眠らせておくのもなんだと思い、つい書いてみた所。
なんか友達に出せと言われたので投稿してみる。
朝。
それは一日の始まりでもあり、期待の始まりでもある。未来と言う不確定要素を最も想像することが多い時間ではないだろうか。朝の占いの結果を見て一喜一憂する。そんな時間ではないだろうか。
一般的な学生からして見れば『ああ、また朝が来てしまったか.........』と絶望する事も多いだろう。
つまるところ、朝は期待であり絶望であり希望なのである。まるでパンドラの箱をひっくり返したかのような時間だが、俺にとっては毎朝の始まりは予想するまでも無く何が起こるか分かっている。俺にとっては未来は確定的であり必然的なのだ.........朝の始まりだけなのだが。
前文からも分かるように、卯花幸太の朝はもはやルーティーンと言ってもさし違い無い物になっていた。それほどまでに行ってきた動作だという事である。
さて、こんなつまらないし長々しい現実逃避は止めよう。残酷な現実を受け入れ目を覚まそう。
「 」
「んっ.......幸太っ」
「.........」
「あ、おはようございます幸太。どうしたんですか?」
「どうしたのじゃねええええええええええええええ!!!」
なあ、毎朝起きたらクノイチが自分に跨ってるってどんな気分だと思う?
其の壱
「毎朝毎朝言っていると思うがな、起こしに来るなら普通に起こせ!」
「こ、今回は普通のつもりだったんですけど.........」
「寝てる奴に跨って喘ぎ声で起こすのが普通なのかお前の中ではあああああ!!」
「いふぁい!いふぁいえふよふぉうふぁ!」
「ふん.........まあこのくらいで許してやる。さて、朝飯作るから出来るまでゆっくりしててくれ」
「はーい」
痛い、と呟きながら頬をさすっている彼女は鹿女夜桜、忍者である。
ひょんなことから俺の家に住む事になった。ただなんとなく倒れていた彼女を介抱しただけなのだが、豪く懐かれてしまったようで。介抱した次の日には家に来て『今日から私はあなたの忍びになります!どうか末永くよろしくお願いします、幸太!』ときたもんだ。もちろん最初は渋ったさ、いきなりそんな事言われも困るんだがってな。そしたら夜桜の馬鹿が『そ、そんな!両親には帰ってくるなと言われ帰るところがない女の子を放置するのですか?どうか、どうか!お願いいたしますううううう!』と土下座だ。もう一度正確に言う。家の前、玄関の前で土下座だ。しかもピクリとも動かねえ。こんな所見られたら近所の人たちに何言われるか分かったもんじゃない。とりあえず家に上げたのがいけなかったのか、了解を貰ったと思い大喜び。その後自分が忍者の末裔だと説明された。実際に身代わりの術を見せてくれ、一応信じることにしたのだが、ただ、その後火災探知機が鳴り響き、近所の人たちへ謝りに回った末、結局白い目で見られたんだがな。
「そろそろ出来るから皿取ってくれー」
「りょーかい!」
普通に見れば可愛いのだが、いかんせん忍者としての才能も無ければ、従者としての務めも果たせていない。まあちゃんと説明してあげれば何でもそつなくこなすので割と天才肌なのかもしれない。
「ほら、食え食え」
「今日も幸太の料理は美味しそうですね!」
「.........褒めてもお茶しか出ないぞ」
「あ、ありがとうございますー」
まあ、一応主である俺を顎で使う才能はあるようだ。
え?俺が単純なだけ?まっさかー。
「........」
「どうした?食わねえのか?」
「いや、本当にこれでいいんですかね。と」
「と言うと?」
「私は幸太の忍びなのに家事すら出来なければ迷惑かけてばかり」
「ふむ」
「毎朝幸太には怒られてるし.........」
まあ、それが彼女の良い所でもあり悪い所でもある。
悪いと思ったら反省し、ごめんなさいと言う。
《純粋無垢》とはそう言う事なのだ。
彼女は言われた事は守るし、失敗したら次に生かす。当り前の様で実は難しい。それが出来るのは彼女の美点と言えるだろう。
「でもまあ、」
良いんじゃないか?そう口にしようとした時、夜桜は急に立ち上がり天高々と宣言した。
「決めた!今日から私は生まれ変わります!」
まるで今日からトラブルをまき散らす。そう言っているように聞こえ、俺は朝から脱力してしまった。
やはり朝は絶望の塊だった様だ。ほらパンドラの箱の奥には希望も詰まっていたんだろう?あれだ、希望も絶望ってことだ。
「やるぞー!」
勘弁して下さい。
俺は白目で、黙々と、自分で作った朝食のスクランブルエッグを平らげた。
其の弐
「それじゃあ行ってらっしゃい!」
「ああ、行ってくる。昼は適当になんか食べてくれ」
そう言って五百円玉を夜桜に渡す。これも一応毎朝の行動なのだが、今日の夜桜は生まれ変わったらしい。ので、それを突っぱねるように顔を崩す。
「いや、今日から私は生まれ変わる。その第一歩として、昼は自分で作ります!」
とても心配だ。彼女が料理をしている所は見たことはない。見たことはないのだが、しないという事はそう言う事なのだろう。
とりあえず怪我が無ければいいが。
「そ、そうか。なら冷蔵庫にある物何でも使って良いから、とりあえず怪我はするなよ。もし指切ったら救急箱が台所の棚の上にあるから、ちゃんと消毒してから絆創膏貼るんだぞ。あと皿は洗わなくていいから、流しに置いといてくれ」
「分かってますよ。心配性だなー幸太は」
笑いながら言う夜桜。
とても心配です。
*
「って事があってさ」
「何と言うか、鹿女ちゃんらしいと言うか」
「ああ、台所が心配だ」
「あ、そっちなんだ」
今日は平日。つまり学校がある訳で。登校中、数少ない友人に遭遇し、世間話という愚痴を聞いてもらっていた。
登下校の時間が一番無駄と思うのは俺だけだろうか。
「ああ。あいつが指を切れば台所は血塗れ。掃除なんて出来っこないから台所はぐしゃぐしゃに........。さらに言えば、あいつが自分で消毒できるかとか、皿を割った拍子に指を切らないかとか、いろいろ心配なんだよ」
「へ、へー」
この卯花幸太という男。夜桜が何かをやらかす前提で話を進めている。それだけどんくさいと言う事なのか。はたまた、それだけ夜桜の事を信用していないのか。
まあ、きっと前者であろう。友人である坂木龍田は心の中でひっそりと思うのであった。
(こいつのことだし、鹿女ちゃんの事気に入ってるんだろうな)
「ああ、心配だ」
やはり卯花幸太は単純だった。
*
「ここでこの数式を使うんだよ」
「なるほど!やっとわかったよ。流石幸太君、あったまいい~」
放課後。黄身の中身の様な教室。二人の男女は甘い雰囲気を醸し出す事は終ぞなかった。
卯花幸太は単純だ。その解は朝出たはずなのだが、この女子はそうは思っていないらしい。逆に聡明とさえ思っていた。
「やっぱり好きだよ幸太君!」
「はいはいありがとう。それより此処も間違ってるぞ」
断じて、甘い雰囲気を醸し出している訳ではない。
彼女、鈴峰恋は恋愛脳である。恋に生き、恋に沈む女子高生。恋に負けたくはないらしい。沈む事は良いのだろうか。
そんな彼女から告白を受けたのは二週間前。本気ではない事はすぐに分かった為一方的にこっぴどくふってやったにも拘らず、こうして会いに来ては告白の繰り返し。
神経を疑うどころかマゾヒストでは無いのだろうかと心配するレベルである。
ただ、彼女の頭が大変なのは間違いなかったようで、前回のテストではどぶの様な点を取っていたのを見た為、こうして定期的に勉強を教えているのだが。
「ねえ~やっぱり付き合おうよ~」
「何度も言うが好きでもない奴と付き合うほど俺は暇じゃないんだ(今日だって早く帰りたいのだが.........)」
「あ、じゃあ突き合う?」
「それ字違くないか?」
頭が大変なのは家に居る忍者(仮)だけで十分なのだが、それはそれ、これはこれである。
まあ、そんな彼女に勉強を教えるだけ、やはり彼はお人好しなのだろう。それを知っているのは数少ない友人だけなのだ。
「君はなんでもできるねー。凄いよ!」
「俺を上げても何もないぞ。俺が器用貧乏なのは俺が一番分かってる」
「そんなことないよ。君は何時も周りを見て行動してる。それってすごい事じゃないかな?」
「............」
普段は馬鹿なのに、時々こうして人の心を覗き見る。卯花幸太は、彼女のそんな所が嫌いだった。
その一言は無意識に彼の心に残っていく。
蓄積されたそれは、痛みとなって彼の心を抉っていくのだ。
*
「ただいま」
「うう........。幸太、おかえりなさいぃ」
........まあそうなるであろうとは思っていた。ずっと考えていた事だ、その予想が的中しても可笑しくはなかった。
彼女の手を見れば一目瞭然。
「怪我、大丈夫か?」
「ごめんなさい.......食材無駄にしちゃいました」
かなり落ち込んでいるようだ。こんなに元気がない夜桜は初めてである。
簡単に慰めてもいいのだが、今の幸太も少し元気がない。そんな気になれない。
そんな今だからこその行動なのか、自分も慰めてほしいと云う意思表示なのか、彼自身定かではないが。
「.........?」
「まあ、そんなもんだ」
頭をなでるなんて行動をしたのは彼の意思なのか、はたまた必然的、確定的な決定事項だったのか。
それは、神のみぞ知ることだ。
終わり方のこれじゃない感が凄い
主人公
卯花幸太(ウノハナ コウタ)
ヒロイン
鹿女夜桜(シカメ ヨザクラ)
サブキャラ
坂木龍田(サカキ タツタ)
鈴峰恋(スズミネ レン)