気付いたらキングダムの世界で王妹だそうです   作:空兎81

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合流

 

 

王騎軍に囲まれたり朱凶と戦ったりなんとか漂を助けることができました。最初はどこで合戦が起こっているかわからず迷子になっていたけど間に合って本当によかったよ。

 

それによって王騎軍と戦うことになってしまったが、まあそれも仕方ないだろう。戦乱の世の中だから同じ釜の飯を食った人たちと戦うこともあるはずだ。

 

うん、だから馬から蹴落とすための蹴りにやけに力が入っていたとかそんなことはないよ。日頃の訓練でいびられている仕返ししようとかそんなことは考えていないからね。

 

あ、それから私のことを化け物とか言った奴、顔と名前は覚えていますから後で覚悟しておいて下さい。あどけない幼女になんてこというんだこいつら。あとで絶対はっ倒す。

 

そんなわけで王騎軍を突破して暗闇の中を走り続けたのだがふと地面にピンッと張られた縄があることに気付いた。恐らく馬の脚を止めるためのトラップだろう。

 

慌てて漂に注意を促すも馬は転がり漂は地面に叩きつけられた。その後すぐに立ち上がろうとしたが明らかに足を庇うような動きをした。恐らく怪我をしたのだろう。

 

そこに現れる朱凶さん。来るとはわかっていたけど漂と2人だから楽勝だろうと思ってたのに漂は怪我しちゃったしこれ私がなんとかしないといけない展開だよね?つらい。200年続く歴史を持つ暗殺者に私ひとりで勝てるのだろうか。

 

でもこの朱凶が生きていると漂は死んでしまう。うん、だから殺そう。こいつが漂を殺すというならその前に私が殺す。剣を抜いて斬りかかった。

 

斬って、斬られて、斬って、斬って、斬って、なんとか朱凶を倒した。終わったら私も割と斬られていた。あー、痛い。結構ギリギリだったな。まあこれできっと漂の死亡フラグは折れただろうし良かったよ。

 

漂と一緒に兄上様のところへ向かう。馬はダメになってしまったから2人とも駆け足だ。だけれども足を怪我した漂は速く走れない。見ると足が真っ赤に腫れ上がっていた。え、これやばいんじゃない?ひょっとして折れている?

 

仕方ないので私がおぶって走ることにした。漂は『馬に乗っているのと変わらない速さですね』と笑っていたが、幼女が人ひとり背負って馬並みの速度で走れるわけないだろう?そんなん出来たら人間ちゃいますわ。

 

まあきっと漂も疲れていて体感速度がおかしくなっているのだろう。そのまま全力で駆け抜ける。

 

途中漂が『絶対に戦力になる男がいます。城戸村に寄ってもらえませんか?』と言ってきた。信のことだとピンと来たので勿論了承する。やっぱり主人公がいないのはダメでしょう。実際信はめちゃんこ役に立つからね、連れて行って損はありません。

 

そんなわけで城戸村に着いて漂が信を連れて来たのだが、『なんか目つきの悪いガキだな』と言われてめっちゃ腹立った。お前鏡見てこいよ。人相悪い信にだけは言われたくないセリフである。

 

まあ確かに残念なことに私の容姿は整っていると言い難い。ばあやに『成凛様は本当にお兄様にそっくりですわぁ』とよく言われると聞けば私の容姿がいかにアレなものかわかってもらえることだろう。

 

ちなみに王騎将軍には『貴方の戦場での顔は本当にいいですね。周りが恐れ慄いていますよ』と言われた。私は鬼か何かか?絶対に幼女に向かっていうセリフじゃありませんよね。きっと私がぼっちなのもこの顔が原因の一端を担ってますよ。絶世の美女とは言わなくとももうちょっと愛嬌のある顔に生まれたかったです。

 

信が漂に状況を説明して3人で黒卑村に向かう。怪我した漂は信が背負うことになったのだが後でこの人選が間違いだったことに気付いた。黒卑村は犯罪者の住処である。到着すると当たり前のように襲われ戦闘になった。

 

だけれども信は漂を背負っている。漂は怪我をしている。必然的に私が先陣切って戦うことになった。何故主人公ペアという最強の戦力が一緒にいるのに私が戦っているのだろう。まあ盗賊達をバッタバッタと倒すと『すげえ!お前チビだけどすげえな!』と信に褒められたので良しとしよう。主人公と仲良くなれるのは素直に嬉しい。

 

そうして黒卑村を進み粗末な小屋の前に着いた。そして中には政兄様が座っていた。

 

兄上様は漂を見て信を見てそして私と目があった瞬間その瞳が大きく見開かれる。

 

『何故、凛がここにいるのだ?』という兄上様に『我が王のために動くことは当然のこと』と答えるとさらに驚いた顔をしていた。まあ私って反乱起こした成蟜の妹ですからね。うちの兄さんが本当にすみません。

 

その後漂が状況を話していると周りが騒がしくなり軍に囲まれていることに気付いた。そして現れた貂に道案内をしてもらい無事黒卑村を脱出する。

 

穆公の避暑地とやらに兄上様に案内してもらって無事到着。貂の作ったご飯を食べながら身体を休めます。

 

これからまだまだやることはあるからね、体力は温存しておかなといけません。

 

そうしてひと晩が過ぎ私は散歩と称して森へ出かける。これから起こるだろうムタ戦に参加するつもりはない。

 

安全を期すなら漂、信、私の3人がかりで挑む方がよいとは思うのだがそれよりも気になることがある。私が原作を無視した弊害というか、実はここまで信はほとんど戦闘をしていないのだ。

 

朱凶は私が倒したし黒卑村の盗賊も結局私が相手をした。

 

信が強いことはわかっているが王宮に攻め込むまでに一度も実戦経験がないのは怖い。うん、だからここは信に譲ってやろう。けしてムタ戦が面倒だとかそんなことはないよ?あの蓑虫おじさんが怖いとかそんなことは思ってません。

 

まあそれに私にもやることがある。

 

 

「成凛様、どうして成蟜様を裏切ったのですか」

 

 

辺りを黒い甲冑の兵士に囲まれる。政兄上を捕らえに来た成蟜兄さんの軍だ。彼らが来ることは原作を読んでいて知っていた。私は黙って剣を抜く。

 

 

「貴方は成蟜様の妹君です。貴方の師である王騎将軍もこちら側です。今なら謝れば成蟜様も許して下さいます。我々と共に戻りましょう」

 

 

彼らは私を見ると諭すようにそう言ってくる。今さら謝ったところで成蟜兄さんが許してくれるとは思えないけどな。まあ一応血を分けた妹だしひょっとしたら誠心誠意謝ったら命くらいは助けてくれるのかもしれない。

 

彼らからすると成蟜兄さんの妹でありながら兄上様につく私は意味のわからない存在なのだろう。しかも反乱はほぼ成功している。わざわざ不利な方につく利点はどこにもない。

 

だけれどもこの世界に来た時に私は決めている。彼らの夢を一緒に目指し歩んでいこうと。だから彼らのいうことに心惹かれる物は何もなかった。

 

 

「戻るつもりはない」

 

 

「成凛様…、」

 

 

「私は信念に基づいてこの場に立っている。遠慮はいらない。私はお前たちの敵だ」

 

 

そういうと向こうにも私の意思が伝わったのか剣を構えた。ああ、でも君たちは本当についていない。

 

私が戦場で戦った魏兵よりも朱凶よりも黒卑村の盗賊たちよりも誰よりもついていない。

 

ここは森だ。2年間、生き方を学び殺し方を身に付けた私の戦闘の原点、最も得意とする戦場だ。

 

緩やかな傾斜も踏みしめる大地の柔らかさも生い茂る木々の視界の悪さも全て私の味方だ。君達は私の敵だ。だから容赦しない。

 

兄上様たちの夢を実現するために全員殺す。

 

 


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