胃痛セブン外伝 -アーリークロスロード-   作:北岡ブルー

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※ご本家が細かい容姿や設定を書いてないことをいいことに独自解釈が多々ありますが、柔らかい目でご覧ください。by スライ


怪獣を宿す少女 

「おい、なんでオレを置いていくんだよ。親父、母さん」

 

 オレ、ウルトラウーマン アーリーは、暗い闇の世界で両親の背中を見ていた。

 幼いオレにとって、まだ越えることのできない、大きな壁。

 その二人は離れた場所で腰を屈め、今にも飛び立とうとしていた。

 

「置いていくな…、置いていくなよ!」

 

ーーーそうだ。これはあの時、終わりのない地獄が始まった日だ。

 

 それを思い出したオレは、意地でも止めようと走り出す。だが、どんなに走っても距離は縮まらず、両親は遠くに飛び去っていった。

 

「―――ッああ!!」

 

 まただ。またオレは置いていかれた。『これで何度目だ』?

 

 となると次は――――。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「―――ッガァアアアアアアア!!!」

 

「患者さんが起きました!」

 

「おい!誰か押さえつけて鎮静化光線を浴びせてくれ!浄化エネルギーの注入ができん!」

 

「私がします!やらせてください!!」

 

 アーリーが起きてからの病室は乱闘状態だった。目を血走らせた少女は髪を振り乱して破壊の限りを尽くし、点滴や医者の腕に噛みつく。機材が飛ぶのもこれで何度目か。

 

 拘束をもろともしないその姿は、まるで小さな怪獣が暴れているかのようだった。

 

「スゴい暴れっぷりですね。プロの人達でも圧倒されている…。まともに相手ができてるのマリーって子だけじゃないですか」

「ああ、若い者の力には驚かされるよ」

「若い者って…、団長もお若いでしょうに」

 

 その様子を強化ガラス越しに見ているのは、この病院に連れてきた張本人であるゾットとブルー族の新人。彼らはアーリーが光線技を使った時に備えて、控え室に待機していた。

 

「しかし、あのアーリーという子、よく生きてましたね。光エネルギーや食べ物も無しに、一体どうやって生きてたんでしょう…」

 

「ーーああ、それについてだが、これを見てくれ」

 

「団長、それは?」

 

「あの子の…、アーリーの健康状態を記したカルテだ。借りてきた」

 

 新人は、ゾットからカルテを手渡されるとパラパラとめくっていく。するとページを進めるにつれ、顔が驚愕に染まり始めた。研究を得意とするブルー族ゆえに、この資料にある異常性を即座に察知してしまったのだ。

 

「これは…!」

 

 新人は目を見開き、汗を吹き出して暴れているアーリーとカルテを交互に見やる。カルテを握る手は微かに震えていた。

 

 ゾットはそんな新人の肩を叩いて落ち着くよう促すと、暴れているアーリーを見つめたまま語った。

 

「ああ、あの星は重力が強い。周りの小衛星を引き寄せてしまう程にな。我々のように強力な飛行能力を持たない者ではすぐ引き込まれ、地表に叩きつけられてしまう……」

 

 ―――それは『怪獣』とて例外ではない―――

 

「しかし…、しかしありえませんよそんな!『怪獣を食う』だなんて!ツインテールでもあるまいし、そもそもスパークアーマーを纏えない子供がどうやって!?」

 

 カルテで見ても信じたくないのだろう、『少女が怪獣を食っていた』という真実を。

 

 新人は目に見えて混乱していた。平和なウルトラの星で生きてきた者にとって、そんな発想そこが化け物なのだ。

 

 そんな反応を予想していたゾットは、軽いパニックを起こしている新人を落ち着かせ、話を続ける。

 

「生きていくためには仕方がないことだ。ウルトラマンとて餓えには勝てん。あんなに幼ければ尚更だ」

 

 ゾットはカルテに書かれていた内容を思い出す。ドラコや宇宙ガニを初め、異星人が不法投棄したと思われる超獣の失敗作、彼方から漂ってきた特定不能の死骸まで。アーリーは見境なく口にしていた。

 

 おそらく星の重力に潰され、弱っていたものを手にかけていたのだろう。出会った時の手際や、スパークアーマーの防御を貫通した爪がその証拠だ。両親に鍛えられた経験がアーリーを生かしていたのだ。

 

「医師の話によれば、狂乱の原因は遺伝子改造された怪獣を食ってしまったからだという。体が怪獣の遺伝子を拒否して暴走しているらしい…。だから私は、あの子を養子に迎えようかと思う」

 

「え?ちょっと待ってください団長!どうしてそうなるんですか!?」

 

 急にに放った聞き捨てならぬセリフに、新人が目を剥いて慌てる。当然の反応だ。ゾットには実の娘がいる。養子に迎え入れるということは、今暴れているアーリーを家に招くということだ。アレを子供の傍に居つかせるなどまともな考えではない。

 

「当たり前だろう。私が早くあの子を見つけていれば、あんな事にはならなかったのだからな」

 

「なら…、なら私にアーリーを育てさせてください!私はあの子を手荒な方法で連れてきてしまった…!その責任を取らせてください!」

 

 新人はそう懇願したが、ゾットはその提案を拒否する。

 

「それでは聞くが、子供を育てる苦労をお前は知っているのか?」

 

「ッ…、そ、それは…」

 

「あの時の君の判断は間違っていなかった。あの状況では、アーリーや私も間違いなく危険だったからな」

 

 ゾットは、自身の頬から肩を覆う包帯に触れる。発狂したアーリーに傷つけられたソレは頸動脈を切る重症で、急いで治療しなければ脳に障害が残っていたそうだ。

 

 アーリーもあのままでは、生きていたとしても人としての心が死んでいただろう。

 

「団長…、しかし…!」

 

 諦めきれないのか、目に涙を溜め、震えている新人。

 

 その肩にゾットは両手をおいた。それで少し、新人の肩の力が抜ける。

 

「新人、君は『女』だが、その年でまだ子供を持つ必要はない。君は正しいことをしとくれたんだ。ありがとう」

 

「ううッ…!」

 

 その言葉に新人は感慨極まり、その場で倒れこんでしまった。子供に手を出した事に罪悪感を抱いていたのだろう。緊張が切れたのか、手で覆い隠された目からは涙が溢れていた。

 

 ゾットはその背中を支えて壁際の席に座らせると、振り向いて強化ガラス越しに暴れるアーリーを見据える。

 

「さあ、ウチに来てもらおうか。我が養子()よ」

 

 彼の目は、アーリーの未来を見極めようと細められていた。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「落ち着いてくださいアーリーさん!ここはもう安全な場所。あなたを傷つけるものはありませんから―――!」

 

「ヌァアアアアアア……ッ!!」

 

 一体、この人は何と戦ってるんだろう。

 

 それが私、『ウルトラウーマン マリー』が目の前で暴れている患者さん…、アーリーさんを見て浮かべた疑問でした。

 

 ウルトラクリニック78で見習いをしている私は、今までたくさんの動物や人、星の治療に携わってきました。けど、こんなに暴れる人は初めてです。

 

 眠っている時の印象はただ、綺麗な人だなぁと思っていました。シミ一つない肌やサラサラな髪は、同い年の私でもドキッとするほど綺麗で、私と同じ、どこかのお嬢様なのかなと思っていました。

 

 けれどこの人が起きた瞬間、まわりは大惨事に変わりました。何十万ウラーもする機材は壊され、治療に当たる医師は私一人。チーフは「マリー君…、君に全てを託したぞ…!」と言って倒れました。息をしなくなっただけで死んではいません。

 

 そして現在。私は暴れるアーリーさんと取っ組み合いになって今に至ります。聞きかじりでも格闘技をやっててよかった…。

 

「ウウウッ…!」

 

「痛ッ…!」

 

 私は、女の子の中でも力は強い方です。だけどアーリーさんの力はそれ以上で、掴んでいる私の手はメキメキと音を立て、今にも握り潰されそうです。こうなったら、隣にウルトラ念力を送って助けを呼ぶしか―――

 

「フンッ」

 

「え?―――」

 

 あれ?私、なんで上下逆さまに?

 

 アーリーさんが不意に鼻を鳴らした瞬間、私は自分の片腕を両手で掴まれ、思いきりベットの上に頭を叩きつけられました。

 

「ウェアアアアア!!!」

 

「かはッ!?」

 

 これ、背負い投げをされたの…!?頭が、体中がベットに打ち付けられて痛いっ…!まるで、私の思考を読んで先手を打ったような…!

 

「死ィイイネェェエエエアアアアアアッ!!!」

 

「ヒャっ!」

 

 私が慣れない痛みに思わず怯んでしまうと、アーリーさんが狂気染みた目をこちらに向けて拳を降り下ろしました。

 

 あまりの怖さと襲い来るであろう痛みに、私は思わず目を背けてしまいます。

 

 けれど、その痛みはやって来ることはありませんでした。なぜなら―――。

 

「ウッ…ギ…ァア!」

 

「やれやれ…。お前のように、患者だからといって暴れていい領分はないぞアーリー」

 

 勇士隊の方が、アーリーさんの手を掴んで持ち上げ、攻撃を止めてくれたからです。この方は確か、アーリーさんをここに連れて来た人…、ゾットさん!

 

「すまなかったな。娘があなた方に迷惑をかけた」

 

「ああいえ!仕事ですから…。えっ?あなたがアーリーさんのお父さんなんですか?それにしてはお若いような…」

 

 多分、私より少しお兄さんなくらいですよね?

 

「ああ、今から養子に迎える予定なのでね」

 

「い、今から!?」

 

 なんて破天荒な!そんな私の心の叫びを置いて、ゾットさんは持ち上げているアーリーさんの頬をシュパァン!!と思いきりひっ叩き…、ええ!?

 

「ちょっ!やめてくださいゾットさん!患者さんですよ!?」

 

「暴れる悪い子には、このぐらいが丁度いい」

 

 ゾットさんは私に見向きもせずそう答えると、アーリーさんの頬にシュパンヒッパンスッパァン!!と往復ビンタを始めました。

 

 やめてぇ!娘さんの顔をバードンの毒袋みたいにしないでぇ!!

 

「起きろアーリー。さっきから見ていたが、なんだあの体たらくは。自分の運命に振り回されて、情けない」

 

「ウッ、グゥ、ギッ…!」

 

「やめてくださいゾットさん!やめてくださいったら!」

 

 あまりの乱暴さに、私は思わずゾットさんの腕にぶら下がるようにして必死に抑えようとします。ですがゾットさんは止まってくれません。

 

「悔しくないのか、置いていかれて。無念じゃないのか、一人にされて。親をさがしたくないのか?自分の力で!」

 

「もう!この人全然話聞かない!!その変なデザインのヒゲもぎましょうか!?」

 

 あまりの話の聞かなさに、私は勇士隊隊長を相手に本気で怒りそうになりました。しかしその時、

 

「――うッ…」

 

「…え?」

 

 アーリーさんの目が限界まで見開かれ――

 

「るっっっ…、せぇええええええええ!!!」

 

 ゾットさんの腹目掛けて限界まで曲げた脚を打ち込み、病室の端まで吹き飛ばしたのです。

 

「―――つッ!!」

 

「キャア!?」

 

 その勢いに、ゾットさんが壁にぶつかって亀裂を作り、その後を追うように私も壁にぶつけられてしまいました。

 

「ァアアアア……!うぁああああッ!!」

 

 周りが反動で吹き飛んだ中で、アーリーさんは起き上がり、頭を抑えながら叫んでいました。

 

「あぁ…!あぁわかってるよンな事は!!弱えぇ…!オレは弱えぇ!!」

 

「あれ…?正気に…戻ってる?」

 

「ああ。正確には私にプライドを刺激されて、狂気から地が出てきた感じだがね…」

 

「ゾットさん、まさかアーリーさんの意識を引き出すためにあんな事を…?」

 

「悪いことをしたとは思ってる。だが、これ以上病院で暴れることは許容できないからな…」

 

 そう言うと、ここからが本番だというようにゾットさんは立ち上がり、壁に打ち付けられて動けない私を庇うように前に出ました。

 

「ならばどうする!お前はどうしたい!!」

「ぅうううっ…、うあああ……!!」

 

 ゾットさんの叱咤に気づいたのか、頭を押さえるアーリーさんは苦痛に歪んだ顔をこちらに向け、もがき苦しむように叫びました。

 

「力ぁ…!オレに力をくれえぇッ!!もう、もう弱いのは嫌だぁぁあああッ!!」

 

「ならば私の所に来い。勇士隊に入れ!君には天性の才能がある…、戦いの才能が!それを開かせてやる!!」

 

「ッ…、お前のとこに行けば…。力が手に入るんだな?」

 

「ああ。きっと、それ以上のものもな」

 

「……それ、以上……、の…?ハ…、フハハ…。そんなのいらねぇ…――」

 

「オレは、力さえ手に入ればそれでいぃ…!!」

 

 右手を広げて前に出し、耳まで裂けてしまいそうな笑みを浮かべたアーリーさんは、そのままの体勢を崩しました。

 

 駄目!このままだと頭を!!

 

「っ!アーリーさん!!」

 

「大丈夫。体力が尽きて、気を失っただけだ」

 

 さっきとは違う、優しい声。

 

 そんな声が耳に届いた瞬間。前にいたゾットさんは消え、アーリーさんの体を抱き止めていました。

 

「え…?今、どうやって…?」

 

「ああ、テレポートを使わせてもらった。頭からぶつかるとさすがに危ないからな」

 

 ゾットさんは、先程の態度が嘘のようにアーリーさんの頭を撫でると、いわゆるお姫様抱っこで持ち上げて私に言いました。

 

「それではマリーさん、今まで迷惑をかけてしまって申し訳ない。この子を家に連れて帰ってよろしいか?」

 

「えっ?…ええ。ですがまた症状が出た場合はこちらに来てくださいね。お薬です」

 

「流石は優秀な若手医師として名高いマリーさんだ。では、また後日」

 

 いきなりの事で私は頭が追い付かす、思わず準備していたお薬をゾットさんに渡してしまう。ゾットさんはお薬を受け取ってお辞儀をすると、座っていた部下の方を引き連れて外へと歩いて行きました。

 

「……勇士隊の方って、皆あんな感じなんでしょうか…?」

 

 正面から向き合った私には、彼女が患った『病気』が簡単に治るものではないと予感できました。あんな力任せで治るとはとても思えませんし、医者の一人としてとても心配です。

 

「また、この病院に来てくれたらいいんですけど…」

 

 所詮、一人の新人医者でしかない私には、また来てくれることを祈って周りを片付けることしかできませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「すまなかったなアーリー、君を傷つけてしまって…。あれ以上、病院に被害を出させるわけにはいかなかったんだ」

 

 私、ウルトラマンゾットは、部下を家に帰し、我が家への帰路についていた。

 私の背中におぶられているアーリーは、今までの暴れっぷりが嘘のように安らかな寝息を立てている。

 

「こうして見ると、普通の年若い娘なのにな…」

 

 私からしても、こんな幼い少女が怪獣の肉を食らっていたとは到底信じられなかった。診察医から話を聞かされた時の私は、新人と全く同じ反応をしていたと断言しよう。

 それほど怪獣とは…、アーリーの行動とは危険極まるものだったのだ。

 

「私が、お前の両親を止めていれば…」

 

 アーリーの両親、ウルトラマンプライドとウルトラウーマンレヴィは、娘の誕生を心から祝福していた。

 年上の部下だった二人は、「戦闘バカな私たちでも良い親になれるだろうか?」と普段の明るさを潜めて、よく悩んでいたものだ。

 

 しかし、運命は子育て以前の問題を二人に叩きつけた。

 両親の光を強く取り込む性質が、アーリーに倍の力となって発現したのだ。

 ウルトラの星に降り注ぐ光『ディファレーター光線』は、子供たちにはあまりに強すぎる。だからこそ幼いウルトラー族はウルトラカプセルに入れられて幼少期を過ごすのだが、アーリーの体質はそれすら無効化して光を吸収した。

 

 このままでは、過剰に光を吸収するアーリーは悲しい結末を辿ってしまう。

 泣き崩れた二人に、私はこう答えたのだ。

 

 

 

「ならば、ウルトラの星から離れた場所で住めばどうだ?」とーーー

 

 

 

 そう。アーリーがこんな事になってしまった原因は、私なんだ。

 

「アーリー。どうか両親の事を恨まないであげてくれ…。悪いのは私なんだ」

 

 私は、自分の右肩に顔を乗せているアーリーの頭を撫でる。すると、僅かにアーリーが年相応の笑みを浮かべた。

 

「プライド、レヴィ。君たちはどこかで生きていると信じてる。だから早く帰ってこい。こんなに可愛い娘が見られるのは、今だけなんだぞ…?」

 

 無論、何らかの理由で動けない可能性もある。その時は娘を持った後輩分として、全力で二人を助けたい。

 空を見上げると、地殻の隙間から無数の星々が瞬いてる。

 その中のどこかに彼らがいる事を願いながら、私は娘の待つ家へ、新たな家族と共に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆それから数万年後…。◆◆◆◆

 

 

 

「ヒヒ、こりゃあいいモン手に入ったぜぇ…!」

 

 エメラルドに輝く光の国。その外れにある荒れ果てた地で、一体の宇宙人がコソコソと歩いていた。

 

 宇宙人の名は『三面怪人 ダダ』彼はときどき立ち止まると、子供ほどのサイズがある透明なカプセルを上に持ち上げ、3つの顔をグルグル回転させながら笑っていた。

 

「滅多に出回らねぇウルトラ一族のガキ!!苦労してここまで来た甲斐があるってモンよぉ!」

 

 そのカプセルの中には、一人の子供が入っていた。地球人そっくりな子供はカプセルを叩いて何かを叫んでいるが、それはどうでもいい事。

 ダダにとって重要なのは、この子供がレアリティの高い『ウルトラ一族』であるという事だ。

 

「右往左往…!採るのがヘタだと上司に叱られ、ダダ大学じゃ7171(|ないない)号と蔑まれてきたオレも、やればできるモンだなぁ~、シクシク…!」

 

 ウルトラ一族を入手したという栄光を実感し、思わず涙を拭う7171号。それほどまでにウルトラ一族とは貴重な存在なのだ。

 ウルトラ一族の死体は、しばらくすると光になって消えてしまう。それ故に剥製にして保存するというダダの十八番(おはこ)が使えず、どうやってウルトラ一族の体を標本にするかは剥製業界でも命題の一つと言われている。極稀に体がしぼんで皮だけになるウルトラ族もいるらしいが、見た者がおらず、あくまで噂だ。

 

 落ちこぼれである7171号は、そんなウルトラ一族を捕まえてダダたちを見返そうと光の国に密入国し、捕らえることに成功したのだ。

 

「困難な道だった…!土下座してミニマム光線銃を借り、綿密な計画を建て、一万年宇宙船の貨物室を渡り歩いた…!でも大人のウルトラ一族は怖いし、ガキも肉体言語でお菓子(計画の要)を奪うヤツしかいない…ッ!折れそうになったその時、このガキは…、このガキだけが「大丈夫?」と声をかけてくれたのだ!それでどれだけオレっちの心が救われた事か…!!」

 

 よほどの苦難だったのだろう。3つの顔から鼻水やら涙やらを流し、7171号はウルトラ族の子供に…。正確には閉じ込めているカプセルに頬擦りする。助ける気はないようだ。

 

 そんな7171号に、ある者が声をかける。血気盛んで、女とも男とも思わせる中性的な声だ。

 

「そりゃあ良かったな7171号。どれ、いっちょ見せてみろ」

 

「おお! いいともいいとも! オレっちの成果を見てくれ!」

 

 有頂天な7171号は、自分の努力を称してくれる声に思わずカプセルを渡す。この喜びをみんなで分かち合うべきだと考えたのだ。しかし、

 

「…ん?いやちょっと待て?オレっち以外のダダなんて来てたっけか?」

 

 分かち合う相手は選ぶべきだった。そいつは、カプセルを受け取った途端に拳を振りかざしてきたのだから。

 

「―――フンッ!!」

「へ? がぎゃあッ!?」

 

 眼前に現れた拳により、硬質な顔面がひび割れ吹っ飛ぶ7171号。ブシュウウウと紫の鼻血を三面から吹き出し、プロペラのように回る彼は荒れ地に倒れ伏した。

 突然の攻撃に7171号は顔を上げる。砂にまみれた顔はヒビと共に痛々しい拳の跡を残していた。

「バ…、バカな…ッ!一体どこのどいつだ!分かち合った喜びを拳に還元するヤツは!?」

 

「フハハハハ…!分かち合う喜びだぁ?アホらしい。お前一人で来たんだろうが」

 

「ダッ…!?」

 

 7171号は、上げた顔を驚愕に染め、目を見開く。見下ろすように立っていたのは、赤と白のスーツを纏った目付きの悪い女だった。

 

「う、ウソだろ…!?なんでこんな荒野にウルトラ族が…!」

 

「あぁ?なんだ、オレはお前の許可がなけりゃいちゃいけねぇのか?」

 

 7171号の言葉に眉を潜めた女のウルトラ族は、苛立ちをぶつけるように彼の頭を踏みつけ、グリグリと地面に押し付ける。

 

「ああ!?いぎゃあぁ!!や、やめて!!砂が傷に入って痛ぃい!」

 

「ハッ!そーなるようにしてやってんだ。そりゃあ良かった……ぜッ!!」

 

 女のウルトラ族は、7171号の苦悶を吐き捨てるように笑うと、そのまま傷めがけて全力の蹴りを放った。

 

「おぶぉおおおッ!!?」

 

 バキィイ!!という甲高い音と共に、サッカーボールのように跳ね飛ばされる7171号。

 女のウルトラ族は、そんな7171号を姿を見てさらに嘲笑う。

 

「おもしれぇ…!笑えるから今死なせてやるよ!」

 

 そう言って構えたのは、ウルトラ族の印象的なポーズである十字に組んだ腕。

 指が曲げられている歪な形だか、それを見た瞬間。落下する7171号は己の運命を悟った。

 

(あ。い、嫌だ!オレまだ標本作ったことないんだ。やめて、やめてお願いーーーッ!!)

 

 ポロポロと、スローモーになった世界で大粒の涙をこぼす7171号。

 

 手を伸ばした先にいたのは、出来損ないの自分を見捨てず。ミニマム光線銃を与えてくれた恩師の姿だった。

 

(せ、先生ーーー!)

 

「スペシウム、光線」

 

 そんな恩師の姿は、赤いイカヅチを纏った光線によって食い破られた。

 

「ダァダァアア"ア"ア"ァッ!!?」

 

 青いライン状のシャワーが直撃したダダは、体内を駆け巡る光エネルギーの暴走によって大爆発を起こす。

 吹き飛んだ肉片や臓物が光に還元され、消えゆく光景に、女のウルトラ族ーー、『アーリー』は笑みを浮かべ、鋭い犬歯をちらつかせていた。

 

「ハッ、これに懲りたら侵略は控えることだなぁ。フハハハハ…!」

 

 アーリーは、あのダダが涙を流し、救いを求めるように手を伸ばしたのを見ていた。

 だがそれがどうした。そう言わんばかりに、アーリーは死んだダダの情けないツラを笑った。

 そんな紅白の悪魔の脳内にひとつのテレパシーが引っ掛かり、額に届く長さのアホ毛がピクン、と動く。

 

『……!たーア、ー、いーちょー、アリー、いちょう…ーー!』

 

「あ?なんだこれ、テレパシージャマーか?」

 

『……、アーリー三隊長ッ!!』

 

「るっせえなァ…、いったいどうした?」

 

『どうしたもこうしたもありませんよ!なぜ攻撃隊のリーダーである貴女が持ち場にいないんですか!最前線が押されてきてるんですよ!?』

 

「いちいち知らねぇな、寝坊したンだよ。押されてんのはテメェらが弱いせいだろうが。ゾットはどうしたんだよ」

 

『……ッアーリー!!ゾット隊長の養子でありながら貴女ーーー』

 

 ブチッ

 

 めんどくさくなったアーリーはテレパシーを一方的に切ると、転がる巨大カプセルに向かって歩いていく。

 カプセルに腰を降ろして馬乗りになると、その端を掴んで握力をかけた。

 

「はぁ……フン!!」

 

 するとそこに細かい亀裂が入り、割れて片道トンネルが開通する。アーリーは破片がついた手を払うと、コンコンとノックをして尻の方へと顔を向けた。

 

「おら、さっさと出ろ。おりゃあ忙しいんだ」

 

「う、うんっ!」

 

 そこには、尻ごしにウルトラ族の子供の顔があった。子供は顔を赤くして、ワタワタしてカプセルから這い出てくる。

 立ち上がった子供を見たアーリーは、人差し指を伸ばして緑に輝く建築物群を指した。

 

「見えるな?あれが光の国だ。歩いてきゃ着くからそれまで歩け。オレは先に行く」

 

「えっ?ねーちゃんは送ってってくれないの?」

 

「はぁ?バカ言え。おりゃあはお守りじゃねーんだよっ」

 

 甘えたことを言う子供に、アーリーは心底嫌そうにマユをハの字に曲げ、呆れた声を出す。

 

「それとも、お前はまだ乳吸うようなガキだって言いてぇのか?ん~?」

 

 しかし、その顔は一瞬で挑発するようなニヤケ面に変わり、整った美巨乳をグニグニと揉みだした。

 

「ひゃ…!?え、ええっとーーー!」

 

 右、左、上下と揉みしだかれ、指からはみ出るボリュームを持つアーリーの胸に、子供は顔を真っ赤にしてプルプルと震える。

 やがて羞恥の限界が降り切れたのか、子供は逃げだすように光の国へと走り出した。

 

「ごっ…!ごめんなさぁぁ~~いッ!!!」

 

「フハハハッ!たまにはこの袋も役に立つモンだなぁオイ!」

 

 遠くにいった子供を見て、自分の胸をタプタプ揺らしながら笑うアーリー。

 ひとしきり笑った彼女は、視線をひとつの星にむける。その周りでは小さな輝点が瞬いては消えていた。

 

「そんじゃ。そろそろ生ヌル共を助けてやるとするかぁ…、ウルァッ!!」

 

 掛け声を上げ、夜空に向かって飛んだアーリーは、そのまま引っ張られるように星へと向かっていく。

 その瞳は、新たなる獲物を求めてギラつく猛獣のように、鋭く強く輝いていた。

 




ウルトラ【べリアルッ!!】ナビ!

べ「よぉ、我が愛しの帝国民共よ…。銀河大皇帝べリアル様だ!」

レ『レムです。子供に迫る変態に深い嫌悪感を感じています』

べ「ちっ!違うぞレム!?あの頃のオレ様はそういうチョメチョメに詳しくなかったっていうか…、ふざけてただけで今はあんな事しねぇからな!?」

レ『朝っぱらから息子に胎内回帰プレイを強いるキチ●イに弁解の余地などありません』

べ「だあああああああッ!!なんでコイツオレ様に対してこんな毒舌なんだよッ!?スツルム星人作だよなお前!?」

レ『銀河変態皇帝と同じあとがきにはいたくないので早めにすませます。このままだと私が電気ア●マに改造されそうです』

べ「しねぇよ!!」カチッ


 ーウルトラウーマン アーリー!ー



【挿絵表示】



レ『身長体重はべリアルと同等。実は年齢15万歳と、16万歳のウルトラの父より年下です。それなのに体重が彼の一万トン+されるとはどういうことでしょう』

べ「ブッ!?ふ、フフッ、そりゃあ筋肉とか胸の大きさとかだ。体重じゃねぇ、断じて体重じゃねぇぞ!」

レ(あとでデータベースにアクセスしてどんな食生活をしてるのか調べてみましょう)

べ「んじゃあ次回だ。若きオレ様の活躍。楽しみに待ってろよ?」
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