ロプトの体がアーチに飲み込まれるのを確認したダンブルドアは歓喜の声を上げている。
「これで…終わったのぉ…」
「えぇ、そうですね」
ダンブルドアの言葉にマクゴナガルも従い、多くの教師が安堵の表情を浮かべている。
「ふぅ…終わったか…」
僕は疲れた体を横たえ天を仰いだ。
雑魚とは言え、少なくとも50体以上の天使を片付けたのだ。
体も限界を迎え、所々悲鳴を上げている。
「ふぅ…本当に良かったです」
マクゴナガルは周囲の生徒を見て安堵の声を上げた。
それもそうだ。ホグワーツに居た人物は、怪我人こそ出たが、死者は誰一人として出ていないのだから。
これも、全てセレッサとジャンヌ先生のおかげた。
「おい! あれ!」
一人の生徒が声を上げ、アーチの方を指差している。
アーチの方へと視線を向けると、そこには、青白い光となったロプトの姿があった。
「この私をここまでコケにするとは………良いでしょう! もはやこの世界に用など有りませんッ!」
ロプトの体から、青白いエネルギーが放出されると、眩い光を放ちながらアーチが崩壊を始めた。
「滅びるのは私だけでは有りませんよッ!! あなた方全員! 道連れです!!」
アーチからあふれ出る光は、校長室を完全に飲み込み、どんどんと巨大化している。
まさに、光の逆流だ。
「アーハハハッ!! ハハハ―ハハッ!!!」
光となったロプトは高笑いを上げながら、巨大化した光にのみ込まれて霧散した。
「こっちに来るぞ!」
「いかんッ!! 皆! 逃げるのじゃ!」
「逃げるって…どこへ!」
あふれ出る光はさらに巨大になり、ホグワーツ全体を包み込こんだ。
このままではクィディッチ会場を飲み込むのも時間の問題だ。
そんな時、僕達の目の前に、セレッサとジャンヌ先生の2人が降り立った。
「まったく。忌々しい光だ」
「最後の最後まで…本当に余計な事をする男だわ」
2人は魔力を開放すると杖を手に光に立ちはだかった。
「セレッサ!! ジャンヌ先生!!」
僕が声を荒げて2人を呼ぶと、彼女達は一瞬だけ振り返り、やさしい笑みを浮かべた。
そして…
僕達の体は光に包まれ、意識が遠のいていった。
「んっ…んんぅ…」
気を失った僕が目を覚ますと、多くの生徒がクィディッチ会場の芝生の上で横になっていた。
皆眠っているのか、気持ちよさそうに寝息を立てている者まで居る。
「ここは…」
「どうなっているのでしょう…」
ダンブルドアを始めとした教師陣は目を覚ましたのか、周囲を見回している。
僕も彼等の後を追う様に周囲を見回し、驚愕した。
僕等が居たクィディッチ会場をの周辺は、焼け野原となっており、草1本すら生えていなかったのだ。
「これは…どうなって…」
「先生! あれを!」
ポッターが大声を上げ、ホグワーツの方を指差している。
そこには、巨大な爆発に巻き込まれたかのような、無残にも崩壊し廃墟と化したホグワーツ城が存在していた。
「何という事じゃ…」
ホグワーツの惨状を見てダンブルドアは膝から崩れ落ちた。
僕はそんなダンブルドアを尻目に、周囲を見渡し、セレッサとジャンヌ先生の姿を探す。
「あれ…」
どんなに探しても、彼女達の姿が見当たらない。
生徒達に紛れているのか…
いや…そんなはずはない…
そうなると…まさか…
僕の中である仮説が組みあがり、それに呼応して心臓が早鐘を打つ。
「ありえない…ありえない…」
僕は自身を落ち着かせるように、言葉を口にする。
そうだ、そんなことありえない。
こんな事で彼女達が…
「ところで…ジャンヌ先生達の姿が見えんが…どこにいるのじゃ」
僕の気持ちをかき乱すかのようにダンブルドアが口を開く。
「それが…どれだけ探しても…見当たりません」
ウソだ! きっとしっかり探していないだけだ!
僕の心は必死に現実を否定する。
「まさか…先程の光にのまれ…」
「えぇ…その可能性が高いかと…」
「まさか…彼女達が…」
「ありえない!!!」
思わず僕は叫び声を上げてしまう。
そのせいか、その場の全員がこちらに顔を向ける。
「ドラコよ…落ち着くのじゃ…」
「落ち着け? これが落ち着いていられるか! 早く彼女達を探さなくては!!」
僕は痛む体を引きずり、クィディッチ会場を出ようとする。
しかし、僕の体は何者かによって引き留められる。
「落ち着くんだ! マルフォイ!」
僕の腕を掴んでいたのはポッターだった。
「離せよ!」
僕は力を籠めてポッターの腕を振り払う。
「ぐぅ!」
腕を振り払った際にバランスを崩したのか、僕の体は地面に横たわってしまった。
「大丈夫か! とりあえず今は、休むんだ」
「休むだと…そんな事している暇はない!」
「落ち着け! 今闇雲に探しても、駄目だ! 後日態勢を整えてから――」
「そんな悠長な事! 言ってられるか!」
僕は倒れた体を起こそうと必死に力を入れるが…体が言う事を聞かず、一向に起き上がる気配がない。
「くそ! どうして!」
「今は休むんだ…わかったな…」
「くそぉおぉおぉお!!」
爆心地の中心で静まり返った中、僕の悲鳴だけが周囲を満たした。
数日後、廃墟となったホグワーツの中で唯一無事だったスリザリンの寮で僕達は生活している。
最初こそ、皆抵抗はあったが今では普通に生活している。
ホグワーツの跡地では、校長室があった場所で、息絶えた元闇の帝王の遺体が発見された。
その一報を受け、死喰い人は自首をする者や、後追う物、失踪する者など反応は様々だった。
そんな中、志願者と教師陣で彼女達の捜索が行われたが、一向に進展はなく。
遂には、彼女達は死亡という事で処理され、捜索が打ち切りになった…
彼女達の葬儀は数日中に行われるようだ。
「くそぉ…」
無力な僕は、たった一人で彼女達を探し続けるしかできなかった。
数日後。
ホグワーツの生徒と教師は、ホグワーツ跡地の一角で悲しみに暮れていた。
一角には、穴が掘られており、その中には
そして、棺の前では一人のシスターが聖書を読んでいる。
「皆の悲しみは痛いほどわかる…ワシ達は闇の帝王との戦いに勝利した…が…とても大きな犠牲を払った…」
ダンブルドアは物悲し気にスピーチを続ける。
「ミス・セレッサ。そして、ミス・ジャンヌ。彼女達のおかげでワシ等はこうして今を生きているのじゃ…皆それに感謝しなければならぬ…」
「うぅ…」
周囲に生徒達の泣き声が響き渡る。
「ワシ達に出来る事は…せめて彼女等が安らかに眠れることを願う事ばかりじゃ…」
ダンブルドアはそう言うと、杖を振るい、棺の上に1輪の花を添えた。
「ありがとう…君達のおかげでこの世界は救われた…後はワシ達が…平和な世界を作って行こう…」
ダンブルドアはそう言うと、棺から離れる。
そして、1人また1人と棺の前に立ち花を添える。
そして、次にドラコの順番がやって来た。
「ありがとう…セレッサ…君のおかげで僕は弱い自分を克服できた」
ドラコは杖を振ると、ローズマリーで作られた巨大な花束が現れた。
「ローズマリーは魔除けの花だったね。君には必要ないかもしれないけど…気休めだと思ってくれ」
巨大なローズマリーの花が棺に添えられる。
「それと…これも返しておこう」
ドラコは鞄からスカボロウフェアと修羅刃を取り出すと、墓標の隣に立て掛けた。
そして、その横に永遠なるマリオネットを添えた
「僕は…僕は君の事が好きだったんだ…初めて会った時から心を奪われた。だから…せめて君が安らかに眠れることを祈るよ」
ドラコは自らの唇に右手の人差し指と中指を添えると投げキッスを送った。
「さようなら」
ドラコは悲し気に棺を見つめると、踵を返した。
その時、空が眩いばかりの神々しい光に包まれる。
「まさか!」
「天使達か!」
その場に居た全員が驚きのあまり空を見上げている。
「まったく…空気の読めない連中だ。残党狩りも楽では無いな」
隣で聖書を読んでいたシスターが呆れた様に呟く。
「貴方は!」
シスターは聖書を投げ捨てると、その場で飛び上がり、天使達を殴り倒した。
「ジャンヌ先生!!」
「やはり、コスプレなどするものではないな!!」
修道服を脱ぎ捨てたジャンヌは迫り来る天使達を両手の銃で撃ち墜とす。
「そろそろ出番だ、出てきたらどうだ?」
ジャンヌが声上げるが、棺からは何の反応も無い。
その間にも、天使達は次々と現れる。
ジャンヌはステップを踏みながら、次々と始末していく。
「まさか本当に眠っているのではないだろうな!!」
ジャンヌは声を荒げている。
そんな中、数体の天使が棺に近寄る。
その時、棺の蓋が勢い良く開かれ、中から何者かが飛び出した。
「グッド・モーニング」
「セレッサ!!」
「ベヨネッタ!!」
ベヨネッタが棺から飛び出し、墓標に着地すると、両手に銃を構える。
「随分と遅かったな。それほど寝心地が良かったのか?」
「冗談言わないで、こんなんじゃ安らかになって眠れないわ」
「フッ、それもそうだろうな」
突然のベヨネッタの登場に、周囲の面々が唖然としている。
「随分と派手な葬式ね。でも、私の葬式ならダンスミュージック位かけて欲しいわね」
ベヨネッタはそう言うと、振り返ることなく、右手の銃で迫り来る背後の天使を迎撃する。
「うぅーん。ローズマリーね。その花言葉は記憶と、思い出。素敵ね」
ベヨネッタはローズマリーの花をドラコに投げ渡すと、銃を構えた。
「レッツダンス! ボーイズ!」
ベヨネッタの凛とした声が暖かな日差しの中、周囲に響き渡った。
以上で終わりです。
それでは、完走した感想ですが
一応この作品にはいくつか目標を設けており。
ホグワーツ側からの死者を0にする。
ホグワーツ城を破壊する。
ベヨネッタ3の発売までに完走する。
以上が目標でした。
皆様に少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
一応、次回作は書き始めていますが、しばらくお時間を頂くと思います。
それでは皆様、長々とありがとうございました。