ…試運転…していいか?」
男「そうだな…そろそろ試運転してみるべきだろう。浮上用意!ベント試せ!」
不良「やっぱりだ…間違いないぃ…計算し直しても…俺の計算は間違ってないんだ…ずっと…ずっと…前から待ってたァ……」
チビ「…大丈夫ですか…アレ…完全にイッちゃってますけど…」
男「嬉しいんだろうよ…アイツの夢への第一歩だからな」
チビ「夢?」
男「ヘリウムなどのガスに頼らないエンジンを使った回転翼飛行機械の開発…だそうだ」
チビ「それはまたファンタジーな……」
男「…」
チビ「…真面目に…ですか?」
男「大真面目だ。あの人が不良になったのも、御舞等にいるのもそこらへんが理由だからな」
チビ「飛べる…んですかね…」
男「飛べたら、それはもう革命だろうな」
不良「艦長!飛ばしていいか!?」
トランペットを眺める少年のようなキラキラした目で返事を待つ
男「ああ、いいぞ」
ムクムクと奇怪なフォルムの機械が出来上がっていく
従来の無人機の胴体部分をかなり小さくし、姿勢制御用の四つの扇風機の様なプロペラを巨大にしたような形だ。まさに奇怪な機械。
不良「流石に完全にプロペラの動力で飛ばせるほど上手く調節出来なかったけどぉ…ヘリウムは従来の五分の一以下だぁ!姿勢制御機能は今までプロペラの役割だったけどコレは…」ペラペラ
男「あーあー、俺そこらへん分からないから、早く飛ばせ、というか一番早く飛ばしたいのお前だろう」
不良「ワイヤー接続良し…燃料系統良し…飛ばすぞ…飛ばすぞ!」
不良「今までのより、早く、軽く、手早く飛ぶための機械…『Light flyer号』、発進!!」
ブルルルルルルルルルル
まるゆ甲板から機械が少しずつ浮遊し始める!
ただし独楽の如くグルングルン回りながら
男「…コレヤバイよな…」
不良「飛んでる…でも飛んでるゥ!!間違ってなかったんだ!ヘリウムなんか使わなくても飛べるんだ!」
男「飛べるのはわかった!すげえよ!わかったけど回りすぎてワイヤーが悲鳴上げてる!一旦降ろせ!ヤバイヤバイ!!壊したら俺の責任!」
不良「ハハハハハハハハハハハハ!!」
男「おい!ヤバイってヤバイ!」
バギィ!!
ワイヤーの留め具が壊れる!
ブルルルーン!!
急速に試作無人機…『ライトフライヤー号』は一気に50mほど飛び上がり…
ボカァン!!
爆発した
チビ「…………飛んだ」
不良「飛んだぞ!ちゃんと飛んだ!でも壊れた!でも飛んだ!やったぞ!」
男「やべー…始末書増える…でも飛んだな!」
不良「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!……ハハハ…ハハ…………………………………………………………」
男「…コイツ…立ったまま死んでやがる…!」
クロウ「死んでないわ…気絶してるだけだわ」
男「田所ぉ!医務室に運んで!」
チビ「……なんでそんなに冷静なんですか…!?飛びましたよね!明らかにおかしな形の物が!!なんでそんなに冗談言ってられるほど冷静なんですか!?鳥でも気球でもないんですよ!!」
男「そりゃ飛ぶと分かってたからだろ」
クロウ「んだんだ」
チビ「今人類の大躍進が目の前で行われたんですよ!?それを分かってたって!!」
男「…あの男が計算上可能って言ったら可能なんだよ…チビもあと一年あの人と一緒にいりゃわかる」
チビ「でも…なんでそんな天才がうちに?……こう言ったら悪いですけど…お世辞にもあの才能を生かせる環境とは…」
クロウ「色々あったんだよ…ああなるまでにな…」
男「まあなんだ、偉くなりすぎると拘束激しくなって好きなこと出来なくなるもんなんだよ」
チビ「……よくわからないです…」
男「わかんなくていいさ」
クロウ「どうせ今飛んだって言っても誰も信じないしな。証拠品爆発したし」
チビ「……」
チョウ「艦長!大変です!武蔵が…武蔵が!!」
チョウが息を切らせながら甲板に上がってくる!
男「落ち着けチョウ!どうした!」
チョウ「武蔵が…東舞校の教員艦と交戦…最新鋭のあきづき型16隻が……航行不能………」
それを聞いた全員が押し黙る
男「……もう…これは…マズイだろ…」
クロウ「…おかしい…猿島も…晴風がと戦ったらしいドイツ艦も…もしかしたら伊201も……」
男「…何が起きてる…ストレス云々なんかじゃ絶対無いだろ…こんなの…」
チビ「もしかして…今探してる照月も……」
クロウ「……正直…その可能性は…」
その答え合わせのように、現れた
マサイ『右舷に艦影ッ!!識別番号…Y512…照月です!!』
男「噂をすれば…か…さっきの爆発に引き寄せられたか?………これは“どっち”だ………?」
マサイ「照月発砲ッ!!」
クロウ「“そっち”……だな」
男「緊急潜航ッ!!!メインタンク、ネガティブタンクブローー!!!!」
決して「Wright Flyer」では無い
空を飛びたいなんて言ったら夢物語と言われるこの世界で、それでも空を飛ぼうとした少年がいた……なんて番外編書いてたら本編がいつまでたっても終わらないのでサラッと触れるだけ。その内書くかもしれませぬ。