気付いたらキングダムの世界で王妹だそうです   作:空兎81

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唇お化けさんこんにちは

キングダムの世界で生き抜く為には武力が必要になるだろう。とはいえまだこの3歳の身の上ではろくに訓練もできないから基礎体力をつけることと書物を読み漁ることに時間を費やす。

 

流石に紀元前の中華の文字は読めないからそこから勉強だ。だけれどもこの時代にあんまり有能なところを見せると暗殺されてしまうので周りに隠れて読書をする。中々生きにくい世の中だ。

 

物語、歴史書、兵法、色々読んでみるが軍略についてはいまいちわからん。読んで見たらなるほど、とは思うものの戦略を練るなんてことはできそうにない。うーん、私に軍師の才能はなさそうだな。いやでも実際に戦場に行ったら唐突に内なる力に目覚めることもあるかもしれないし最初からできないと決めつけておくのはやめておこう。

 

それから2年間はそんな感じで現中華の歴史と文化を学び日頃から走り込みをしてある程度の体力をつけた後とある人を訪れる。キングダムで武将といえばまずこの人が上がるだろう。

 

 

「ンフフフ、女童が私に何の用ですか?」

 

 

「どうか私を鍛えて欲しい、王騎将軍」

 

 

秦の六大将軍のひとり、怪鳥、王騎将軍。私はこの人に教えを乞う。手っ取り早く強くなる為には才覚のある人に師事することだろう。だから私はこの時代、秦で最も力のある将軍である王騎将軍に会いに行って武を教えてもらおうと思った。

 

王騎将軍は原作で信を色々と面倒見てあげていたしたぶん人に何かを教えるのはそんなに嫌いではないのだろう。それに私は公女であの昭王のひ孫にあたる者だから無下にはしないはず…、と思ったんだけど自分で言っといてなんだがあんまり説得力ないな。

 

信に目をかけていたのは反乱を鎮圧したメンバーにいたからで、昭王のひ孫っていってもぶっちゃけ数十人くらいいるからそのうち1人が何か言ってきても気に留める存在にはならないかもしれない。まずいなぁ、これ断られたらこの先強くなるアテが全くないんですけど。

 

 

「コココッ、面白いことを言いますね。公女の身の上でありながら私に鍛えて欲しいというのですか?」

 

 

「そうだ。私はどうしても強くなりたい」

 

 

「ですが私にそうする義理はありません。どうしても武芸を極めたいのなら他の者を呼びつければいいでしょう。貴女にはそれだけの身分があるんですから」

 

 

コココと笑いながらやんわりと王騎がそういう。やはり断られてしまった。ワンチャン、いや正直にいうと5割くらいの確率でオッケーもらえると思っていたから断られて結構内心はショックである。公女って身分持っててもダメなのか。まあだからといって諦めたりしない。私の夢を叶える為には王騎将軍の力がどうしても必要なのだ。

 

私はただ護身術の為に武芸を身に付けたいのではない。将来兄上様が中華統一を目指す時の刃の1つになるために強くなりたいのだ。そのためには激乱の中華を駆け抜けてきた王騎将軍にこそ武芸を習いたい。今の時代だとやはりこの人の実力が頭ひとつ抜け出ている。

 

 

「ままごとのつもりはない。この戦乱の世を生き抜くための力をどうしても手に入れたいのだ」

 

 

顔を上げ真っ直ぐと王騎将軍を見つめる。王騎将軍の口元は弧を描いているけれど瞳は冷静でこちらを見定めているのだとわかった。

 

ここは目を逸らしてはいけない気がする。睨み返すように王騎将軍の目を見つめているとやがて王騎将軍が口元に手を当ててコココッと笑い出した。

 

 

「面白いですね、その歳でそこまで意志の灯った目をするんですね。いいでしょう、貴女の覚悟のほど見させてもらいましょうか」

 

 

そういうと王騎将軍は立ち上がり私について来るようにいった。これは王騎将軍に認められたということかな?稽古を付けてくれるのだろうか。

 

王騎将軍は私をつれて外に出ると馬に乗り駆け出した。王宮の外に出たんだけれどどこに向かっているのだろうか。王騎将軍の居城かな?私誰にも居処伝えてないんだけどこれ大丈夫だろうか。

 

馬を走らせお尻が痛いな、と思っているとやがて王騎将軍は森へと入っていった。修行は森の中でするのかな?と思っていると王騎将軍はある程度奥まで行ったところで馬を止め私を下ろすと腰からひとつ脇差を抜き鞘ごと私に渡す。

 

 

「貴女が戦場に出るとして最も大切なことはその環境を知ることです。戦場に暖かな寝床も食事もありませんからね。まずはここで身体を慣らしなさい。そしてこの場で生き残ることができるなら自然と武芸も身につくでしょう」

 

 

そういって王騎将軍は馬に乗り去っていった。私はひとり森に取り残される。

 

・・・嘘でしょ?まさかここに置き去りですか?いや、前世も今も屋根がない環境に身を置いたことないから身体を慣れさせるためにも野宿せいという王騎将軍の言い分は凄くわかるんだけど私一応王族ですよ?なんかもう少しマシな扱いでも良いんじゃないでしょうか?

 

あ、でもそういえば信が稽古つけてくれって言った時もこの人崖から突き落として少数民族平定してこいっていってたっけ。全然面倒見いい人ではなかったわ。これは素直に頼む人を間違えたんですね。つらい。

 

王騎将軍の脇差を握りしめてため息をつく。王族という勝ち組ステータスから一気に家なき子になってしまいましたよ。でも原作の信を見る感じ王騎将軍のやることに間違いはなさそうだし頑張ってここで生き延びるとしますか。

 

まあ取り敢えずは今日の晩御飯を探すところから始めましょう。

 

 

 

 

 


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