ほとんど忘れたからあれだけど、興味ある人は見てくれ!
樹海化した中、1人の少女は大きな音とは逆方向に2人の少女を抱えながら、今も尚走り続ける。
「はぁ、はぁ、はぁ」
疲れた体を止める事のない少女、音から遠ざかるにもかかわらず、その表情は険しくなっていた。
今こうして走っていられるのは、ここにはいないもう1人の仲間……その人物を考える度に胸が締め付けられる……しかし、今自分にやるべき事はこの2人を安全な場所まで運ぶ事が最優先なので無理やり考える事をやめてとにかく走る事に集中する。
長い事走り急な坂になっている樹を滑りおり、敵からかなり離れた場所に抱えていた2人を地面に置く。
「ぎ、銀……」
地面に置かれた片方の少女はまだ意識があり、置いた人物に視線を向けて弱々しく呼びかける。呼びかけられた少女は置いた2人の状態をそれぞれ確認していた。
「動けるのは私……それとあいつだけか……辛いけど、ここは怖くても頑張りどきだろ。私に任せて須美と園子は休んどいて」
少女は優しく声を掛けてこちらを心配した表情で見ている少女を落ち着かせる。
「またね」
まるでいつもの帰り道での挨拶のように、軽い口調でその言葉を告げてから少女は1人で先程の場所へ駆けて行った。
「ぎ、銀......」
どうにかして止めようとして声を出したが、少女の名前を言うので精一杯で、今まで何とか意識を持っていた少女に限界が訪れ、そこで意識を手放した。
2人と別れてから少女はもう1人の仲間の元まで急いで駆ける。そして、ようやく敵の姿が見える距離まで来たときこちらに飛ばされてくる何かが視界に入った。
そんな、まさかと思いながらもその飛ばされてきた何かが落ちた場所を見てみると、少女の予感は確信になった。そこには、ボロボロになって体のあちこちから血を流しているもう1人の仲間の姿があった。
「あいつら!」
それを見てから少女は頭に血が上って冷静な判断が出来なくなり、仲間の救助ではなく敵の殲滅を優先した。敵の元まで移動している途中、『銀......あれ?俺の事放置ですか?』という声が聞こえたがきっと気のせいだろう。
敵の前まで着くとすぐに武器を取り出し睨みつける。
「ずいぶん前に進んでくれたけどな......」
そう言って片方の武器で地面に線を引く少女。
「ここから先は、通さない!!」
それを合図に少女は1人だけで敵に向かって駆けだした。
駆けだしたのを確認した敵は、まず初めに一体が矢を放ってくる。頭上から降り注ぐ矢を防ぐため、少女の両手に持つ武器を盾代わりにしながら走るスピードを落とさずに駆ける。
「うおおおおおおおおおお!」
声を上げながら少女は敵に向かって行くが、全部の矢を防ぐ事は出来ずにいくらかの矢が体をかすった。それでも少女は気にせずに走り続ける。
近づいてくる少女が攻撃範囲に入ったからなのか、それまで動かなかった二体の内の一体が盾のようなもので攻撃してきた。少女はその攻撃を飛んでかわし、そのまま攻撃してきた敵に一撃を入れる。
「その攻撃は覚えた!」
一撃を入れて地面に着地すると同時にもう一体の尻尾のようなものが襲ってきたが、後方に飛んで回避する。
「それで襲ってくるのも、見たよさっき!」
先程と同様に攻撃してきた敵に隙が出来たところで敵に向かって飛び、一撃を入れる。すると、いつの間にか上空に移動していた敵から矢が放たれるが、焦らずに片方の武器を思いっきりに投げてその敵に当たった。
当たった敵はその巨体が傾き、攻撃も中断していた。またもや、尻尾の攻撃が着地と同時に向かってきたが、今度は前に飛んで回避してその尻尾に乗り、それを足場に利用して上空の敵に向かって飛ぶ。
「何上から見てんだ!」
飛ばした武器が刺さっている場所に着いてまずは一撃を入れ、刺さっていた武器を引き抜いてもう一度一撃を入れようとしている時、後ろから二枚の巨大な盾が現れた。このままではやられると判断して攻撃を止めその場から飛び降りる。それを最初から待っていたのか尻尾のようなものが少女を狙い向かってきた。冷静に少女は周りを見ていて気づいていのたので地に足が着くとすぐに防御の姿勢になり攻撃を防ぐが多少は勢いは防げたものの体格差とも言うべき威力のある攻撃に耐えられず傷が増し、後方に追いやられた。
「や……やったなぁ!」
少女は走る……例え矢が降りそそいでこようと構わずに敵へ向かって一目散に駆けた。
「痛かったんだぞ!……自分達で、受けてみろ!!」
降り注ぐ矢を回避して近づくと、尻尾のようなものの進路を斧でいなして敵自身に尻尾のようなものの先端が刺さる。予想外の攻撃に敵も思わず上体を逸らし、その隙が出来た瞬間を逃さず少女は追撃を入れる。
「お前達は、ここから……出て行けぇぇぇぇぇ!!!!」
少女は敵の頭上まで駆け上がりながら何度も何度も斬りつけていき、やがてあと少しで到達するところまできた……その時、少女に異変が起こる。
「……がはっ」
知らぬ間に移動していた盾のような物体が後方にあり、そこに矢を放って反射したものの一本が少女の腹を貫いていた。傷は深く、急に全身の力が抜け、重力に従い地に落ちていく……しかし、それを敵が許すはずもなく落ちる途中に尻尾のようなものが少女を叩き落とした。
「……くっ……がはっ……」
少女の傷が増す一方で敵の傷は癒えていき絶望的な状況に陥る。
「させるもんか……はぁ……絶対……はぁ……させるもんか……はぁ……絶対……っ!」
それでも少女は諦めずに立ち上がり、再び敵に向かっていく。例え攻撃を防げなくて傷を負うことがあっても後ろに引かず前進する。
「帰るんだ!……守るんだぁ!!」
向かってくる尻尾のようなものは避けて斬り落とし、敵に近づいて確実に一撃一撃を入れていく。
「化け物にはわからないだろ、この力!!……ぐっ!」
右肩が矢で貫かれようと堪えて斧を振り、右足を貫かれても止めずに斧を振り続ける。
「これこそが、人間様の……ぐっ!……気合いだぁ!……根性だぁ!……ぐっ!……魂ってやつよぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
幾度となく攻撃を受けようがそれでも手を止めないで斧を振り、体が限界になるその時まで続けていた……
やがて、少女の体が限界を迎えてきた時敵の攻撃を受けて距離を離された。
「……がはっ……ま、まだだぁ……」
遂には奇跡的にまだ繋がっている右腕が動かなくなりながらも、ゆっくりと上体を起こそうとするが上手くいかずに倒れる。それでも敵から視線を外さずに睨みつけもう一度上体を起こそうとした……その時、敵と少女の間に誰かが飛び降りてきた。
「おいおい、俺が左で銀が右ってどこぞのペアルックですかぁ?いや、ペアルックではないのか?」
その飛び降りてきた人物は場に似合わない事をいいながら左手には何も持たず、右手にだけ大剣を持ちながら少女を見ていた。
「しん……ご……」
「はいはいそうだからそのまま動かないで。傷が酷くなるから……な?」
少年はそう言って少女に近づき敵を前にしてるのも気にせず屈む。
「しん……ご……どう……して……」
「いや、どうしてって言うのはこっちのセリフだ。さっき俺の事見て見ぬ振りしただろ?……まあ、文句はこいつらをどうにかしてからだ。それまで休んでろ」
「でも……」
「俺1人でも大丈夫だって、なんて言ったって俺は巷で不死鳥と呼ばれているからな!……ごめん。今のは嘘だ……とにかく、どの道お前はこれ以上は限界なんだから俺に任せとけって!」
「……わかっ……た……」
「素直でよろしい……お前の分まで俺が絶対に守ってやるよ。もちろん銀の事もな……だから、今は安心して寝てろ」
少女はその言葉を聞き気が抜けてしまい段々と睡魔が押し寄せてきて、まぶたを閉じた。
「ようやく寝たか……相変わらず頑張り過ぎなんだよ、銀……敵に攻撃される前に治療しておくか……『癒血』」
少女はまぶたを閉じているので見えないが徐々に体が何かに包まれ、体が軽くなっていく気がした。でも、それに呼応して先程よりも睡魔が増し意識が遠のいていく。
「またな、銀……ぐはっ!……ちっ、やはりダメージが大きかったか……悪いがお前らにはツケを払ってもらうぞ!!!」
少女が意識を失う前、最後に聞こえたのは少年からの別れの挨拶だった……
「……ん!……ノ……!」
「ぎ……!銀!」
近くから少女を呼ぶ声が聞こえ目を覚ます。呼びかけられた方を向くとそこには見知った顔があった。
「須美……園子……」
「銀!!」
「ミノさぁぁぁん!!」
「……園子、いきなり抱きつくなって」
「そうよそのっち!銀は怪我しているのよ」
「うぅぅぅ、だってぇぇぇ……死んだかと思ったんだもん……」
「勝手に殺すな……私は生きてるよ園子」
「あの後起きたら銀が居なくて心配したのよ!……でも無事で良かったわ……」
「悪い悪い、2人には心配かけたな……あれ?信悟はどうしたんだ?」
「え?ミノさんと一緒じゃなかったの?」
「いや、私が意識を失うまでは一緒だったけど……そうだ!バーテックスはどうなった!?」
「銀が撃退したんじゃないの?」
「いいや、私じゃあいつらを倒せなかった……」
「そうなの?それじゃあ……」
「信くんが倒したんじゃないかな?」
「そうかもしれない……でもあの時のあいつは怪我をしていた筈だけど……須美、園子、信悟を探そう!」
「どうしたのミノさん?」
「何か嫌な予感がするんだ、早く信悟を見つけないとたぶん後悔する気がする……」
「そうね……バーテックスが居なくなったからと言って安心は出来ないわ。探しに行きましょうそのっち、銀」
「うん!……もしかしたら寂しくて泣いているかもね〜」
「もしそうならからかってやろう!」
「2人ともそんな事言ってないで早く探しに行くわよ」
「「はーい」」
「そういえば銀、怪我は大丈夫?」
「おうよ!何だか知らないけど全然痛みがないんだ!今ならバーテックスが来ても倒せるよ!」
「さすがミノさん!」
「褒めるな褒めるな。それより2人は大丈夫なのか?」
「ええ、心配いらないわ。走るのは無理だけど歩くぐらいなら出来るわ」
「私も〜」
「別に待っていてもいいぞ?」
「また銀が無茶するかもしれないでしょ?それに、バラバラに動いた方が危険だわ」
「わっしーの言う通りだよ〜、それに信くんの泣き顔が見れないもん」
「園子って意外と酷い事言うよな、と言うか信悟が泣いているのは確定してるのかよ……よしっ!それじゃ行くか!」
「ええ」
「お〜」
「勇者は気合と根性!待っていろよ信悟!絶対にからかってやるからな!!」
3人の少女は足取りが遅いながらもゆっくりと歩き、もう1人の仲間を探し始めた……そして、歩き始めてから数分程して目的の人物を見つけた。だが、それは予想とは到底離れた結果として少女達の目に写る。
「嘘……だろ……」
「そんな……」
「信……くん……」
そこには剣に背中を預けて座っている少年が、血を流しながら目を閉じたまま動かないでいた。
それを見た少女達は感情を隠しもせず、大声で泣き叫び、それだけが樹海に響き渡った……
「信くん……」
少女は未だに目を開けない少年の手を握り涙を流し続けた……
「信くん……起きてよぉ……」
少女の問いに少年は答えてはくれない。それを理解しながらも何度も問いかけ続ける少女……
「嫌だよぉ……死なないでよぉ……」
結果は変わらずのまま少年に何度も諦めずに問い掛ける少女……そして、握っている手に力が入る……
すると、少女の願いが届いたのか、少年の体に変化が現れた。
「……生きてる……信くん!!」
握っていた手が一瞬だけピクリと動いたのを見て少女は少年の名を呼ぶが、やはり答えてはくれない。
「園子?」
「そのっち?」
「わっしー!ミノさん!信くん生きてるよ!」
「え?」
「今指が一瞬だけ動いたの!」
「それは本当か!」
「うん!早く病院に連れて行こう!もしかしたら助かるかも!」
「ああ分かった!!須美!樹海化が終わったらすぐに電話してくれ!」
「え、ええ!分かったわ!」
そして、少年が目を覚まさないまま樹海化が解けていく。樹海化が解けた後、すぐに少女達は119に電話をかけ、駆けつけた救急車に乗せられる少年をその時まで見守った……
今回のは3人の勇者視点でのものなので話は進んでないっす……ごめんな
今は筆休め程度でしか書く暇がないので更新するかどうかも分からんです!